読んでて嫌〜な気持ちになったしんどい読切。というのも主人公・たけしと、小学生の時に仲が良かった女子・くじらの関係や抱えている悩みがあまりに中学生すぎて「もうやめて…!」となるから。
思春期の怒り苦しみでグチャグチャした感情なんて、もう二度と思い出したくない…。頑張って苦い表情をしながら読み通しました。岡田麿里作品のようなつらさがありました…。
ベリーショートで背が高くて、給食が全然食べられない静かな女の子だったくじらは、中学に入るころには明るい性格に。
一方、くじらにグイグイ話しかけ、ドッジに連れ出し顔面ヒットさせたり・されたりしてゲラゲラ笑ってたたけしは、教室で女子(くじら)に話しかけられるのを嫌がるほど内向的に。
特にたけしの変化は「うわ〜こういうやついた…」と、あまりのリアルさに当時の気持ちが蘇りウヘェとなりました。あいつ今何してんのかな。
そして後半、くじらが自分の抱えている気持ちを吐露するシーンでは「も〜!やだそういうの聞きたくない!!」がMAX。
人が思春期でのたうち回っている姿を見せつけられるのは、自分がかつて同じようにみっともなく悶え苦しんで喚いていた姿を目の前で見せられているようで耐えられない…。
人をこんな風に苦しませるほど、的を射たキャラクター・お話作りが丁寧で…敵ながらアッパレ(?)というような気持ち。
「大人達ってさ、全然味方じゃないのね」
「一回 子供やってるのになんで分かってくれないの?」
(『くじらの背中』藤田直樹)
#やめてくれ…そのセリフは俺に効く。
まさに同じようなことを当時心のなかで思っていた確信があります…。もうやめて!私のライフはゼロよ…。
選考委員を務められた萩尾望都先生の講評は、「思春期の少年と少女の気持ちを丁寧においかけて、ありふれた表現になりがちなそれをちゃんと自分の言葉で描いて、とても面白かったです。」とのこと。
繰り返しになりますが、自分は苦い気持ちになって全然楽しめませんでしたが、それは間違いなくお話作り上手さゆえです。私のこの悶え苦しみを、褒め言葉としてお受け取ってもらえればと思います。
【アフタヌーン2019年12号】
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【四季賞2019秋 四季大賞作】「くじら」と「たけし」は幼馴染の中学2年生。小さい頃は男も女もなくみんないっしょになって遊んでいたのに、この頃周りも自分も変だ。体の成長に自意識が悲鳴を上げる、嵐のような思春期ぶつかり合い!な物語。(アフタヌーン2019年12月号)