マニア向けっぽい雰囲気ですが、巻末の作家と編集者の座談会インタビューを読むと「山松ゆうきちを味わったことない読者に届けたい」とあったので安心しました。「インドへ馬鹿がやって来た」を読んだ時も独特なバイタリティを持った人だな〜と思いましたが、初期作品はもっとダイレクトに作家の思考が反映されていますね。基本的に強い者が勝ち、弱い者が負け、貧乏人が金持ちになることは決してない…こういった現実は甘くないという容赦なさを痛快に描いているのが魅力です。ハッピーエンドになることはないけど読んでて悲しい気持ちにはなりません。特に「くそばばの詩シリーズ」がめちゃくちゃ面白くて、ばばあの健気さとたくましさに感動します。打ち手のばばあと釘師のじじいのプライドをかけたパチンコ対決は見ものです。YouTubeに上がってた昔のテレビ番組で岡崎京子が好きな漫画家は誰?と聞かれて「山松ゆうきち」と答えていて、本気なのかネタなのか観た当時は分からなかったけど、これを読むと現実のシビアさの捉え方とかそれにユーモアを混ぜるタッチとかがちょっと似てるかもなって思いました。

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この世界の片隅に

漫画と映画を久しぶりに見返した!

この世界の片隅に
かしこ
かしこ

2025年のお正月にNHK広島放送で映画「この世界の片隅に」が放送されたのは、今年で原爆投下から80年が経つからだそうです。この機会に私も久しぶりに漫画と映画をどちらも見返してみました。 やはり漫画と映画の一番の違いはリンさんの描き方ですよね。漫画では夫である周作さんとリンさんの関係について触れられていますが、映画ではありません。とくに時限爆弾によって晴美さんと右手を失ったすずさんが初めて周作さんと再会した時に、漫画ではリンさんの安否を気にしますが、映画ではそれがないので、いきなり「広島に帰りたい」という言葉を言い出したような印象になっていました。映画は子供のまま縁もゆかりもない土地にお嫁に来たすずさんが大人になる話に重点を置いているような気がします。それに比べると戦時下無月経症なので子供が出来ないとはっきり描いてある漫画はもっとリアルな女性の話ですよね。だから漫画の方が幼なじみの海兵さんと2人きりにさせた周作さんに対して、あんなに腹を立てたすずさんの気持ちがすんなり理解することが出来ました。個人的には男性達に対してだけではなく、当時の価値観で大事とされていた後継ぎを残せない自分に対しての悔しさもあるのかもしれないと思いました。けれどもあえて女性のリアルな部分を描きすぎない選択をしたのは、原作である漫画を十分に理解してるからこそなのは映画を見れば明らかです。 久しぶりに漫画と映画を見返してどちらも戦争が普通の人の生活も脅かすことを伝えているのはもちろん、すべてを一瞬で無いものにしてしまう核兵器の恐ろしさは動きのある映画だから強く感じた喪失がありました。そして漫画には「間違っていたら教えて下さい 今のうちに」と巻末に記載されていることに初めて気づきました。戦争を知らない私達が80年前の出来事を想像するのは難しいですが、だからこそ「この世界の片隅に」という物語があります。どんなに素晴らしい漫画でもより多くの人に長く読み続けてもらうのは大変なので映像化ほどの後押しはないです。これからも漫画と映画どちらも折に触れて見返したいと思います。

