ひさぴよ2020/09/24ネタバレ完成度の高い世界観だっただけに1巻完結は勿体ない!ーーーーーーーーーーーーー以下ネタバレーーーーーーーーーーーーーーーーー 少しでも踏み込むとネタバレ感想になるので最初に言ってしまうと、神の塔=猿の惑星的なアレだったというお話です。原始世界と思わせつつ1話目から感じさせる違和感の謎が徐々に解けて、崩壊後の世界として認識した途端に終わってしまうもの悲しさ。シオミヤイルカ先生の作品は原作付きが多い中、「原始乙女と神の塔」はオリジナル作品なだけに、これはもう少し続きが読みたかったところです。あと、Kindleだけでなく他のストアでも配信してほしいです。原始乙女と神の塔シオミヤイルカ
ひさぴよ2020/09/21ご年配の方にもオススメできる漫画ですY氏の隣人以降に発表されたY氏フォーマットをそのまま受け継いでる漫画です。今作では謎の鍼灸師・だるま氏が、謎のアイテムを使って患者に治療を施し、その後の経過を見るという流れになります。 謎アイテムの出どころは不明で、もはや詳しい説明すらないのですが、訓練された吉田ひろゆきファンにとってはさほど問題ではありません。笑 一つ発見があったのは、作中に星新一の「おのぞみの結末」という本が小道具で出てきたところ。吉田ひろゆき作品には星新一のようなショートショートの影響や、アンチ・ユートピア的な要素が見られると改めて気付かされました。 「だるま心療譚」7篇の短編は、吉田ひろゆき作品としてはめずらしくバッドエンドの話が無いので悩みが解決してスッキリした気分になれます。 普段あまり漫画を読まないようなご年配の方にもオススメしやすい作品なんですよ、コレ。実際に以前わたしが整骨院に通っていた頃、ご年配の方にこの漫画を貸したことがありましたが、たいそう気に入ってくれていました。 だるま心療譚吉田ひろゆき
ひさぴよ2020/09/21とにかくカツシン話はやたらと面白い!『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』を始めとした吉本浩二ノンフィクション作品であり、他の作品郡と同様、関係者の証言を元に構成された漫画。座頭市の誕生エピソードに始まり、バルテュス、篠山紀信との交流、原田美枝子、渡辺謙、松田優作などの俳優としての顔、そして中村玉緒とその家族がそれぞれの勝新太郎の思い出を語る。 カツシンの大ファンである吉本浩二氏の昭和タッチな絵柄が、勝新太郎の世界では見事にマッチしています。カツシンが好きだからこそあの作風になったのではないかとすら思えますね。あまり知られていない勝新太郎の「さみしがりや」な部分は、この漫画でしか味わえない貴重な一面ではないでしょうか。寝ても覚めても映画と芝居が大好きで、作品創りに凝りすぎたあまり制作費を膨大に使ってしまい、会社を倒産させて多額の負債を作ってしまうあたりは手塚治虫と似た所があります(苦笑)。撮影事故、大麻パンツ事件なども僅かですが触れられています。この作品だけでは語りきれないほどのエピソードがあると思いますが、晩年までの出来事が全2巻でまとまっているので読みやすい長さかと。映画好きの方にもおすすめです。カツシン~さみしがりやの天才~吉本浩二1わかる
ひさぴよ2020/09/19なんてしあわせな家庭てんかちゃんよりも、てんかちゃんを溺愛するパパとママにホッコリしてしまいました…。とにかく両親がいい人たち過ぎる!こんな幸せな家庭があって良いのか…と思いましたが、カワイイ盛りの子を持つ親って皆そういう風に見えるものかもしれません。どこにでもある家庭の、人生で最も幸せな時間を見せて貰ってる感じがします。かと思いきや、後半にやや重たいテーマも控えてたりするので、カワイイだけでなく僅かな毒もある作品です。てんてんてんかちゃん大澄剛
