俺だけレベルアップな件

現在トップクラスの人気を誇る縦スクマンガ

俺だけレベルアップな件 DUBU(REDICE STUDIO) Chugong
兎来栄寿
兎来栄寿

ピッコマで連載されているWEBトゥーンの中でも特に人気を博している作品で、2019年12月には「ピッコマ BEST OF 2019」マンガ部門第1位を受賞しました。 そして、2020年3月には、 何と月間販売金額が9800万円を突破。4月には1億円を超えました。これはマンガ業界全体においてもエポックメイキングな出来事でした。 従来では、マンガは単行本を売ることで儲けるビジネスモデルでした。雑誌はあまり部数が出なくて赤字でも、単行本売上が立てば成り立つので何しろ単行本を売ることが大事で、そこに注力する出版社がほとんどでした。 しかし、この『俺だけレベルアップな件』に関しては、単行本に頼らず配信のみで月間売上1億円を叩き出したのです。これがどれくらい凄いことかというと、500円の単行本を20万部売ると1億円と言えば伝わるでしょうか。月刊作品だと年に2回ほど単行本が出るのが平均的なペースですが、月刊作品換算なら120万部売れているほどの大記録です。 「WEBから大ヒットは生まれない」と言われてきましたが、これはもう本当に時代が変わったと思います。 そこまで人気を博す本作ですが、その内容はタイトルが示す通りRPG的な世界観をベースに、元々は最弱と言われていた主人公が極限状況を生き延びて躍進していく物語となっています。 いわゆる「俺TSUEEE」系作品ではありますが、無条件に強くなる訳ではなく強くなることに逐一理由付けがなされており、納得感は損なわれていません。 また、とにかく展開に澱みがなく、非常にテンポよく物語が進行していくのも気持ちよく読めるポイントです。 何より、スタイリッシュで迫力あるフルカラーの絵柄が物語の没入感を深めています。従来のマンガにあった見開きなどが使えない分、WEBトゥーンならではの演出も効果的に行われています。 普段縦スクロールマンガを読まないという方も、こちらから触れてみてはいかがでしょうか。

ドラハチ

幼馴染と結婚のするため入団1年目MVP&優勝を目指す!

ドラハチ あじな優 夏川勇人
名無し

主人公の八郎がまずおもしれー男。レトロな丸メガネをかけてて朴訥としたヤツなのかと思えば、クールで頭がキレる。そのうえ物凄く大胆。 幼い頃に幼馴染が「結婚するならお父さんみたいなプロ野球選手がいい」と言っていたから、「幼馴染と結婚して爺さん婆さんになるまで一緒にいたいから」という一昔前の少年漫画のような素直さと熱いラブで、「入団1年目MVP&球団の優勝」という常人なら躊躇うような大言壮語を吐く。 けど決して、一昔前の猪突猛進少年漫画主人公みたいなガムシャラなやる気でバリバリしているわけでなく、淡々と覚悟を決めて理性的に取り組んでいるという令和な主人公でおもしれー男。 そしてヒロインもおもしれー女。 「結婚できるほど生涯を暇にする予定はない」と言ってのける、ミスターカーボンズと呼ばれた偉大な野球選手だった父が稼いだ年俸を元手に事業を起こした天才女子高生社長・鈴。 万年最下位に落ちぶれてしまったカーボンズを、父がいた頃のような常勝球団にするため1年後に買収するという。 結婚する気はないものの、幼い頃に言ってしまったということで1年で八郎がMVP達成&優勝を成し遂げれば結婚してもいいと条件を出す。 キャラがいいとやっぱ漫画は面白い。どんな1年になるのか期待。

機動戦士ガンダム Twilight AXIS

女性主人公のガンダム、ありまぁす!

