吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/02/03
ヤベー女たちが魅力的すぎる!!恐怖と笑いのオムニバス
『絶望の犯島―100人のブリーフ男vs1人の改造ギャル』や、『バスタブに乗った兄弟~地球水没記~』の櫻井稔文先生の最新作! 「小説幻冬」での連載ですね。 こちらからも少し遅れて読めます。 https://www.gentosha.jp/series/otokonoinaionnatachi/ 『男のいない女たち』というタイトルから、独身女性の真面目な話などを想像してしまうかもしれませんがそっち方面じゃないんですよね。 恐怖の激ヤバ女たちを扱った話で怖くて笑えて最高に面白いです!! https://twitter.com/b_sakuraichi/status/1618275758824394757 まず、第1回のタイトルからして最高。 「犬ストーカー女」て!!ド直球!! 男性が犬を連れて散歩していたら、犬に惚れた女が翌日から散歩コースで待ち伏せし始めてストーカー行為が過激化していくんですが、こうれがもう絶品! 大好き!! このぶっ飛んじゃった女性自体は怖いけど、受け手の男性のテンションが面食らって戸惑ってはいるのに、どこか冷静というか呆れてるような冷めた温度感なのもちょうどいいんですよね~。 こういうヤバくてオモシレー女たちを描いたオムニバスだと思うんですけど、楽しみすぎません!? 小説幻冬にはなかなか手が伸びないんですけど、こうやってweb掲載もしれくれたのは本当にありがたいです!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/01/20
ネタバレ
青春の天国とどん底でぐるぐる
小骨トモ先生の新作読切。 短編集『神様お願い』が重版かかってるようでおめでたいです。 https://comic-action.com/episode/316190247110230189 友達がいない映画好きな高校生の小林くんが映画館で映画を観て一人泣いていると、一学年上のリカ先輩も泣いているのを発見する。 初めて同じ学校の人と出会った嬉しさと、涙を目撃し同じ視点を共有できた喜びで胸が高鳴るが…。 友達がいないから、いやだからこそ友達がいないのかもしれないけど、一人で抱えて誰にも話せずぐるぐる考えてどろどろに煮詰まって相手を見てるのか見てないのか、勝手に期待して失望して一方的に思いを吐き出して突き放していてどろどろでとてもよかったです。 小林くんの場合、同じ「視る瞳」を共有できたと思ったからこそ、全部共有できると期待してしまったのかもしれないし、それが借り物だと分かって裏切られたと感じて深く傷ついてしまったのかもしれない。 そして小林くんはそこでぶった切ってしまった。 そのコミュニケーションの先にあったかもしれない何かは思春期ならではの爆発でかき消えてしまった。 「世界はなんて美しいんだ」と、リカ先輩から降りてきたこの一本の蜘蛛の糸ですべてが救われたと感じるほどに感動したからこそのこの落差だった。 一時は同じ感情を持てたはずのに、それすら憎悪の対象としてしまった彼の青春は救われない。 どん底でよかったです。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/10/13
室井大資先生の新作読切!!!
久しぶりに室井大資先生の漫画が読める!! 少し前に『バイオレンスアクション』(沢田新名義で原作担当)が更新されましたが、今回は話も作画も全てご本人! 微妙な表情の変化や構図、間の表現などが魅力的で、漫画が上手いのでご本人の作画をまた見れて嬉しいです! 妻と子を奪われ、組織に復讐を誓い地獄の鬼と契約し「ヘルブレイズ」と呼ばれていた男は復讐を果たし、なぜかいまはどこか間の抜けた男・よしおと配信をしていた。 「ヘルブレイズ」略して「ヘルさん」は、復讐を果たし終えて燃え尽きてしまったがために、人生の目的を失い何もなく死んでないだけの毎日を過ごしていたが…。 https://twitter.com/Bessatsu_champ/status/1580025024362164224 壮絶な復讐を果たした男の「その後」を描く話で、新鮮でした! 喪失を抱え、復讐を果たして燃え尽き、死んでないだけの日常。 詳しくないんですが、この状態は燃え尽き症候群や鬱に近いものでしょうか。 室井先生、ご本人の一時期の状態に向き合う形でも描かれたから大変だったとか。 一方、よしおも人生で何かと負け続け誰でもない、何者にもなれない毎日を過ごしている。 どちらも違う形でもがいて、互いに感じ合うものがある。 こんな不器用で凸凹な二人が一緒にいると、売れてないお笑いコンビのようにも感じてくる。 ヘルさんは喪失の苦しみと再び失うかもしれない恐怖を乗り越えて大事なものを作って新しい人生を歩めるのか、そしてよしおは何者かになって何かを得られるのか。 ぜひ続きを読んでみたい!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/10/06
縦スクロール漫画の人気作品がめちゃくちゃ面白かった!
