かしこ2022/04/20まさに私の好きな土田世紀だった土田世紀はテーマがまっすぐなところがいい。「今、お前がやっきになって掴もうとしてるのは水の中の月だ。本当の月はあっちにある。」ということをバリバリの東北弁で語ってくれます。家は貧乏だけど高倉健みたいに実直に生きてるケンジ、ヤクザ者になってしまった漁師の息子のキヨシ、カンパチ並のお調子者キャラのヨイヂ…東北の田舎町で育った3人の幼馴染の友情の物語です。ちょいちょい子供だった頃の回想シーンがあるんですがそれがまたいいんだよなぁ〜。水の中の月土田世紀4わかる
かしこ2022/04/18「K2」のラストシーンがカッコいい!!古い作品ですが登山の厳しさ難しさは今も昔も変わらないですね。山ごとに登場人物が違うオムニバスになっているのでそれぞれの人間ドラマも見どころです。後半の作品になるとクライマックスシーンにかっこいいモノローグが入ってくるので「おぉ…!!」となります。私が一番好きなのは最後に収録されてる「K2」です。このラストシーンはまた読みたくなる格別のかっこよさでした。岳人列伝村上もとか1わかる
かしこ2022/04/17「孤高の人」読んでみた登山マンガです。最初の高校生編の面白さは後に比べるとそれほどでもないのですが、常に孤独であろうとする主人公に対して「山は一人では登れない!」と教えようとしてくれた懐が深くて優しい先生が、雪山で遭難した主人公の捜索中に亡くなるんですね…。主要人物の死によって読者としても山の危険性に身が凍ってよりリアルに感情移入していき、そこからは登る山のレベルが上がるほど没入感がハンパなくなっていきます。 荒れ狂う雪山の描写はもちろんですが、仲間を看取るシーンでの死に際の表情なんかはマジで鬼気迫ってて脳にこびり付いてます。こういった命の駆け引きのようなところが、後のイノサンのテーマにも繋がっていったのでしょうか。 孤独だった主人公が結婚して子供が産まれてようやく幸せを掴んだのに、それでもK2を登ることになった時は妻目線になって「終わった…」と思いましたが、タイトルの『孤高の人』の意味そのままのベストなラストでした。 登れたのか生きて帰れたのか…それは最後まで読んで自分で確認したほうがいいと思う。孤高の人坂本眞一 鍋田吉郎 高野洋 新田次郎5わかる
かしこ2022/04/16庶民なお一人様にちょうどいい指南書1人旅と1人飲みって憧れるけどハードルが高いですが、この漫画を読むと「あ、自分でも出来そう!やりたい!」と思えるのがいいです。まず事前にネットで入念に下調べをするところから始まり、現地で店構えを確認して何か違うと感じたら別の店に行くのも全然あり!なところが「常連でもない店にスマートに入れないのはしょうがない!無様でもいいじゃない!」と肯定してくれます。そもそもそんなに高い店に行ってないのでとっても真似しやすいんです。 たま〜に「思ってたより美味しくなかった…」っていう感想があるのも、誰ともシェアしないで食べる1人ご飯だからショックが残るのよね〜と共感しました。後半はコロナ禍になったのでお取り寄せして自宅で食べる話も多かったですが、ぜひぜひ続編も刊行して欲しいです。絶対買います!ひとりぶらりごはん柘植文2わかる
かしこ2022/04/13大和和紀先生に自伝を漫画化してもらえるってすごい原作が伝説の芸妓と呼ばれた方の手記なんですが、その方が勝新太郎と交際されていたことがあるらしく(作中に名前は出てこないのですがWikipediaを読んでたら知ってしまった。有名なのかも…?)、読み始めたきっかけは「大和和紀先生の美しい絵で舞妓さんの話が読めるなんて最高じゃん!」だったのですが「なかなか別れてくれない奥さんって…そういうこと?!」など、違うところで夢中になってしまう場面もありました(笑)。 とはいえ舞妓さんや芸妓さんの日常からお座敷でのプロフェッショナルな仕事ぶり、そして彼女たちを支えている裏方の人々のエピソードまで盛りだくさんで、一般人には敷居の高い祇園の世界を知ることが出来て勉強になりました。紅匂ふ大和和紀 岩崎峰子2わかる