野球で話せ

漫画で話せ

野球で話せ
かしこ
かしこ

何を隠そう私も自分の描いた漫画を第11回青年漫画賞に応募していたのです。とはいえ私は記念受験のようなものなので箸にも棒にもかからないのですが…それでも言わせて下さい、私のライバルって中原とほるだったのかよ!!と。いや〜でもこれは完敗です。だって全編を通して「漫画を描くのが楽しい」って感じだったじゃないですか。働きながら漫画を描くのは大変です。やりたいことがあるのは幸せだけど、休みの日なんかに一人で引きこもってコツコツ描いてると「誰にも求められてないものをこんなに一生懸命やって何になる?」と虚しくなります。それよりも情けないのは描きたいから描くのではなく「漫画家になりたいから描いている」という気持ちのブレが起きてしまうことです。それでは本末転倒なのです。だからこそ作中で叔父さんが言っていた『表現を続けなさい』というセリフに胸を打たれて勇気づけられました。それは連載デビューを経験された後も医師として働きながら投稿を続けられたご自身に対しての言葉なのかもしれませんが、私もこんな風に漫画と向き合いたいと思わされる姿でした。いつか私の漫画を中原さんに読んでもらいたい。漫画で話したいです!

ダイヤモンドの功罪

最新話で綾瀬川が覚醒したぞ!!

ダイヤモンドの功罪
かしこ
かしこ

最新話でついに!綾が覚醒をしましたね!エヴァで言うところの覚醒と同じ意味なので心配ではありますが、これから益々タイトル通りの「功罪」っぷりを発揮してくれることでしょう。 ということで単行本を読み返してみました。運動神経だけではなく、身体能力、そして頭脳と、スポーツをする為の全てに恵まれた小学5年生の綾瀬川。U12の日本代表でもエースに選ばれ、他の代表選手からも「俺の世代にはずっとコイツがいるんだ…」と恐れられる程の逸材っぷり。しかし綾瀬川の本心は只々みんなと楽しく野球がしたいだけ。そう、綾本人も自分の才能に傷ついているのです。でも誰もそれを知らない。いてもイガくらいかな? 私は野球に関して全くの無知なんですがそれでもハマるのは、これが「才能」の話だから。やはり圧倒的な才能は人を翻弄するんですよ!!恐ろしやです。 日本代表の並木監督があのまま綾の面倒を見てくれたらよかったけど、このまま足立フェニックスで限界まで投げ続けたらプロになる前に選手生命が絶たれそうで心配ですね。ストーリーの冒頭で何回か高校球児になった綾が出てくるけど「この試合で壊れてもいい…!」と言ってたのが気になる。それがどういう意味なのか。やけっぱちなんだろうか。今のところ理解者になりそうな人が大和しかいないけど、東京と大阪で距離もあるし、大和もプレイヤーになりたそうだし、どうなっちゃうんだろう…。 将来は大谷さんのようになってくれたらいいのにな〜と思うのも綾にとっては大きなお世話なんだよね。とにかくハッピーエンドであってくれ!!と願いながら読んでます。

やままつべりーべすとおぶあーりーいやーず
山松 Very Best of Early Years
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ニッポン玄人考

ニッポン玄人考

貧乏な工員に見た目も燃費もド派手なイタ車「デ・トマソ」を売り付けた中古車のセールスマンだったが…?『モデルチェンジ』。田舎の温泉宿に派手なゲイバーのママさん御一行13人がやって来て…?『おかまの宴』。セールスマンから殺し屋、パチプロまで(?)、日本の色んな「玄人」達の仕事ぶりを「だらしな~く」描いた、山松ゆうきちのゆるゆる職業人オムニバスギャグコメディ。

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ああ!!あとがない

ああ!!あとがない

ボクは綺麗にお化粧しています。政治が悪いので人を殺してみました。でも警察はボクが殺ったと認めてくれません。お父様は好きです、でもボクは子供なので自由が欲しいです。強盗の叔父さんと心中してみました。やっぱりボクだけ生き残ってしまいました。ボクは白血病です、あとがないのに…。表題作「ああ!!あとがない」他に「知床峠の決闘(原作・間俊作)」「まるだし馬鹿・悲愁編 テンコちゃんの日記」「異色戦記5 見すてられた兵」「異色戦記6 敗走」「ある銀輪青春譜・登録番号59」「ゆうきち人生劇場 がんばれ共産党」の全8話を収録。

