ひさぴよ2021/04/07最近で一番良かった四季賞は近年のアフタヌーン四季賞は、どの作品もハイレベル過ぎると思いませんか。 「最近で一番良かった四季賞は?」と聞かれたらしばらく悩むのは確実。もし一つだけ選べるなら、この『石読み』(四季賞2020冬)を選びます。ちょっと気が早いですが。石読み薄雲ねず
ひさぴよ2021/04/07アラフォーおじさんをサイボーグ化する話美人科学者・白井景子と冴えないアラフォー男・山田カズオ。偶然であった二人だったが、山田はなすがままサイボーグに改造され、思わぬ活躍?をするコメディ連載。 脳に電極を刺して感情をコントロールしたり、腕にパワーアームを着けさせたり、優しそうな雰囲気で、山田の人権など無視して機械化するのが面白い。 作者は『競艇少女』の小泉ヤスヒロ先生。十数年ぶりにこの方の漫画を読んだけど、ヒロインの表情が良いよなあとしみじみ思いました。今日から派遣サイボーグ小泉ヤスヒロ
ひさぴよ2021/04/06一話目の評価がストップ高で止まっている漫画自分の中で、「一話目の評価だけ、ストップ高で止まっている」漫画ってありませんか。要は期待値がMAX高かったときの感情を、ずっと忘れられずにいる状態です。ジャンプ漫画だとこの『奇怪噺 花咲一休』がその一つでした。 読切版の『奇怪とんち噺 花咲一休』を読んだ時点で、絵も好きで、キャラも良かったので、一気に”化ける”空気感は確かにあったことを覚えてます。一休さんのイメージ像も新しいですし、何よりも、”とんち”勝負を持ち込むことで、ひょっとしたら「幽☆遊☆白書」の四次元屋敷のような異次元バトルを見せてくれるんじゃないか!?という期待感でいっぱいになってしまったのです。 1話目は、確かにそう思わせてくれるのに充分な面白さがありました。 が、2話以降はテンプレ展開が目立ち、とんちはどこへやら、ありがちなバトル展開が続き、打ち切りへ…。 もっと時代考証を詰めていれば、、とんちを追求するスタイルを貫いていれば、、、ああしていればこうしていれば、、といまだに惜しいと思い続けてる漫画です。奇怪噺 花咲一休小宮山健太 河田悠冶
ひさぴよ2021/04/06「君となら、悲しみは…「君となら、悲しみは2等分だ ほら、私たちは共有している!」(冒頭のモノローグより) 冒頭の鮮烈なメッセージに導かれるように、物語のラストまで一気に読みました。 これはとても良い漫画ですから読んで!としか言えないですが、誰しも同じように「良い」と感じるかどうかわからないです。ただ、漫画としては秀でてるのは確かで、その圧倒的な漫画の上手さを超えて、読んでいて情景や感情が迫ってくるような感じがしました。 全体的に暗い物語ではありますが、「海のち、はれ」のタイトルが示す通り、希望の込められた物語で、読後感は良いです。海辺の物語だからかな…?「山」ではこうはならない気もします。 作者の高見奈緒先生は、これが初単行本とのこと(すごい) 早くも映像化の依頼があってもおかしくないですよこれは。 海、のち晴れ高見奈緒1わかる
ひさぴよ2021/04/06意外性のカタマリみたいな家庭教師超が付くほどの人見知り主人公・池野しらすと、家庭教師”坂もっちゃん”の二人が出会い、少しずつ勉強を通じてコンプレックスを克服し、成長していくお勉強コメディ。コワモテの坂もっちゃんだけ別世界のキャラみたいですが、全体的に絵は可愛いくて読みやすいマンガでした。 勉強も生活態度も不出来なしらすに対して、めちゃくちゃ怒ってると見せて優しくも厳しく指導する坂もっちゃんが面白おかしくもあり、同時に教育者として真っ当な意見を言ってたりして、読んでる方も指導されてるようでドキッとさせられます。 作者のぬこー様氏は代々木アニメーション学院の講師をされてる方だそうで、「人に教える」という事柄に関しては、非常に説得力があるように感じました。 ギャグの引き出しも多くて、主にモノローグで突っ込むのですが、地味に本部以蔵(守護れねェ)パロディとか入れてくるのでニヤリとさせられます。 ページ数の薄さ以上に濃い本でした。人見知り専門家庭教師 坂もっちゃんぬこー様1わかる
ひさぴよ2021/04/06『まんぼう』って聞くとこの漫画を思い出すニュースで『まんぼう』って聞くたびにこの短編集の話を思い出す。何回読んでも新鮮な面白さがあって、オチまで含めてやはり傑作だと思う。この短編集は武富健治先生の”原点”とされている初期作品を収録しており、主に思春期の中高生を描いた作品が中心となっている。表題作『掃除当番』『ポケットにナイフ』は、後の鈴木先生に繋がるお話で、切なくも崇高さを感じさせる素晴らしい短編だ。『シャイ子は本の虫』は、”本好き”だった学生に刺さる内容で、特に気に入ってる。まさに珠玉の短編集だ。掃除当番武富健治
