ひさぴよ
ひさぴよ
2021/11/10
「ほん怖」と「実怖」
ホラー雑誌「実際にあった怖い話」は、タイトルこそ「ほんとにあった怖い話」とよく似ていて見分けがついてなかったが、実は別々の出版社から発行されていている別雑誌だと最近知った。 元祖は「ほんとにあった怖い話」(朝日新聞社)で、「実際にあった怖い話」(大都社/少年画報社)の創刊は2007年。明らかにを狙った誌名だと思うが、元祖「ほんとにあった怖い話」は2010年に休刊してしまう。 その後まもなく、2011年に「HONKOWA(ホンコワ)」と名を変えて新創刊されることになるも、依然として名前が似ており、ごっちゃになって間違えやすい。加えて、「あな怖」(あなたが体験した怖い話/ぶんか社)などの亜種もある。また、「フォロワーさんの本当にあった怖い話」というマンガが話題になっていたが、こちらも他の出版社の作品。ちゃおホラーにも「本当にあった怖い話」というこれまた紛らわしい別冊雑誌があったが「ほん怖」シリーズとは別物である。これらの版元の違いだけでも知っておくと見分けやすいかもしれない。 前置きが長くなったが、「HONKOWA」や「実際にあった怖い話」といった雑誌は、今や電子書籍で読める時代になっており、手に取りやすくなっている。 最新号「2021年11月号」を初めて買って読んでみた感想としては、オカルト・ホラー・スピリチュアル要素がバランス良く揃った雑誌という感じ。 連載作は14本前後と、HONKOWAよりも多く、値段もコンビニコミック価格なのでお得感がある。 マンガファン的には、連載陣の中に、かつてIKKIで活躍していた漫画家・三友恒平先生を見つけられたのが嬉しかった。 他にも、つるんづマリー先生、柏屋コッコ先生など他のコンビニ系雑誌で見かける作家さんが揃ってる。作品だと「或る霊能者の奇妙な日常 余命宣告からの生還」は特に良かった。 しばらく定期購読してみてもいいかも。 以下連載作品リスト(2021/11) 【或る霊能者の奇妙な日常/原作 井口清満 漫画 万馬夕子】 【どすこいスピリチュアル/漫画・小林薫 原案・TANAKA】 【心霊浄化師 神楽京/原作・井口清満 漫画・水月まな】 【山口敏太郎の日本怪忌行/漫画・未浩 原作・山口敏太郎】 【立原美幸の心霊エッセイ/金子裕】 【SNS-生霊-/漫画・空路 原作・橘 明来】 【つるんづ怪談/つるんづマリー】 【珠洲岬でアップデートしてみた/伊藤ロイ】 【稲川怪談/藤咲もえ】 【ちょっぴリチュアルDAYS/若尾はるか】 【鳩屋ポッポのホラーな日常/柏屋コッコ】 【コミック版 怪談王 第2回「お遍路さんが泊まらないホテル」/漫画・三友恒平 原作・小笠原まさや】 【銀座スナックでの出来事/小立野みかん 原作・島村洋子】 【前世療法の現場で見る怖い話 血椿の痣/漫画・油豆 証言者・桜ゆう】
ひさぴよ
ひさぴよ
2021/09/20
ビル窓ガラス清掃の仕事を通じた人間ドラマ!
📷
昔の学生時代に求人誌を見て、ビルの窓ガラス清掃ってなんとなく楽しそうだなぁと思ってアルバイトに応募しようとしたことがあったけど、高い所の景色が好きだということと、高所で作業することは全く別次元の話だと気付いて結局やらなかった。それでもいつかはビル窓拭きの仕事やってみたいなあと思っていて、今でも高所で作業する人たちにはどことなく憧れを抱いている。 さてこの漫画、90年代に見られるモーニングのお仕事マンガの一つだが窓を拭くだけの地味な漫画と思うなかれ。高所からの構図が半端なく上手く、ザイル、ブランコ、ゴンドラといった道具設備がやたらとリアルに描かれ、高所作業の臨場感といったら凄い。そこに加えてやさぐれた男たちの人間ドラマが展開されるのだから、面白くないわけがない。 主人公は夢を諦めかけているミュージシャン染盛(そめもり)という男。社員ではなくアルバイトという身ながら、現場のトラブルに怒りながら対応し、この危険と隣り合わせの仕事を意地とプライドだけでこなしている。同僚もヤンチャな奴が多くて、すぐ殴りかかってくる奴、薬をキメて現場に来る奴などさまざま。途中、漫画の展開が売れないミュージシャン漫画みたいに変わるが、主人公が大量の葉っぱを一気に吸ってガンギマリになる絵面が衝撃的なのでそこも見所の一つ。 ラストはグッとくる話だが、単行本だけで読み進めると唐突に「川室」という男が突然登場するので?となると思う。 「染盛はまだか 単行本未収録作品集」(2)を読んでおくと、最後に登場する「川室」のくだりが分かりやすくなるんで一緒に読むべし。 ちなみに未収録作品集は各巻110円。 (できれば一冊にまとめてほしかった) https://manba.co.jp/boards/134900 時代を映したガテン系仕事漫画の良作につき、おすすめです。
ひさぴよ
ひさぴよ
2021/08/17
いい短編が多い