かしこ2022/04/12ネタバレ渡瀬悠宇先生の渾身の一作!最初は原稿中のアシスタントさんとの何気ないおしゃべりから生まれた作品だそうですが、時を経て思い入れが深まって雑誌連載に繋がり、まさに「渾身の力を込めて」描かれた作品です。 エロというよりは暴力としての男性同士の性行為の描写があるのですが、そんなことをするに至ってしまった悲しい過去や忌まわしい記憶の方が物語の核になっています。渡瀬先生もこの作品を描くまでは同性愛について詳しくなかったのでかなり勉強されたそうです。 重〜い雰囲気が好きな人は絶対に好きだと思います。蔵に閉じ込められてる謎の美少女が出てくるなどの設定の部分でもそうですが、登場人物の苦しみや悲しみの感情表現がとても生々しくて引き込まれました。 あと絵!絵がすごく美しいです!特に下巻の夜桜のシーンには感動しました。櫻狩り渡瀬悠宇2わかる
かしこ2022/04/10モリタと彩ちゃんのそれから「生きろ!モリタ」の続編です。ドMとドSで相性ぴったり!相思相愛?の2人の間に立ちはだかるは新たな壁は彩ちゃんの厳格なおじいちゃん。前作よりもコメディが強めでマニアックなエロさは弱まってますが、2人の幸せな行く末を拝めたので満足です。待て!モリタ松本藍
かしこ2022/04/10天然ドS少女彩ちゃんが可愛い!パートナー探しをしていたドMのモリタが出会ったのは16歳の彩ちゃん。でも彩ちゃんは生まれながらの天然ドSなので相性ピッタリ!というラブコメディーです。彩ちゃんがワクワクしながら楽しそうにモリタに痛いことして興奮している姿がとにかく可愛いです。彩ちゃんにフラれちゃう同級生の彼氏もいい奴だったのがよかった。嫌な気持ちに全くならないSM漫画でした!生きろ!モリタ松本藍2わかる
かしこ2022/04/09なんだかよく分からないがすごかったこれを読めば長尾謙一郎先生が日本漫画界のデヴィット・リンチと呼ばれている理由がよく分かります。なんで口から宇宙人が出てくるのか?ヘソから入れるシャブってなんだとか?意味を考え出すと迷子になりますがそんなことをしようとするのが野暮だと開き直るとすごく面白いです。竹之進の「おのれのパンツは宇宙一穢い!!!」と美美さんの「女だったら竹やぶに入らなあかん時があると思うねーん」はなぜだかハートに刺さりました。もしこれからの人生で悟りを開きたいと思ったらまず頭の中に竹やぶを思い浮かべようと思います。ギャラクシー銀座長尾謙一郎3わかる
かしこ2022/04/06羽化する前みたいな作品集勝手に武富健治先生は同人誌出身だと思ってたのですが違いました。19歳でアフタヌーン四季賞に準入選されますが、雑誌掲載デビューは27歳で掲載誌はビッグコミック増刊だそうです。そこから世間に注目されるまで数年かかり、その合間に同人活動をされていたとかで、なかなかの苦労人だったのですね…。 この短編集には上記の受賞作とデビュー作が収録されていて、面白いのは両方とも主人公の名前が「鈴木章」だということ。武富先生は漫画家として節目となる作品の主人公には「鈴木章」と名付けているんだそうです。 まさに羽化する前のサナギだった頃のような作品集ですが、作家として軸の部分はずっと変わっていないんだなと思いました。屋根の上の魔女―武富健治作品集武富健治1わかる
かしこ2022/04/05現代の怪奇漫画だねホラー漫画でもギャグ漫画でもなく怪奇漫画と呼ぶのがふさわしいような作品。どの短編もインパクトがあるので全て記憶に残ってますが蚊とカンナの話が特に好きです。蚊の話は日本兵と蚊の両方の視点がそれぞれ一話ずつあって面白かった。とりあえず黄色い○○シリーズを全部読もうと思います。黄色い悪夢黄島点心1わかる
かしこ2022/04/03コードネームはセクシーボイス将来はスパイか占い師になりたい中学生のニコちゃんが七色の声を操れる特技を活かしてテレクラで金を稼ぎながら人間観察をしていたところ、その才能に惚れ込んだ裏社会の権力者であるおじいさんから大小様々な依頼を受けるようになります。 第1話の「今救えるのは宇宙で私だけ」から始まり、心掴まれる名シーンが多いんですよね〜!特に私が好きなのは三日坊主の件で落ち込んだニコちゃんがとある一人暮らしのおばあさんを訪ねる第11話です。 日頃から本棚のいつでも見える場所に置いていますが久しぶりに読み返しました。やっぱり何度読んでも面白いです!完結はしていませんがそれを望む必要がないくらい今のままで完成されている作品だと思います。セクシーボイス アンド ロボ黒田硫黄1わかる