ひさぴよ2021/03/31「女商人」が主人公の…「女商人」が主人公の、硬派な中世ファンタジー作品。よくありがちな異世界/中世ものかと思いきや、とても真面目な漫画でした。 主人公は色気よりも商売といった感じで、最初こそとっつきにくいですが、計算高く冷徹そうに見えて情の深いタイプ。周りを利用しながらも、自分の人生はきっちり自分で始末をつけるという強い意思を感じる主人公像です。 物語序盤で、同業者に騙され無一文になり、辿り着いた修道院の女性たちの所で、最初はお世話になります。そこで商いを興し、知恵を使ってお金を稼いで困難を乗り越えていく、という痛快なストーリーとなってます。 見た目はちょっと地味ですが、一度じっくりと読めば間違いなく面白いと言える良い漫画だと思います。 赤髪の女商人のゆ
ひさぴよ2021/03/21天才女芸人ミヤコ蝶々の人生とは戦中の話とヒロポン中毒のエピソードが読みたくて購入。・・・しかし期待していた内容と若干違ってた。短いページ数の中に、ミヤコ蝶々の人生が駆け足で詰め込まれているせいか、文字情報も多くて、ほとんど学習マンガを読んでいる感じ。思っていたよりマジメな自伝マンガでした。 ページ数49pで値段は550円。 同人誌なら全然気にならない額ですけど、 商業誌のマンガと並んで売られているとやや高いと感じてしまいますね。ひらひらり~ミヤコ蝶々物語~長崎さゆり
ひさぴよ2021/03/12特撮ヒーロー好きが生み出した、怪しすぎる漫画特撮ヒーロー好きが生み出した「カミブクロ仮面」というキャラクターを元に、映像化や劇場上演などを経て、漫画版まで作ったという流れでできた作品だそうです。自分は漫画で存在を知りましたが、表紙のあまりの怪しさに、ググってから素性を知りました笑 一般的な商業漫画の作りではないのは明らかなので、商業誌と比較することはしませんが、紙袋を被ってヒーローごっこしたことのある人種なら、けっこう楽しめる漫画ではないでしょうか。値段も安いし、もし興味があれば、一読してみることをおすすめします。カミブクロ仮面チバコウゾウ
ひさぴよ2021/02/26士郎正宗から黒田硫黄に辿り着く発想力がヤバいまず、この本を企画した人の発想と、本当に実現させてしまう力量が凄いと思います。士郎正宗原作を黒田硫黄に依頼するなんて考え方、一体全体、何をどうしたら思い付くのでしょうか。私はアップルシードも、黒田硫黄作品も好きでしたが、何かが激しく合いそうな気がする一方で、これはどうなんだという両方の気持ちが同居する作品でした。 蓋を開けてみれば、作風は真逆ながらしっかりとハードSFしてまして、特にごちゃごちゃした「雑多さ」なんかは、本家とは別の方向でしっくりくるものがあります。いやいや、原作版アップルシードと全然違うじゃないか!とおっしゃる方もいるかと思いますが、私にはこのアップルシードαはもう一つの世界のアップルシードとして存分に楽しめました。 とはいえ、アップルシードの世界観にはいまひとつマッチしてない部分もあったのは確かです。特に戦闘シーンは泥臭くスタイリッシュさがないなんてことは言いませんが、黒すぎて何が何だかわからない場面が少なからずありました。まぁ元々、相反する性質のものが融合してるので、それくらいは仕方ないという気持ちもありつつ、何ならアクション抜きの「アップルシード」でも全然良かったのになぁと思ったり。アップルシードα黒田硫黄1わかる
ひさぴよ2021/02/18東京新聞(中日新聞)の連載で読んでいた東京新聞(中日新聞)を取っていた人には懐かしい作品。東京新聞の日曜版で毎週読んでいました。釣りバカ日誌の作者・北見けんいち先生が戦後の子供時代の思い出を回想するように戦後の日本を描いた作品です。 まだ戦争の傷跡が残る東京が舞台。生活に困窮し物資が乏しい時代でありながら、主人公の元気くんたちは友達と遊ぶことが中心の毎日。私は当時、ちょうど元気くんと同い年くらいでしたが、何もなくても楽しいことや面白い出来事に変えてしまう元気くんから、ずいぶん学ぶ所は多かった覚えがあります。とにかく娯楽や遊びに対しての執念がものすごかった。 実際は、生きていくだけで精一杯のはずなのに、作品から悲惨さはあまり感じられません。元気くんの周りには、大変な状況の中で前を向いて暮らす周りの大人たちが沢山いて、根底には明るさがあるからです。ちょっと説教臭いときもありますが、大人になった元気くん(中年)が過去を振り返って、しみじみと当時を語る姿が毎話印象的でした。焼けあとの元気くん北見けんいち3わかる
