男子は一生に一度は幕末に憧れる、なんてよく聞きます。私もこの時代は大好きで、このコーナーでも坂本竜馬、小栗上野介、桂小五郎を主人公にした漫画を紹介してきました。今回はそんな幕末英雄譚の中でも最も好きな新選組、鬼の副長・土方歳三を取り上げてみようと思います。新選組といっても実はこの作品、多くのページを割いているのはそれ以前の歳三の多摩時代。このパートで描かれるのは彼の武士道を追求するゆるぎない信念がどのように培われたか、近藤勇や竜馬との出会いで何を身に刻んだかということです。そこがタイトルの「月明星稀」―月明らかに星稀なり―にかかってくる。このテーマが見えてくるくだりはこれぞ武士道、という感じでシビれます。そして本来ならこの後が「さよなら新選組」という副題にもかかるはずですが、残念ながら伊東甲子太郎が登場したところで雑誌連載は打ち切り。新見錦や斎藤一の独創的な設定や、芹沢鴨暗殺までのくだりなど目を見張るものがあっただけに箱館まで見たかったというのが正直な本音ですが、男の魅力的な生きざまは存分に堪能できると思います。
「ビッグコミックの読切に載ってそうなマンガだなあ」というのがアフタヌーン誌面で読んだ時の印象。同じアフタヌーン作品で言えば、豊田徹也の「珈琲時間」に近いテイストでしょうか。味のあるキャラクターたちと、生活感の溢れた風景、そして庶民的なおいしそうな食べ物の数々。一色まこと作品が好きな人とかにおすすめです。食にまつわる短編集は、世の中に数多くありますが、これは完成度が抜群に高いです。個人的にはずっと手元に置いておきたくなる本の一つ。 各話が微妙にリンクしながら物語は進み、クライマックスの九・十皿目「浅い茶筒」まで、笑いあり涙ありの全1巻の道中です。この本は電子書籍でも買えますが、できれば紙の本で読む方が作品の良さを感じられると思います。
お高くとまりながらも陰のある花魁が主人公で、彼女を中心に情念渦巻く吉原の人間模様を描く…。そんな内容だと想像していましたが、本作はその先入観とはかなり違う、ずっと小気味の良い作品で、たっぷり堪能させて頂きました。主人公は地獄太夫と呼ばれる橋立花魁。どんな鬼のような花魁かと思うでしょうが、これはその技からついた異名。施虐の芸使い、そう、今でいうSMの女王様なんです(2巻の表紙でろうそく持ってます)。よく言えば客がどうして欲しいかを読み取る才能に長けている、悪く言えば変態専門の橋立花魁は人気も上々。で、この橋立が馴染み客と息の合った攻防?や、成り上がり者と意地の張り合い、はたまたとある武士と真剣勝負を繰り広げる。そのさまは上等な小話や落語を見ているようで、まさに”粋”のひと言。また著者はこの時代の吉原をずいぶん調べたようで、「えっ、これで避妊してたの」なんて薀蓄ネタも拾えます。3巻以降は単行本が存在せず、雑誌からの電子化で少々アラのある造りにはなってますが、野暮なことはいわずに楽しんでもらいたいですね。
君はエウレカセブンのプレイリストを作っただろうか? スーパーカー、ジョイディビジョン、ニューオーダー、oasis、ビョーク、ハービーハンコック、Beastie Boys、コーネリアス、坂本龍一…などなど、 この名々を見るだけで人生がいかに豊かになったか分かるだろう、 君はエウレカセブンを観て何を始めたか?何に憧れたか? 思いっきりボードを蹴ってみたい、メットなしでスクーター走らせて「この最悪な街」から逃げ出してみたい、音楽に体をあずけて思いっきり踊ってみたい、みんなでサッカーをしてみたい、 一つずつ叶えた日々は、今でもかけがえのない日々である 君はエウレカセブンを観て誰に出会ったか? 吉田健一というアニメーターを初めて強く意識した。彼の描く人物の表情に涙した。彼の関わった作品を夢中で観た。それだけで多くの出会いになった。 君はエウレカセブンを観て何を学んだか? 「ねだるな、勝ちとれ、さすれば与えられん」! そして「ア〜イキャ〜ンフラ〜〜イ!」と叫べば好きな子の元までひとっ飛びで行けちゃうかも?! エウレカセブンを学べばサブカルチャーを一周できちゃうくらいには、様々な要素が散りばめられています。これほど青くさい10代の為になるアニメ・漫画はないでしょう… そんなエウレカセブンにトリコジカケニナったわたしの人生は、まだまだ「つづく」!!