怪力エンヤコーラ

怪力エンヤコーラ

町に突然「神」がやってきた。その自称・神はボロボロの衣服をまとい、駅前で大声を張り上げて演説をするのだった。「民よ聞け! この世に人間のいる限り争いは絶えない。世界に平和が訪れる日など永遠に来るわけがない! いや、ただ一つ平和への道がある。それは核を増やすことだ。世界中の国が核を保有すれば戦争は起こらん、双方が怖くて手が出せないのである」とこの調子で鬱陶しいことこの上ない。この自称・神は演説を終え、飯屋に入ると……? (「淫者の声」より) 山松ゆうきちの傑作短篇集!

しりあす甚一

しりあす甚一

パチンコ・競輪・麻雀・女……そのどれもに異常なまでの探求心と執念深さを見せる甚一。自らを「知的中産階級」と位置づける彼は、しんどい思いをして働いた給料をギャンブルにぶち込む者を「低額所得者共」と切り捨て、あくまで生産的な事だけを行い勝負に勝つのをモットーとしている。今日も甚一はパチンコ店に繰り出し、入念な下調べの元導き出した「当たりの台」で勝負を仕掛けるのだったが……? 愛すべきギャンブラー・甚一とその弟分・安らが織りなす青春グラフィティ!

がんばれ番長

がんばれ番長

花澤高等学校の番長(自称)上杉治には二つの顔がある。子分を従え喧嘩に明け暮れる学校での顔、そしてもう一つは、自宅での妹想いの優しいお兄ちゃんという顔だ。治は今度の中間テストで一番になり、常に学年一位のマドンナ・白木寒子と肩を並べ、あわよくばお付き合いする流れになっちゃったりして……などとムフフな妄想を膨らませながら勉強に励む。そんなある日、寒子の部屋のベランダに、群青色のパンティが干してあるのを見つけた治は我慢しきれず盗んでしまい……!? 山松ゆうきちが描く昭和の学園コメディ!

インドへ馬鹿がやって来た

インドへ馬鹿がやって来た

山松ゆうきち、五十六才、職業・漫画家。仕事が減り大好きなギャンブルにも思うように行けなくなった彼は、ある日、インドには漫画がないと聞いて一念発起! 「無いものは売れるに決まっている。インドへ行って漫画本を出すぞおー」と単身インドへ!! 目標はインドで漫画本を作って大儲けすること…だが、言葉が全く分からず、空港からホテルに行くまでも一苦労。ホテルのボーイとやりあい、物乞いの少女に心悩ませ、オートリクシャの運転手に翻弄され…インドで漫画を出して大儲けするプロジェクトははたして成功するのか!? そもそも実現できるのか!? 作者が体当たりで挑んだ波乱万丈・唯一無二のインド体験エッセイ漫画!

天元坊

天元坊

江戸末期の鳥取藩・因幡郡円柱寺村。間引きされかけた男の子忌吉は、とろい上に盗み食いをして脚を折られた。役立たずと馬鹿にされるが、将棋を覚えて1文を賭けて勝負し、飢え死にを免れていた。願光和尚に負け、教えを請う。父が死んで一家離散した忌吉は、寺に引き取られて碁も覚えた。鬼封じの天元打ちを教えた願光は、城に呼ばれての争棋で体力をすり減らし、忌吉に九登寺に行けと言い残して死ぬ。「奇手鬼封じ」数奇な運命に弄ばれた天才棋士の物語。

中年死刑囚

中年死刑囚

敵の親分を千人の手下と共に殺した、笹川一義。刑務所暮らしを嫌って切腹しようとしたが、痛くて血が出たので中止。死刑判決を受けてまたまためげる。脱獄も出来ず、太って死刑を免れた話を聞いて、思いっきり喰いまくってデブになるが──「中年死刑囚」。他に「ぞうりばきのランナー」「一本書きの久仁ちゃん」「整形」「たんぴん白書3・ばちあたり麻雀」「少年Z」を収録。

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