ひさぴよ2021/02/17原作未読でも、お笑いファンでなくとも入り込める原作・又吉直樹氏の「火花」のコミカライズ作品。話題作だけど未読、という人は結構多いんじゃないでしょうか。私もその一人です。まず原作を誤解してた所があって、芸能に関心がある、お笑いファン向けの作品だと勝手に勘違いしてました。決してそんなことはなく、人間は誰しも漫才師である、という言葉の通り、お笑い好きに限らず広く開かれた物語でした。 読めば純粋に面白い作品で、作画の武富健治氏の絵の力によって、ページをめくる毎に物語に引き込まれていきます。原作未読ながら、小説とは別の魅力を存分に引き出されている…と思えてしまうほど、心に迫るものがあります。 芸人の現実を描く一方で、神谷のように才能がありながら、袋小路に向かってしまう人間に対して、厳しくも優しい眼差しを作品全体から感じました。 物語の中心人物である徳永か神谷、どちらに感情移入するかは読む人によって異なると思いますが、下巻で徳永が神谷に投げかけた一連の言葉がすべてのように自分には感じられました。 上下巻で長さも丁度良いです。原作未読でも、お笑いファンでなくてもおすすめです。火花武富健治 又吉直樹1わかる
ひさぴよ2021/02/12ネタバレ最後まで難解だったが本格派な諜報マンガが好きな人には堪らないと思う最終回まで読了。本格派なスパイアクションが好きな人には堪らない作品だったと思う。 遊びは一切なく、ハードボイルド中のハードボイルド作品と言って良いが、回を追うごとに話が複雑化し、各登場人物の思惑や、行動理由を把握するのが非常に掴みにくい傾向にあったのが難点。中東編、特にミルクマンの辺りまでは、エンタメ的なワクワク感があったがクーデーター発覚以降からは事態を理解するのに精一杯になってしまった。個人的には、これまで読んだ真刈信二の原作漫画の中で最も難しいと感じたので、もう少し解説にページを割いて欲しかった。 「同素体」とは結局何だったのか… キングダムの正体・目的もハッキリとは掴めなかった。なぜ核を撃とうとしたのか。サガラ~Sの同素体~かわぐちかいじ 真刈信二3わかる
ひさぴよ2021/01/20マンガは自由だ!自由を感じさせる真っ白い装丁、独創的な構図、あっと驚く意外なオチの数々。まさに自由帳のような面白さが味わえる短編集です。TASなどのゲームネタが多いので若干人を選ぶ話もありますが、元ネタを知らずとも楽しめる作品だと思います。(あとがきで解説もある)まずは試し読みで1話目「KILLING SPREE」だけでも読まれてみては。人がたくさん死にますが面白いですよ!まがりひろあきのじゆうちょうまがりひろあき
ひさぴよ2021/01/16素直な気持ちで読むべし帯の「泣ける!!!」という煽りで、いまいち読む気が起きなかった作品でしたが、フラットな気持ちで読んでみた所…アラ、とても良い漫画でした。ほっこりとした空気感で、統一感のある柔らかなタッチが特徴的。おばあちゃんを中心に、芸術・工芸に通じた人達の交流から始まり、現在→過去→現在とお話が展開していきます。 過去編では戦時中のエピソードが出てきます。今のおばあちゃん世代は戦中または戦後間もない生まれなので、さらにそのお母さんのエピソード、という形になります。もはや今の時代のおばあちゃんも戦争体験世代ではないという時代なんですよね。なので回想の中では、本当の戦時中はもっと厳しかったんじゃないか?と思う部分もありましたが、それでも誠実に描かれている印象を受けました。ただ、過去編から現在へ切り替わる表現がちょっとわかりにくかったですね。 悲しい出来事もあるものの、読んでいて温かい気持ちになれる作品です。特に、のどかな田舎の描写は素晴らしいと思いました。 くらしき ぎゃらりーかふぇ物語ねこまき(ミューズワーク) 志賀内泰弘 八朔5わかる
ひさぴよ2021/01/13混じりっけのない純粋さ「怪物事変」藍本松先生のデビュー作(2007年ジャンプ) 土を食べる“キメラ人間”マディと、科学者グレイのハートフル活劇。何も知らず生まれたばかりの子ども同然のマディに対して、クレイが生きていく為に大切なことを教えながら、互いに影響を受け合い、成長していきます。 特に大きな盛り上がりを見せることもなく、ごく自然に2巻で打ち切りとなりました。 バトル漫画主体のジャンプにあって、バトル行くのか、またはコメディ路線なのか、ハートフルで行くのか、方向性で迷われた部分はあったように感じます。 変幻自在のマディの能力を持ってすれば、バトル漫画に全振りすることも出来たはずです。けれどそうしなかったのは、マディとクレイの二人をあるがままに描きたかったのではないでしょうか。 マディがマディのままであり続けた結果、打ち切りでも悲壮感は無く、またどこかで会えるような気持ちにさえなっていました。 藍本先生のキャラクターをどこまでも大切にする姿勢は、その後の作品にも多分に受け継がれていると思うのです。MUDDY藍本松
