ひさぴよ
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2020/07/29
心にいつもニコボール
90年代の少年サンデーで連載していたゴルフ漫画。小さな少年・青葉弾道(通称ダンドー)がド素人の状態からゴルフを始めて成長していく物語です。ゴルフにそれほど詳しくなくても楽しめる作品です。 子供の頃に読んだ時は気付きませんでしたが、原作は風の大地の坂田信弘先生だったんですよね。今にして読むと坂田ゴルフ塾の教えが随所に散りばめられているのが分かります。 ダンドーという主人公は、ある意味、坂田先生の理想の少年像ともいうべき存在かもしれません。 誰よりも他人への思いやりがあり、健気なまでに努力家で、窮地に陥っても絶対に諦めず笑顔を絶やさない。その象徴として、ボールに笑顔を書いた「ニコボール」という存在があります。 試合では対戦相手の嫌がらせを受けたりして、毎度ピンチに陥るんですけど笑、このニコボールに思いを乗せたスマイルショット(ウルトラスーパーショット)を繰り出すのです。 たとえ非現実的なショットであっても、ニコボールという特別な想いの力で納得させてくれるのが最高ですね。こういう所が漫画の素晴らしいところだなあと思うのです。 また、ダンドーと同じくらい魅力的なプレイヤーとの出会いもあります。ダンドーの最初の師匠、新庄さんをはじめ、兄貴的存在の拓さんも忘れられません。拓さんのキャディーをダンドーが務めた全日空オープン編は、何度読んでも感動してしまいます。それと実在のゴルフ界のレジェンド、帝王ジャックニクラウスも登場し、ゴルフの奥深さを見事に示してくれます。 ご都合主義的なところもある漫画でしたけど、最後はダンドーの純粋さが全てをひっくり返してしまうパワーがあって何だかんだ好きな漫画でした。
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2020/07/23
宜保愛子の自伝的マンガ
> 「みなさんこんにちは。私の名前はぎぼあいこ。小学五年生。」 このあらすじを見た瞬間、ゾッと寒気がしました。 霊感ではありません。 実に興味深い漫画だ…という第六感を感じたのです。   宜保愛子(1932 - 2003)さん、ご存じの方も多いと思いますが、かつて一世を風靡した心霊番組に出演していた霊能力者です。 その人生は波瀾万丈なもので、幼少期の事故によって左目をほぼ失明してしまい、それがきっかけで霊能力に目覚め、人には見えない霊や魂が見えるようになるという漫画の主人公みたいな人物です。そんな宜保さんを主人公にして学校の心霊現象を解決するストーリーだなんて、絶対面白そうだと思いませんか…。 ひとまず読んでみての感想ですが、いずれも1話完結型なので読みやすいです。主に学校で怪現象が次々と発生し、それを宜保さんが霊を説得するなどして解決します。 かなり怖い話もあり、ちょっとハートフルな話もあり、心霊学園漫画としてなかなかの面白さです。中には「これはさすがに漫画向けのエピソードだろうな〜」と思ってしまう部分があるのは否めません。宜保さんが美少女すぎるし、時代背景も明らかにおかしいです。 宜保さんは1932年生まれですから、当時の学校生活はバリバリの軍国教育の時代だったはずです。なのに学校は昭和の雰囲気で、水洗トイレが登場したり、服装や設備が現代的すぎます。演出として仕方ないとはいえ、さすがにストーリーとの違和感はありました。 ところが3巻の3話目「鉄矢ちゃんの悲しみ」の回以降で、この漫画はまるっきり別の漫画へと変わります。 > 「ここからのお話は私が生きてきた戦争の時代のお話をしたいと思います」 というモノローグが突如現れ 「えっ・・? じゃあ今までの話はなんだったんだ・・・」 という気持ちは置き去りに、物語は戦時中の体験を描いたエピソードへ変わっていきます。 服装もモンペ服に変わり、厳しい軍国教育と食糧不足に悩まされる日々。最大の理解者だった兄を戦争で亡くし、弟も交通事故で亡くしているんですよね…宜保さん。 そして、空襲で地獄のような体験をします。生きてる人と、霊の区別がつかなくなるほど悲惨な状況に、宜保さんは遭遇してしまうのです。 後半はとても重い話が続きますが、それだけ宜保さんにとって戦争のことは忘れずにはいられない記憶として残っているという事が伝わる内容でした。 ===補足=== 他にも宜保愛子さんの過去が語られている漫画として、『MMRマガジンミステリー調査班』があります。 第2巻のノストラダムス大予言1999「人類は滅亡する!?(前編)」に宜保さんがゲストとして登場。キバヤシ達に、霊界の話や自身の幼少期の体験を語っています。興味があれば併せて読むと良いでしょう。
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2020/07/15
死んでもやめんじゃねーぞ!