ひさぴよ2020/09/19異説・巌流島の決闘やっと読みました、ヤンマガ40周年読切<我漫>の永井豪回。この作品は電子版ヤンマガには収録されていないため、紙雑誌のヤンマガ読むしか方法がなむ、コミックDAYSで購読している者としては、読む機会を奪われた状態でしたので「それなら絶対に読むものか!」と半ば不貞腐れ気味な態度でいましたが、結局読まずにはいられなかった。 ”吉川英治“史観とも言うべき従来の宮本武蔵観と異なる永井豪ならではの〈鬼〉宮本武蔵。佐々木小次郎の子孫、佐々木小太郎(女性)との決闘に至るまでの異説を交えた件がこれまた面白い。 やっぱり永井豪は凄い、この読切は永久保存しなければと思った次第でした。剣の鬼永井豪 ダイナミックプロ4わかる
ひさぴよ2020/09/07怪盗パルクールじいさんやや近未来の怪盗モノ漫画。 70歳の爺さんなのにやたら足が速くて、安いモノしか盗まない泥棒、ハープが主人公です。 都会の中を縦横無尽に駆け回り、随所にパルクールのような動きが取り入れられています。 盗みを働いては刑事に追われつつも、市中の人達を助ける、言うなれば人の心を盗んでいくタイプの怪盗です。 と言っても、1話目の万引きエピソードにはややドン引きでしたが。そこ以外はハートフルな話ばかりなので、安心して読めます。爺さんのとぼけた演出がなければ、もっとスタイリッシュで格好良い漫画になってたと思います。ジジジイ GGG小山宙哉
ひさぴよ2020/09/05STONeワールド文明崩壊後の世界で生きる人類の末裔たちの海洋SFロマン。STONeの世界の海というのは、戦争によって変わり果ててしまった海が舞台になります。むさい男達ばかり登場する中、キュートな少女・ジジの活躍が光ってました。前史文明の遺物の設定や、巨大兵器、主人公ジジの生い立ちなど、ちょっと風の谷のナウシカを彷彿とさせる部分があって、アレを凶悪にしたようなダークな世界観に近い感じがしますね。おそらくヒロモト森一作品の中では一番スケールがデカくて、壮大なストーリーだと思うのですが、たった2巻でこの漫画は完結します。クライマックスまで怒涛の勢いが続き、後半は駆け足な展開になるものの、次から次へと見せ場があるので大作映画を観ている感覚で読み進められます。言わずもがなですが、作画に関しては圧倒的すぎるほど上手い。筆のような線の荒々しさだったり、迫力あるイメージボードのような見開きに、どこを切り取っても凄まじいレベル。凄すぎて、海が砂なのか水なのか最後までよく見分けがつかなかったのはここだけの話です…。STONeヒロモト森一
ひさぴよ2020/08/22熱いです原作小説は未読ですが、一巻でスッキリまとまっていて読みやすかったです。盲目のランナーの併走者って選手ではないけどアスリートというユニークな存在ですね。単に一緒に走っているわけではなく、相当な技術と信頼関係を持ってレースを共に戦う特別な存在なのだと理解できます。この作品のように現実のランナー達にもきっとそれぞれドラマがあるのだろうと思うと熱くなりますね。マラソン競技は好きですけど、恥ずかしながらブラインドマラソンについて何も知識がなかったので、健常者のレースには無いような駆け引きの仕方を見ると純粋に面白い!と感じます。人間ドラマのみならず白熱のレース描写も素晴らしかったです。伴走者浅生鴨 斉藤羽凧2わかる
