ひさぴよ
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2020/02/20
筒井康隆 作品群を豪華作家陣がコミカライズ
1995年に発売されたアンソロ本。古本でしか持ってなかったのですが、2019年に文庫化され、さらに電子書籍化されていたとは知りませんでした。 個人的に筒井康隆作品はちょっと苦手意識があって、熱烈なファンというわけではないのですけど、それでも買うだけの理由がこの作家陣を見ればわかります。 【筒井漫画涜本 収録作品】 相原コージ「死にかた」 吾妻ひでお「池猫」 いしいひさいち「大富豪刑事」 内田春菊「ムロジェクに感謝」 蛭子能収「傷ついたのは誰の心」 加藤礼次朗「TROUBLE」 喜国雅彦「鏡と薬と正義と女」 けらえいこ「妻四態」 三条友美「亭主調理法」 清水ミチコ「傾斜」 しりあがり寿「樹木 法廷に立つ」 とり・みき「我が良き狼」 ふくやまけいこ「かいじゅうゴミイ」 まつざきあけみ「イチゴの日」 南伸坊「禁花」矢萩貴子「セクション」 山浦章「星は生きている」 【筒井漫画涜本ふたたび 収録作品】 明智抄「幸福ですか?」 いがらしみきお「北極王」 伊藤伸平「五郎八航空」 折原みと「サチコちゃん」 雷門獅篭「落語・伝票あらそい」 菊池直恵「熊の木本線」 鈴木みそ「あるいは酒でいっぱいの海」 大地丙太郎「発明後のパターン」 高橋葉介「ラッパを吹く弟」 田亀源五郎「恋とは何でしょう」 竹本健治「スペードの女王」 萩原玲二「弁天さま」 畑中純「遠い座敷」 みずしな孝之「フェミニスト殺人事件のようなもの」 Moo.念平「うちゅうを どんどん どこまでも」 山浦章「ウイスキーの神様」 以上。 なんとも、本棚に並べたくなるような本なのです。
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2020/01/23
実におもしろいビブリオマンガ #1巻応援
毘武輪凰(ビブリオ)高校…。そこは行き場のないヤンキーたちが集まる底辺不良校!と見せかけて、本を読みさえすれば入学でき授業料もタダの本好きにはたまらない学校。本を愛すヤンキー達のギャップを楽しむコメディ作品です。 特に本が好きな人におすすめな漫画ですが、とにかく一度試し読みして雰囲気の合う合わないを確認しておくのが良いです。ヤンキー文化が苦手な人もいると思うので。 どれだけ本を愛しているかで、ヤンキー同士の格が決まる世界観になっていて、強いヤツほど純文学を溺愛してたり、SF小説を極めていたり何かしらのジャンルへのこだわりがあって面白い。 格の低いヤンキーは、弱そうなやつにブッカツ(本のカツアゲ)をするなど、本好きを冒涜する行為をしがち(笑) 基本はヤンキー文化とビブリオネタをかけ合わせたあるあるネタが多いですが、読んでいて果たしてインテリジェンスが上がってるのか下がってるのか、よくわからなくなります。 一話ごとのオチで本編のストーリーに合わせた本を1冊、さりげなく紹介してくれるので、何だか得した気分になれますね。
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2020/01/06
まんがでよくわかる!公務員のおしごと
作者の古林海月先生が1993年〜2002年まで、県職員として働いた実体験を描いた漫画です。 最近のお役所では、非正規職員の雇用が増加し、全体の半分近くを占めているそうですから、職場事情は変化していると思いますが、それでも末端公務員の仕事の大変さは、時代に関係なく、そんなに変わらないのかもしれない…と読んでて思いました。あと公務員と聞くと、長年勤めているイメージありますけど、意外と転職も多いのだとか。 作者は、さまざまな課を経験していく中で、生活保護のケースワーカーとなり、精神的にも肉体的にも負担の大きな仕事のため身体を壊していきます。 |彡サッ(あわせて読みたい →『健康で文化的な最低限度の生活』) そして、ある事をきっかけにプロの漫画家を目指すことになるのです…。 最終章では、退職してから漫画家デビューするまでの自伝的なエピソードとなっており、これはこれでとても面白いお話。 ちなみに漫画家エピソードの中で、デビュー作の話が出てくるものの、この本には収録されていません。デビュー作の読切は「米吐き娘」の巻末に収録されていますので、もし読みたい方はそちらをどうぞ。 話が逸れましたが、この漫画が伝えているものは「公務員は決して楽な仕事ばかりではない」という点と、言われなき公務員バッシングに対しての憤りも結構込められているのではないかなあ。
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2020/01/02
まんが日本昔ばなし以前
