ひさぴよ
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2019/08/13
コミック売り場の悲喜交々
漫画好きにとっては、書店コミック売り場というのは楽園でしかないのですが、実際に働いてる書店員さんたちにとっては、戦場そのものである。という様子をコミカルに描いた作品です。 毎日、押し寄せる新刊(メッチャ重い)を受け取っては、品出しチェックするのは想像以上に体力勝負のようで、腰痛持ちの自分にはとても真似できないお仕事だ、ということがまず分かりました。 それだけでなく、お客さんからさまざまな問い合わせがぶつけられ、まるで作品当てクイズのような質問や、熱量の高い外国人オタクをカタコト英語で案内しなければいけなかったりと、コミュ能力も当然必須・・・!でも、書店員さんたちも万能ではないので、毎度あわてふためきながらも、必死に機転を効かせて、なんとか解決させるというのが面白い所。 主人公・本田さんはなぜ骸骨なのか?は読めば何となくわかるというか…。基本的に書店関係者は被り物をしていて表情はわからないのですが、不思議と喜怒哀楽はちゃんと伝わるんですよね…。こういう部分も何気にスゴイ表現力だと思いますね…!まぁ本田さんは大体ガクガク震えてるので、ガイコツ顔という風貌はこれ以上なくハマっているかと。 また、本屋のバックヤード業務について、かなり突っ込んだエピソードが満載なんですが、こういった業界あるあるは、これまでの本屋系作品では描かれなかった部分じゃないでしょうか。取次さんや、出版社の編集まで登場したりと、売り場に関わるすべての人の想い(怨念?)を惜しみなく暴露しているからこそ、これだけの面白さがあるのだと思います。 個人的に一番お気に入りなのは「”独断と偏見”による版元雑感」のシーン。以下の作者さんのツイートを参照。 https://twitter.com/gai_honda/status/883327424359931904
ひさぴよ
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2019/07/11
総勢118人!超豪華な漫画家たちのイラスト集🐭
ミッキーマウス90周年記念の描きおろしイラスト集。 それぞれの漫画家がイメージした「ミッキーマウス」を表現されていて、超豪華な絵本のよう。136pフルカラーで¥3,240という値段を高い思うか、安いと思うかは個人差がありますが、ディズニー愛と、マンガ愛の両方を試されているような気持ちになります。子どもに贈るプレゼントとして買うのも良いかもしれません。次は、ドナルドダックのイラスト集も出してくれないかしら。 【参加漫画家一覧】(これが書きたかった) ・芥文絵 ・朝基まさし ・麻生みこと ・足立金太郎 ・安達哲 ・あなしん ・雨隠ギド ・安藤なつみ ・餡蜜 ・池田邦彦 ・諫山創 ・石川雅之 ・石沢うみ ・石塚千尋 ・伊藤理佐 ・稲光伸二 ・岩下慶子 ・岩本ナオ ・上田美和 ・上野はる菜 ・うえやまとち ・魚田南 ・海野つなみ ・江口夏実 ・絵本奈央 ・大川ぶくぶ ・大暮維人 ・おかざき真里 ・おざわゆき ・織田涼 ・おはなちゃん ・片倉真二 ・金田陽介 ・カレー沢薫 ・川端志季 ・カワハラ恋 ・木尾士目 ・金田一蓮十郎 ・クロ ・桑原太矩 ・小菊路よう ・小玉有起 ・東風孝広 ・ゴツボ☆マサル ・こねこねこ ・此元和津也 ・小山ゆうじろう ・梱枝りこ ・佐久間結衣 ・栄羽弥 ・流石景 ・サライネス ・さらちよみ ・白梅ナズナ ・白浜鴎 ・真造圭伍 ・末次由紀 ・菅田うり ・スケラッコ ・墨佳遼 ・瀬下猛 ・曽田正人 ・タアモ ・高橋ツトム ・瀧波ユカリ ・竹内佐千子 ・玉島ノン ・ぢゅん子 ・常喜寝太郎 ・鶴田謙二 ・寺井赤音 ・土塚理弘 ・鳥飼やすゆき ・中村光 ・なきぼくろ ・鳴見なる ・南波あつこ ・西塚em ・西義之 ・弐瓶勉 ・日本橋ヨヲコ ・萩原あさ美 ・葉月かなえ ・はつはる ・春木さき ・春原ロビンソン ・ひうらさとる ・東元俊哉 ・ひぐちにちほ ・久正人 ・弘兼憲史 ・深谷かほる ・藤もも ・藤屋いずこ ・前川たけし ・まがりひろあき ・マキヒロチ ・馬瀬あずさ ・松下朋未 ・松本ひで吉 ・三原和人 ・宮島礼吏 ・森恒二 ・泰三子 ・やつき ・山下和美 ・山田デイジー ・やまだないと ・山田恵庸 ・山原義人 ・柚月純 ・横田卓馬 ・吉岡公威 ・吉川景都 ・吉野マリ ・吉元ますめ ・リカチ ・若林稔弥
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2019/07/08
壮大な歴史格闘劇!