ひさぴよ2020/08/22神話伝説シリーズの1作目『カムイ伝』第1部終了後の作品、『神話伝説シリーズ』(1974〜1980年)の1作目。表題作「サバンナ」ほか、2編の短編が収録されています。太古のサバンナを舞台に、原始の人類の営みを神話的に描いた異色作です。 まだ人類が言葉すら持たない時代であるため、セリフは一切ありません。しかしセリフが無くとも読めてしまうのが白土漫画。目の前の出来事だけでなく、何を考えているか、細かい心理まで伝わってくるから凄い。といっても、第3部で壮大なスケールの神話物語に変化し、全く別の漫画のようになってしまい、細かい意味までは理解できなかったですが…。第2部あたりから思想っぽい部分があるので、純粋に表題作のイメージ通りの漫画だったのは第1部だけでしたね。序盤はサバンナの動物たちも沢山登場します。サバンナ白土三平1わかる
ひさぴよ2020/08/21日本沈没チームによるオムニバス短編2011年をきっかけに取り壊された神保町にかつて存在した九段下ビル。築80年の歴史ある建築物を舞台に、4人の作家が、それぞれの時代の人間ドラマを描いていく作品です。ビルの場所は神保町ということもあり、漫画家とも少なからず縁のあったビルだったことが伺えます。 執筆している4名の作家さんですが、一色登希彦さんがスピリッツで「日本沈没」を連載していた時のスタッフが、元町夏央さん(元夫婦)、大瑛ユキオさん、朱戸アオさん、という繋がりがあります。(私は勝手に日本沈没チームと呼んでますが) 収録作 『スクリュードライブ らせんですすむ』一色登希彦 『ごはんの匂い、帰り道』元町夏央 『此処へ』朱戸アオ 『ガール・ミーツ・ボーイズ』大瑛ユキオ いずれの作品もそれぞれの作家さんの持ち味が感じられる短編です。なんだかんだ一色節が好きなんですけど、やはり今オススメするとすれば朱戸アオ先生でしょうか。朱戸アオさん目当てで、この本を手に取る人も少なくないと思いますが、インハンドやFinal Phaseより以前の作品も読みたい、という方は読んで損はありません。この本の中で最も大きなドラマを描いてましたし、ひときわ記憶に残る作品でした。九段坂下クロニクル一色登希彦 元町夏央 大瑛ユキオ 朱戸アオ1わかる
ひさぴよ2020/08/18再開が待たれる2011年からずっと連載再開を待ってるのですが…。フラッパーでの再開は難しいのですかね。別冊少年チャンピオンとかに移籍して再開してくれないかな〜なんて妄想を膨らませています。眠らせておくのが勿体ないほど面白い漫画。アーサー・ピューティーは夜の魔女木々津克久9わかる
ひさぴよ2020/08/18民俗学的な怪奇現象「フランケン・ふらん」や「名探偵マーニー」の木々津克久先生、初期の作品。 木々津作品といえば秋田書店のイメージがありますが、「おどろ」の頃は講談社のマガスペで連載されていたんですよね。この頃から、絵柄にも話作りにも原点らしい部分が沢山感じられます。 多様な宗教文化、民間伝承などの幅広い知識を基にしたストーリー展開は、ホラーというよりは民俗学的な怪奇マンガ(妖怪ハンターなど)のジャンルに近いかもしれません。なので、読んでいて現象そのものへの好奇心が恐怖心より勝ってしまうことが多いです。一歩引いた視点で冷静に怪奇現象を垣間見たい、という人におすすめの作品です。 木々津作品は色恋描写はあっさりしてることが多いですが、「おどろ」ではちょっとした三角関係の恋愛模様が見られます。水着シーンやお風呂のサービスシーンなど他ではあまり見かけないような演出もあるので木々津ファンなら楽しめるはずです。おどろ~陽子と田ノ中の百鬼行事件簿木々津克久
ひさぴよ2020/08/16千手観音阿修羅釣り〜!「江戸前の旬」さとう輝(てるし)先生の短巻作品をいくつか読んだのだが、この「釣り師青海」(せいかい)は、特にお気に入りだ。仏教×釣りという設定が面白いだけでなく、料理も恋も、バランス良く楽しめる一冊。主人公は仏の道より釣りの道に夢中になっているダメ坊主だけど、どこか憎めない愛嬌がある。「千手観音阿修羅釣り」なる仏教ならではの派手な必殺技も面白い。ただ、必殺技を使うのは主人公ではなくヒロインの方だけど(笑) 幼馴染のヒロインが天才的な釣りの腕を持っていて、活発な性格でキャラが立っていた。この子が主人公でもおかしくなかったな。最後の方で描かれる二人の恋の行方は、読んでいてとても微笑ましいものあった。釣り師青海さとう輝