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日本の昔ばなしを、永島慎二が独自のアレンジを加えて漫画にした「シリーズ民話」の一冊。 素朴で哀しい雰囲気が、アニメの「まんが日本昔ばなし」の世界を彷彿とさせます。しかしこの作品が描かれたのは1960年代後半(雑誌はガロ)とのこと。アニメが始まる70年代以前から既に描かれていたと知って驚きました。 あのアニメの世界観はいろいろな絵本やら漫画のイメージを掬い取って構成されていると思うのですが、もしかしたら永島慎二作品も少なからず影響を与えていたのかもしれない…と思えてしまうほど何か通じるものを感じました。 (当時の時代の流れを知らないので全く的はずれなものかもしれませんが…) まぁとにかく、永島慎二の作風と民話との相性の良さは異常でした。 <収録作> うらしま/さるかに昔/ふるやのもり/つる/はなたれこぞう/かさこじぞう/げんごろうのたいこ/おむすびコロリン/野原のはなし/ゆきおんな/草笛童子/風っ子 ところどころ、現代で使われるタイトルと異なるものもありますが、ストーリー自体にそこまで大きな変更はないです。ちょうど小学校低学年くらいの子供でも読める内容ですね。ただ、「うらしま」は飛び抜けて救いが無く、後味の悪い話になってるので注意が必要です。あと「草笛童子」などは少年心にグッとくる話で良いですね。初めて読んだお話でしたが、漫画で読むことであらためて昔話の良さを再確認しました。
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2019/11/24
地味だけど堅実な面白さのあるサッカー漫画
80年代後半から90年代にかけて連載していたサッカー漫画。 古くはキャプ翼、最近ではアオアシと、数多のサッカーマンガが生み出されてきましたが、この作品は長期連載だったにも関わらず、あまり知られてない名作かと。 巻数が長い上に、お世辞にも絵はサッカー向きとはいえない絵柄(失礼!)なので、サッカー漫画好きの自分もなかなか手が出なかった覚えがあります。 しかし、ふとした機会に読んでみたら、これが読み進めるほどに面白い。 主人公・青葉茂の堅実でひたむきな努力と、熱い心に引っ張られるように、気付いたら夢中になって読んでました。 スポーツ漫画でよくある「海外挑戦編」的な展開が、このイレブンにもあるのですがこの章がとにかく熱い。 サッカーで海外挑戦といえば普通はヨーロッパか南米ですが、主人公は自分に足りないものを得るために、なんとアフリカの地を選びます。 何のサポートもなく、単身アフリカに赴き、ど田舎でどうやってサッカー修行をするというのか…? 一見無謀とも思える、泥臭い挑戦の連続がイレブンの面白さなのです。 進化した現代のサッカー界の状況と比べると、やってることが違いすぎる感があるのは確かです。 でも、サッカー初心者がプロにまで登りつめる成長物語として読むのであれば、まだまだ色褪せることのない名作だと思うのです。
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2019/11/23
たのしくたくさん食べよう!
たまにテレビでやってる大食い番組。人間離れした競技としか思えません。ずっと観てると、驚きとワクワクと恐怖が入り混じった畏敬の念みたいな気持ちが起きてきます。特に小柄な女性選手に対しては。この漫画はそんな大食い競技で女子高生たちが奮闘するスポ根漫画です。 たくさん食べることが何より好きな女の子春風天子が主人公で、高校生になってからは大食いをやめようと決意したものの、大食い競技の部活「食い道部」の面々に出会ってしまい、最初は嫌々ながらも次第に大食いの道にのめり込んでいきます。 てんむす(漢字で書いて天娘)という言葉は、その昔、豊穣の神への祭祀として、巫女たちが大食いを競った歴史から、現代の大食い競技として続いている設定になってます。なので参加者は女子のみ。 大食い勝負は一対一だったり団体戦といった形式の試合で、単純にたくさん食べた方が勝ちなんですが、テクニックや基礎体力を必要とする、しっかりとしたスポーツ競技として描かれているので、大食いできる身体づくりも学べます。 かわいい絵柄なので最初はもっとゆるふわなテイストかと思ってましたが、勝負所では荒々しいタッチに変わり、手に汗握る迫真の試合が繰り広げられます。わりと王道のスポ根展開が多くて、少年マンガ好きにはたまらない熱さがあります。 特に、長野女子体育大学付属との試合などは、 多くの「大食いマンガ」の中でも屈指の名勝負になるんじゃないでしょうか?全国出場までの勝ち上がり方やライバルチームの描き方は見事です。 あと、名古屋弁がめっちゃ出てくるのもほっこりします。当然、大食いの料理には名古屋メシが出てきたり、対戦相手のご当地料理だったり地域の特色も楽しめました。 ラストに近づくにつれ話にまとまりがなくなってきて、終局を感じる雰囲気になってきますが、ここまで読んだらぜひ最後まで読んでみて下さいな。わんこそば戦での、天子の突き抜けた表情は忘れられない場面だと思うんですよね。「たのしく、たくさん食べる」って素晴らしい。 自分もわんこそばの大食いにチャレンジしてみたくなりましたよ。
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2019/11/20
リアル一休さん!