ひさぴよ2021/01/04描写力がすごい1985年頃の静岡を舞台にした少年時代のノスタルジックなエピソードの数々。学校や帰り道での悪ふざけの流行だったり、当時の遊びが沢山出てくる。学校の先生も平気で生徒をブン殴る。70年代後半〜80年代前半生まれなら共感することの多い世代になると思う。 何気ない日常の話が多いが描写力がズバ抜けていて、泣かせる話もあったが転校してしまった女子と、別のチクリ女子の容姿が似過ぎで少し混乱してしまった。ちなみに、浜田省吾は出てこなかった。 1巻まで読了。浜翔 HAMASHO!白鳥貴久
ひさぴよ2021/01/03樋口一葉の心の内を描いた傑作短編📷2014年のモーニング9号に掲載された樋口一葉の短編読み切り。「奇跡の14ヶ月」と言われた、最も華々しかった時期を描いた作品で、年に1回は読み返しているほど好きな読切です。 教科書的な一葉像ではなく、一葉自身が抱える心の葛藤を全面に表現していて、静かで暗い雰囲気ながらとても気迫の込もった作品です。この物語に描かれている一葉こそが、本当の人物像だったのかもしれない、とまで思えてしまうのです。 電子書籍ストアでは165円、杉本亜未先生のnote上では100円で購入できます。 https://note.com/amiscake/n/ne10eb9400342闇の瞬き~樋口一葉、奇跡の14か月間~杉本亜未3わかる
ひさぴよ2021/01/02ふつうが一番むずかしいごく普通の小学生男子・和田広彦くんの視点を通して日常を描いた作品。一般的な子どもの多くが経験するであろう、素朴な体験が散りばめられている。大人の読者であれば何かしら共感する部分があるが、「ぼのぼの」のように、子どもと一緒に楽しめるマンガかというと、子どもには少し退屈な内容かもしれない。やはり、少年時代を振り返りたい大人の読者向けのような気がする。淡々とふつうの話が続く中、本の後半に差し掛かって、コロナ禍の世の中を作品に取り入れるという大胆な路線変更が入る。普通ではなくなった世界を逆手に取り、ふつうのきもちとは何かを問い直した意欲作だ。ふつうのきもちいがらしみきお1わかる
ひさぴよ2021/01/01これからも必要とされる物語2020年11月、マンバ通信の新連載「壊れやすい卵のための21世紀マンガレビュー」の第1回「淀川ベルトコンベアガール」は、これまで読んできたマンガ系レビューの中で最も記憶に残る記事の一つとなりました。なぜなら、取り上げた作品のレビューが素晴らしいだけでなく、自分の中で、漫画とはどういう存在であったかを、改めて考えるきっかけを与えてくれたからです。 https://manba.co.jp/manba_magazines/11638 書き手の可児洋介さんは、文芸誌ユリイカなどで漫画評論を執筆されている方で、文章からも真面目で誠実な雰囲気が伝わってきて、個人的に好きなライターさんです。 まず、記事の序文で村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチになぞらえて、拡大を続ける物語世界の現状と、漫画というものの文化の立ち位置を示されています。 「壊れやすい卵を無慈悲なシステムの壁から守るものが物語である」とするならば、これは絶対に読まなければ、という思いに駆られまして、気付いたら全3巻を読み終わっていました。それ以降も、二度三度と繰り返し読み直してますが、レビューの通り、本当に素晴らしい漫画でした。作品の見所についてはマンバ通信の記事中で、余すところなく紹介されていますので、そちらを読むことをおすすめします。 個人的に感じた事としては、10年前に完結した漫画ながら、2021年の今読んでもそこまで古さを感じさせないテーマである、という部分にあります。今の日本社会を取り巻く状況があまりにも変わってないせいなのか、この作品が孕む幾つものテーマが、今後も間違いなく必要とされる物語であり続けるであろうと感じました。 何一つ不自由なく幸福な人生を送っていたとすれば、その人にとって、もしかして必要のない物語かもしれません。ただ、生まれ育ちによってそれぞれの置かれた状況があり、価値観も何もかも異なる他人がいるということを知るということ、立場の異なる他人の人生にどれだけ思いを馳せることができるかということを、この作品からは投げかけられているような気がします。 変更された最終回について。 