原作は未読です。漫画の方だけ読みましたが、史群アル仙先生の作風に合ってる作品なんだろうなと感じました。両者に相当なシンパシーがなければ、ここまで内面に食い込んだ壮絶な孤独や絶望感は描けない気がするのです。 だからこそマンガ化に至ったのも頷けるわけですが、どうやらマンガ化の話は、原作ツチヤタカユキ氏から史群アル仙さんに向けて熱烈なラブレターを送っていたことで実現したようです。 『笑いのカイブツ』漫画化決定!|『笑いのカイブツ』公式 https://warainokaibutsu.com/n/n789f569bbd78 自分の気持ちを理解してくれると信じた作家に託して、描いてもらえたのは、ツチヤタカユキ氏にとって、とてつもなく幸せなことだったのではと思います。 私が、ツチヤタカユキ氏を知ったのは、オードリーのラジオを紹介した記事がきっかけで、漫画の印象とは若干異なる部分もあったりします。 ラジオでは、ドがつくほどの下ネタを投稿していたと思うのですが、漫画内には下ネタがあまり出てこないのです。できるだけキレイなネタが多い気がするのは、下ネタだと話がブレてしまうからなのかも。 この辺は原作を読んでない分際で意見する資格はないのですが、ツチヤ氏のヤバい下ネタの数々を漫画でも出してほしかったですね。
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2020/06/30
西森博之の週刊連載デビュー作
1990年、西森博之が増刊少年サンデーで連載していた『今日から俺は!!』を中断した後、少年サンデーで始まった初の週刊連載作品。 『甘く危険なナンパ刑事(デカ)』は短期間の連載に終わり、その後まもなく『今日から俺は!!』が増刊から少年サンデーへ移籍することになります。 破天荒な刑事マンガとして良作だったと思うので、これは『ナンパ刑事』が良くなかったというよりも、『今日俺』ほどの期待が集まらなかったと見るべきなのかもしれません。 物語の舞台は千葉で、主人公・相沢の性格がお金好きな軟派であったりと、『今日俺』と所々似ている部分はあります。のらりくらり掴みどころはないけど、ポリシーがあって、大事なところではビシッと決めてくれる西森作品らしい空気を感じられると思います。 とはいえ、全2巻はあまりにも短かった。相沢と麻子のコンビはもっと見ていたかったです。西森作品って、中盤あたりから凄く面白さが発揮されると思ってるので、魅力を伝えきるにはせめて5巻分は続けて欲しかったところ。 もし、『今日から俺は!!』ではなく『ナンパ刑事』が週刊連載を続けていたら、その後の西森作品の系譜はどうなっていたのだろう、なんて事を考えて読んでみるとより面白いかもしれません。
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2020/06/27
大長編の異色作「夢幻三剣士」
大長編ドラえもんのシリーズ14作目となる、三銃士をモチーフとした編。 > 夢はいいなあ・・・。 > 現実の世界はどうしてこんなにつらくきびしいのだろう・・・。 日々の現実がイヤになったのび太は、ドラえもんに懇願し、思い通りの夢を見ることができる道具「気ままに夢見る機」を未来デパートから取り寄せてもらう。自分の思うがままに夢を楽しむのび太だったが、現実世界に謎の使者トリホーが現れ、『夢幻三剣士』という夢カセットを見るようすすめられる。その夢の内容は、RPGゲームのような剣と魔法の世界だった。そこでは”ユメミル王国”を侵略しようとする妖霊大帝オドロームと戦うことになり…。 一見すると、小説『三銃士』を題材とした冒険活劇かと思いきや、一気にシリアスな流れへと変わってゆく。 この作品、他の大長編と特徴を比べてみると、かなり異色であることに気付かされます。 例えば、 ・夢の中が舞台なので、現実世界の動きがほとんど無い ・ジャイアンとスネ夫の影が薄い(のび太の夢の中に出てくる人格に過ぎない) ・しずかちゃん本人も夢の中の人格として現れる ・仮想世界でも死ぬと本当に死ぬ ・トリホーの目的、ラストシーンの意味が謎のまま終わる などなど。 非日常が日常を侵食する怖さ、みたいな不気味さは今までのシリーズでもありましたが、読み終えたときの拭い去れない違和感みたいなモノは、子どもの頃からずっと残っています。 此処ではないどこか違う世界へ行きたい、別世界で活躍してみたい、という願望は誰しもが抱くものですが、それを仮想現実という舞台で時代を先取って見せてくれたのが、この無限三銃士であると思います。 子ども向けとはいえ、現実と虚構の境界をまざまざ見せつけられたようで、その境界線とは何なのか?うなされるように悩んだことは忘れません。 ラストシーンを読み返すたびに、江戸川乱歩の「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」という言葉が浮かぶのでした。