ひさぴよ2020/08/15楳図かずお60年代の初期作品集楳図かずお60年代の初期の短期連載作品「赤んぼ少女」(週刊少女フレンド/1967年)と「へび少女」(週刊少女フレンド/1966年)ほか、いくつかの短編を収録。 「赤んぼ少女」 見た目の怖ろしさだけでなく、忌み子を持つ家族の人間模様も描かれています。元は「のろいの館」という題名だったそうで、わかりやすさでは前者ですが、後者のタイトルの方が物語に則していたのでは。 「へび少女」 楳図先生はへびっぽい女性が好きなんですかね。へび女の話がちょくちょく出てきます。ホラー的な怖さ、というよりは女性の怨念めいた感情に怖さを感じました。 「ねがい」 漂流教室や、他の短編集にも収録されている傑作短編「ねがい」ですが、恐怖劇場にも収録されてます。モクメは永遠のトラウマ。久しぶりに読むと、子供の頃に読んだ衝撃と恐怖がよみがえってきます。恐怖劇場楳図かずお
ひさぴよ2020/08/15戦後70年を過ぎても読んでほしい戦争特集号2015年、戦後70周年に際して組まれたビッグコミックオリジナルの増刊号。各世代の漫画家が表現した「戦争マンガ 」16作が収録されています。過去作の再録だけでなく描き下ろし作品が半数近くあり、いずれも力作揃いです。戦中戦後の話だけでなく戦争の未来を描いたものまで幅広く、憲法9条を擬人化した「さよなら憲ちゃん」のような意欲作もあって面白いです。ちなみに、いましろ先生だけは釣り&愚痴のいつも通りの漫画になります(^ ^;) 重いテーマの作品が多いですが、収録順に趣向が凝らしてあり、最後まで疲れずに読み通しやすいです。収録作をまとめてみましたが、これが五百円で読めてしまうなんてお得すぎます。 以下、収録作 水木しげる「人間玉」 滝田ゆう「夢いちりん」 松本零士「晴天365日」 さそうあきら「奈々子戦記」描き下ろし 浅野いにお「きのこたけのこ」 高橋しん「LOVE STORY, KILLED.」 いましろたかし「自爆列島」描き下ろし 山上たつひこ「光る風」 呉智英さん解説付き 三島衛里子「橋のたもとで」描き下ろし 石坂啓「さよなら憲ちゃん」描き下ろし 比嘉慂「砂の剣」 あまやゆうき/吉田史朗「僕はあの歌が思い出せない」描き下ろし 竹熊健太郎/羽生生純「ほーむ・るーむ」 東陽片岡「五式戦じじいのブルース」描き下ろし 井上洋介「少年と戦争」 花輪和一「小日本鬼子穴」描き下ろし <コラム> いとうせいこう、無着成恭、横尾忠則、モーリー・ロバートソン、片岡義男、南信長「漫画と戦争」 漫画の合間のコラム「わたしの戦後70年談話」も読み応えがありました。 著名人が戦争を語ってゆくのですが、有名な教育者である無着成恭先生の「なぜ戦争はなくならないのか」という問いに対しての回答がとにかく素晴らしかったです。仏教的な観点で人間、畜生、餓鬼に例えた説話がおもしろいのなんの、このテーマだけで本一冊作れるのでは?と思ってしまうほど。 最後に<編集後記>堀靖樹さんのメッセージは本当にその通りだと思いました。”時代のカナリア”として戦後70年を過ぎても読まれ続けてほしい一冊です。 > 『こうして眺めてみると漫画家はやはり自由の民です。本能的にお上の胡散臭さを嗅ぎ分けてますし、自分の生死は自分の戦場で決めたいと考えています。だからこの増刊は時代のカナリアかもしれません。漫画家の想像力はもう何年も前から、日本の行く末に警鐘を鳴らしていたのです。 漫画は別にお国のためにはなりません。そして、その作品で仕事をしている我々、編集者もしかりです。だからこそ、この時代の「嫌な感じ」に声を上げましょう。そんな増刊号です』 戦後70周年増刊号ビッグコミックオリジナル編集部