最近、縦スクロール漫画をいろいろ読み漁っているところです。 この『全知的な読者の視点から』を読み始めてまだまだ序盤ですが、いろいろ読んだ中でも特に面白かったです! https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0000822 平凡なサラリーマンのキム・ドクシャ(金独子)が、趣味でWeb小説『滅亡した世界で生き残る3つの方法』を中三から10年以上も毎日読み進めていたがついに最終話となってしまう。 その小説には最初こそ読者は何人かいたものの最後の方は自分しかいないようだった。 読み終わると突然、世界に異変が起こり、これまで読んできたファンタジー小説『滅亡した世界で生き残る3つの方法』に起こっていたことと全く同じ状況が目の前で繰り広げられていく。 自分だけが、これから起こる出来事のすべてを「読者の視点から」知っている状態で、モンスターが現れ特殊能力を手に入れ、人間同士でさえ殺し合いに発展していく滅亡していく世界で生き抜いていく! ファンタジー的なことが巻き起こりますが、登場人物も世界も一応現実の延長線上ですし、ピリッと緊張感漂うシリアスな状況で、絵も上手いのでかなり引き込まれます! ゲームのメニュー画面みたいなものが出てきたり、レベルや能力もあるので、いわゆる「強くてニューゲーム」的なシステムかと最初思ったんですが、微妙に違うのが面白いところ。 こういうのでよく見られるようなタイムリープしたり、やり直すような形ではなく、あくまで読者として、知識として知っているというのがポイント。 というのも、読んでいた小説の主人公ユ・ジュンヒョクこそが何度もやり直している最強の男として存在しているから。 それでも、あくまで知識だけとはいえ、知識こそ武器です。 知識があれば、どうやって強くなればいいか、誰と仲間になればいいかもこの先の展開で何を準備したらいいのかも分かるので、アドバンテージとしてかなり強い! どうなっていくのか楽しみで仕方ありません。 「トッケビ」という、妖怪?妖精?の存在と、彼らが「星座」に対してこの状況を配信するという形は、ある意味デスゲームで富豪が配信を見てる状況のようで面白いですね。 規模が世界規模だから人知を超えたそういう形になってるのかな? 「星座」という概念は、神様みたいなものでしょうか。 神話で語られたり、歴史上の偉人だったりした人たちが宇宙のどこかからこっちを覗き込んでるような。 そして配信を通して化身と呼ばれる人間(プレイヤー達)に投げ銭したり、直接能力やスキルを授けるような支援をしていくものとなっています。 韓国発のマンガでも日本へローカライズされたときには、名前や地名などなど日本のものになることが多いですが、こちらは主人公の名前・ドクシャに意味があるからなのか、韓国の名前や地名のまま。 個人的には無理に日本っぽくしなくてもと思うこともあるのでこうやって読むのも好きです。 第1話で語られますが、ドクシャは韓国語で「一人っ子」という意味もあるようですが、父は「強い男になれ」という意味で付けたとのこと。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/09/25
生活の中のささやかな美しさに気づくのは失った時かもしれない
本当に良い読切を読みました。 そっと涙が溢れてきました。 https://to-ti.in/product/oshiro ある日、夫が事故に遭い、透明人間になってしまった。 透明になった夫との暮らしは見えないだけで不思議で面白く、特に変わらないものかと思ったらそんなことはなく…。 夫が目の前にいるはずなのに表情が見えない生活の中の描写を通して、少しずつ事態を飲み込めていくんですが、その様子が切なくて、どうしようもなくやりきれなくて、喉がギュッとなりました…。 構成も素晴らしくて、何気ない描写に、視線の愛を感じました。 見るということ、見られるということ。 あったはずのものを失うということ。 視力を失うことは一人から世界に対して能動的に見ることができなくなるけど、透明人間になるということは一人が世界から受動的に見られることができなくなる。 受動的なのに、できなくなることって世の中になかなかないんじゃないでしょうか。 「認識できなくなる」という、このフィクションが到達できた哀しみが、手に取るようにありありと伝わってきて、二人と一緒に泣いてしまいました。 抱き締めたい。 本当に素晴らしい読切でした。 11月25日、『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』として発売されるそうで楽しみです。 他の短編も好きなので絶対に買います。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/08/02
期待しかないジャンプ+での新連載!