かしこ2022/03/28ネタバレベルばらより好きという人がいるのも納得です1、ベルばらと同じく本当は女だけど事情があって男として育てられた主人公という設定。 2、冒頭で語られるオルフェウスの窓の伝説が「そこで出会った男女は恋人になるが、悲恋で終わる」というものなので、最終的に別れることが分かってる状態で読むことになる。 3、とにかく長編。第4部まであり、舞台はドイツ、ウィーン、ロシアと広がるから、役割のある登場人物も多くなってくる。 読んでみると上記がマイナス面として気になるのですが、最後まで読むと「全部が必要不可欠な要素だったんだ!」と分かることでしょう…。もちろん池田理代子先生の代表作といえば「ベルサイユのばら」だと思いますが、漫画家として描きたいことを描き尽くした作品は「オルフェウスの窓」なのかもしれないと感じました。まさに大河ドラマなので一日で読もうとせずに数日かけて読むのをオススメします。オルフェウスの窓池田理代子4わかる
かしこ2022/03/22せっかくなので読んでみた「刻刻」全8巻を読み終わった流れで読んでみました。この一話に110円は高いような気がしますが、あの人本当にキャバクラで働いてんだなってことが知れただけでもよかったかなぁ…。『刻刻』番外編 ―300日後―堀尾省太
かしこ2022/03/22ものすごくタイ料理が食べたくなるガパオ、カオマンガイ、ソムタム…めちゃくちゃ美味しそうなタイ料理がたくさん出てくるので、読んでると猛烈に食べたくなっちゃいます!タイ料理を美味しそうに描く選手権があったら優勝すると思う。それくらい魅力的な描写です。 ただ物語の大枠の設定が「スパイシー・カフェガール」とほぼ一緒なのはなぜだろう…。同じ作者さんが同じような内容を他誌で描くってよっぽど「描きたい!」ってことなんだろうか。面白いからいいけどさ。スパイスビーム深谷陽1わかる
かしこ2022/03/21普通の家族を襲った「悲劇」久しぶりに「テセウスの船」を読んだので、他の人の感想を見にマンバに来たところ発見した読切です。今も公開されてて嬉しい!休日の朝、これからキャンプに出かけようとしている幸せそのものの家族のところに怪しい男が訪ねてくる…という不穏なストーリー。この作者さんは今連載している「プラタナスの実」もそうだけど、普通の家族を描くのがとても上手いなぁ。だからそういう家族が危険な目にあいそうになるとハラハラしちゃうんだよね。いつか引くほど怖いサスペンスを描いてみて欲しいな…!家族東元俊哉1わかる
かしこ2022/03/19映画好きすぎボーイの恋 #読切応援ここ最近読んだ読切の中でダントツ好きです!!映画ネタがふんだんに盛り込まれていて、作者さんの「好き!」がたくさん詰まっているのが読んでいて楽しい作品でした。もちろん自分の知らない映画もあるんだけど、知らなくても楽しめるからとってもいい作品だと思います。個人経営のマニアックなレンタルビデオ屋でツウな作品をちゃんと分かって借りてる同じ大学の女子を見かけたらそりゃ恋に落ちるよ〜!うらやましいぜそんなシチュエーション!つい面白すぎてこの2人がこれからどんな映画を作ろうとするのか続きを想像してしまいます。続編を読めたら嬉しいな〜。恋はシャローフォーカス永田光起1わかる
かしこ2022/03/17タイムスリップしてビートルズになるもしもビートルズよりも先にビートルズの曲でデビューしたら、彼らは新曲を作ってくれるんじゃないか…そんな罪深い思い付きを2010年から1961年にタイムスリップしてしまった日本のビートルズのコピーバンドが実行してしまいます。この壮大なテーマの空想実験の結末が気になってたまらなかったので秒殺で読み終えてしまいました。タイムスリップした未来人が歴史を変えてしまうなんてタブーですが、主人公達の「新曲が聴きたい」っていう気持ちには純粋なものがあるので責められないですね。「東京オリンピックも開催前の日本からデビューして世界で活躍するなんて出来るのだろうか?」みたいな細かい疑問も「ビートルズの曲だったら可能でしょ!」という説得力があるので吹っ飛びます。あと終わり方もオシャレで好きでした。僕はビートルズかわぐちかいじ 藤井哲夫1わかる