機動戦士ガンダム Twilight AXIS Ark Performance 矢立肇 富野由悠季 矢立肇・富野由悠季 サンライズ 蒔島梓
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』観てますか? 史上初の女性主人公ガンダムとして(もちろん初の百合ガンダムとして)新たな試みである『水星の魔女』ですが(ここまで『ポケットの中の戦争』のクチコミと同じ)、そういえば今までのガンダムに百合はないのか?!せめて女性主人公ものはないのか?!と漫画読みに聞いてみたところ、この『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』を教えてもらいました。 元ジオンのメカニックの女性とテストパイロットの男性のコンビもの。しかしその設定が「ニュータイプ能力をメカに対して使う女性」と「シャア =アズナブル専門のテストパイロット」と言えば、二人のヤバさは十分伝わりますよね? 古巣・アクシズに残されたサイコフレーム資料の回収に同行しつつ、シャアに対して複雑な思いを抱く二人の心残りを探しにゆく物語は、一年戦争からシャアの反乱に至る裏側や、UCからF91の「歴史の空白」を埋める物語にもなります。 自分の思いのために相棒を振り回す主人公と、それを受け止めるMS戦の猛者。親子ほどの年齢差に見える二人の独特な関係もなかなか強い!そこにニュータイプを巡る切ない出自を絡めて、主人公の幸せを祈りたくなる物語でもあります。 モビルスーツ好きにはNT-1アレックスのアフターストーリーとしても要注目。優秀だったのねアレックス……。 (教えてくださったナベテツさん、ありがとうございます!) 追記 毎年ね、元旦に「宇宙世紀0080年1月1日、連邦とジオン公国の間に終戦協定が結ばれた……とのことで、1月1日は(ガノタ的には)一年戦争終戦記念日です」って言いながらガンダム一年戦争関連の漫画のクチコミを書いてるんです。 今年は『水星の魔女』があるから、女性が活躍する作品を二点、書いてみました。もう一点は『機動戦士ガンダム ポケットの中の戦争』です。そちらは初の女性ガンダム乗りの話なのでよければどうぞ!

天

福本先生の魅力と成長が詰まった代表作

天 福本伸行
完兀
完兀

「初期の作品にはその人の要素が全て詰め込まれている」なんて話を聞いたことがある。 反例がいくらでも出てくる主張だが、比較的合致する例だってある。福本先生の場合、この「天」が合致するだろう。 人情話、ピカレスクロマン、極限勝負下の心理描写、緻密な勝負を構成する理による駆け引き、勝負を制する理の守破離、そして福本先生による人生哲学… 面白いと評される福本先生の要素が、ほぼ全て詰め込まれていると思われる。欠けているのは敗者の悲惨な末路描写と格闘描写ぐらいだろうか(ただしバイオレンスシーンなら天にもある)。 成長も詰め込まれている。絵の成長、演出の成長、話の構成の成長も魅力的なキャラ描写の成長も全てある。初期~中期の福本先生と共にあった漫画なんだからそれは当然なわけだが… そういった点で、天を軸に他の同時期作品と並読するのも面白い。 ただし、葬式編からは並読はできない。読んでいて涙がぼろぼろ出てしまうあの最終章に、横槍は禁物だ。       この漫画には、私がどうしても取り上げたくなる一節がある。 あまり顧みられることのない、ともすればあまり触れないでおこうみたいな風潮もみられる最初期赤木の、印象的なセリフだ。 私はそれを、作者による自己言及も含んだ創作論だと勝手に思い込んでいる。 というわけで、独断と偏見に基づいて私的解釈によるセリフ改変を傲慢にも以下に記す。     『お前この世で一番うまいもの何だか知ってるか? たとえば漫画だ…世の中には頓狂な奴がいてよ こんなラチのあかねえ娯楽に… 自分の分こえた代価 人生さえ賭けちまう奴もいるのさ…… まあそんな奴だから… 頭は悪いんだけど…… 描きたい気持ちはスゲェーもんだ… 後のない…勝負処での大事な一作に バカはバカなりに必死さ… 持てる全知全能をかけて描き上げる 決断して そして躊躇して それでもやっぱりこれしかない……て そりゃもうほとんど 自分の魂を切るように描く漫画があるんだよ その魂の乗った漫画 そういう漫画を読むこと…… それはまるで人の心を喰らうようだ… この世じゃ人の心が一番うまいんだ……』