アフタヌーンやコミックビームに載っていそうな渋さと本格派! https://shonenjumpplus.com/episode/3270375685380251472 1話の時点ですでに面白い予感ビンビンする!! 宇宙を漂う古い廃旅客船を探索する者が発見したのは当時乗り込んでいたと思われる人物の最後の手記だった。 手記によると、修学旅行の移動のために格安の宇宙旅客船に乗っていた子供たちと先生だが、突如事故に遭ってしまう。船の大半が壊滅状態にあり、隔壁に閉じ込められた彼らを待つのは、約50時間後に酸素切れで死ぬか救助を待つのか、もしくは…。 未来の宇宙の描写をザラついた絵で描くの好きすぎます! 子どもたち×極限状態でのSFサバイバルというと、『漂流教室』を思い出させるアツさがありますね! 『虎鶫』と同じくフランスで先行ヒットしてジャンプ+に持ってこられた作品なので、すでに面白さは織り込み済みだし、原稿は先まであるから安心して読めます! しかしこの絵の上手さ、画面の密度は半端ないですね…。 ジャンプ+火曜更新には『ダンダダン』もあるので画力がすごい曜日に…。 AIによる自律行動を行うような多脚ロボットもいい具合ですね。 宇宙、さらに事故った船の酸素が限られた隔離された空間。 その中でサバイバル展開になっていくのは必至で、1話目で早くも犠牲者が出たあたり、テンション上がりました。 優等生なイチノセとどこか冷めたニカイドウは一体どうなってしまうのか。 いじめっ子、いじめられっ子などすでに見えている関係性もありますが、様々な少年少女がいそうなので楽しみです。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/07/10
愛猫の死に向き合う素晴らしい読切
他人の価値観や死に向き合う非常に良い読切でした。 ある朝、拾って11年ものあいだ生活を共にした愛猫・シビが死んだ。 タカオはパートへ、マキは仕事を休んでシビのことはやっとくと言うので任せることに。 傷心のまま働き帰ってみるとシビは冷凍庫で冷たく凍っていて、剝製にするとマキは言い出す。 シビを埋葬しようと考えるタカオと剝製にしたいマキの気持ちはすれ違い…。 https://comic-days.com/episode/3270296674423092399 心を揺さぶられたし、単純に話運びも面白かったし、同時に考えさせられた。 いかにも一般常識側の「普通」っぽく振舞うタカオだが、他人からしたら異常性を感じる部分もあって自らを省みることになる。 「共感できないからって人の気持ちを否定していいわけないですよね」 他人に気持ちを否定されたことで、初めて自分も色眼鏡でマキを見てしまっていたことに気づくシーンがよかった。 二人は互いの気持ちの開示とコミュニケーションが足りていなかったのだ。 これを機会に二人の関係ももう一歩進んだようで読んでいて嬉しかった。 死の受け入れ方は人それぞれだ。 「シビ」って、フランスで猫によくつけられる名前だっけと思って調べたらそっちは「シピ(Chipie)」だった。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/07/01
ネタバレ
関東大震災、何が起きたか何が行われたか
