白米からは逃げられぬ ~ドイツでつくる日本食、いつも何かがそろわない~

海外に住む人は読んで損なし!

白米からは逃げられぬ ~ドイツでつくる日本食、いつも何かがそろわない~ 白乃雪
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

現在海外にいる日本人、これから海外に行く日本人が読むべき漫画! ドイツ人の旦那の元に嫁いだ日本人漫画家が、ドイツで欲しい食材が手に入らないのをどうにかこうにか他のもので代用しようというという試行錯誤が楽しい漫画だ。 かつて海外にいた日本人にとっては共感の嵐! そうか、そうやればよかったのか!という気持ちになる。 というのも、僕は帰国子女だ。 小学校6年生~中学校3年生の多感な時期をベルギーで過ごしたわけだけど、時折たまらなく日本食を食べたい、食べたすぎる~、うお~誰か食わせてくれ~という気分になったものだ。 食わせてくれというのが、義務教育中の甘ったれ感たっぷりなわけだが、この漫画の気分は痛いほど分かるのだ。 特にこの漫画の舞台がドイツということでベルギーと隣国じゃないか!と大興奮した。 わりと食の事情は近いものがあるので、うんうんと頷きながら読んだ。 僕が住んでいた2000年~2004年頃よりは日本食事情が少しましになっているような気がしないでもない・・? 手に入りづらい生魚をアボカドで代用したり、ぶり大根のぶりをぶつ切りのサーモンで代用したり、柚子胡椒をレモンで作ったり、お好み焼きのやまいもを牛乳で代用したり、柿の葉寿司を生ハムで作ったり、もう見てて楽しいし、ちゃんと美味しそう。 帰国子女のみんなー!もしくはこれから海外に行く人ー! これは買うしかないでしょー! 海外で食べるいい日本食マニュアルになります! そして、あらためて日本っていいよなぁという気持ちにもなる! ぜひ!

BMネクタール

パニックホラーの名作が今日電書で復活!

BMネクタール 藤澤勇希
兎来栄寿
兎来栄寿

スマホアプリでマンガを読む時代になってから、一気にサバイバル物やサスペンス物が増えました。この『BMネクタール』は今の時代にスマホ連載されていたならば、当時よりももっと話題になりブレイクしていたのではないか……そう思わせられてならない、パニックホラーの名作です。 タイトルのBMとは「バイオミート」のこと。食糧難に陥った人類が人工的に開発した栄養豊富な食糧です。しかし、その知られざる食糧の真の姿はあらゆる物を捕食し高い再生能力を持つ恐るべき怪物でした。そして、厳重に管理されていたはずのBMが解き放たれ人類に襲い掛かります。 『進撃の巨人』然り、生物の頂点にあるはずの人間が容易く蹂躙され捕食されていく姿には本能的な恐怖を喚起させられます。そしてBMのビジュアルが本当におぞましい!一見しただけで生理的嫌悪感を催すという点で、マンガという媒体の魅力を生かし切っている作品でもあります。 パニックホラー物やサバイバル物でありがちなのは途中が中弛みしてしまったり、あるいは途中までは面白かったものの最後が今ひとつな感じで終わってしまったりという展開です。しかし、この『BMネクタール』は全12巻という程よい巻数の中でテンポ良く終わりまでしっかりまとめてくれています。読み出すと続きが気になって一気読みしてしまうこと請け合い。 電書になったこの機会にぜひ触れてみて欲しい作品です。

異世界の主役は我々だ!