かしこ2022/03/15意外な終わり方をする一応ギャグ漫画なので幸江に不幸なことが起これば起こるほど面白いんですが、最終的にはそんな幸江が誰よりも幸福な人なんじゃないかと思えるようなどんでん返しがあり、それまでの面白いが感動に変わります。自虐の詩業田良家
かしこ2022/03/13刑務所を楽しんでるムショ仲間の中には刑務官に可愛がられようとする人もいるんだけど、そういう人の話を聞いて「…ああおとなだわな心にグラインダーかけてるわ」「ちゃらついてるムショオタクとはえらいちがいだわな毎日火花散らして生きてるわな」と思ってる花輪さんの姿が印象に残りました。心にグラインダーかけてたらこんなに面白い漫画は描けないだろうからこれでいいんじゃないだろうか。続けて「刑務所の前」も読もうと思います!刑務所の中花輪和一1わかる
かしこ2022/03/10主役がロシア美女姉妹でもいつも通り大阪人の父親、亡くなったロシア人の母親の連れ子だった姉妹、父親と母親が結婚してから生まれた弟、ちょっと不思議な家族構成だけど仲はとってもいいんです。ロシア人の血を引いてる美人姉妹のダリやんとナス子ちゃん(本名はダリアとアナスタシア)がいいキャラしてはります。そんな2人の職業は網戸なんかに刺繍するアーティスです(なんか分かんないけど現代っぽくていいね!)。途中から「セケンノハテマデ」の主人公モーちゃんとダリやんが自然な流れで恋仲になるのが面白かったな〜。あれからモーちゃんがバツイチになってたのには驚きでしたが…(銀座でホステスしてたあのお姉さんとまだ続いちゃってんのかな?とか妄想しちゃいました)。チラッと「誰も寝てはならぬ」のハルキくんのビーズ刺繍作家のお姉さんも登場されてましたし、サライネス作品は読み込むと楽しいですな。ストロベリーサライネス1わかる
かしこ2022/03/09バンドマンのごくごくフツーな日常漫画そーっと(?)メジャーデビューしたロックバンドの日常漫画。元製薬会社の営業マンだったモーちゃんを筆頭にマニアな音楽好きが喜ぶような曲をやってるカッコいいバンドなんだけど演奏シーンはあんまりない!とはいえ単行本の最後ではドレスコーズの志磨涼平とかフジファブリックの名前があったので取材はしっかりしてるのかも…?もしかしてステージに立ってない時のミュージシャンのリアルってこうなのかッ!!?という面白さが読み終わってからジワジワ湧いてきました。読み返すのが楽しみだ。ちなみに1巻にはねねちゃんと巴ちゃん、3巻にはゴロちゃんとマキオくんの「誰も寝てはならぬ」メンバーも登場します。セケンノハテマデサライネス
かしこ2022/03/08父娘ネタの短編ギャグ伊藤理佐先生のデビュー作。当時は女子高生(17歳)だったそうです。当たり前だけど絵が全然違う!!線も細くて「ザ・少女漫画」な絵柄です。でも読んでると今現在の完成された伊藤理佐作品に繋がるものを感じ取れます(こないだ読んだ「渡る世間はオヤジばかり」も父と娘のギャグ漫画で面白かったです)。雑誌に掲載されたリアル父娘インタビューや日記コラムなども収録されていました。内容云々というよりも人に歴史ありを体感する面白さがありますね。お父さんの休日伊藤理佐1わかる
かしこ2022/03/06「蛮勇引力」読んでみたあらすじにすると2050年の近未来の日本は20世紀末にウィルスが蔓延した影響で政府が社会も人間もサイボーグ化しようとするのを主人公の由比正雪が阻止しようとする話です。 正直細かいところを理解しないまま勢いで読んでしまったのですが、巻末の作者インタビューを読むとそれも不正解じゃないのかもしれない気がしました。特に誰かが言ってたという「山口は蛮勇が終わってから読者に媚びるようになった、蛮勇の頃は伝わらなくてもメッセージを発し続けていた、その方が凄いんじゃないか」の言葉がまさしく『蛮勇引力』という作品の魅力を物語っていると思います。蛮勇引力山口貴由2わかる