ひさぴよ2020/08/12まさかの続編「零戦少年」1巻で完結したはずでしたが、続編が刊行されていて驚きました。なんと完結後にお祖父さんの同期、三浦さんという人物から連絡が届き、そこで新たに得られた戦争の証言によって続編が作られることに。 今作では戦友・三浦さんから見た祖父と、三浦さん自身の戦争体験が描かれています。予科練での訓練、戦地での再開、そして共に特攻へ向かった先で起きたこと。あらためて戦争とは一人の主観だけでは到底理解しきれないものなのだと思い知らされました。前作を読んだなら続編も読んで損はないです。 ※それと、もし興味のある方は現在連載中の「不死身の特攻兵」という漫画も読んでみて下さい。葛西さん・三浦さんたちと同時期のお話になります。おすすめです。零戦少年葛西りいち3わかる
ひさぴよ2020/08/10コテコテの刹那の連打!!連打!!📷狩撫麻礼&泉晴紀のタッグによる25編、560ページ超に及ぶ分厚い短編集です。 (連載時の名義はダークマター、泉レッドドラゴン) 狩撫麻礼さんの没後に刊行された完全版になります。 中身としてはオチがなくて意味がよく分からない話もありましたが、泉晴紀先生のギャグっぽい作画がハマってる所もあり、楽しめた話とそうでない話が半々くらい。 ーーーー 特に好きな短編 「ダークマスター」 表題作。味は良いが、店主の性格に難があって繁盛しない店を他人に任せることになり、店主の代わりになんでもやらせてしまう話。何を表現しているかは言わずもがなです。オチはないけど面白いっ。 「ミッションあるいは伝道」 高齢化した個人商店とニートをマッチングさせて、寂れた商店街を復活させようとする男の話。発想は凄い良いけどたぶんうまくいかないと思わせてくれる所が良い。 「眠らぬ男」 オチの秀逸さでは「オッパイ説」か、この話が一番好きですね。ネタバレできない面白さ。 ーーーー 話のバリエーションは多いので、昔からの狩撫麻礼ファンに限らず、「世にも奇妙な物語」のような不可思議な話、刹那的なショートストーリーが好きな方なら楽しめる短編集だと思います。ダークマスター オトナの漫画 完全版狩撫麻礼 泉晴紀
ひさぴよ2020/08/08イレギュラーな短編&読切3作を収録📷「Y氏の隣人」連載中の平成2年〜5年までに発表された吉田ひろゆき氏の短編を一冊にまとめたもの。 (週刊ヤングジャンプ増刊、サーティ、ワーキングデビューなどの雑誌に掲載) 「異次元商人」は、Y氏とほぼ同じ世界観で、悩める青年たちの前に怪しげな行商人が現れ、Y氏の世界で流通しているような異次元の商品を与えては成功or破滅に導くというのがお決まりのパターンになってます。 ジャック・天野という商人が登場するのですが、その名の通り天の邪鬼のような性格で、人間たちの欲望をつついては楽しむ様子が実に悪魔的でした。 <読切「天職」「出世双六」> ページ数は短いですが人生の妙味が描かれていて面白いです。 吉田ひろゆき氏らしさに溢れた作品。 <読切「駄菓子屋」> 原案のヒロオクダという人は、本庄敬先生の「クジラの唄が聞こえるネイチャリン」原作をされていた方です。 これまでの吉田ひろゆき作品では異色と思えるほど、ストレートな作風で泣けるお話でした。 ジャック・天野↓異次元商人吉田ひろゆき