東日本大震災を契機に、村上かつら先生が表現したものは、うまく言葉にはできませんが「他人のために祈るという行為そのもの」であったのではないかと感じました。かよちゃんが祈る対象が、自己から他者へと次第に移り変わり、他人のために心の底から祈る姿に、私は心を打たれ感動したのだと思います。もはや宗教や神様なんてものは何でもよくて、真に他人を思いやる気持ちこそが、すべての始まりなのだと。そう受け取りました。 最後に、マンバ通信の記事でも触れられていますが、各巻のあとがきにて作品の生まれた経緯や時代背景、作品に込められたメッセージが記されています。それと、CUE3巻に本作の元となった読切作品「純粋あげ工場」が収録されていますので、余裕があればそちらも読んでみると良いです。本編で前作と繋がりがあるコマの存在に気付けます。 https://manba.co.jp/boards/16324/books/3 さらに完全に蛇足ですが、あとがきネタでもう一つ。 取材先の食品工場というのが、「日の出食品」「太子食品工業」と書いてあります。いずれもスーパーでよく買う油揚げを作ってるメーカーさんだったことに気付きました。日常的に食卓でお世話になってる人も多いのではないでしょうか。特に太子さんのは他より美味しいので、おすすめです。🦊 http://www.taishi-food.co.jp/?pg=143530690610828淀川ベルトコンベア・ガール村上かつら2わかる
ひさぴよ2020/12/31ネタバレゆるそうに見えて良質なハードSF漫画少しネタバレありの感想。 一見、ゆるそうな日常を描いた漫画に見えますが、中身はとても良質なハードSF漫画です。 地球に外星生物が漂着するようになる少し先の未来。 外星人たちによる迷惑行為・事件を解決するため、「首都圏民営警察外星生物警備課」なる警察組織が対応するのですが、やることはご近所トラブルの対応から地球を脅かすレベルの危機まで何でもアリの業務。 近隣住民や所轄の警察官から、早く処理しろ!と小言を浴びながら、言葉の通じない外星人に交渉しては、必死に言うことを聞いてもらうという、実に苦労の多いお役所的な組織なのです。イザという時は外星人「クタムさん」に協力を仰ぎ、何とか解決に導くまでが話の基本になります。 クタムさんをはじめとした外星人の外見がグロテスクで、主人公たち人間側もそれほど美形キャラには描かれてはいません。ややもすると見た目で敬遠されてしまうかもですが、主人公と外星人の会話の掛け合いが何より面白いので、セリフや設定に注目して読んでもらうのが良いと思います。 全体的に力の抜けた雰囲気でまったり読めますが、作中には練り込まれたSF要素が巧妙に溶け込んでおり、非常に緻密に作り込まれた世界であることが分かります。 最終章では、これまで積み上げてきたハードSF要素が炸裂します。想像を超えた方向へと物語が進み、怒涛のラストを迎えるのです。SF作品ではある種の不思議な感動を「センス・オブ・ワンダー」と呼びますが、この作品のラストはまさにそれで、素晴らしい読後の余韻を残してくれました。 ある程度、SF好きな方であれば間違いなくオススメで、そうでない方でも(SF漫画の中では)比較的読みやすい部類だと思います。お試しあれ!ベントラーベントラー野村亮馬2わかる
ひさぴよ2020/12/31ユリイカ/マンガ系の特集号青土社から刊行されている月刊誌『ユリイカ』のバックナンバーから、漫画作品・漫画家の特集号をまとめました。 ---- ユリイカ2020年9月号 特集=女オタクの現在 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3472 ユリイカ2019年3月臨時増刊号 総特集☆魔夜峰央 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3270 ユリイカ2018年12月号 特集=雲田はるこ http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3236 ユリイカ2018年9月臨時増刊号 総特集=山本直樹 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3195 ユリイカ2018年4月号 特集=押切蓮介 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3150 ユリイカ2017年11月臨時増刊号 総特集=志村貴子 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3091 ユリイカ2017年3月臨時増刊号 