部長オブザデッドが最高だったのでこっちも読んでみたら最高でした。最高のクソ川柳漫画。
ごく普通の女子高生・ナナがクソ川柳を読んだら、100年前に死んだ川柳バトラー・センリが呼び出されてしまった!
ナナも強制的に川柳バトラーにさせられ、激しい川柳バトルの渦に巻き込まれていく……というお話。
ナナの読んだクソ川柳がクソすぎて絶対笑っちゃう。クオリティがクソなのではなくて(クソだけど)ちゃんと排泄物としてのクソです。でんぢゃらすじーさんの笑いを女子高生がやることで素敵なシナジーが生まれてます。
うんこ以外の部分でも笑わせてくれるのに、決めるとこはちゃんと決めてくる(うんこで)感じ最高です。
でもオチは綺麗なところも最高です。川柳と言えばこの人だもんね。
この作者はいわゆる天才なんだと思う。
いつも年末にその年一番良かった、好きだった漫画は何かを考える。
でも結局いつもよく分からなくなりそこから数か月経って、これかもしれないなーというのがふわっと浮かび上がってくる。
それが2017年は『青野くんに触りたいから死にたい』だった。
天然で思い込みが激しいタイプの女の子・優里に青野くんという初めての彼氏が出来るが二週間後に事故で亡くしてしまう。
優里は絶望し死のうとすると、幽霊になった青野くんが現れ…。
という始まり方で、これは一風変わったラブストーリーなのかと思った。
ところが読んでみると、とんでもない、そんなところじゃ収まっていなかった。
女の子の方のタガが外れているので何をしでかすか分からないドキドキ感と、青野くん本人も自覚していない隠された秘密が少しずつ露呈していく描き方がたまらなくゾッとする。
ピンク色イチャイチャからのゾッ、これがたまらない。
黄金比だ。
そして、異常事態を許容してしまうタガが外れた女の子優里ちゃん。
ここには人間の怖ささえある。
この漫画には、論理で捉えられない人たちの逸脱した思考・行動の怖さのようなものがずっと漂っていて、頭で理解できない本能的な部分にこそ恐怖を訴えかけてくるのだ。
なんかよく分からないけど怖いってやつ。
でもこれはホラー漫画では決してない。
1人の女子高生の繊細な恋心と仲間たちの感情の機微、つまりは青春を描いた漫画なのだ。
大好きだ。
この漫画が好きな人には是非、映画『イット・フォローズ』も観てほしいし、『イット・フォローズ』が好きな人にはこの漫画を読んでほしい。
追記 2020.07.04
話が続いていくほどに怖くなるこの漫画がなんでこんなに怖いんだろうと考えるんだけど、恐怖の根源ってそもそも理解が及ばないものということに気づいた。
昔から人間は理解できない自然現象や見えないけど確実に存在するもの、光や闇などを神とか悪魔とかの所業として畏敬や恐怖を感じていたから、それに近い気がする。
そこに厳然たる理論が横たわっているはずなのに、自分の理解ではどうにも分解できなくて考えが追いつかない感覚。
僕たちには理不尽にすら感じる霊との関わりの中で、ミオちゃんらの協力で少しずつ法則性が見えてきて恐怖が緩和されてきたようにも感じる。
恐怖に対抗する武器は理解なのかも。
自分自身の読解力のせいかもしれないけど、物語から作者さんの意図を読みきれないのが素晴らしくて、対談相手に『青野くん〜』は切り分けられずに様々な感情が付随して描かれていると言われたのに対して、
「私は、境界線を引きたくないんです。明確に境界線を引くって、何かを切り落とすってことだと思うから。そうすると、解像度が下がるので。」
と言っていて、すごく腑に落ちた。
漫画って線画のように、いかに現実の場面から情報量を減らして伝えたいものを画面に落とし込んで伝えられるかっていうメディアだと思ってたんだけど、それは線画の話であって、感情の話ではない。
一般的にデフォルメされた絵柄の漫画で語られる内容は絵柄に比例してシンプルなものが多いので、思えば『青野くん〜』の絵柄もそういう前提で読んでしまってこの感情の解像度の高さとのギャップに面食らってしまったのかもしれない。
当時テレビ放送時に『魔法少女まどか☆マギカ』にも驚いた記憶がある。
作者が感情ではなく理の人だと分かって、それ故に客観視されたような感情の言語化が果たされているのかと。
『青野くん〜』が三幕構成の話で、「キスを返して」までが一幕、『四つ首様編』までが二幕。
二人と仲間たち、どういう結末に向かっていくのか楽しみで仕方がない。
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