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2020/06/14
当事者によるユーモアにあふれたエッセイ漫画
1巻が面白かったので2巻も購入。「面白い」という言葉が適切かどうかわからないけど。わたしが知ってる統合失調症の知識というのはネットやテレビで聞きかじった程度のものなので、何かを知った気になるつもりもないのだけど、それでもこのマンガは何かが凄い作品なのではないかと思うに至った。 そもそも、精神性疾患を取り上げた作品は世に数多くあるものの、自分の知る限りでは統合失調症を描いた作品はあまり見かけない。 外部からの視点で描かれた作品はあるにせよ、本人が自ら筆をとった漫画となると、さらに少ないはず。 (パッと思い浮かぶのは卯月妙子先生の作品くらい) これは、当事者が「自己を客観視」して表現するということが、いかに難しいかを物語っていると思うし、まだ世間の関心や理解度が追いついてないという事かもしれない。 「統合失調症日記」というストレートなタイトルの為、誤解されたり、敬遠されてほしくなくて、まず作者のきこりさんの独特の世界観だったり、ユーモアセンスがあって漫画として面白いので、少しでも興味があれば読んでみてほしい。 ちなみに、紙の単行本の値段設定は1100円ほどで、電子書籍版だと600円ほどで購入できる。
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2020/05/03
フジオプロが一番輝いていた時代を知る
数々の逸話を残す赤塚不二夫のプロダクション「フジオプロ」での日々を回顧したエッセイ漫画です。 主に70年代の思い出が中心です。チーム体制でバカボンのアイデアを練っていたブレーンたち、長谷邦夫、古谷三敏の活躍や、小学館の武居俊樹、五十嵐隆夫などの名物編集者、曲者だらけのアシスタントたちが登場します。タモリとのエピソードも少しだけ出てきます。フジオプロが一番輝いていた時代。 さまざまな媒体でフジオプロの逸話は語られてきましたが、これまでのイメージをさらに上回ってメチャクチャな現場のように感じました。これでよく制作現場が成り立ってたな・・・とあきれるような感心するような。 フジオプロといえばやはり、お酒のエピソードには事欠かない様子。 職場で飲むのは当たり前、仕事終わりはみんな深夜まで飲んで騒ぎます。 迷惑な酔っぱらいでしかないのですが、やることなすこと面白いから許せてしまう所がありますね。叱られたときは「ごめんなさい!永井豪とダイナミックプロでーす!」と騙って逃げるのには笑いました。 漫画内では貴重な写真をはさみながら、東京新宿区の落合エリアの紹介もされていますので、聖地巡礼する際には参考にしたいと思います。 全体的に湿っぽい話はほとんどなく、楽しい気持ちだけが残る漫画でした。 あとがきは、酒の勢いに任せて書いた文章ということですが、ちょっと意味するところが分からない部分もあり、もう少し真面目に締めてほしかったのが正直な所。しかし同時に「これでいいのだ」とも受け取れました。
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2020/04/29
シュネルギアしよう!! #1巻応援
月刊少年シリウスでスタートした「3×3EYES」の高田裕三先生のSF超大作(決定事項)です。 1巻の帯にある通り、”集大成”と銘打ってるだけに、初っ端からエンジン全開。出し惜しみなくド迫力の戦闘シーンが繰り広げられ、導入の1巻から既にスペクタクルな展開になってます。 ストーリーは地球外からやってきた地球外機甲化AI「シュネルギア」という巨大なロボ(のようなもの)に乗る運命となった少年少女たちの物語。 シュネルギアを巡り、国連軍とアンバックという組織が激しく対立し、少年と少女は敵対する組織同士、シュネルギアに搭乗し戦う運命に巻き込まれてゆくのです…。 主人公・二ノ宮シロの見た目も性格も、歪んでなくて心優しい性格なのがいいですね。闇を抱えたどこかの乗らない少年と違って、駄々をこねないでシュネルギアにササッと乗ってくれるあたり、話が早いです。 シュネルギアはパイロットと協調する事で機能をアンロックし、あらゆる機能が進化していく仕組みになっています。 AIのような思考回路も存在しており、このAIの性格が非常に人間臭くて面白い。物語のサポート役として欠かせない存在となってます。 ちなみに、シュネルギアとは、ラテン語で「協調」を意味するそうで、作中で度々「シュネルギアしよう!!」「今を切り抜くためにシュネルギアを!!」という熱い決めセリフとして使われているのが、最高に格好いいのです。 まだ1巻が出たばかりですが、各話にめっちゃ気になるサブキャラたちが配置されていて、名前すら明かされていません。 おそらく他のシュネルギアの搭乗者となるのではないでしょうか。 次巻がとても楽しみです。