くじらの背中

思春期の生きづらさを正面から描いた読切

くじらの背中 藤田直樹
たか
たか

読んでて嫌〜な気持ちになったしんどい読切。というのも主人公・たけしと、小学生の時に仲が良かった女子・くじらの関係や抱えている悩みがあまりに中学生すぎて「もうやめて…!」となるから。 思春期の怒り苦しみでグチャグチャした感情なんて、もう二度と思い出したくない…。頑張って苦い表情をしながら読み通しました。岡田麿里作品のようなつらさがありました…。 ベリーショートで背が高くて、給食が全然食べられない静かな女の子だったくじらは、中学に入るころには明るい性格に。 一方、くじらにグイグイ話しかけ、ドッジに連れ出し顔面ヒットさせたり・されたりしてゲラゲラ笑ってたたけしは、教室で女子(くじら)に話しかけられるのを嫌がるほど内向的に。 特にたけしの変化は「うわ〜こういうやついた…」と、あまりのリアルさに当時の気持ちが蘇りウヘェとなりました。あいつ今何してんのかな。 そして後半、くじらが自分の抱えている気持ちを吐露するシーンでは「も〜!やだそういうの聞きたくない!!」がMAX。 人が思春期でのたうち回っている姿を見せつけられるのは、自分がかつて同じようにみっともなく悶え苦しんで喚いていた姿を目の前で見せられているようで耐えられない…。 **人をこんな風に苦しませるほど、的を射たキャラクター・お話作りが丁寧で…敵ながらアッパレ(?)というような気持ち。** https://i.imgur.com/GPPRlDL.png >「大人達ってさ、全然味方じゃないのね」 >「一回 子供やってるのになんで分かってくれないの?」 >(『くじらの背中』藤田直樹) #やめてくれ…そのセリフは俺に効く。 まさに同じようなことを当時心のなかで思っていた確信があります…。もうやめて!私のライフはゼロよ…。 選考委員を務められた萩尾望都先生の講評は、「思春期の少年と少女の気持ちを丁寧においかけて、ありふれた表現になりがちなそれをちゃんと自分の言葉で描いて、とても面白かったです。」とのこと。 繰り返しになりますが、自分は苦い気持ちになって全然楽しめませんでしたが、それは間違いなくお話作り上手さゆえです。私のこの悶え苦しみを、褒め言葉としてお受け取ってもらえればと思います。 【アフタヌーン2019年12号】 https://afternoon.kodansha.co.jp/afternoon/2019/12

水曜日

高校デビュー失敗組は必読

水曜日 冬川智子
nyae
nyae

読んでいて、ちびまる子ちゃんが今女子高生だったらこんな感じかもなと思った。 どうせあたしなんか…と自分を卑下しながらも、心のどこかでは自分のポテンシャルを信じたい。いつか自分もあちら側に…という期待を捨てることができない女子高生の自意識がパンパンに詰まった、笑える青春?マンガです。 中学までの地味だった自分を捨て、高校デビューを目論むも根っからのオシャレ人間たちとの圧倒的な差を見せつけられ、絶望する主人公の鳩。かといって地味女子グループに入ることはプライドが許さない。 比較的自分とレベルが近いと思っていた友達も、オシャレになって恋をして彼氏ができる。比べて自分は“男子に話しかけられるか”を日々の目標にする始末。 流行りのおくれ毛を作っていったらボサボサだし疲れてる?と言われてしまうくだりは涙なしでは読めません(笑い涙です)。 鳩はそんなオシャレグループにかすりもしない自分に対して思い悩みながらも、全体的にノリが軽いのが読んでいて楽です。 鳩に自分を重ねて、自分の高校生活を振り返って、しょうもなかったけどそんな自分も今思えば未熟で愛おしいな、と思えるかもしれません。

Wizard’s Soul

嫌われても、泣いても、私は勝つ。

Wizard’s Soul 秋★枝
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

父の借金返済の為、世界的カードゲームの大会に出る一ノ瀬まなか。母譲りの「不快な」戦い方で、恋も友情も捨てる覚悟で戦いに臨む、まだ中学生のまなかは、戦いの果てに何を見出すのか……。 母の命を繋ぐ為に必死でゲームに強くなった幼少期、そして今は家族を守る為……。中学生のまなかが背負う荷物は、重すぎる。 それに耐えるように、試合中のまなかはいつでも無表情。それが彼女の試合の、異様な緊張感の演出になっていて、息苦しい。 まなかの戦術は「パーミッション」と呼ばれる、相手の行動を阻害するもの。それだけでもいやらしいのに、彼女はプレイに神経戦を持ち込み、相手を陥れる。これがハマる瞬間の、相手が「何も出来ずに呆然と見送る」絶望感が気持ち良い。 楽しくプレイするプレイヤーには嫌われる覚悟のまなかだったが、意外とプレイヤー達は、猛者であればあるほど、まなかを放ってはおかない。そして戦いの合間に、思いがけず人に好かれ、ガードが緩み感涙するまなかに、こちらも涙を誘われる。 このゲーム自体が嫌いだ、と思っているまなかは、次々と出会う猛者達の、様々な「好き」の形を見ることで、抑圧していた自分の心と少しずつ向かい合う。 この作品、例えば何らかの競技者で「自分は才能はあるが、競技への愛情が不足している」と悩んでいる人に届いて欲しい。まなかの心の確かめ方から、新たな気付きを得られるかもしれない。