尾道を舞台に性的マイノリティの人々の心の葛藤と交流を描いた漫画。 4巻あっという間に読んでしまいました。面白かった。 こういうのを読むといつも、自分は気づかないうちに誰かを傷つけてはいないだろうか…と己の振る舞いを顧みてしまう。 この漫画には、“誰かさん”というつかみどころのない謎の女性がいて、その人の存在意義がいまいちわからないのですが、最後にはこの人自身がこの漫画のメッセージそのものであることがわかります。 主人公のたすくは談話室という場所に出会えたけど、それはかなり運がよくて、そうじゃない場合の方が実際は多いよなぁ…。そういう人に出会った時は特別扱いでなく、自分と同じそこら中にいる“誰かさん”なんだと思えるようになりたい。
長尾謙一郎のイメージが覆される、間違いなく名作と呼べる漫画との出会いに胸の高鳴りが抑えきれません。 かねてより氏の作品を好きな人はもちろん 触れてはみたものの自分には合わないと思い距離を置いた人、そしてそもそも知らない人 どんな人にも読んでみてほしいです。 「おしゃれ手帖」「バンさんと彦一」のように言葉に表せないほどのシュールさに声を上げて笑うとか 「ギャラクシー銀座」「クリームソーダシティ」のように唯一無二の、それこそ狂気を通り越して恐怖すら感じるセンスにただただ圧倒されるとか そういった雰囲気ではありませんが、間違いなく長尾謙一郎作品です。 おすすめです。
※ネタバレを含むクチコミです。
父親がダメ人間で母親が失踪、小学生の子供がお店を守って…私の世代なら『じゃりン子チエ』を思い出す設定のお話。ただ、こちらは現代風で父親はPC三昧の引きこもり、主人公はチエちゃんならぬサッちゃん。誰が仕入れたのか感性を疑う商品だらけの文具店を、帰ってくると信じている母親の居場所を残すために、またこんなお店でも必要としてくれるお客さんのために、健気に切りもりしています。大人の世界にさらされ傷つきながらも、漫画家のお兄さんへほのかな恋心を抱き、少し背伸びしてひとりで頑張るという、肩の凝らない良作。ですが、読んでいてちょっとムズムズしてしまいました。私、変な趣味があるのではないかと。いえ、ロリ…ではなくこの舞台の小道具である文具に萌えてしまっていたのです。ロケットペンシル、持ってました(作者の勘違いは巻末で修正)。人頭鉛筆削りや10徳ノート、欲しいです。家には変わった色の色鉛筆や奇妙な匂いの消しゴムがあるし、どうやら私は文具オタクなのか…。これから何が出てくる? そんな意味でも今後に期待します。
島本和彦の「アオイホノオ」と同様、自身を投影した主人公が活躍する漫画家漫画。ただし「アオイホノオ」の焔燃がゴリゴリのプロ志向なのに対し、こちらの八吹ジューベエが向かうのは同人誌の世界。高校の漫画研究会の延長のような、素人っぽさの抜けないアマチュアなのです。漫画化を目指す、というよりさらにマイナー、しかも設定は80年代で、今よりもさらにおおっぴらにできない趣味の分野。青春時代にそんな世界と関わった著者ならではのけっこう赤裸々な話が興味深いです。また、著者はコスプレアイドルのはしりでもあり、女性じゃないとわからにエピソードもあって、ここまで描いちゃうのかーと思うくらい。いろんな意味でよくぞ漫画化してくれたというところです。もう時効だと思うのでついでに書いてしまうと、この著者は私の大学の先輩。で、ある日、同じ授業に出席したことがあって、そこである事件が起きて、その日から彼女(著者)の姿を学校で見なくなってしまって…。そのへんもちゃ~んと描いてくれますかね。
完結した作品だと勘違いして読んでいたのでここで終わるなんて嘘でしょと思ってたらちゃんと6巻が出たので安心しました。 今から読みます。 でも連載はもう終わっちゃってるみたい?なので7巻が最終巻なのかな… 絵も時代も一昔どころか二昔前ぐらいだけど、だからこそ良いところっていうのが出てると思う。今でこそ非現実的だけどこの頃はきっと本当にこれが普通(非常識だとしても)にできる時代だったんだろうなーって思える。 決して羨ましくはないけど、精神論でやってきた世代の人達はそれはそれで妄信的に一つの道を信じて歩んできた強みがこうして鍛えられていたんだねーと。 面白いのは間違いないのでオススメです。
欠点だらけの駒形竜が将棋を通じて成長していく。 最初の方の駒形竜は全く好感が持てないやつだったが、将棋をはじめ大会に出て奨励会や師匠との出会いで人間的な成長を遂げていく。 奨励会のライバルや師匠が良い人達で、特に高美濃君や芦川八段がいなければ駒形竜が将棋はそこそこ強いがはただトラブルメーカーでしかない 定期的に奨励会のライバルのヘビーなエピソードで入ってきたり、ちょっと心霊現象があったりして全く飽きずに最後まで面白い あとこの作品を通してちょっと古い内容かもしれないが将棋界全体を知ることが将棋連盟や奨励会の構図/将棋のマナー/将棋の歴史がわかった。
1960年代初めに描かれた白土三平の貸本劇画です。 忍者漫画と思いきや、なんと舞台は西部開拓時代のアメリカ。キムはあくまで謎の人物という設定になっていますが、手裏剣を投げたり、土に潜ったり、どこからどう見ても日本の忍者!(笑) とはいえ、西部劇のガンマン達と「ニンジャ」が闘うなんて、テンションが上がらないわけがない。 キムは母を探すため西部をさすらい、行く先々で悪者をやっつけ、人々を助けていくという展開。白土漫画で一貫している、虐げられた者たちへの思い入れは、日本の農民と同じように、黒人やインディアンに対する差別に対しても発揮されています。未完という形で1巻で終わってますけど、大作を予感させる構想だと思いました。野生の動物たちの描写も見事。シートン動物記の要素がふんだんに入ってます。動物解説を見てるだけでも楽しい。 単行本化の際に、第一部完とするため12pの描き下ろしが加えられています。これがまたシブい雰囲気の引き方なんですよねえ…。こりゃあ子ども向け作品としては続かなかった理由の一つなのかなあと。
1つのアクションが次を呼んで、連鎖的にいろんな人の背景が鮮やかに展開する漫画。 これがデビュー作ってやばくない?!