所謂マンガ好きの方々が読んでどう感じるかを見てみたい

異世界の主役は我々だ! 加茂ユウジ グルッペン・フューラー せらみかる せらみかる+ユーザーのみなさん
sogor25
sogor25

皆さんは「〇〇の主役は我々だ!」という方々をご存じでしょうか。ニコ動やYouTubeで活動する10人以上のメンバーからなるゲーム実況グループで、YouTubeだとチャンネル登録者数30万人超(2019年3月現在)という、その界隈では絶大な人気を誇るグループです。 私は元々ニコ厨だったのでニコ動に上がっているHearts of Ironという歴史シミュレーションゲームの実況で始めて知ったのですが、明確な偏差値の高さを感じる会話劇(例えば「レコンキスタ前ってイベリア半島はトルコの物だよな?」「申し訳ないが後ウマイヤ朝の話はNG」みたいな歴史ネタを自然に会話中に放り込んでくる)と、その偏差値に反した醜い争いっぷりが面白くて、ニコ動からほぼ離れてしまった今でもまだ動画を追いかけています。 そんな彼らが、自分達を登場人物に見立てたインディーゲームを作製し、それを原作としてコミカライズされたのがこの「異世界の主役は我々だ!」という作品です。 という、そもそもの成り立ちを説明するまでにこれだけ文字数を要する、一見さんお断り感の強い作品で、所謂マンガ好きの方々が恐らく手を伸ばさないであろう作品なのですが、そんな中にも私がこの作品に注目している点が2点あります。 1点目は、2巻中盤辺りから見られるようになる、極論全振りの会話劇。モデルとなったメンバーの実際の思想を反映させているようで、1人は隣人を愛する大切さを説き、1人は感情より合理的な利益最大化こそが正義と信じ、また1人は全力で利己主義を語る。元々のキャラを把握しているからこそ楽しめている感は正直否めませんが、雰囲気としては「テロール教授の怪しい授業」のような、正論にも詭弁にも聞こえる会話劇が繰り広げられます。 この会話劇を、「我々だ!」の存在を全く知らない人が読んで楽しめるものなのかというのがすごく気になっています。 (2巻までは内輪ネタにも全振りなので、そこを乗り越えることが前提にはなりますが…) そしてもう1点の注目ポイント、実はこの作品、現状でかなり売れているようなのです。現在4巻まで刊行されてますが、3巻の帯に"10万部突破"の文字があったので、1~2巻でそこまでの数字を重ねたということなのでしょう。 内輪ウケ要素の強いこの作品でこれだけの売上ということは、元のニコ動の視聴者がマンガまでちゃんと追いかけてるということじゃないかと思っています。 ニコ動はプレミアムアカウントが有料なことが一時期かなり叩かれてましたが、裏を返せば、ニコ動にいる人は趣味に対してある程度お金を使うことを厭わない人たち。お金を使うことのできる層にターゲットを絞ってコンテンツを作ればちゃんと利益に還元される、ということをこの作品は証明しつつあるのではないか、と思っています。下手に部数だけ見ればアニメ化もあるかもと思えるだけに、長期的にこの作品の動向に着目していくのも面白いかもしれません。 ということで、マンガ好きが集まるこの場で敢えて感想を投下して何かの間違いで読んでくれる人が現れないかなと期待しつつ、読まなくてもいいのでこの作品に注目する人が増えればいいなと漠然と思っています。 4巻まで読了。

Bloodborne: The Death of Sleep

原作リスペクト感がたっぷりあるコミック版

Bloodborne: The Death of Sleep 林田球 アレス・コット ピョートル・コワルスキ アディティア・ビディカー ブラッド・シンプソン
鳥人間
鳥人間

Bloodborneは元々はフロム・ソフトウェア開発のゲーム。その海外でのコミカライズ版があると知って早速買って読んでみた。購入したのは日本語化されたもの。中身は海外著者のアメコミ風(?)だが、日本語版のカバーイラストは、漫画家の林田球先生による描き下ろしだそうだ。 たぶん原作ゲームを知らない人が読むと、さっぱりわからないと思う。死んで、狩人の夢の中で目覚めて、また現実をやり直すというループめいた現象は、ゲームをやってる人しかピンとこないだろう。逆に原作を知っている人であれば、この雰囲気や謎めいたストーリーで「あぁこんな感じこんな感じ!」と思うはず。 ストーリーは著者のオリジナルだそうだ。とはいえ原作のストーリーはフロムお得意のユーザーに想像をさせるところが多く、多様な解釈ができる不明瞭なもの。ストーリーについては数あるアイテムテキストや状況から推測しなければならない部分が多いゲームだ。おそらく著者もその辺りをよく理解しており、原作の世界観に著者の考えを上手く盛り込んでいると思う。 そして原作リスペクトがとてもよくわかる描写やキャラクターたち。例えばボスモンスター「血に渇いた獣」が原作通り絶望感たっぷりに描かれている。ゲームで最初こいつに出会ったときの「どうやって倒すんだよ……」と途方に暮れた感覚を思い出した。他にもボスでいえばアメンドーズ。NPCでは狩人デュラ、ゲールマン、人形など。ノコギリ鉈や回転ノコギリといった仕掛け武器。旧市街や禁域の森、漁村などのエリアが描かれていてファンならニヤリとするだろう。 全編オールカラー、カッコいいコマも多く、見応えがある。ストーリーは希薄だが隙間を想像しながら楽しめる。とりあえず1回だけ読んでみたが、繰り返し読めば色々発見がありそう。言い換えれば不明瞭な話なので、モヤモヤとした感じを覚える人もいるかもしれない。原作ファンでも好みは分かれそうだ。