ひさぴよ2020/08/08何者でもない犬、それが雑種犬桐島いつみ先生の飼い犬”ももちゃん”を描いたハートルフル4コマ。 (90年代のアンソロジー本「犬っこ倶楽部」の連載) ウチで初めて飼った犬も雑種で、見た目が”ももちゃん”によく似た犬だったので、親近感ありすぎ…。見た目だけでなく性格も行動もそっくりというのは、雑種犬に共通する何かがあるんでしょうか。 外見からは、なんとなく「犬」であることしかわからず、犬好きから「犬種は何ですか?」と聞かれても困ってしまうのが雑種犬。 しかし、純血種にはないたくましさがあります。 病気に強く、長生きする犬が多いし、親しみやすさがある犬が多いのです。 飼い主含め、ズボラだけどおおらかな性格で、良い所もダメなところも含めて、ありのままの生活を描かれている漫画だと思います。 愛犬家の人が読んだら、もしかすると怒ってしまうような、いい加減な飼い方かもしれません。 でも自分にとっては、犬も飼い主も完璧じゃないところが好きで、共感する部分が多かったです。 ちなみに、他の作品に登場するキャラ(「まいったカッパは目でわかる」のカッパとか)を見てると、仕草や表情からどことなくももちゃんの面影を感じることがありますね。ももちゃん桐島いつみ1わかる
ひさぴよ2020/08/04今日マチ子自伝〜中学受験から藝大受験までこれから中高一貫校受験しようと考えている親子向けの受験案内&学校紹介情報を扱った書籍です。 学校案内の文章と、今日マチ子先生の体験を描いた漫画を中心とした構成になります。作者も中高一貫校出身であるため、非常に説得力かつユーモアに溢れた自伝的漫画の側面を持っています。 小学生時代の勉強の仕方から、受験に合格して中高一貫校での学校生活、そして大学受験までの体験をサラッと描かれているのですが、これが実に面白い漫画になってます。 変わり者といったらアレですが、一つ一つのエピソードが普通の人と違うので、受験テクニックの参考にはならないかもしれません。しかし、子供の目線で感じていたことが素直に描かれていて、日々の過ごし方や、入学してからの楽しい学生生活の雰囲気を伝えることに力を入れてあり、受験合格後の生活をイメージするには良いと思います。 自分も中高一貫校出身なので分かるのですが、学校によって教育方針や環境が千差万別で、入学してみないとその学校の本当の所は分からないのが、中高一貫校の特徴です。なんと言っても卒業までの期間が長いです。中高6年間の過ごし方を、事前にイメージできている事は特に大事だと思います。高校受験のない一貫校の宿命ともいえる「中だるみ地獄」がどういうものなのか、この漫画を読めば参考になるはずです。 さて、漫画後半で高校生になった今日マチ子先生は、美大への受験を決意します。予備校に通い、努力の末にめでたく合格。短いページ数でサラッと合格したように見えますが、その大学とは「東京藝術大学」です。いや、すごすぎて参考にできない…。いま流行りの美大受験漫画「ブルーピリオド」のようなドラマがあったかもしれないと思うと、それはそれで別の漫画として読みたくなってきます。予備校時代の同級生であり、漫画家の近藤聡乃先生も登場しますし。 あくまでもこの本は受験生とその親に向けられた本になりますが、同時に漫画ファンも楽しめる作品だと思います。エッセイ漫画が好きな人、美大受験漫画が好きな人、自伝漫画が好きな人など。漫画を読むためだけに買っても損はないです。セキ☆ララ中学受験 経験者だから描けた、ホントの中学受験&中高一貫校ライフ!今日マチ子1わかる
ひさぴよ2020/08/01戦争体験者の人生戦争で負った“痛み”をいかに後世に伝えるか…というテーマのヒューマンドラマ作品。 最初の1・2話目こそ、はしもとみつお氏の鬼気迫る作画もあって、戦争の惨さを存分に伝えてくれたが、それ以降、現代に至るまでのストーリー構成やメッセージ性にはチグハグ感があるのは否めなかった。 主人公の戦後の人生を、長い時代を経て追体験できるという構成は良い。しかし、731部隊やハンセン病の話など強引に差し込んでるとしか思えない話もあり、ただ触れてただけで掘り下げてはくれない。実体験というわけでもなく、参考文献もないので、あくまで創作の要素が大いにある、ということに留意したい。 ページをめくると、いつの間にか時代が進んでたりして、時代感覚を意識しなければどの時代の話をしてるか分からなくなったりする。戦後から2003年までが描かれるが、その時々の時代の空気を想像しながら読むと面白い。過去になんかできない!!!はしもとみつお 香川まさひと