小さい男の子が、頭が提灯のおじいちゃんに絵本の読み聞かせをお願いすると、目がかすんで読めない代わりに自身が知る少し前の話を話し始める。 そこで語られるのは、1923年(大正12年)9月、関東大震災が起こった直後の東京での出来事。 一人で暮らす父を訪ね、少年がしゃべる提灯を片手に東京を歩いていると凄惨な光景が目の前で繰り広げられる。 そして震災後の混乱の中で「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマから始まり、朝鮮人の虐殺に発展していく。 この光景を記憶に焼き付けた「提灯お化け」は少年に語る。 決してこの灯を消してはいけないと。 https://twitter.com/sakumo_info/status/1542672690523213824 文献3冊からの引用、そして参考文献が6冊。 中盤以降の画面を覆いつくすような凄惨な情報量に目を覆いたくなった。 ここで目を背けてはならない。 まずは知ること、そしてどう思うか、思考停止してはならない。 いつもどこかユーモアが感じられた作風だったが、テーマがテーマなだけに今回は感じられなかった。 読後、衝撃でしばらくぼんやりしてしまった。 よりよく生きるために、気を付けなければいけない。 いままでの妖怪読切シリーズがまとまった8月の短編集『ようきなやつら』の発売が楽しみだ。 https://twitter.com/sakumo_info/status/1529670580311846913
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/06/29
「ハーフ」への無理解の壁とアイデンティティ
たくさんの方に読んでほしい素晴らしい連載が始まりましたね! この日本で、国籍や人種が違う両親を持ち、いわゆる「ハーフ」として生きる女性を切実に描いた作品。 主人公は、母が日本人、父がフランス人(黒人)のハーフ(ミックス)の女性。 生まれも育ちも日本なのに、見た目はほとんど黒人なのでどこへ行っても「ガイジン」として扱われ、その度に心をエグられ、笑顔を顔に貼り付けて説明して笑って流すことで自分を守った。 おそらく、この感覚は当事者にならないとずっと分からない感覚だとは思う。 それでも、完全には分からなくとも、時間がかかったとしても知っていきたい。 具体的な数字を知っているわけではないけど、特定の職業や環境でもなければ日本は日常的に様々な見た目の人種と関わる機会は体感的に少ないように思う。 そして、人は見た目での印象が強いものなので、日常的に「ハーフ」と関わる機会がなければ一目見て「外国人」だと疑わないのかもしれない。 そういった無理解の大きな溝に、彼女らがいかに苦しめられ生きづらさを感じてきたのかが描かれた1話だった。 実際の感覚は分かりようがないにも関わらず、自分ごとのように感じて泣いてしまった。 ここから書くことは、この話で描かれてるものと同じものでは決してないんだけど、同様に「孤独」や「アイデンティティ」の揺れを感じた話です。 自分自身、日本人ではあるけど帰国子女で海外に10年ほどいた経験があって、日本で見た目も言葉も通じるけど「育ち」や「社会常識」が若干違うところで育っていたこともあって、会話で感じる違和感や感覚の違いで強烈に孤独を感じることがある。 先日、初対面の方と話す機会があって、簡単な世間話ではあったけど感覚的に分からない部分があって、少し掘り下げつつ話の前提を共有して詳しく話していた。 そこで、その人は「なんかあれですね、そこまで詳しく話さなきゃいけないことですか?なんとなくでよくないですか?」といったことを言っていた。 悪気なく発した言葉なんだろうけど、この人はずっと深く理解し合わなくても問題なく「普通」に暮らせたんだろうなと思って、そうではない自分に悲しくなった。 と、全く本編と関係ない体験が頭によぎってしまうほどにこの話は切実で響いた。 これから連載を追うのが楽しみで仕方がない。 http://to-ti.in/story/hanbun_kyodai01
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/04/25
冷静な主人公が濃厚な設定で術バトル!