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「一休さん」の愛称で親しまれ続けてきた一休宗純の人生を、誕生から亡くなるまでの生涯を描いた作品。一休さんといえば、頓知話が有名ですが、いずれも小坊主だった時代の説話であり、一人の修行僧となって以降は、どのような人生を送っていたのか?いろいろと知らない事だらけです。この本を読めば、生涯をかけて「禅宗」と向き合い続けてきた一休さんのリアルな姿が見えてきます。 一休さんを描いた自伝的作品は他にも坂口尚の「あっかんべェ一休」など、いくつかあり、どの作品を最初に読むか迷いました。電書化されてない「あっかんベェ〜」は、古本で買うしか無いということで、まずは小島剛夕先生の「一休伝」を最初に読んだ感想になります。 「一休伝」では、幼い一休が天皇の実子であった、という説をベースにしています。血統が良いどころの話じゃありません。劇画タッチながら、画面全体に高貴な雰囲気が漂っています。 時代は南北朝時代。 母親は南朝の家系で、暗殺を恐れ一休をお寺に預けて育てることに。 出自エピソードが語られ、坊主として修行を積むまでが第1巻。この巻で、橋やら屏風やらの有名な頓知話が登場します。 ここからが本番。 修行僧として成長するにつれ、欲にまみれ腐敗した環境に嫌気がさした一休は、寺院を飛び出します。 そして野生の中で「純粋禅」なるものを探求する”謙翁”という師と出会い、弟子入りすることになります。ここから厳しくストイックな修行の日々が続くわけですが、一休のように謙翁師の思想に感銘を受けること必至です。 師が亡くなってからの一休は、ツテを頼って高名な禅僧の寺へ入ります。そこでも下らない権力争いが横行していることに絶望します。 一休は俗世の中に救いを見出そうと、寺から町へ降りて、いろいろと理由をつけて遊びに通うことに…。 女遊びが激しくなり、ゆきずりで子ども作ったり、修行が大事だから母子は面倒見れないと言い放ったり…とクズ男になってしまい残念。 その後は偉い人に取り入って出世して、沢山の弟子を持ち、権力者になってからは、あまり感動はないというか淡々と展開します。 史実に忠実であるため、後半は読み進めても盛り上がりには欠けるのは仕方ない所。振り返ると、謙翁師と修行していた時期が一番輝いてたと思います。 全体的に堅い内容ですので、歴史、伝記モノが好きな人向けです。
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2019/11/19
腹話術の妙技
人形遣いの少年・「橘左近」が、童人形「右近」と共に事件解決に挑む推理マンガ。 腹話術によって人形を操り出すと、性格が一変するという設定がなかなか面白く、只の人形であるはずの右近が、まるで本当に生きているかのようです。どういう仕組なんだとか、その辺は深く考えずに「右近」の存在を受け入れて読むのが吉でしょう。ちょっとオカルト的な雰囲気もある推理モノなので。 連載を開始した1995年は、「金田一少年の事件簿」(1992年)や、「名探偵コナン」(1994年)といった推理マンガブームが超盛り上がっていた時期で、このブームに続こうと少年ジャンプが送り出した推理マンガという印象が今もあります。残念ながら大ヒットとはならず、短期連載に終わってしまいました。 ただ、作画・小畑健、原作・写楽麿(しゃらくまーろー)※宮崎克という強力タッグが生み出した、独特の和風ミステリー世界は、とても記憶に残るものだったと思います。そういえばアニメ化もされてましたっけ。 全4巻。スッキリとした終わり方にはなってないので、なにかの拍子で続編企画がひょっとしてあるのではないか…と、いつまでも期待してしまう作品です。
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2019/11/14
「ひまつぶし」にはもってこいの本
まさに「漫画のような図鑑」といった感じで、どこから読んでも楽しめる本です。 各章は「いろは」順で構成されていて、 上巻は「い」〜「よ」 中間は「た」〜「ま」 というような分け方で収録されています。 漫画のコマ割りの中に、図や説明がおもしろおかしく描かれていますが、 なんといっても選定されているワードが独特で、フツーの図鑑とは全然違います。 日高トモキチ先生お得意の、生物系の分野はもちろんのこと、エンタメ的なワードから、しょうもないネタや、衒学的なネタまで、著者の興味のある分野だけを集めたような図鑑です。モノの好みの合う人ほど楽しめる本だと思います。 ただイラストにしているだけでなくて、一つ一つのコマに細かなネタが隠されているので、それに気付けるともっと楽しく読めます。 特に漫画にまつわるネタ。 例えば【ホルモン焼き】の項目には、「チエちゃんが焼くやつ」という説明とともに、はるき悦巳風のキャラクターが添えられていたり、【とぐろ】や【ヨネザアド】なんてものもあって、マンガ好きがニヤリとするような元ネタもあります。 本棚にこういう本を置いておきたいな〜と思わせてくれる、知識欲を刺激してくれる本です。