ひさぴよ2020/07/29心にいつもニコボール90年代の少年サンデーで連載していたゴルフ漫画。小さな少年・青葉弾道(通称ダンドー)がド素人の状態からゴルフを始めて成長していく物語です。ゴルフにそれほど詳しくなくても楽しめる作品です。 子供の頃に読んだ時は気付きませんでしたが、原作は風の大地の坂田信弘先生だったんですよね。今にして読むと坂田ゴルフ塾の教えが随所に散りばめられているのが分かります。 ダンドーという主人公は、ある意味、坂田先生の理想の少年像ともいうべき存在かもしれません。 誰よりも他人への思いやりがあり、健気なまでに努力家で、窮地に陥っても絶対に諦めず笑顔を絶やさない。その象徴として、ボールに笑顔を書いた「ニコボール」という存在があります。 試合では対戦相手の嫌がらせを受けたりして、毎度ピンチに陥るんですけど笑、このニコボールに思いを乗せたスマイルショット(ウルトラスーパーショット)を繰り出すのです。 たとえ非現実的なショットであっても、ニコボールという特別な想いの力で納得させてくれるのが最高ですね。こういう所が漫画の素晴らしいところだなあと思うのです。 また、ダンドーと同じくらい魅力的なプレイヤーとの出会いもあります。ダンドーの最初の師匠、新庄さんをはじめ、兄貴的存在の拓さんも忘れられません。拓さんのキャディーをダンドーが務めた全日空オープン編は、何度読んでも感動してしまいます。それと実在のゴルフ界のレジェンド、帝王ジャックニクラウスも登場し、ゴルフの奥深さを見事に示してくれます。 ご都合主義的なところもある漫画でしたけど、最後はダンドーの純粋さが全てをひっくり返してしまうパワーがあって何だかんだ好きな漫画でした。DAN DOH(ダンドー)!! 〔新装版〕坂田信弘 万乗大智1わかる
ひさぴよ2020/07/28幸せの訪問販売「Y氏の隣人」以降に発表された「Y氏」の亜種マンガの一つで、平成14年〜16年の「週刊ヤングジャンプ増刊・漫革」に掲載された作品。(未収録作品あり?) 話の枠組みは、ほとんどY氏と同じです。アイテムを持ってくるのが神様ではなく、人間の役割になっている所がY氏と異なります。 幸福ノ學習社という教育教材の会社を通じて、悩める青年たちに教材(謎アイテム)が無料で渡され、正しく使えば人生の成功へと導いてくれるというお話。 どんなに道具が便利で正しくても、成功するか失敗するかは使う人間次第なのは変わりません。 ところで、会社に供給されている尋常でないアイテムの出所は、もしかしてY氏の隣人に出てくるアノ人たちでしょうか?幸福ノ學習社吉田ひろゆき
ひさぴよ2020/07/26逆に怖さが増してる怖い話が苦手な人でも読めるように「人間」を「猫」に置き換えて描かれた実話ベースの怪談集。主にTONO先生が友人・知人から聞いた話、又聞きした話で構成されています。 こわーい話でも、猫で描いちゃえば平気でしょう?という訳で、何も怖れる必要はないはずなのですが、結果として語られる話がどれも怖ろしく感じて仕方ありませんでした。 というのも、可愛い猫だろうと何だろうと、どうしたって頭の中で人間に置き換えて想像しちゃうからです。想像次第でどこまでもビビってしまう恐ろしさがある漫画でした。 そもそもですけど、冒頭では怖いの苦手な人のために〜と説明されてたのに、肝心の怖いシーンでは猫じゃなくて人間で描くのは約束が違うじゃないですかッ!猫で語る怪異TONO