総特集☆東村アキコ http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3011 ユリイカ2016年11月号 特集=こうの史代 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2985 ユリイカ2016年11月臨時増刊号 総特集=赤塚不二夫 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2977 ユリイカ2016年3月号 特集=古屋兎丸 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2191 ユリイカ2016年2月臨時増刊号 総特集=江口寿史 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2188 ユリイカ2015年1月臨時増刊号 総特集=岩明均 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2193 ユリイカ2014年3月号 特集=週刊少年サンデーの時代 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2213 ユリイカ2013年8月号 特集=今日マチ子 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2237 ユリイカ2013年3月臨時増刊号 総特集=世界マンガ大系 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2229 ユリイカ2012年12月臨時増刊号 総特集=永野護 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2258 ユリイカ2012年12月号 特集=BLオン・ザ・ラン! http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2259 ユリイカ2012年1月号 特集=武富健治 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2245 ユリイカ2010年12月号 特集=荒川弘 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2288 ユリイカ2010年2月号 特集=藤田和日郎 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2276 ユリイカ2009年10月号 特集=福本伸行 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2502 ユリイカ2009年7月号 特集=メビウスと日本マンガ http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2498 ユリイカ2009年3月号 特集=諸星大二郎(都留泰作) http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2493 ユリイカ2008年6月号 特集=マンガ批評の新展開(インタビュー:荒川弘、島田虎之助) http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2512 ユリイカ2008年10月臨時増刊号 総特集=杉浦日向子 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2517 ユリイカ2007年12月臨時増刊号 総特集=BLスタディーズ http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2535 ユリイカ2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2533 ユリイカ2007年9月号 特集=安彦良和(対談:伊藤悠) http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2530 ユリイカ2007年6月臨時増刊号 総特集=腐女子マンガ大系 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2527 ユリイカ2007年1月号 特集=松本大洋 