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紀元50年頃、ネロ帝の時代の古代ローマを舞台に、少年拳奴セスタスが拳闘を通じて過酷な運命に立ち向かう物語。奴隷のセスタスに自由は無く、奴隷主にこき使われながら、拳闘の練習に励みつつ、試合があるときは闘技場に連れて行かれ、命懸けで闘わされます。負けた敗者は即処刑されることもあり、生きるためには絶対に勝ち続けなければいけない…。『拳闘暗黒伝セスタス』では、常に緊張感が張り詰める展開が多いです。 体格もメンタルも弱々しいセスタスは、師匠ザファルの指導によって少しずつ腕を磨いていくのですが、その指導法というのが、完全に近代ボクシングや格闘技の理論がベースになっていて、非常に合理的で、素人の私にも分かりやすい説明になっています。(古代ローマにそんな技術があったかどうかは置いといて)現代の技が、古の強者達に果たしてどこまで通用するのか?という魅せ方は、この漫画において最も面白い部分のひとつだと思います。そして、ザファル先生によるアドバイスと至言の数々は心に刺さるものがあります…。優しい純粋なセスタスと、厳しい指導者(トレーナー)との関係性には唯一無二の素晴らしさを感じます。 格闘技漫画でもあるのですが、同時に壮大な歴史ロマンにも溢れていて、愛憎の念が入り混じった濃い人間ドラマもあり、といろいろ盛り沢山の漫画です。 特に、時代考証については、背景の一つ一つ、衣服や食事など細かいところまで描かれ、ローマ、カプア、ポンペイ、ナポリなどの都市文化の描き分けは見事です。名著「ローマ人の物語」(塩野七生)を読んでいるとより深く楽しめると思います。必ずしも格闘技メインの話とはならないのですが、基本的にはセスタスと、ライバルであるルスカやエムデン、そして皇帝ネロを中心としたビルドゥングスロマンであり、彼らを取り巻く複雑な人間関係が物語に奥行きを与えています。 男だらけのマッチョ漫画というわけでもなく、美しい女性も多く登場します。悲劇的でロマンティックな恋愛模様を楽しむも良しです。ネロの母であるアグリッピーナの人物描写は本当に凄くて、そこだけでも別の漫画として成立する面白さです。一人ひとりのキャラクターについて語りだすとキリがないのですが、とにかく多彩な人物がひしめき合っていて、それぞれの人生を必死に闘っているのがセスタスという漫画なのです。
ひさぴよ
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2018/11/29
核分裂の発見者 リーゼ・マイトナーの物語
「この世界の片隅に」のヒットがまだ記憶に新しい中、核分裂を発見した物理学者リーゼ・マイトナー(1878〜1968年)の人生を描きだした意欲作。 第二次世界大戦が迫る1938年、ユダヤ人であるマイトナーが、ドイツからスウェーデンに亡命するところから物語は始まり、自然豊かな森の中で、マイトナーはいつしか核分裂の原理を発見する…。 史実ベースかと思いきや、序盤から森の中で北欧の妖精「トロル」が唐突に登場したりして、こうの先生ワールド全開です。メルヘンチックな雰囲気のおかげで、暗い時代の雰囲気がやわらぐ。 作中では、核分裂の研究について詳細に描かれており、難解な物理数式がコマの中に並ぶ。ほとんど理解できなかったものの、マイトナーさんがブルーベリーなどの木の実を原子に見立て、トロルにやさしく講義してしてくれるので、私のような門外漢な読者でも、核分裂についてなんとなくわかった(気になれた) 原爆について深く語ることはないけど、一つ一つの言葉の背後に、とてつもない重みを感じる。単なる伝記物とは一線を画した作品だと思う。 そしてトロルは、物語の最後まで「いい。」働きをしていた気がする。 トロルには「馬鹿」というイメージがある一方で、気に入った人間には富と幸運をもたらし、気に入らない相手には不運と破壊をもたらす妖精でもある。 科学と人の関係を象徴しているのかもしれないし、いろいろな解釈を加えて考えだすとまた想像が広がる。