まずシンプルな感想ですが、面白かったです!! 術者や妖魔、穢れというものが存在する80年代な日本っぽいところが舞台。 帝都大学防災研究所特異災害研究室技術職員の國我政宗のもとへある日、来訪者があり、とある大事件の助力を秘密裏に求めてきたが…。 https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496885813673 シンプルな感想とは裏腹に、重厚で詰まった世界観や設定で魅せてくれました。 正直こういうタイプの漫画が好きな人は、何か画面内でことが起きていなくても会話の内容でワクワクするはず。 読切でしたが、「この設定でこの先もっと読ませてくれよ!」と思ってしまいます。 才能や家系、力を持つ者はその力を行使しなければいけないような種類の哲学が受け付けず実家から離れる系主人公で冷めてる感じめちゃくちゃ好きです。 そして嫌々ながらも仕方なく力を貸す幼馴染みたいな腐れ縁的な存在。 ド派手な見開きもあるし、満足感高いです。 あえて言えば、読切のサイズ感じゃないかな、というところでしょうか。 料理番組でいうところの、冒頭で揃えた材料で料理作って番組終わるけど、材料余りまくってる感じ。 なんとなく、良い意味で『亜人』に影響受けてるのかな?と思いました。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/03/02
こんな大学生活がよかった
大学の写真部の男女4人のちょっぴりエッチなハプニングもあるわちゃわちゃコメディ! おそらく、あの作家さんの別名義だろうな、という絵柄。 もしくはすっごく似てるだけなのかもしれません。 写真部とはいえ、アニメ見たりゲームしたり、わりと総合的なオタクがいる大学写真部。 いまの大学生がどうかは分からないけど、なんとなく少し前の大学生にも感じました。 でも大学生のこの感じって普遍的なもののように感じますし、もちろん現実には存在しないイデアとしての大学生像いう感じもします。 メガネの部長の頼れる感じとか、後輩らしい後輩の谷口くん、ちょっと真面目な福岡なつみさん、いろいろ緩い四条さん。 すごくいいバランス! https://comic.pixiv.net/works/7100 でも自分が考えているあの作家だとしたらこの日常から、ガラッと現実が壊れだしてSFに傾くんじゃないかと不安になってしまいます。 が、どうやら安心して読んでもよさそうです。 もともと会話劇が上手い方なので楽しく読めそうです。 『げんしけん』の初期や、『惰性67パーセント』、『ぐらんぶる』あたりが好きな人は好きなんじゃないかと思うのでオススメしたいです。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/02/02
パン生命体が家政婦に来るシュールで心温まる物語
これまでも、そしてこれからもきっとパンの漫画だけを描きつづけるであろうコモンオム先生の新連載。 三男で中学生の山田コウメ(13)、次男で高校生のタケオミ(17)、長男で営業職のショウイチ(24)の父子家庭の三兄弟はある日、父をガンで亡くしてしまう。 亡くなってから三ヶ月後、生前の父に住み込みの家政婦を頼まれたという「パン生命体」が家を訪れる。 食物の研究者であった父に作られたというが…。 https://comic-days.com/episode/3269754496663050741 父が亡くなってからというもの、少しずつ破綻していっていた三兄弟の生活にパン家政婦が加わり、くさくさした心が優しくほどかれていく。 めちゃくちゃにシュールでありながら、正統派の人間ドラマを描いてるのでいい話なのにちょっとニヤニヤしちゃう! だってこいつパンなんだよな、って…。 元からいなかったという母さんの存在も気になるので、もしや?と思わせる伏線かもしれませんね。 読切の『有頭パン』もぜひ。 https://comic-zenon.com/episode/13933686331617857890 ここまで読んでハマった方は、すべてパンの漫画で構成されている狂気の漫画『あるはずさ、胸の奥に、心のパンが。』も必見です。 https://manba.co.jp/boards/121350
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/01/17
自分の身体と呪縛と
自分が妊娠したことを知り、ふと自分の身体が自分ひとりだけのものであったことは一度でもあったのかと、心の中で思う。 雪が続き、電車も止まってどこかで夜を明かすことに。 そんな夜に出会ったのは、髪や服、アクセサリーなどをかっこよく着こなす女性で…。 http://to-ti.in/story/yukiwoidaku 読切『うみべのストーブ』を描かれていた大白小蟹さんの新作読切。 初対面の女性二人が語り、自分の身体へ思考を巡らせ、呪縛をほどいていく。 とってもいい読切でした。 いつだって社会の中で生きていくには人は関係性の中にあり、自分自身も自分の身体も自分ひとりだけのものだったことなんてあるのか、と問われたら分からないなと思ってしまう。 特に肉体的に妊娠・出産をする上で、女性の方が強く感じている感覚かもしれない。 それがたとえ「ひとりの身体じゃないんだから」と自分を労わるような言葉だとしても、言葉の奥に、誰かに所属している自分を感じてしまう。 女性だけの問題じゃない。 上流家庭に生まれ家を存続させることを強要される人、家業を継ぐことを望まれている人、本人の意思とは別に才能に期待され業界を背負わされる人など、挙げ始めたらきりがない。 これは一種の呪縛だ。 いつしか忍び寄り、気づいてしまうと静かに重く縛り付けてられている。 水を吸った綿のように重くなった意識を、銭湯という一糸纏わぬ解放区で脱がせてくれた彼女の言葉は偉大だ。 「街を歩くときはいつも 降ってくるミサイルを避けているみたいだった」と語る表現に痺れた。 いい読切でした。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2022/01/07
新年初笑い読切!