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2521 ユリイカ2006年7月号 特集=西原理恵子 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2542 ユリイカ2006年1月号 特集=マンガ批評の最前線 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2536 ユリイカ2005年9月号 特集=水木しげる http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2560 ユリイカ2005年2月号 特集=ギャグまんが大行進 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2552 ユリイカ2004年7月号 特集=楳図かずお http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2570 ユリイカ2003年8月号 特集=黒田硫黄 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2588 ユリイカ2003年11月号 特集=マンガはここにある・作家ファイル45 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2592 ユリイカ2002年7月号 特集=高野文子 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2603 ユリイカ1988年8月臨時増刊号 総特集=大友克洋 http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=2907 ユリイカ1987年 詩と批評 特集 マンガ王国日本 ユリイカ1981年7月臨時増刊 総特集少女マンガ ---- 以上で、マンガ特集号は全てだと思いますが、他の号でマンガ情報が載ってる情報ありましたらご指摘お願いします。 ちなみに持っているバックナンバーは8冊程度で、古本でコツコツ集めている途中です。いずれは全号集めたい…。 他にもおすすめの特集号/インタビューなどあればぜひ語っていってください。自由広場2わかる
ひさぴよ2020/12/29オカルト×リーガルものの組み合わせが絶妙「ピアノのムシ」の荒川三喜夫先生の新連載。主人公は地方裁判所に務める裁判官で、ガチのオカルトマニア。アカリと呼ばれる少女と共に、事件の裏に潜むオカルト現象を暴いてゆく…。 真実だけを見つめる裁判官という仕事と、その正反対に位置する不確実なオカルト現象。現実には絶対に交わることのない要素が合わさった結果、エンタメとして非常に面白い作品になってるように思います。タイトルもキャッチーかつお洒落で良いですね。ファンタズマ(Fantasma)とは、イタリア語で「亡霊」の意味で、主人公と共に少女アカリの記憶の謎を追うのが、メインストーリーとなるでしょうか。 法律や裁判は現実的に描きつつも、オカルトの小ネタを沢山ブッ込んでくるので、何とも不思議な読み味かつ面白い漫画です。法廷のファンタズマ荒川三喜夫1わかる
ひさぴよ2020/12/26大好きな姉を蘇らせたい主人公は禁術を求め道教の世界へ飛び込むこれの前作の「もっけ」では日本の妖怪を描いてましたが、 今作は近代中国を舞台にした、道教における仙術・妖怪漫画です。 ざっくり説明すると、大好きな姉を蘇らせたい主人公が、道教の世界に足を踏み入れる、という物語です。 中国の道教の世界観が本格的に描かれているので、日本でお馴染みの仙人やキョンシーとはイメージが大分異なります。 仙術や世界観について細かい説明はされないですが(そもそも道教とは明確な定義が無いらしい)、それ故に道教へのリアリティを持たせているように感じます。 巻末などの参考文献を見る限り、作者の熊倉隆敏氏は妖怪に対する深い造詣を持つだけでなく、道教についても相当調べられているように思います。 まぁ道教の知識がなくともマンガは楽しめるのですが、それだと魅力が伝わりきらない可能性はあるかもしれません。 図書館などで参考文献の本を借りて読んでみたり、ネットで少し道教について調べるだけでも、より深く作品を楽しめるのは間違いないです。言葉では説明できないような奇想天外な展開ばかりですから。 仙術バトル以外にも、ぎょっとしてしまうようなエログロも多いので、やや読者を選ぶタイプの作品かもしれませんが、全4巻で伏線もきっちり回収し、綺麗に終わっていて読後感の良い作品です。 ネクログ熊倉隆敏1わかる