「ダンゲロス」シリーズには「戦闘破壊学園ダンゲロス」「飛行迷宮学園ダンゲロス」「ダンゲロス1969」があり,もともとは架神恭介先生による小説です(その小説のもとになったTRPGっぽいものもあるらしいのですがよくわからないので説明省略)。
基本的には超人たちの能力バトルなのですが(なお能力者は「魔人」と呼ばれます。),能力は本当に異常なものばかり。
たとえば漫画版「戦闘破壊学園」1話に登場する女の子の能力名は「災玉」。男にのみ感染するウィルスを作り出す能力で,感染した男はありとあらゆる性病を発症したうえに精液を吐き散らしながら金玉が爆散して絶命するという,狂気に満ちた能力です。
そんな「戦闘破壊学園ダンゲロス」を漫画化したのは,今となってはジャンプ作家の横田卓馬先生。
シンプルながらも魅力的な絵柄と,原作をうまく整理したストーリー,そして何より,迫力ある演出が加えられたことで,最高の作品になりました。

さて,ここで紹介するのが,シリーズ第3弾「ダンゲロス1969」。
舞台は,1968年~1969年。過激化する学生運動の中で,「魔人」学生と,「魔人」警察/公安が入り乱れ,抗争を繰り広げるというストーリーです。
それまでのシリーズと比べてもさらにバカかつ下品になった「魔人」能力のため,これはもう絶対漫画化不可能だろうと思われた作品です。
特に警察側がヤバくて,常に下半身丸出しで精液で敵の動きを封ずる奴とか,常にうんこを食べている奴とか,オナホール刑事とか,触手生物(名前は「姦崎姦〔かんざきれいぷ〕)とか,異常な奴しかいませんでした。
そもそも「戦闘破壊学園」と「飛行迷宮学園」の原作小説は講談社から出版されてるのに,この作品だけ,作者の自費出版です(キンドル版のみ)。

ところが!この作品も商業作品として漫画化されました。
漫画化したのは,「戦闘破壊学園」と同じく横田先生。
横田先生は,「戦闘破壊学園」同様,原作の魅力を充分に引き出しつつ,一方で,その絵柄によって,癖のありすぎる「魔人」能力を,ちょっとマイルドな印象に仕上げることで,ぎりぎり商業出版に耐えられるようにしてくれました(画像参照)。
なお,小説版の表紙は武富健治先生が書いてます。武富先生が漫画版を描いた場合は,商業出版の範疇を超えた可能性がありそうです。

ヤバすぎる能力を持った魔人たちが次々あらわれ,学生と警察/公安の戦いは過激化していき,物語はどんどん盛り上がっていったのですが,しかしやはり,読者を選ぶ作品ではありました。
何しろ1巻ラストのヒキが,精液で敵の動きを封ずる「魔人」公安vs女子小学生のおしっこを操る能力を持った「魔人」学生の戦いが始まる!というものでしたから。
安田講堂決戦開始の直前で,漫画版の連載は終了してしまいました(打ち切り)。
コミックは全5巻。原作のうち三分の二強までが消化されました。
ある意味で一番盛り上がる聖百合超特急(リリアンエクスプレス)は描かれたものの,まさにこれから最終決戦!というところでの連載終了でした。
「革命の構造」の秘密は明らかにされておらず,「転校生」も戦いの舞台にはあらわれていません。
無念…実に無念です。

