自分が妊娠したことを知り、ふと自分の身体が自分ひとりだけのものであったことは一度でもあったのかと、心の中で思う。
雪が続き、電車も止まってどこかで夜を明かすことに。
そんな夜に出会ったのは、髪や服、アクセサリーなどをかっこよく着こなす女性で…。
うみべのストーブ 大白小蟹短編集 【雪を抱く】新鋭が描く短編集。いつかの冬の物語。
読切『うみべのストーブ』を描かれていた大白小蟹さんの新作読切。
初対面の女性二人が語り、自分の身体へ思考を巡らせ、呪縛をほどいていく。
とってもいい読切でした。
いつだって社会の中で生きていくには人は関係性の中にあり、自分自身も自分の身体も自分ひとりだけのものだったことなんてあるのか、と問われたら分からないなと思ってしまう。
特に肉体的に妊娠・出産をする上で、女性の方が強く感じている感覚かもしれない。
それがたとえ「ひとりの身体じゃないんだから」と自分を労わるような言葉だとしても、言葉の奥に、誰かに所属している自分を感じてしまう。
女性だけの問題じゃない。
上流家庭に生まれ家を存続させることを強要される人、家業を継ぐことを望まれている人、本人の意思とは別に才能に期待され業界を背負わされる人など、挙げ始めたらきりがない。
これは一種の呪縛だ。
いつしか忍び寄り、気づいてしまうと静かに重く縛り付けてられている。
水を吸った綿のように重くなった意識を、銭湯という一糸纏わぬ解放区で脱がせてくれた彼女の言葉は偉大だ。
「街を歩くときはいつも 降ってくるミサイルを避けているみたいだった」と語る表現に痺れた。
いい読切でした。
わたしの身体が わたしひとりだけのものだったことなど 一度でもあっただろうか 今改めてわたしを見つめる読切36P