兵士二人が巡回中に森で迷いドラゴンに襲われるのだが、ドラゴンをよそに口喧嘩が始まってしまい…。 https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496670999033 もう導入から引き込まれたんですけど、もうほとんどコントか漫才のようで面白いです! 年始にいい読切を読めて嬉しいです! 『Levius/est』の中田春彌先生ということで、やはり絵の上手さが際立っていて、そのシリアスな絵が良い振りになることでよりコメディパートが光っています。 本当にいい設定というか関係性というか、みんなのためによかれと思ってやっていることこそがむしろ劣等感を煽っていて、いいヤツだからこそ背負っていて、それも分かってはいるから周囲もあまり言えなくて…と、どうしようもなさに挟まれてる自意識って状況がもうとてもコメディなので大好きです。 後半の展開も熱いですね! この口喧嘩ってもっと現実的な状況でもできるとは思うんです。 でもそれをファンタジーの現場でやるっていうのが大事で、この画力を活かすという点もありますが、「ファンタジーなのに」この重箱の隅をつつくような細かさ、普遍的で共感できる悩み、その人間臭さというところがまたポイントになってて笑いを増幅させていますね。 素晴らしい読切でした。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2021/12/24
ネタバレ
これはいい読切漫画だ…!
大学生の佐治は講義室でぶつかったかわいい女子の山野さんと知り合い、漫研で漫画を描き、部員に映画に誘われ観に行く。そんな日常を過ごしていたが、ふと日常の隙間に違和感を覚えることが増えていき、山野さんと出会うたびに混乱は加速していく…。 「チェンジマーク」とは、映画などでフィルムを切り替えるために約15分ごとに画面端に出る黒い点のこと。 いまはフィルム上映が減っているため、見る機会も減っていると思いますが、名画座などフィルム映画をかける映画館へ行けば見られるかと思います。 それにしても素晴らしい読切漫画体験でした。 日常の延長に潜む非日常が、この緻密な絵によって違和感が際立ちより深く楽しめました。 この時代に生きていたわけではないので分かりませんが、その時代に流れる空気まで描かれていたように感じます。 映画と今回のテーマを絡めたような作品というのは案外あると思うんですが、もう少しメタ的な話やファンタジー的な話やコメディになっている印象がある中で、ここまで地に足つけて真正面からカオスにしつつシリアスに成立させていることにとても力を感じました。 これから追っていきたい作家さんの一人になりました。 次回作も楽しみです! これはどちらにとっても完全なネタバレなのでタイトルもふんわりさせますが、作者からは怒られたあの80年代のアニメ映画を彷彿させる話で、めちゃくちゃテンション上がりました!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2021/12/22
ネタバレ
思わぬところから始まる女子の友情
主人公の好きな絵師の絵をツイッターに無断転載しているアカウントを発見したが、そのアカウントぼ写真に写り込んだものが自分と同じクラスの葉山だと分かるものだった。なぜそんなことをしているのか、どういう人物なのか観察しながら追っていくと少しずつ彼女のことが分かってきて…。 一軍のような集団の中で微妙に取り残されている子が葉山さんで、彼女らから「あの子ってちょっとズレてるよね」、といった悪口を盗み聞いてしまう主人公と葉山さん。 主人公もそもそも人とあまりうまくいかないタイプで漫画部でもいつも一人。 そんなある日、葉山が主人公がいる漫画部に忍び込んで主人公の描いた漫画を読んで続きはないの?というところから二人の話は始まる。 葉山が小さいころは絵を描くのが好きだったが、親や中学のやつらに下手だと言われた話をすると主人公が 「ふーん つまんないこと言うやつもいんだね。」「これから上手くなんのにね!」 とあっさり言ってのける。 これがとてもよかった。 いい見開きだった。 誰しも最初は素人だし、なにをやるにも下手なのは当たり前だ。 人の芽を摘むようなものいいは周囲にはやめてほしいが、何も持たない人はおいていかれるような気がしたり自分より秀でたりしているものを見るとケチをつけたくなるものだ。 いい友情が始まったなと思える読み切りが好きなのでとても好きだった。 他人に何を言われようが自分の未来を創るのは自分だ。 それを忘れないでおきたい。