昭和50年代世代から見ても、全てがノスタルジックで、一回り上の世代の、思い出の記憶を見ているような気持ちになる。作品内にがこの時代だったからこその描写があるので、今の若い人が読んだらかなりギャップを感じる場面があるかもしれない。そういう時代だったんだなーくらいの感じで読むのが良いと思う。 どの作品の登場人物にも共通するのは、恥ずかしいほど本音を赤裸々に語って不器用にぶつかってく姿。一色まことの描く人物たちは、男女どちらの視点にも長けていて、特に男目線で読んでいると、作者は男性作家なんじゃないかとすら思ってしまう生々しさを感じる。 改めて読み直してみると、3話目の「野郎なんかにゃわかるまい!」をはじめ、女性のルッキズムに関わる話も多く、マンバ通信のトミヤマユキコさんの連載コラム「少女マンガのブサイク女子考」のテーマとも少し被る部分がある。青年漫画とはいえ、同じテーマとして興味があれば読んでみるのも有りだと思う。 https://manba.co.jp/manba_magazine_authors/18 短編の中で、特に好きで何度か読み直してるのは、「いつも一緒」という幼馴染の太った男女が一緒にダイエットするお話。これも見た目の悩みから端を発するストーリーなのだけど、2人が頑張る過程と、オチ終わりは何度読んでも良い読後感があるので、この短編だけでも強くお勧めしたい。もちろん表題作も。 過去の初期短編集「どいつもこいつも」も読みたいのだけど、絶版で未だに読めてないのでいつか読みたい。(電子化のリクエストをしておこう)
ひさぴよ
ひさぴよ
2021/07/31
「フェンシングは努力でなんとかなる」
フェンシング銀メダリストの太田雄貴さん曰く、「フェンシングは努力でなんとかなる」スポーツなんだそうですが、このマンガではその言葉を体現するかのように、細身でガリ勉メガネの主人公が、ある日フェンシングをはじめて、その魅力に取り憑かれて強くなっていくという王道スポ根マンガです。剣道と似ているのに、汗臭い感じはないし、見た目にも華麗で映える競技だなーという印象ですね。 監修・太田雄貴だけあって、フェンシングをあまり知らない読者でも、読んでいくうちに何となくルールがわかるようになってます。「ガンバ! Fly high」と同じように、メダリストが監修することで、漫画がより面白くなり、読者が増えて競技人口も増えることを狙ってたと思います。人気が振るわず5巻で終わってしまいましたが…。絵はややクセ強ですが、1対1の心理描写だったり、王道の熱い展開を盛り上げるのが上手いです。特に終盤の心と平子のレギュラー争奪戦は、実力下位同士の戦いでありながら、感情を揺さぶられる試合でした。最後まで軸がブレずに走り抜けたことで、自分の中で、記憶に残るスポーツ漫画の一つとなりましたね。少年サンデーの連載で読んだっきりの人も、単行本でもう一度読めばさらに面白い作品だと思いますね。あと、「アイシールド21」みたいなノリが好きな人には特におすすめです。
ひさぴよ
ひさぴよ
2021/07/18
アスリートのメンタルを救え!
📷
寺沢大介先生初となるスポーツもので、脳科学でメンタルを治療するスポーツドクター“飯合”の仕事を描いた漫画。ゴルフやバレエ、ラグビーなどさまざまな競技のアスリートが抱える心の問題を、メンタリスト飯合先生がそれっぽい言葉で克服させていきます。 ※何名かの顔がアンパンマンのように丸くて、他の人たちは普通に描き分けされてますが、深い意味はないみたいなので気にしないで大丈夫です。途中から慣れます。 若干、胡散臭い感じもありますけど、セリフや構成が非常に巧みで、読み進めるうちに読者をも洗脳…じゃなくて共感できるようになってます。最初は半信半疑のアスリートたちも、ちょっとした言葉ひとつで心が変わり始め、本来のプレーを取り戻していく姿を見るのは本当に爽快で、いつの間にか前向きな気分になれます。 終盤で飯合先生はスポーツの「本質」についても語り始め、なぜ私たちにはスポーツが必要なのか?なぜ社会はスポーツを求めるのか?という話をしてきます。そのシーンが激アツで不覚にも感動しました。まぁ、東京オリンピックの時期に読んだせいもありますが…。自分にとってのスポーツって何だろう…?なんてことを考え直すきっかけになりましたね。
ひさぴよ
ひさぴよ
2021/06/30
ネタバレ
豊田徹也「影踏み」は「アンダーカレント」のスピンオフ的な短編でありながら蟲師の世界観と見事に融合している #お買い得本
> 蟲師蟲師あまりよく知らないんですけど、ファンだったら買って読んだほうが良いですか? https://manba.co.jp/topics/30932 というコメントを見かけたのでクチコミで回答。 **結論としては、豊田徹也ファンの方は読んだ方が良いと思います。** 世界観のベースは『蟲師』ですが、収録されている短編「影踏み」には、「アンダーカレント」に登場する探偵・山崎が主役として出てきます。 (過去作「ゴーグル」「珈琲時間」にも登場するあの山崎です) 蟲師の設定を上手く活かしながら、話自体はアンダーカレントのスピンオフとしても読めると思います。ページ数も50p程の長さで、非常に読み応えがありますよ。蟲師って何?という疑問についても、作中で説明がありますし、問題なく作品世界に入り込めるかと思います。 ここからは蛇足です。 豊田徹也氏以外にも豪華なアフタヌーン作家陣が参加していますが、どの短編も素晴らしい出来で、これで660円という価格は正直言ってお買い得本です。蟲師未読の方でも、この短編集をきっかけに、蟲師ワールドに入ってみるのも有りかと。もし興味を持たれた方は、ぜひ本編も読んでみてください。 さらに蛇足。 蟲師の作者・漆原友紀先生は、のちに「猫が西向きゃ」という作品を発表するのですが、これが豊田徹也氏の「影踏み」とちょっと似ているのです。単なる偶然かもしれませんが、もしかすると、「影踏み」の構想からインスピレーションなり、影響を受けたのではないかと思うのです。蟲師にも近いエピソードがあったかもしれないですが、あらためて読み直してそう感じました。