舞台は明治10年の北海道日高地方で、牧場開拓とエゾオオカミの絶滅を描いた物語である。
主人公は、未来少年コナンでもアイヌ人でもなく、北海道に入植してきた本州の子供だ。
薩摩郷士の息子なので、クマに立ち向かえるくらい肝が据わっており、エゾオオカミの一家と少しずつ交流を深めていく。
オオカミ同士がヒトの言葉でしゃべるのはご愛嬌。

もう一人の登場人物として、アメリカから呼び寄せたエドウィン・ダンという牧場技術者がいるが、この人は北海道の畜産業の発展に大きく貢献した歴史上の人物である。
アメリカから日本へ綿羊を輸送する際に、羊と寝食を共にして大事に世話し、一匹も亡くさずに運び込んだ(それどころか途中で生まれた子羊の数で増えた)というエピソードは、エドウィン・ダンが心から動物を大切に愛している人物である証拠だ。

そんな人がなぜ冷酷にもエゾオオカミを絶滅させるまでに至るのか。
そこが物語のテーマとなっている。

現代人から見るとオオカミやシカを次々と絶滅させた歴史は非常に野蛮だと思えてしまうが、この作品では人間=悪という単純な捉え方をしていないところが素晴らしい。
近代化の歴史を前に、誇り高く生きようとしても、絶滅を避けられない無力さがあったのだと思う。

良い漫画だった。

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特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」

「ヒロシマのおばちゃん」を読みたくて購入

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ひさぴよ
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https://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b110795.html 『漫画が語る戦争 焦土の鎮魂歌』(小学館クリエイティブ)で読んだ曽根富美子の短編「ヒロシマのおばちゃん」が衝撃的だったので、もう一度読みたいと思って電子書籍版を探してたら、この短編集に収録されていた。 「ヒロシマのおばちゃん」以外の短編は、戦争の話というよりちょっと昼ドラっぽい話が多いものの、それでも表題作を読むためだけに買っても損はないと思う。 作品の詳しい時期は分かってないのだが、状況からして1990年代頃の設定と思われる。広島での戦争体験を語り継ぐの”一人のおばちゃん”を通して、戦時中の自身の半生を振り返るところから物語は始まる。巧みな語り口と、曽根先生お得意の、不幸で陰湿な心理描写にグイグイと引き込まれてゆく。そしておばちゃんは不幸のドン底と同時に、原爆の日を迎えるのだが…。 変わり果てた広島の街を、怨念そのものとも言える鬼気迫るタッチで描き出し、一度目にしたら忘れられないような光景がこの漫画にはある。おばちゃんは最後に「あれは地獄だったよ」とだけ語る。と同時に、この出来事が教科書の中のたった数行に収まってほしくない、と願うのだった。 個人的には「はだしのゲン」と同じく、ぜひ読み継がれてほしい戦争漫画の一つだ。

狼の碑 エゾオオカミ絶滅記

おおかみのひ えぞおおかみぜつめつき
最新刊:
1994/01/15
おおかみのひ えぞおおかみぜつめつき
狼の碑 エゾオオカミ絶滅記
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