かしこ
かしこ
2021/10/06
メンツが豪華すぎるしエピソードはどれも珠玉!!
生い立ち〜ホラー漫画家になるまでの道のりをインタビューして漫画化したものです。本人が描いた自伝ではありませんが、宮崎克の取材力とあだちつよしの漫画力によって本人が描くよりも読み応えのある伝記物になっています! 以下、ひとこと感想メモです。 【1巻】 古賀新一…手塚治虫も登場するし本家マンガ道と同じくらいウルッとしました。 日野日出志…何を思いながら「蔵六の奇病」を描いたかの話が読めてよかった。 伊藤潤二…漫画家になる前は歯科技工士だったことも、デビュー作が「富江」だったことも知らなかった! 犬木加奈子…普通の主婦がホラー漫画の女王と呼ばれるまでになったのは文字通り人生をかけてたからだったんだなぁ…。 【2巻】 御茶漬海苔…編集長に言われた一言が衝撃的すぎる。今だったら大問題になってると思う。 諸星大二郎…本人のインタビューもあるけど諸星大二郎だけ編集者の証言で構成されてる部分が多いので、インタビューでも寡黙だったんだろうなって思った(笑) 外薗昌也…霊感があることも含めてホラー漫画家のイメージそのままの人だと思った。 近藤ようこ…高橋留美子と同級生なことは有名だけど、本人から語られる話を読んだことがなかったのでとても貴重だった。今も交流があるんだなぁ。
かしこ
かしこ
2021/10/02
ネタバレ
瞬間的には傑作だった
去年、ある人に「ステイホーム中にあしたのジョーを読みました」と話したら「3大ボクシング漫画はあしたのジョーとがんばれ元気と僕 BOKUだ」と言われて、1年間すっかり忘れてたんですが急に思い出したので読んでみました。 平凡を絵に描いたような高校生の鈴木ひろしは普通であることがコンプレックスでしたが、同級生の訳あり美人との出会いがきっかけでボクシングを始めます。こうして今まで普通の生活をしていたからこそ気づかなかった才能が活かされていくのですが、その1つが「躊躇なく人を殴れる」だったりします。ただボクシングの試合でこれが出来なければ負けてしまうので実は重要なことでもあるのです。 訳あり美人や最強のライバルとの関係が中途半端で終わってしまったので消化不良がハンパないですが、主人公の「いじめられっ子だったとか、不幸な生い立ちだとか、そんなバックボーンに頼ってる野郎なんかたいしたことねぇ。本当に怖いのは普通なのに闘うと強い人間だ。」とか「リングじゃ他人に気を遣う必要なんてない!!いい奴に思われたいなんてそんなのはボクサーじゃない!!憎くもない人間を殴り倒す…サイテーの奴がサイコーの世界だ!!僕が主役だ!!」というセリフにはグッときた。瞬間的に傑作になっているシーンは多々ある。 もっといいラストはあったと思うけどあれはあれでいいと思います。バッドにもグッドにも解釈できるラストなんじゃないでしょうか。ただ3大ボクシング漫画の1つにこれを選ぶのは「普通じゃない」ですね。今度会ったら理由を聞いてみます。
かしこ
かしこ
2021/09/05
ネタバレ
ある連続殺人者の生涯
サブタイトルに「ある連続殺人者の生涯」とあったので、あぁそういう話かと分かった上で読んだのですが、生まれた場面から物語が始まるので、こんなに可愛い赤ん坊が殺人鬼になってしまうのか…となかなかしんどいものがありました。 昭和27年、主人公の梅川一期は土木建設業を営んでいる父親の元に生まれます。年を取ってから生まれた子供なので父親は息子を可愛がるのですが、生まれて間もない一期が麻疹をこじらせて片方の肺を取ったことで、祖父から体の弱い子は梅川家の跡取りに相応しくないと言われて里子に出されてしまいます。 里親の老夫婦はいい人たち(おばあさんがイタコをやっていたり、寝かしつけに日本神話を聞かせるのは少し普通じゃないけど…笑)でしたが、おじいさんから丈夫に育ててもらった一期は「どうして自分だけが家族と一緒に暮らせないのか」と不満に思い、山奥から一晩中歩いて家族の元に帰るのです。 こうして家族と暮らすことになった一期ですが、その頃には弟の利行が生まれていて、自分の代わりに跡取りとして育てられていました。一期はこの頃から肺を取った時に出来た大きな傷を見ながら「自分には何かが欠けている」と思うようになります。 小学生になると体の傷のことでいじめられ、クラスに馴染めずにいた一期でしたが、そこへ顔に大きな傷がある文也という転校生がやって来ます。お互いに仲間意識が芽生えた二人は親友と呼べるまで仲良くなりますが、ある日ふとしたことで文也の顔の傷が偽物だということを知り、一期の運命が大きく変わるのです…。 こうして一期の幼少期を振り返ってみて、どうしたら殺人鬼にならなかったかも考えてみたけど、何をやっても悲しい結末になるのは変えられないような気がする…。 物語の中盤で、高校生になった一期が文也の父親に会いに行くシーンもすごかったけど、夢の中で母親が川を泳いでアパートにやって来て「隠してるものを見せなさい」と言われるシーンもすごかった。 終盤は(ネットの感想で「一期が就職してから」と書いてるがいた…笑)どうなんだろう…。私は世の中に不満がない平凡な人間なのかもしれないって思ったなぁ。だからこそ弟の利行が一期に対して持っている歪んだ感情の方が共感しやすい。でも昭和天皇の崩御と同じタイミングで全てが終わっていく最終話は、タイトルもそのままズバリ「死」の一文字で、かっこいい終わり方だと思いました。
かしこ
かしこ
2021/09/04
コミカライズの最高峰でしょ!
大和和紀先生の絵ってゴージャスなのに可愛らしくって令和になっても変わらず憧れさせてくれる魅力があります。そんな先生が千年前から愛されている名作「源氏物語」を漫画化してくれているなんて最高としか言いようがありませんね。私も寝ても覚めても光源氏のことしか考えられないほど夢中になって読んでしまいました。 結構ゲスいこともしてるけどこんな絶世の美男に愛されるなら大抵のことは許すと思ったり、最愛の人である紫の上の死期を早めたのはやっぱり光源氏の浮気心のせいだから許せんとも思ったり、心が揺れまくりました。こうやってみんな「源氏物語」にハマってしまうんだなぁ…。 ただ今回初めて読んでみて後半から始まる光源氏が40歳を超えてからの話もすっごく面白いんだなってことを知りました。生まれた時からイケメンの光源氏も年を取ってからは若い人に嫉妬したり恋愛で憂き目を見ていたなんて人間らしくって新鮮です。 1コマ1コマが美しすぎて読み飛ばせないので描くのも相当大変だったはずと思っていましたが、読み終わってから大和和紀先生のインタビューを検索しまくってたら「私は描くの早い方なのよ」とおっしゃってるのを発見して驚きました。やっぱりレジェンド作家と呼ばれる方々って普通じゃないですね!才能がすごい!