とはいえ,横田先生のツイッターをみると,いつか続きを描きたいとのことです。


いつか,どこかで,この作品の続きを読める日を待ち続けたいです。

「ダンゲロス」シリーズには「戦闘破壊学園ダンゲロス」「飛行迷宮学園ダンゲロス」「ダンゲロス19...
読みたい
「ダンゲロス」シリーズ第3弾。バカと下品のオンパレード!にコメントする
人形紳士 少女探偵・火脚葉月 最後の事件
根本尚先生の話
人形紳士 少女探偵・火脚葉月 最後の事件
toyoneko
toyoneko
根本尚先生は、秋田書店系の雑誌にギャグマンガを執筆している漫画家です。 週刊少年チャンピオンを長年読んでいた方でしたら、「現代怪奇絵巻」は印象に残っていることと思います。 なお現代怪奇絵巻は単行本化未了でしたが(厳密には、一部の話のみ、シーモア限定で読めます。ただし携帯電話用のものなので、パソコンからは読めない。)、連載終了後の書下ろし部分は、最近kindleにまとまりました。 https://manba.co.jp/boards/196294 長らく不遇の時代が続いていたのですが、趣味で描いてコミティアで売っていた本格ミステリの「怪奇探偵・写楽炎」シリーズが、ミステリマニアとミステリ作家にウケて、非常に高く評価されたことから(具体的には、芦辺拓・有栖川有栖・二階堂黎人)、文春デジタル漫画館のラインナップに加わることとなりました。 https://manba.co.jp/boards/102998 …が、私が語りたいのは、「それ以外の作品」の話です。 まず私が好きなのは、「札幌の六畳一間」シリーズ。 https://manba.co.jp/boards/177553 エッセイ漫画です。具体的には、貧乏漫画家である主人公(根本先生)が苦労する様を赤裸々に描くコメディエッセイです。 皆さん好きでしょう、漫画家が貧乏生活を送るエッセイ! 「札幌の六畳一間」「続・札幌の六畳一間」「札幌の六畳一間 無料編」などがありますが、アンリミ又は無料で全部読めます。 ここから派生して、「競売物語」もあります。これはツイッターでそこそこバズってました。 https://note.com/nemotosho/n/nd6099a76df12 根本先生のエッセイ漫画は非常に面白く、「90年代ミステリ漫画講座」も良くできています。私はこれを読んで「監察医SAYOKO」を買いました(でもまだ読んでない。)。 https://note.com/nemotosho/n/n576e649d2598 https://note.com/nemotosho/n/nd98daacdbcd6 次に、「タイムスリップ・コレクター」。 https://manba.co.jp/boards/196295 初出はコミティアらしいのですが、最近電子化されて普通に読めるようになりました(これもアンリミで読めます。)。 根本先生は古書が趣味らしいのですが、「過去にタイムスリップして、現在ではプレミアがついている本を入手できたら…」という着想から生まれたと思われる作品です。 アイデアそのものはそれほど革新的というわけではないのですが、「実際にそうなった場合に直面するであろう苦労」が様々に描かれていて、楽しい作品です。 そして最後に、今回何より紹介したかったのが、「人形紳士」です! https://manba.co.jp/boards/196296 もともとは、今年の3月ころ、根本先生が272頁を一気に書き下ろして(ただしサインペン一発書きでネーム状態)、noteに発表した作品なのですが、私は存在自体を知りませんでした。 知るきっかけとなったのは、以下のツイートです。 https://twitter.com/mysteryEQ/status/1725849354626613601 ミステリ好きが選ぶ年間ランキングで、この作品が1位(ただし非小説作品内での1位)に選ばれた、という内容です。 へーそうなんだあ、しかも無料なんだ読んでみるか、と手を出してみたのですが…いやあ… 傑作でしたよ!! 根本先生の「怪奇探偵・写楽炎」シリーズはですね、マジで「本格」なんですよね。 つまり、トリック重視で、ある意味で、ドラマ部分はそれほど重視されない。まぁ変な犯人はいますが、主人公側のキャラクターは弱い。 これに対して、「人形紳士」は、トリックも良いのですが、それよりもとにかくドラマ部分、特に、主人公たちの関係性が良いんですよ。まさかの青春ミステリ!エモい! 根本先生がこういう作品を描けるというのは本当に新鮮な喜びなんですが、贔屓目なしでも名作であり、是非もっとたくさんの人に読まれてほしい作品です。 noteでも、kindleでも無料で読めますので、皆さんガンガン読んでください! なお、発表当時のツイッターでの反応が以下にまとまっています。 https://togetter.com/li/2099294 ぜひまたこういう方向性の作品を発表してほしい(なおそのときには普通にお金を払わせてほしい。)。 なお、サインペン一発書きで、ちょっと読みづらいところもありますので、ぜひ別の人の作画で読んでみたい作品でもあります。 どこかの編集部の方、よろしくお願いします!
砂漠の野球部
最高の魔球漫画
砂漠の野球部
toyoneko
toyoneko