写真を撮るのはその空間を切り取る事。 良い写真は、空間を上手く切り取れてる事。 何となく分かるけど、どうやったら撮れるのかを主人公と共に発見できる漫画でした。
表紙がまるでシュルレアリスムの絵画のよう。単行本は未見だったので、ちょっと得した気分になりつつあらためて読むと、あれ?雑誌連載当時は、怖え~、と思っていたのが、気色悪る~という感想に変わっていました。90年代後半に髪の長い女のホラーや、ストーカーを題材にしたテレビドラマなどが流行りましたからそのせいもあるのかも。もはやありえる話になってしまったというか。だから、この作品における描写の気色悪さが、以前より際立ってみえてきたんでしょう。ぺろんとした顔や手入れされてない長い髪はともかく、なぜか持っている紙袋やバッグ、伝線したストッキング、汚れた靴、髪が絡みついたブラシなどの少しずれた座敷女の風貌。そして雷や蛾といった心理的に不安になるイメージの挿入。「ドラゴンヘッド」の時も感じましたが、この著者は日常を少しだけありえる範囲で外すことで、気味の悪さを演出するのが非常にうまい。うん、これに気付いたことも、いまさらながら得した気分です。
犯罪対策用に作られたロボット警官、モンジュ。 ロボット故に世間知らず?なところがあるモンジュですが、田舎の警官山岸巡査や地域の少年少女と触れ合ううちに、感情をはじめ多くのことを学習していきます。 またそのエピソードが、シリアスな展開からバトル、ギャグまで幅広く、読み進めるにつれモンジュをはじめとする登場人物への感情移入が止まりません。 モンジュや山岸巡査をはじめ、登場人物の成長が丁寧に書かれた本作品、オススメです! あと、稀代の機械オタク、神谷シノさんがかわいいです。最初から最後まで。
本気出し切ってないかもしれないけど「ルサンチマン」からは想像もできないストーリーと画力の上達(上からっぽくてすみません)。 あえてなのかわざとじゃないのかわからないけど生々しさが伝わってくるスピード感(早いとは言ってない)や、画角の意識などが明らかに変わった。 後半から最後の展開にかけてはここでも議論がされてた気がするけど、多くの人を惹きつけた作品なのは間違いない。 不謹慎かもしれないが、連載開始は2009年だったものの2011年にパンデミック(この場合「アウトブレイク」?)の恐ろしさを理解した我々日本人には本当に恐ろしくリアルにイメージができてしまうものとなり、後の展開ももしかしたらそれに配慮したところがあるかもしれない。 女子が○○○とか×××とかそういう花沢健吾節ももちろんあるんだけど、それがあるキャラは主要キャラの一部だけでもあり、あくまでガチサバイバルというか極限状態まで追い詰められた人類を描いたシリアスなストーリーがメイン。 名作と言って遜色ないと思うけど割と賛否両論みたいですね🤔
「地獄楽」でもタイトルに書いたような内容を書いてしまったけど、この「もののがたり」もまたクオリティが高い。 古くからある大きな和風の屋敷、和風アクション、現代日本、黒服、などから「妖狐×僕SS」や「血界戦線」やハンターハンターの幻影旅団なんかを連想させられるとこもあって、素直にワクワクしながら読める。 主人公の性格(設定?)が意外と単純じゃなさそうで、ギャグっぽいコマなんかでは特にイヌボクに似たほんわかした空気があり、1巻読むだけでもきっと主要キャラは掴めると思う。
まず主人公のダイはすごくすごく熱がある。 周りのメンバーもそれぞれ真っ直ぐで、熱量が高い。 で、出会うその他のジャズやる人達も同様に熱い。 向き先は少し違えども、ジャズに対する熱量の高い人達を描いているんだけど、やり続けるとどういう葛藤があるのか想像もつかない。 ※もちろんコレだけが正解じゃないし特殊なんだけど 前作「ブルージャイアント」で感動と、落胆に近い憤りとを感じた人がほとんどだと思う。シュプリームではさすがに同じことにはならないと信じたい(今でもアレは本当にハッキリ憶えてるぐらいツラく、「ふざけんなーー」と口に出たぐらい熱中というか没入していた) 前作からそうだけど、途中途中で後にダイのことを語る人々(恐らくインタビューを受けている)が出てくる。 そこからは当然、未来がある程度想像できるワードがいくつも含まれており、それを踏まえて読む事でまた口角が上がってしまうのを抑えきれずに先を楽しみにして待とうと思えるそんな漫画。 ジャズが苦手であろうとわからなかろうとそんな事はどうでもいいぐらいに、五感を揺さぶってくるすごい漫画なので絶対読んだほうがいいし出来ればネタバレは見ないほうがいい。 ググると「ブルージャイアント ひどい」が一番上にサジェストされて笑ったけど、シュプリームがなかったら本当にただひどかったかもしれない。 ただ、ひどかった(と私含む多くの読者が思っている)のは本当に後半の、割と最後の方の展開の一部でしかなく、それは本当に衝撃的だったけど、その衝撃が大きい人ほどこの作品をちゃんと読んだ人であるのは間違いない。 大好きなので是非多くの人に読んでもらいたい。
スポーツ界のヒーローなんて才能がある人間が努力した上で 仲間や運に恵まれなければなれるモンじゃない。 そして努力が出来たり仲間が応援してくれたりするのは 本人が、真面目に本気で取り組んでいればこそ。 そうでなければ頑張れないし廻りも応援しない。 そもそも、どんなに才能があっても好きでなければ 努力できないだろうし、 好きでもないのに出来る程度の努力しかしない主人公は 現実でも漫画でも、共感を得るのは難しい、そう思う。 だからだと思うが、スポーツ漫画の主人公は そのスポーツが大好き、というのが定番。 それか、好きじゃなかったけれど、 やってみて好きになった、とか。 「ファイティング寿限無」も、 やってみて好きになったパターンではある。 だが、そうなるまでも、そうなってからも、が ハンパじゃない。 修行中の落語家「橘屋・小龍」こと小林は 師匠が好きで師匠命で師匠の命令は絶対。 だが師匠は落語の実力者でありながら、 実力至上主義ではない。 芸人は売れなきゃ惨めなものなんだ、というリアリスト。 「手段はナンでもいいから売れろ。付加価値を付けろ。」 その教えに従い、小林が選んだ手段が 「落語も出来るプロボクサー」 落語が師匠が命な小林だけに、 ボクシング命でない自分がボクサーを目指すことに 引け目を感じつつトレーニングに励む。 だがプロボクシングの世界は、 好き嫌いだ本気だ遊びだ、とかの 全てを飲み込んで濾過した上で強者だけが生き残るという 別の意味で純粋で単純な世界だった。 さらに思いがけず、落語とボクシングが融合することで 小林の才能が開花し、ボクシングに本気になり、 周囲も小林を知り応援してくれるようになっていく。 やりたくないならやるな、好きじゃないならやるな、を 逆説的に問うてくる、そんな漫画。 しかもそれだけじゃない笑いながら泣けてしまう漫画。
自分は恋愛と縁がないのに、恋する女性はキラキラしていて、そのさまが本当にきれいで、つらい。 恋する女性が文字通り光って見える体質に苦しむ理屈っぽい大学生、西条くんの初めての恋を描く作品です。 彼の恋を取り巻く3人の女性は三者三様。 小学校からの腐れ縁である北代さん、 ヒトの彼氏を奪いたがる宿木さん、 そして、恋を知らない不思議ちゃんの東雲さん。 彼女たちと交流する中で西条くんは、人を好きになるということがどういうことなのか、そもそも光って見えるのは本当に「恋する」女性なのか、恋と自分の体質をめぐる謎の解明に、理屈勝負で取り組んでいきます。 その先に、恋というものが見せる、理屈ではとても説明のつかないほど輝かしいドラマが待っているとも知らずに… めちゃくちゃおすすめです!!
「ほっこり」と、「笑い」と、「感動」を始めて漫画で味わった経験でした。 今でも大好きです。 さくらももこ先生のおかげで活字も読めるようになりました。
武士の時代の厳しさを想像させるマンガ。全てに息を飲む。
当初は柔道マンガとして始まり、いくつものシリーズを経由しながら、ひじょうに長い年月を経て、とうとう『ドカベン』に終止符が打たれた。最終巻の最終話では、第一巻の第一話における山田と岩鬼の出会いをそのまま回想としてなぞり、このあまりにシンプルでありながら、これしかないという演出には言うにいわれぬ感慨を憶えたものだった。 『大甲子園』を含めたドカベンシリーズの本流だけで全205巻。それ以外の支流からドカベンシリーズの本流に合流してきたものを合わせれば300巻に迫る勢いである。じつは、こち亀の200巻の記録をゆうに超えてしまっているのだ。 この途方もない事態は、おそらく『ドカベン』にのみ関わるものではない。すべての野球マンガに、野球マンガというジャンルに関わるものであると思う。マンガには様々なジャンルがあるが、そのなかでも野球マンガというジャンルは、マンガという体系に対して、ある特権的な位置を占めていると思うのだ。これはハリウッドが西部劇というジャンルとともに映画産業を発展させてきたのとよく似ているような気がする。すなわち、ここでは映画が西部劇を撮るのではなく、西部劇という土壌が映画を撮らせているというある種の逆転現象が起きている。映画においてもっとも重要な光線の処理の問題、これをハリウッドはその近郊の年中天候の変わりにくい荒涼地帯で西部劇を撮ることで解決してきたのだ。天候がほいほい変わればそのたびに撮影を中断せねばならないが、西部劇ならばそんな心配はしないでどんどん撮影をすすめ、作品を量産することができる。つまり、こうした西部劇の量産で興行した潤沢な資金を次の撮影にまた注ぎ込むというサイクルがハリウッドにはできていたということだ。 では、マンガはどうかといえば、マンガ制作に天候はあまり関係がなさそうだが、やはり手塚治虫の登場いらい体系の整えられてきたコマと記号の処理という問題が"大友以降"のマンガにおいても頭をもたげてやまないはずなのだ。というより、マンガにおける諸問題はコマをいかに処理し、記号をいかに処理するかに集約されるはずだ。あれだけマンガというものに抗ってみせた『スラムダンク』の井上雄彦もけっきょくはコマからは逃れられないし、記号には頼らざるを得ないところがあった。そもそも井上がマンガに抗わざるを得なかったのはマンガ家という身分でありながらバスケが好きだったという不幸に由来する。マンガでバスケの動きをどう表現するか、それは文字通りマンガへの過酷な抵抗であったことだろう。『スラムダンク』の美しさは、このマンガへの過酷な抵抗と山王への果敢な挑戦がダブるところに集約されるだろう。ただ、あくまでも井上に許されていたのはマンガへの飽くなき抵抗という姿勢までで勝利ではなかった、だからこそ湘北が山王に奇跡のような勝利をおさめたときに連載を止めねばならなかったのだ。その点で、マンガは野球に愛されていると言わざるを得ない。愛に守られてスクスクと育ち、野球マンガに特有の素晴らしき楽天性でもって『スラムダンク』とはまたちがった豊かさを随所で花開かせている。そのことは近年ますます豊饒となった野球マンガのひとつ『おおきく振りかぶって』にもよく描かれている。すなわち、打者のほとんどが打ち上げてしまう三橋くんのまっすぐ、打者はボールの運動をじっさいに目で正確に追っているのではなく、その軌道を経験的な記号として捉えてバットを振っている、と。このことは野球を外からみる側にもいえる。投手が構えて、ボールが投げられる、打者が構えて、バットが振られる、この一連の運動を隈なく目で追っているひとなどいないはずなのだ。わたしたちが見ているのは、投手が構えて、次の瞬間には、構えていた打者がスイングし終えていて、マウンドの投手はまるでバレエでも踊るみたいな不可思議な格好になっている。この野球をみるときの呼吸はマンガの呼吸とぴったり合いはしないだろうか。コマからコマのあいだの欠落を敢えて埋めようとはしなくてもマンガは野球を経済的に語る術をはじめから心得ていた。つまり野球マンガは、あるいはバスケマンガのように、マンガそのものに抵抗する必要があらかじめなかった。この追い風を受けてマンガは野球という物語を幾重にも変奏して量産することができたのではないかと思うのだ。
釣りもYouTubeで人気広がってる(と思う) そんな中で釣りキチ三平に目を付け、さらにそこから魚紳さんをピックアップしてるだけでもセンスがある。 絵もうまい。ギャグ描写は古臭いけどw 腕の伸び方とかしなり方というか、その辺は原作に似せてるのかな? 雰囲気損ねてないと思う
仕事人じゃなく仕置人の方。 描写はエグいけど仕置をされる人物があまりにもクズなので全く問題ない(なぜバレないのかとか気になるけど細かいことはいい) 絵もどんどん上手くなってる。 エグい作品が多いけど、昨今の流行がマイナージャンルな表の引きが強い作品に寄っているので人気なのはわかる感じ。 長寿作品になるといいんだけど。
ご飯を作るって自由って頭に雷が落ちた漫画です。美味しいものや好きな物、まとめて食べたら美味しいやん!って理論をブンブン振り回す主人公は読んでて気持ちいい!
中学生の頃に出会って、今でもたまに読み返す漫画。この漫画に登場する無数の人生が、20年以上経っても自分の中で物事を判断するときの支えの一つになっているかもしれない。読み終わってふと我に返ると現実の自分を見つめることができるので、メンタル弱くなったら読む、御守りみたいな作品。 作品を少し紹介すると、1988年から2002年までヤングジャンプで連載していた現代のお伽噺風のヒューマン・ドラマです。 悩める人間たちのもとに、胡散臭い神様や天使・悪魔といった存在が現れ、謎の秘密道具を与えては、人間たちの運命を大きく変えていく・・・という1話完結型の短編漫画で、「笑ゥせぇるすまん」に近いテイストです。喪黒福造みたいな際立った不気味さはありませんが、Y氏の隣人には、ザビエールをはじめとしたバリエーション豊かな妖しげなキャラクターが揃ってます。 作者・吉田ひろゆき氏は、元銀行員という異色の経歴を持っており、これがデビュー作になります。作品には、銀行員時代に見てきたと思われる人間模様が至るところに登場します。(余談ですが矢口高雄も元銀行員) 悩みやトラブルの原因で一番多いのが金銭関係だったり、 神様が渡すアイテムにしても、無限に使えるわけではなく、使用する度に「貯金」や「利息」といった制限が必ず付いてまわります。 そして人間の善行・悪行を「積み立て」として捉えて、その勘定が合わなくなったときに破滅が訪れる。 まさに因果応報!という感じで大好きな世界観なのですが、 この作品の凄いところは、「自分は、善人になるぞ!」と意気込んで善行を積んだとしても、必ずしも思っていた通りの結果にはならない、というところ。 この不条理さと、因果のバランス関係がほどよくて、人生ってヤツは一筋縄ではいかない…と読む度に思わせてくれます。ハッピーエンドになるのか、バッドエンドになるのか、一話一話のオチを予想しながら読むのも一興。 1巻から読み通すのは時間がかかるので、まずは「Y氏の隣人~傑作100選~」から読んでみては。
慟哭に満ちた重々しい第1話からは想像もつかないような切なく、長大で壮大な物語へと発展していきます。 画力や構成ともにコミカライズの質はめちゃくちゃ高いですが、そもそもコミック4冊に収まるような話ではないので、気に入った方はぜひ小説を。。 シリーズでは「追憶」とこの「恋歌」のみ漫画化・アニメ化されていますが、他も余すところなく名作なのでメディアミックス化して欲しい。犬村先生最新作「プロペラオペラ」も「『恋と空戦』の犬村小六ここにあり」って感じで素晴らしいのでこれもどうか
「ひとりぼっちの地球侵略」の小川麻衣子作画によるコミカライズ。原作は、アニメーション映画にもなった犬村小六の小説「飛空士シリーズ」の第一弾です。 原作全シリーズ所持していますが、拙者、読むと号泣してしまうので外出先で読めません。。ストーリーとしては身分違いの愛の逃避行なんですが、丁寧に描かれる恋心と圧巻すぎる空戦描写が素晴らしく、のちに犬村先生の代名詞となる「恋と空戦」の原点にして最初の傑作って感じでバチクソ泣けます。 アニメだと主役の(若かりし頃の神木隆之介くんの)声が、コミックだと絵が、イメージよりかなり幼く感じられるので、やはり原作が至高にして最高です。
なんだか読んでて惨めな気持ちになる。 相思相愛なのに付き合ってないけど一緒に暮らしてる2人。 大学生のマコさんと高2のリンくんの絶妙にホワイトな距離感に爆発しろと言わざるを得ない。
タイトル通り『パレス・メイヂ』のスピンオフ作品ですが、『パレス・メイヂ』を読んでいなくとも単体でも楽しめる作品です。 ラノベタイトル風に言えば「留年したら皇太子殿下のご学友になった件」という感じのお話。 学校の中でも超特別扱いを受けながらも誠実で朴訥とした皇太子殿下、そしてそれに反発する問題児な主人公。そんな二人が周囲の疑義もありながら仲良くなっていく物語です。その設定自体は類型も多いのですが、その過程の余りに人間味溢れるエピソードの数々にこそ久世番子さんの良さが溢れています。 お互いに存在する先入観。しかし、本質的には誰しもが同じ人間。もし自分が主人公のようにやんごとなき方と同級生だったらどういう風に振る舞っただろうか、仲良くなれただろうか……そんな想いを馳せました。 単体でも読める作品ではありますが、未読の方は興味があればぜひ併せて『パレス・メイヂ』本編も読んでみて下さい。
『進撃の巨人』の超巨人や『ハカイジュウ』の怪生物など、漫画界は最近やたらクリ―チャ―流行り。人気になる理由のひとつになっています。けれど、そんな存在感ある怪物ではなくて、この作品に出てくる何をするわけでもない名もなき怪物のほうが、私は「おおっ」と思ってしまうから困ったもんだ。この作品、怪物目当てで読む人は少数派だとは思いますけど…。舞台は金やんと高木さんという漫才コンビのような女子高生が暮らす近未来。とはいっても私たちの住む世界とは微妙に違っている世界のよう。便利な道具もあれば、かなり強引な食べ物、一風変わった建造物など、まるで「不思議の国のアリス」の未来版といったふうです。で、なぜか時々この世界には怪物が現れるのですが、これが内容と相まって非常にツボにはまる。第2話に出てくる怪物なんかデザインの秀逸さといい、目的意識の希薄さといい素敵すぎます。本作の内容はゆるゆるのファンタジー。ハードなSFに疲れた人はちょいとつまんでみてはいかがですか。
好きな漫画はたくさんありますが 僕にとってこの漫画に出会えてよかったと1番思う作品はこの"足洗邸の住人たち。"です。 この漫画に出会って更に漫画が好きになり、そこから漫画を読む数が爆発的に増えてたことで漫画読み人生が始まりました。 平成一の妖怪作家みなぎ得一先生の最長編作品です。 デフォルメが効いた絵柄、洒落の効いた台詞回し、繋がる世界観、個性的なキャラ、深い妖怪知識等々もう全てが好みど真ん中で大好きです。 この話は「災禍の召喚術師」が引き起こした「大召喚」で人間世界と魔界、異界が重なった世界が舞台となってます。 主人公の絵描き田村福太郎が引っ越したアパートは猫又が管理人の足洗い邸。 福太郎と住人が織りなす日常パートと邸を守るバトルパートがメインストーリーとなります。 福太郎に隠された秘密と徐々に判明していく世界の秘密。 妖怪物が好きな方はマストで読んでほしい漫画です。 また、みなぎ先生の特徴としてクロスオーバー作家というのがあります。 デビュー作の『いろは草子』から『大復活祭』『足洗邸の住人たち。』『サクラコード』 現在連載中の『ルート3』まで全て同じ世界で物語が進んでいきます(時代は変わります) どれから読んでも面白いですが、最長編の足洗を基点に読むのもオススメです。
ごみ捨て場の決戦に目が話せないです!
漫画のあらすじって印象に残らなかったけどこの漫画は違う。 あらすじではばあさんを褒めまくっているのでバアさんではなくバアさん以外にフォーカスを当てると、この漫画はむちゃくちゃ面白い。小山ゆうの漫画自体大好きだから余計感じるのかもしれないが、俺の好きな小山ゆう漫画の要素がすべて詰まってる。主人公のケンノ介はむちゃくちゃ良いやつで強さだけでなく精神的な成長もあり、周りの大人も主人公を導く師匠なる人物と反面教師の人物がわかりやすく書かれている。バアさん以外にフォーカスを当てると書いたがやはりこの漫画は「バアさん」がいないと成り立たない。バアさんのリアクションもだが、ケンノ介の成長を喜ぶバアさんも必見!!
「ボンボンのベルセルク」とはよく言ったもので、およそ児童マンガとは思えぬハードな表現と展開で当時の小学生をビビらせつつも興奮させまくった本作。 原作は女神転生シリーズを子ども向けにリメイクした同名のゲームボーイソフトですが、原作プレイヤーが「なにかの手違いかな?」と思うほどのハードボイルドが盛られていることで有名です。 なんなら本家女神転生よりタフかもしれない。 主人公の甲斐刹那は小学5年生にしてデビルの使役者「デビルチルドレン」に選ばれ、魔界の騒乱に巻き込まれますが、巻き込まれ方からすごい。 自室が吹き飛び悪魔の召喚銃デビライザーを謎の配達屋から押し付けられたかと思うと、その配達屋が目の前で速攻息絶えます。いきなりハード過ぎる。小5ですよ? 基本このマンガでの「死」は身体が消えるとかファンタジーなやつじゃなく超フィジカルに訪れるので、現実的な死の感覚が子ども心に強烈に刻まれたわけです。(実際最初は怖くて読めなかった) 連載はじめの頃はキャラクターの頭身も子ども向けっぽいデフォルメが効いた感じなのですが、ふとした瞬間から筋肉が盛りに盛られたゴージャスな作画に吹っ切れていきます。 絵柄の変化と同時進行で周囲のキャラが次々に壮絶な最後を遂げ、主人公(※小5)の目がどんどん据わっていくのはマジの迫力。マーブルランド編に突入して刹那が再登場したときのゾクゾク感はそうそう味わえるものではないです。 『ベルセルク』と喩えられる最大の理由はおそらく同戦争編だと思いますが、こちらも出色の出来で、ラセツ族の兵士が自分のちぎれた腕を抱えて狂気の笑いを浮かべていたのをよく覚えています。大人になった今だからこそ「あ、それ描いちゃうんだ?」っていう凄まじさが分かりますね。 手加減無しで徹頭徹尾リアルに描写されたキャラクターの生と死、痛み、苦しみがあるからこそ、物語とキャラクターの生きざまに説得力があって、今でも十分楽しめるのはそういう理由なんだと思います。 子ども向けなのに云々を超えた重厚なドラマ、是非味わってほしいです。
アニメ放送を観たんですけどね。正直、う~ん…、って感じました。だからそのフィルムコミックであるこの作品にも、大きな期待はしてなかったんです。ところが読んでびっくり、同じ素材なのにこれほど受け取り方がかわるものなのか、と。評価は180度変わりました。アニメ版で特に気になったのは声の質や動きの硬さ。それがなくなっているのは当然として、確実に感じたのは専門用語の意味がちゃんと頭に入ってくるということです。やっぱりイノベーションやトップマネジメントなど専門用語の意味は、朗読されるより自分のペースで文字を追った方がはるかに理解しやすいのだな、と痛感しました。で、こっちが理解できると、高校野球というたとえがしっくりくることがよりわかるんですよね。アニメでは説教臭く感じましたが、集団活動であり劇的な展開もあるというところが経済活動にうまく重なりますし、またドラッカーの言葉が見事にはまっている。原作は未読なのですが、人気になった理由がこの一冊でわかった気がします。
「バンドやるならギターとベースとドラムとボーカル集めてコピーから始める」みたいなのは単なる固定観念に過ぎず、音楽はもっと自由なんだということを教えてくれる話。「これなら自分にもできそう」というのは大抵勘違いなんだけど、生きていくうえでそんな勘違いを起こしてくれるようなものを求めているのも確か。 大橋さんの漫画は、普通なら「ださい」とされてるものを「かっこいい」と言ったり、お決まりの流れなら否定するところを逆に肯定したりする。たったそれだけのことでも話は思わぬ方向に転がり出すし、凝り固まった思考をぶち壊してくれる。そこに希望と可能性がある。
タチの悪い「ゴルゴ13」、責任感のない「ホーキング」という感じのダークヒーローと言えばいいのか。「ゴルゴ13」や「ホーキング」は受けた依頼に関しては最大限に依頼を遂行しようとするがこの主人公は依頼内容や依頼の制限を無視するなどをしてタチが悪い。 主人公の性癖が流石にやばいと思ったのか「劇画「ザ・テロル」の各話は完全なフィクションであり、登場する人物、団体、事件等はすべて作者の創作になる架空のものであります。」というのが注釈が印象深い ちょっと気になったのだが、この劇画はゴルゴ13と同じ世界にあるようで、登場人物のセリフで、ゴルゴ13を意識させるセリフがでていた。
美味しいものは美味しい!そうでもないものにはそうでもない反応をする(なら美味しくなるにはどうするかを考える)、とても等身大で親近感がわくエッセイでした。今まで読んだ食エッセイ漫画の中でいちばん好きかもしれません。 大げさに表情だけで美味しさを表現する漫画よりも、リアルな生活感が伝わってきて好印象です。 スケラッコさんは「自分で作る」ことにこだわりがあるようで、食べたいと思った時に食べたいのもを作る!という率直な行動は憧れるのですが、ブリトーやピザを生地から自作したり、小豆を炊いてあんこを作ったりとなかなか真似するにはハードル高いぞというものもあります。 ただコンビニのブリトーにハマってた時期は自分にもあったので、一話目から共感指数がすごい高かった。笑 料理という行為が、必要に迫られてするものではなく自分の欲を満たす手段というか、好きな時に好きなものを…という気持ちの良い素直さの先にあるんだなと読んでて思いました。自分は特に、料理は年に数回しかしないもののストレス発散になるのですが、この漫画を読んでいると自分は料理してないのになんだかストレスが軽くなるような気がします。 あくまでも姿をしょうゆさしで描いているだけなので、手巻き寿司の回で醤油を忘れてしまい、買いに行っている姿は矛盾してるんだかしてないんだかわからず、シュールでした。
噂には聞いてましたがここまで凄まじいとは…。この作品、いきなりクライマックスという感じで、しょっぱなから第1巻のほとんど最後まで、ひたすらハードなアクションが続いているんです。マッド・ドッグの異名をとる傭兵・岩鬼将造は暴力団組長の息子。父の暗殺を知り帰国、落とし前をつけに黒幕の元へ――。ということで殴り込みになるのですが、そこは極道ならぬ極道兵器。ドスやチャカ程度の戦闘では収まらない。戦場土産のバズーカやミサイル、果ては核兵器まで飛び交うのですからもはや戦争。著者の真骨頂である狂気の演出と相まって、ハリウッド映画も真っ青のバイオレンス作品に仕上がっています。最初は極道物と思わせておいて、SF的な改造をされて名実ともに極道兵器になる、という設定なのですが、それはこの際どこかに置いといてほしい。許嫁の姐さんや、さらに凶悪な兄貴分もでてきますがそれもどうでもいい。とにかく主人公・将造の暴れっぷりを見て欲しいですね。ついでに、またしても広げた風呂敷を畳まない展開も忘れてほしい…。
作者のゲーム体験を通して描かれた青春記で、作者の暗くて毒のある絵柄が、黎明期当時まだまだ反社会的イメージのあったゲームにマッチしていて、明日のことをまるで考えていなかったバカな自分の少年時代を思い出してしまいました。ゲームの内容を深く掘り下げず、体験談をもとにしているのがいいんですよね。私はおそらく著者と5~6年は年が離れているかな? でもゲームのブームという現象ならば、不良の巣窟インベーダーハウスがゲームセンターであっても、携帯ゲーム機ゲーム&ウオッチがゲームボーイであっても、似たような体験をしているので、すんなり”ああそうだ”と思ってしまう。革命的なことばかりだった80年代。あの時代の空気を体験した人にとってゲーム用語は共通言語。酒場のネタにはもってこいの漫画です。30~40代、50歳未満まではイケる作品じゃないかな?
モーニングTHE GATE 大賞 めっちゃ良かった! 絵柄も構図も設定もすべてがグッとくる! 『四畳半神話体系』とか『夜は短し歩けよ乙女』とか森見登美彦が好きな人は好きなんじゃないかなと思った。 これは名前は違うけど同じ人かな? 花森幸治『ツキミソウ』 http://www.moae.jp/comic/chibasho_tsukimisou
とっても面白かったです。ドストレートなエロ描写ではなくやんわりとした感じで、兄妹だったり、ゲイだったりNTRなど、いくつもの性癖を上手にくすぐってきます。【女の豚】【女の鬼】に登場する村田先生(ゲイ)のキャラはいいですね〜。こういうおじさんを見ると引っ叩きたくなる衝動に駆られます。
すごい。性格的なキャラで見ても女ウケする女と男ウケする女をきっぱりわけたよう。もちろんどちらも綺麗で萌えますが。 どんな展開になるのか続きが気になる漫画。 血を吸われるシーンは少しえろいですね。ちなみに蚊は血を吸いながら唾液を注入してきますよね。これには局所麻酔効果もあって、痛みも感じなくなっているのだそうです。
コミックDAYSで連載していたのは知っていたけど、正直読んだことはなかった。 本誌に移籍したらしく、モーニングで読んではじめて4コマ漫画だというのを知りました。あと閻魔大王が自転車で通勤してるのも初めて知りました。 地獄で一番偉いはずの閻魔大王、ケルベロスを飼いたい人が他にいなかったので仕方なく飼うことに… 顔は怖いけど優しいおじさんです。ケルベロスも頭が3つあるだけで中身は普通のワンちゃんというかんじ笑
男子は一生に一度は幕末に憧れる、なんてよく聞きます。私もこの時代は大好きで、このコーナーでも坂本竜馬、小栗上野介、桂小五郎を主人公にした漫画を紹介してきました。今回はそんな幕末英雄譚の中でも最も好きな新選組、鬼の副長・土方歳三を取り上げてみようと思います。新選組といっても実はこの作品、多くのページを割いているのはそれ以前の歳三の多摩時代。このパートで描かれるのは彼の武士道を追求するゆるぎない信念がどのように培われたか、近藤勇や竜馬との出会いで何を身に刻んだかということです。そこがタイトルの「月明星稀」―月明らかに星稀なり―にかかってくる。このテーマが見えてくるくだりはこれぞ武士道、という感じでシビれます。そして本来ならこの後が「さよなら新選組」という副題にもかかるはずですが、残念ながら伊東甲子太郎が登場したところで雑誌連載は打ち切り。新見錦や斎藤一の独創的な設定や、芹沢鴨暗殺までのくだりなど目を見張るものがあっただけに箱館まで見たかったというのが正直な本音ですが、男の魅力的な生きざまは存分に堪能できると思います。