楽しい生活

やっぱり大好き。

楽しい生活 加納あずま
名無し

昔から加納あずまさんの作品が大好きで、何度も何度も読み返していました。 ほのぼのしていて読んでいて心地よく、程よく笑いもあり、疲れたり落ち込んだりしたときに読むととても心が癒されます。 ギャグ漫画ではないので「ゲラゲラ」と言う感じではないけど、さりげなく散りばめられている「プッ」と吹き出させる笑いのセンスが絶妙です。 今回の『楽しい生活』も素晴らしい!! ごく自然に共感できる現実的な部分がありつつも、やっぱりどこかファンタジーと言うかメルヘンな雰囲気で、小さい子に読み聞かせても問題ないくらい、ほんわかとした絵本のようなストーリー。 一話完結タイプなのも読みやすく、一日の終わりに一話ずつ大事に読みました。 本当は一気に読みたかったけど、勿体なくて。。笑 お話とお話の間にある、お料理メモや旅行メモなども非常に勉強になるし興味深かったです! 何時であろうと、読むといつも凄く料理がしたくなります。 加納さんがイラスト入りのお料理本などを出してくれたら良いのにと、いつも思っています。 『毎日がピクニック』などのように、こちらの作品も電子書籍だけではなく書籍化してくれないかな。。 電子書籍は場所もとらずいつでもどこでも読めて便利ですが、古い考え方の自分としてはやはりお気に入りの作品は特に、手に持ってページをめくり読みたいなと思ってしまいます。 毒のない、とてもとても優しい作品です。 老若男女問わずオススメします。

煩悩寺

オトナの秘密基地、煩悩寺。

煩悩寺 秋★枝
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

小山田君の部屋は、ヘンテコグッズでいっぱい!恋に仕事に疲れた小沢さんは、今日も彼の部屋でダンボール箱を開ける。中身に驚き、笑って飲んで元気になれるこの部屋、通称「煩悩寺」で、今日は何して遊ぼうか? 小山田、小沢と小山田の友人・島本の3人は、部屋にあるグッズで遊んだり、それをネタに笑い転げたりと、あまり社会人っぽくない遊びに興じる(酒は飲む)。その日の遊びは、開封する段ボール箱任せ!という博打感を楽しむ、彼らの力の抜け具合がいい。 煩悩寺にあるグッズはとにかく悪趣味、煩悩丸出しで、くだらないものが多い。しかしそれらは裏を返せば、欲望に忠実で、隠し事がないということ。小山田の基本ウェルカムな性格もあって、小沢にとって煩悩寺は、素の自分のままでいられる、寛げる場所のようだ。こんな秘密基地、私も欲しい。 失恋の痛手や仕事のストレスを癒してくれる煩悩寺は、小沢にとって、次第に大切な存在になってゆく。そしてそんな場を創り出す「変人な善人」小山田との関係も……。 煩悩寺のグッズ達をゲラゲラ笑いながら遊び、受け入れる小沢は、島本に言わせれば「素質あり」。部屋の主との相性はいいんじゃないの?ということで、いつも楽しそうな息のあった二人の関係を、島本と一緒にいじりながら眺めていたい、そんなお話。

トッケビ

韓国の心霊怪奇譚…!

トッケビ モス
たか
たか

マンバでサムネを見た時からメチャクチャ面白そうだな〜と思って読んだ作品。マジで超よかったです…! 息子が奴隷女の霊に取り憑かれているチェ家の元に、歳もとらず病気にもかからぬキム・ソバンという男が訪れる。男は人や人でないものが死に際に“恨”を持つことで生まれる存在のことを「トッケビ」と呼び、それを祓ってやると家の主に伝えるが…。 自分の知らない、外国の民俗文化が反映された心霊話がテーマというだけでもおもしろいのだけど、それ以上に絵と演出がメチャクチャよかった! コマが物語に合わせてダイナミックに割られていたのが雰囲気を高めていたり、見開きシーンでは水墨画のタッチを活かしたり。そしてソバンの吹き出しの枠が人魂のように揺らめき、尾を引くことでセリフの順番を示していたのが面白かった! https://i.imgur.com/DsCvZXF.jpg (『トッケビ』モス) これ、1話完結でソバンが旅しながら各地のトッケビを祓う話にならないかな…この絵のクオリティを保つためにアフタヌーンとか月刊誌とかで連載化してほしい…!! 【DAYS NEO×ヤングマガジン「弾丸掲載権獲得杯」】 https://daysneo.com/info/yanmagayomikiriresult.html 【ヤングマガジン 2019年48号】 https://comic-days.com/magazine/10834108156684697908 【元掲載ページ】 https://daysneo.com/works/cd6a1c866a26592f1010cb1adf397f75/episode/4a1295ca60dabe8651ae43fda81c9d08.html