「砂漠の野球部」は、コージィ城倉先生が、週刊少年サンデーで連載していた野球漫画です 超強豪校の落ちこぼれ野球部員たちが、鳥取の高校に転校して甲子園出場を目指す、というのがストーリーの骨格で(日本でもっとも地区予選出場校が少ないのが鳥取だそうです)、初期はわりとコメディ&お色気色が強い漫画でした(1巻の表紙参照) ある意味サンデーらしい漫画ですね しかしストーリーが進むに連れシリアス度が増し、ド根性熱血野球漫画になっていきます そのうえで、このマンガ一番の見どころは、やはり恐るべき魔球「サイレントカーブ」でしょう!(コミック8巻~) 魔球には、謎と、(屁)理屈が必要で、それが魔球の魅力を基礎づけます この点、「サイレントカーブ」は、一見地味なのに、実は恐るべき謎が隠されていて、しかもそれを裏付ける理屈が、なんというかサイコーに無茶で、それでいながらカッコよいのです。私は大好きです さらに、物語最終盤には、サイレントカーブとは異なる、最終最後の大魔球が登場します 「サイレントカーブ」と、最後の魔球! この二つの魔球が存在することで、「砂漠の野球部」は、(私の中で)最高の「魔球漫画」となったのでした 癖のある野球漫画が好きな方、昔のコージィ(又は森高夕次)の漫画が読みたい方にオススメです
ヴィンランド・サガ
贖罪の物語
ヴィンランド・サガ
toyoneko
toyoneko
ヴィンランド・サガは、ずーっと昔に最初のあたりを読んだきりだったんですが、機会があったので最新刊(26巻)まで一気読みしました いい作品でした…。本当に真摯な作品です 描かれているのは、主人公トルフィンの成長と、そして贖罪の姿 父の仇への仇討ちのためとはいえ、罪なき人々を殺し続けたトルフィンが、平和な国の建国を目指す物語です 本来であれば、多数を殺した人間は、死をもって償うしかありません しかし、逆にいえば、死をもって償えば、それで終わりです 本作は、トルフィンに対し、そんな安易な贖罪は許さず、もっとも困難な償いの道を選択させます これは、トルフィンにとっても困難な道ですが、作者自身にとっても本当に困難な道のはずです それなのに、作者の幸村誠先生は、その困難な道を、説得力をもって描き続けている それがひとつ結実するのが、26巻の最後に収録されている話で(191話「その日」)、いやぁもうたまらないですねコレ 敵を殺すという選択肢を排し、可能な限り敵対以外の選択肢を選び取って困難を乗り越えていくトルフィンは、本当に立派で、応援したくなります もちろん、物語は終わっておらず、贖罪も終わってはいませんし、トルフィンの贖罪は、どこかで終わりが来るという性質のものでもありません また、なんだかんだ描きましたが、結局、最終的にはトルフィンの死をもって全てを清算することになるのかもしれません しかし、だからといって、トルフィンのしてきたことが無駄というわけではありません 贖罪の本質というのは、結果ではなく、そこを目指す道筋そのものです トルフィンの生き方は、周囲の人々の生き方にも大きな影響を与えていますし、メタ的には、読者の生き方にすら、影響を与えているのかもしれません 本当に、素晴らしい作品です
うつ病になってマンガが描けなくなりました
これはひょっとして相原先生の最高傑作なのでは…?#1巻応援
うつ病になってマンガが描けなくなりました
toyoneko
toyoneko
「かってにシロクマ」「コージ苑」「サルまん」「真・異種格闘大戦」「ムジナ」などの名作・怪作を作り続けてきた相原コージ先生による実録エッセイ漫画です。 タイトルのとおり、自身がうつ病にかかった様子を描きます。 アイデアが出なくなり、マンガが描けなくなったので、あったことをそのままマンガに描いている…らしいのですが、その結果生まれた本作は、相原先生の最高傑作になりそうな予感のする作品です。 これまでの相原先生の作品は、良くも悪くもクセが強くて、フィクション感も強いものでした。 しかし本作は違います。 ものすごく、リアルなのです。 何しろ事実をそのまま描いてるのだから。 しかも相原先生は、うつ病のときの思考や感情を、おそらく本当にそのまま描いているようで、読者はそれをそのまま追体験できてしまいます。その破壊力たるや。 また、これは、キャリアの長い現役漫画家である相原先生だからこそ生み出せた作品でもあります。 うつ病を扱ったエッセイ漫画作品は数多く存在します。 しかし本作は、その中でも、漫画としての完成度が圧倒的に高い。ストーリーがあって、起伏があって、感情がこもっている。 こういう表現が適切かはわかりませんが、「面白い」のです! 実験漫画ばかり描いているイメージの強い相原先生ですが、こんなにも漫画力が高かったのかと、改めて実感させられます。 オマケにクセが弱くて読みやすい! これも、これまでの相原作品とは異なる点です。 つまり本作は、相原先生の漫画力が存分に発揮されながらも、読みやすくリアルなうつ病エッセイ漫画でして、これは…きっかけがあれば大いに売れますよ! 未読の方はとりあえず無料公開分だけでも読んでみることをオススメします。 https://comic-action.com/episode/3269632237294896715 #マンバ読書会
ストアに行く
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
この作品のお気に入り度は?
星をタップしてお気に入り度を入力しましょう
メモ(非公開)
以下のボタンから感想を入力することができます(別ウィンドウが開きます)
感想を投稿
完了する
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい