ひさぴよ2019/02/21手塚治虫による異色短編集1968〜70年代前半に、ヤングコミックやプレイボーイなどの大人向け雑誌に掲載された全8編からなる短編集。この電子書籍版では、秋田文庫版(1994年)に収録されている「ペーター・キュルテンの記録」「カノン」「最上殿始末」が未収録であるのと、作者のあとがきが含まれていないのが少し残念…。とはいえ全体の完成度が高いことに変わりはなく、いずれの短編も名作揃いです。時代的には、手塚治虫が劇画へ進んでいた頃で、それぞれの短編が、のちの「アドルフに告ぐ」「ブラック・ジャック」「火の鳥」などの作品に繋がってゆくルーツ的なものを随所に感じます。8編の中で一番ヤバい短編を選ぶとしたら「イエロー・ダスト」でしょうか。スクールバスを乗っ取った犯人が沖縄の米軍基地に立て籠もる話で、とてもショッキングで目を背けたくなるような描写が多いですが、短いページ数の中にあらゆる戦争の狂気が凝縮されていて戦慄しました。時計仕掛けのりんご手塚治虫5わかる
ひさぴよ2018/12/25寡黙で粋な奥さん📷『G戦場ヘヴンズドア』連載終了後に月刊IKKIにて掲載された短編で、スーパーヒーローのような奥さんが活躍する話。 寡黙に淡々と家事・掃除をこなし、日常で巻き起こるトラブルを颯爽と片付けていく様にシビれます。作中ではほとんど何も語らない奥さんですが、その行動やしぐさだけで、夫や周囲の人への深い愛情がとてもよく伝わり、G戦場や少女ファイトのような力強いメッセージとはまた別のやさしさに満ちた作品になっています。後半には「日本橋メソッド」なる創作過程を丁寧に解説したコーナーが載っていて、漫画志望者にとって参考になると同時に、日本橋ヨヲコ先生の創作技法を知りたい方も必見の内容です。粋奥日本橋ヨヲコ 木内亨2わかる
ひさぴよ2018/11/29核分裂の発見者 リーゼ・マイトナーの物語「この世界の片隅に」のヒットがまだ記憶に新しい中、核分裂を発見した物理学者リーゼ・マイトナー(1878〜1968年)の人生を描きだした意欲作。 第二次世界大戦が迫る1938年、ユダヤ人であるマイトナーが、ドイツからスウェーデンに亡命するところから物語は始まり、自然豊かな森の中で、マイトナーはいつしか核分裂の原理を発見する…。 史実ベースかと思いきや、序盤から森の中で北欧の妖精「トロル」が唐突に登場したりして、こうの先生ワールド全開です。メルヘンチックな雰囲気のおかげで、暗い時代の雰囲気がやわらぐ。 作中では、核分裂の研究について詳細に描かれており、難解な物理数式がコマの中に並ぶ。ほとんど理解できなかったものの、マイトナーさんがブルーベリーなどの木の実を原子に見立て、トロルにやさしく講義してしてくれるので、私のような門外漢な読者でも、核分裂についてなんとなくわかった(気になれた) 原爆について深く語ることはないけど、一つ一つの言葉の背後に、とてつもない重みを感じる。単なる伝記物とは一線を画した作品だと思う。 そしてトロルは、物語の最後まで「いい。」働きをしていた気がする。 トロルには「馬鹿」というイメージがある一方で、気に入った人間には富と幸運をもたらし、気に入らない相手には不運と破壊をもたらす妖精でもある。 科学と人の関係を象徴しているのかもしれないし、いろいろな解釈を加えて考えだすとまた想像が広がる。 リーゼと原子の森こうの史代1わかる
ひさぴよ2018/10/18料理人を追い詰めるほど味が高まる!沈夫人のお抱え料理人「李三」は腕は良いけど、気が弱く感情にムラがある人物。そんな料理人を沈夫人があの手この手で追い詰めます。李三は夫人の機嫌を治すため必死で料理を作り、結果として最高に美味い中華料理が出来上がります…。なんともSMチックな関係性ですが、どちらも料理への探究心があっての行為なので、不思議とイヤな感じはしません。沈夫人の料理人深巳琳子2わかる
ひさぴよ2018/09/06給食の時間に牛乳イッキしたよね小学生にとってプライドを懸けた戦いである「牛乳のいっきのみ」をモチーフにした短編読切。 最強の敵、よっしゃん(男子)を倒すために、ゆりっぺ(女子)があの手この手で挑むけど…。 10pと短い物語の中で、子ども時代の気持ちや、給食での思い出を呼び起こしてくれるような力を持った、良い読切でした。 温かみあるタッチの絵に、活き活きとした関西のしゃべくりがハマってた。いっきのみ日𠮷ゆい子
ひさぴよ2018/05/26連載再開希望暗殺者同士が犯罪組織の代理戦争でひたすらドンパチするという、ヒラコー先生らしさ満載の作品。 登場人物には、某長寿番組で聞き覚えのある名前がチラホラ…。ふしぎな偶然の一致だろうか笑 おかげで、殺伐とした世界観にどこかユーモラスな雰囲気を与えることに成功している(ような気がする) 主人公の「銃狂(ガンマニア)」は過去の読み切り『ガンマニア』と同じキャラに見えるが、詳しい設定はいずれも不明である。 2013年にはComicREXからコミックバーズに移籍するも掲載が続かず、今だ単行本が出ていない。 まだまだドリフターズ描くので忙しいのだろうか・・・ このままボッシュートになるには惜しすぎるマンガなので、いつか連載再開してくれないかなあと思っている。アサ−シネ平野耕太21わかる
ひさぴよ2018/04/24しまぶー節、再び冒頭から「またクギかよ」とおもったけど、なんだかんだ引き込まれてしまう面白さ。しまぶーは子供心をワクワクさせる世界観やバトルを描くのが本当に上手い。トリコでお馴染みの「フグ鯨」が出てきたり、世界設定に繋がりがなのも期待感を持たせてくれる。 これぞ少年マンガ!という感じは、今のジャンプではガキっぽく見えてしまうかもしれないけど連載に繋がってほしいなBUILD KING(読切)島袋光年2わかる
ひさぴよ2018/02/05漫画家が描いた絵本が知りたい📷漫画家が描いた絵本の情報を集めてます。 古くは、「旅の絵本 10人の漫画家の10の旅」に載っている作家陣(手塚治虫・柳原良平・永島慎二・前川かずお・やなせたかし・馬場のぼる・おおば比呂司・佐川美代太郎・多田ヒロシ・長新太)の時代から、現代までの作品をまとめていきたいです。 「あの漫画家がこんな絵本を描いているよ!」という情報ありましたらお願いします。 ※画像はマンバ通信で紹介されていたタナカカツキ先生の「あいててて」「あ、ひょい」より。 https://magazine.manba.co.jp/2017/04/26/manpo-ehon/自由広場3わかる
ひさぴよ2017/11/16若・貴兄弟の成長物語📷1992年の漫画。兄弟の幼少期から、プロ入りして大関になるまでを、密着取材をした上で、こと細かに描いている。まだ横綱になっていない二人の物語はどこを切り取ってもドラマチック。マンガ 若貴物語 夢に向かってまっしぐら架空まさる 大見信昭24わかる
ひさぴよ2017/11/13もっもっもっ愛犬を亡くした絵本作家と、不思議な生き物「きのこいぬ」がほのぼのと一緒に暮らす漫画です。心癒される話が多く、疲れきったときに読むと癒やし効果バツグンです。犬を飼っている/いた人に特におすすめ🐶きのこいぬ蒼星きまま2わかる
ひさぴよ2017/10/18チャンピオンタップ発のギャグ漫画友達のできないネクラ少女と、うっかり召喚してしまった悪魔との生活を描いたギャグ漫画。二人のコンビネーションが最初から噛み合ってて、ボケ・ツッコミ入れ替わりながらのやり取りは読んでいて楽しかったです。巧妙に他誌の作品ネタを使ってきますので、そういった部分でもニヤリとさせられます。残念ながら全1巻で完結しましたが、最後はしっかり物語としてエンディングを迎えているので悲壮感はなかったです。それでも世界を崩すなら陸野二二夫
ひさぴよ2017/08/16ちょっと不思議なねこ漫画タイトルは、主人公姉妹の妹の名前「このね」とねこをかけたもの。 このねは、そのへんの動物に勝手にアテレコしておしゃべりするという変な子で、 かなりイタいと思われるかもしれないけど、最後まで読むと奇行の理由がわかる。 全体的に、空想と現実が入り交じった表現が多いので、ちょっと読みにくい部分はあるものの、 そういった作品が好きな人には受け入れられると思う。 正直、読んで面白いタイプの漫画ではない…。 どちらかと言えば、街の風景や自然や動物の方に印象的なシーンが多くて、 私はそういうところに惹かれていて、本もなんとなく手放すことができなかった。 もう絶版で忘れ去られる漫画になるかと思ってたけど、最近になって電子書籍化されたので、猫好きの人とかに読まれるようになったら嬉しい。このねこばなし平井清 篠崎司
ひさぴよ2017/08/14日常的に繰り返される暴力ギャグ!故・佐渡川準先生の作品の中で一番好きだったけど、 若い頃は、なんとなくおおっぴらに好きだと言えない恥ずかしさがあったな…。 看板娘の鬼丸美輝の外見と中身のギャップが凄まじく、凶暴なバイオレンス性と、狂犬のような行動についつい目が離せない。 とにかく気に入らないことがあると、大人でも子どもでも動物だろうが、容赦なく殴る蹴る。 笑いのギリギリを攻めたレベルの暴力アクションを楽しめるかがポイントである(汗) そういえば鬼丸美輝の精神構造ってどうなってたんだろう?と今更ながら考えてみたけど、そもそも内面についてあまり描かれてなかったような気がする。 でも単純そうな性格に見えて、本当のところは何を考えているのかわからない、そんな少しミステリアスな所も魅力のひとつだったと思う。 【注意】 ※この漫画には、パンチラ等のお色気シーンは発生しません。ご了承ください。無敵看板娘佐渡川準2わかる
ひさぴよ2017/08/04「おじゃる丸」の生みの親、犬丸りん先生の記憶りんちゃんこと、犬丸りん先生の子ども時代と、家族の日常をコミカルに綴ったエッセイ漫画。 ほんとうに小さな思い出ばかりが詰まっていて、誰にでもあったような出来事ばかり。 だけど感性全開のりんちゃんの目を通した世界では、なんの変哲のないことでも面白可笑しく思えてくるから不思議。 誰にでも絡んでいく人気者タイプの子どもだったようで、仲間に囲まれているときの様子は、まるでおじゃる丸みたいです。おじゃ。 家族構成はというと、果てしなく優しいお父さんに、おちゃめな母親と、凶暴な姉に、伝統に煩い祖母など、静岡のさ○ら家とはまた違う良さがありますな。 とても良い家庭だったのだなあというのを、読んでいて感じました。切ない。 これからもおじゃる丸と共に記憶に残していきたい作品です。 なんでもツルカメ犬丸りん5わかる
ひさぴよ2017/07/28居心地の良さそうな下町の老舗居酒屋にて居酒屋「大門」に集まる人達は、お客も従業員も人情味あふれる人ばかり。 雰囲気は昭和の時代そのものだが、舞台はバリバリ現代の両国である。 タイトルの肴(サカナ)というのは、北海道の港町・寿都(すっつ)出身のハルが、小さい頃から漁師たちに作っていた酒のサカナ料理からきているもの。 元々は魚の扱いには長けていたものの、疾走した父親の影響で、絵描きを目指し東京へ。 運が悪く絵の学校が廃校になり、その後なりゆきで居酒屋で住み込みの料理人を目指すことになるというストーリー。 あとはひたすら居酒屋で働く日々。ビシバシしごかれながらも、周囲の人達に支えられながら、料理人として一歩一歩成長していくのを見守っていきたい気持ちになる。 色恋に逃げることもなく、ひたむきに料理と人に向き合い続けるとても真面目な漫画です。 それにしてもマユゲ太いなー。 ハルの肴本庄敬 末田雄一郎2わかる
ひさぴよ2017/07/10「世にも奇妙な物語」の原作漫画1990年代〜2020年の間にドラマ「世にも奇妙な物語」の原作となった漫画作品をまとめました。 できる限り作品情報を判別しやすくするため、作品情報へのリンクを付けています。 電子書籍になっていない単行本については、Amazon等のリンクを付けています。 ---- 1991年 「ざしきわらし」 原作 「ざしきわらし」吉田秋生 https://manba.co.jp/boards/28540 1991年 「バカばっかりだ!」 原作 「夏の夜の獏」大島弓子 ※収録「つるばらつるばら」 https://manba.co.jp/boards/34266 1991年 「呪いの紙人形」 原作 「ブラックマジック」西岸良平 ※収録「西岸良平名作集」 https://manba.co.jp/boards/11774/books/3 1991年 「タイム・スクーター」 原作 「タイム・スクーター」西岸良平 ※収録「西岸良平名作集」 https://manba.co.jp/boards/11774/books/3 1991年 「嘘八百屋」 原作 「嘘八百屋」よしまさこ ※収録「好きです、この少女まんが。5 異彩」 https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000044886 1991年 「赤い雲」 原作 「赤い雲」西岸良平 ※収録「西岸良平名作集」 https://manba.co.jp/boards/11774/books/3 1991年 「バイパスの夜」 原作 「バイパスの夜」手塚治虫 ※収録「時計仕掛けのりんご」 https://manba.co.jp/boards/11960 1991年 「未来の想い出」 原作 「未来の想い出」岡崎二郎 https://manba.co.jp/boards/10892/books/5 1991年 「復讐クラブ」 原作 「復讐クラブ」諸星大二郎 ※収録「不安の立像」 https://manba.co.jp/boards/56775 1992年 「電気じかけの幽霊」 原作 「AC100V」しのらさとし ※収録「恐怖の方程式」 1992年 「ハイ・ヌーン」 原作 「史上最大の生中継!」江口寿史 1992年 原作 「言葉のない部屋」村野守美 ※収録「コミック1971」 https://www.amazon.co.jp/dp/4197805322 1992年 「城」 原作 「城」諸星大二郎 ※収録「ぼくとフリオと校庭で」 https://manba.co.jp/boards/82800 1993年 「ガード下の出来事」 原作 「帽子男は眠れない」上野顕太郎 https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000006512 1994年 「ある朝パニック」 原作 「ある朝パニック」福山庸治 https://manba.co.jp/boards/71659 2001年 「僕は旅をする」 原作 「僕は旅をする」今市子 ※収録「砂の上の楽園」 https://manba.co.jp/boards/26493 2002年 「夜汽車の男」 原作 「夜行」泉昌之 ※収録「かっこいいスキヤキ」 https://manba.co.jp/boards/124258 2002年 「昨日の君は別の君 明日の私は別の私」 原作 「昨日の君は別の君 明日の私は別の私」山下和美 https://manba.co.jp/boards/15619 2005年 「影武者」 原作 「最上殿始末」手塚治虫 ※収録「時計仕掛けのりんご」 https://manba.co.jp/boards/11960 2008年 「ボディレンタル」 原作 「ボディレンタル」戸田誠二 ※収録「スキエンティア」 https://manba.co.jp/boards/14466 2008年 「どつきどつかれて生きるのさ」 原作 「どつきどつかれて生きるのさ」うめざわしゅん ※収録「ユートピアズ」 https://manba.co.jp/boards/18808 2009年 「爆弾男のスイッチ」 原作 「スイッチ」石黒正数 ※収録「石黒正数短編集」 https://manba.co.jp/boards/13000 2009年 「理想のスキヤキ」 原作 「最後の晩餐」泉昌之 ※収録「かっこいいスキヤキ」 https://manba.co.jp/boards/124258 2011年 「耳かき」 原作 「耳掘り」泉昌之 ※収録「かっこいいスキヤキ」 https://manba.co.jp/boards/124258 2012年 「ワタ毛男」 原作 「ワタ毛男」小田扉 https://manba.co.jp/boards/77601 2012年 「ヘイトウイルス」 原作 「ヘイトウイルス」うめざわしゅん ※収録「ユートピアズ」 https://manba.co.jp/boards/18808 2013年 「AIRドクター」 原作 「もどき」小田扉 ※収録「前夜祭」 https://manba.co.jp/boards/77601 2014年 「未来ドロボウ」 原作 「未来ドロボウ」藤子・F・不二雄 ※収録「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」 https://manba.co.jp/boards/87931/books/4 2015年 「面」 原作 「面」永井豪 ※収録「怖すぎる永井豪」 2015年 「地縛者」 原作 「地縛者」伊藤潤二 https://manba.co.jp/boards/84812/books/108 2015年 「蟲たちの家」 原作 「蟲たちの家」楳図かずお https://manba.co.jp/boards/13892 2015年 「自分を信じた男2」 原作 「自分を信じた男2」石川雅之 ※収録「週刊石川雅之」 https://manba.co.jp/boards/75232 2015年 「ウソキヅキ」 原作 「ウソキヅキ」渡辺優平 https://shonenjumpplus.com/episode/10833497643049549881 2016年 「夢みる機械」 原作 「夢みる機械」諸星大二郎 https://www.amazon.co.jp/dp/4420137509 2016年 「貼られる!」 原作 「レッテルのある教室」7と嘘吐きオンライン―HERO個人作品集― HERO https://www.amazon.co.jp/dp/4757530455 2017年 「夜の声」 原作 「夜の声」手塚治虫 ※収録「空気の底」 https://manba.co.jp/boards/21231 2018年 「明日へのワープ」 原作 「アイリウム」小出もと貴 https://manba.co.jp/boards/15730 2021年 「コインランドリー」 原作 「ロッカールーム」鈴木祐斗 https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156687311993/embed ちくちくぴろんぴろん https://manba.co.jp/boards/153855自由広場2わかる
ひさぴよ2017/07/06コミックボンボンから生まれた、オッサン化け猫マンガ長生きしてたら次第にヒトの言葉をしゃべるようになり、完全におっさんと化した猫、あんずちゃんの味わい深い日常を描いた漫画。 実家はお寺。俗世間に順応しきってマイペースに生きているのが羨ましい。 「俺は別にやりたいことなんてねーんだよな・・・」とか言ってゴロゴロしながらも、家事を手伝ったりマッサージしてあげたりと、人のために動くことが多いところが素敵。 あんずちゃんは無免許運転で捕まるようなダメな部分も多いけど、子どもにとって良い教訓になるよう反面教師になってくれてる。化け猫あんずちゃんいましろたかし2わかる
ひさぴよ2017/06/24「音」をテーマとした短編連作表紙から軽音楽モノだと思いがち(というかそう勘違いしてた)だが、音を描く世界は、音楽にとどまらず幅広い。 どのストーリーも珠玉でハズレなし。 さりげなく地味だけど存在感のある音や、おどろおどろしい音の表現が良い。 各話の並び順も良かった。前後の話がお互いに引き立て合っていて、その辺りも上手かったなーと読み終えてから感じる。 8話目『凪の音』は中でも傑作! ききみみ図鑑宮田紘次
ひさぴよ2017/06/19滅亡した国の文字を守る、壮大な歴史ロマン現代日本の男子高校生が、13世紀初頭のチンギス・ハーンが生きた時代のモンゴルの世界へと繋がり、西夏文字をめぐる壮大な戦いに身を投じるお話。 祖国の西夏を滅ぼされた女、シュトヘル(悪霊という意味)と意識が同居する形で、当時のモンゴルへと接続する高校生スドー。 西夏の文字のすべてを記した玉音同を奪いたいチンギス・ハーンと、西夏の文字とシュトヘルに魅せられ、それを守ろうとするハーンの息子ユルールを中心に、登場人物の様々な思惑が複雑に絡み合う。 歴史モノとしての骨太さはもとより、戦闘シーンの迫力はさすが伊藤悠先生という他ない。 特にハラバルの戦いぶりは必見。ややファンタジックな弓使いであったが、個人的には一番カッコいいキャラだと思っている。 読みすすめるうちに、自然と文字が持つ「歴史の重み」のような物に思いを馳せるようになった。 ある意味「文字」そのものが主役とも言える異色の作品。 ぜひモンゴル人に読ませて感想を聞いてみたい。シュトヘル伊藤悠10わかる
ひさぴよ2017/06/15家電は世界を救う!?一見、どこにでもありそうな下町の電気屋さんを営む「ピース一家」の物語。 知られざる天才科学者である父・貫太郎と、息子の健太郎は、どんなささいな問題でもすべて科学の力で解決!!・・・しようとするのですが、日常生活ではとても使い物にならないとんでもない道具ばかり作り出します。普通に仕事をしていれば非常に優秀なエンジニアなのに、プライドに火が着いたら最後。店の部品や在庫を勝手に持ち出しては、他人の家電を魔改造して迷惑をかけまくります。まるでダメなドラえもんみたいな感じです。一話完結型で、オチは大体この親子が自らの発明品によって酷い目に合うのですが、他の家族たち(母や弟、妹)はそんな2人を反面教師として、科学に頼りすぎることなく、人間力で問題を解決していく姿を見せてくれます。家族同士のほっこりするエピソードだけでなく、商店街を舞台に、老若男女、さまざまな人達と関わり合いながら、日常の小さな悩みから世界規模の話まで出てくる、とても懐の深いマンガです。ちなみに一番のお気に入り回は、バカ親子が飼い猫のミャーちゃんの為に、超科学を駆使して道具を作る回。これがもう滑稽なことこの上なくて、何回読んでも笑えます(=^・^=) おまかせ!ピース電器店能田達規
ひさぴよ2017/06/13神は我らの内にあり故たかもちげん氏による「神とは何か」というテーマを、信仰や宗教の枠を超えて描き出そうとした意欲作。 正真正銘の「神」として生まれた主人公が成長するにつれ、神の自覚を持ち、悩みながらも人間社会への影響力を増してゆくのが前半部。後半は、核心に近づくとともに宗教的な抽象表現が多くなる。 前半は、神が生まれる瞬間を見ているようで面白く読み進められたのだが、後半については大いなる話すぎて、自分の中で意味をどれだけ理解できているのか正直なところわからない。 ただ、「全てのものに従うのが神だ」という言葉は腑に落ちたように思う。 あまり言葉で考えすぎず、とてつもないスケールの作画を見て何かを感じ取れればそれでいいかもしれない。 煉獄の狂気的な描き込みも良かったが、それ以上に序盤の主人公が踊る舞の描写が素晴らしく、あの舞にはとてつもない神々しさを感じた…。 内なる神を感じよ!祝福王たかもちげん5わかる
ひさぴよ2017/05/29大きく時の流れが変わる時、一番純粋な者から犠牲になっていくのかもしれない舞台は明治10年の北海道日高地方で、牧場開拓とエゾオオカミの絶滅を描いた物語である。 主人公は、未来少年コナンでもアイヌ人でもなく、北海道に入植してきた本州の子供だ。 薩摩郷士の息子なので、クマに立ち向かえるくらい肝が据わっており、エゾオオカミの一家と少しずつ交流を深めていく。 オオカミ同士がヒトの言葉でしゃべるのはご愛嬌。 もう一人の登場人物として、アメリカから呼び寄せたエドウィン・ダンという牧場技術者がいるが、この人は北海道の畜産業の発展に大きく貢献した歴史上の人物である。 アメリカから日本へ綿羊を輸送する際に、羊と寝食を共にして大事に世話し、一匹も亡くさずに運び込んだ(それどころか途中で生まれた子羊の数で増えた)というエピソードは、エドウィン・ダンが心から動物を大切に愛している人物である証拠だ。 そんな人がなぜ冷酷にもエゾオオカミを絶滅させるまでに至るのか。 そこが物語のテーマとなっている。 現代人から見るとオオカミやシカを次々と絶滅させた歴史は非常に野蛮だと思えてしまうが、この作品では人間=悪という単純な捉え方をしていないところが素晴らしい。 近代化の歴史を前に、誇り高く生きようとしても、絶滅を避けられない無力さがあったのだと思う。 良い漫画だった。狼の碑 エゾオオカミ絶滅記本庄敬 戸川幸夫1わかる
ひさぴよ2017/05/11賞金だけで生きていく荒事専門の賞金稼ぎとは一味違い、地味な大会に出張っては賞金をぶんどるという仕事。 入念な準備をして勝負に挑むタイプの主人公、中郎(あたろう)は、 運にはあまり頼らず、天性の情報収集能力・計画力・実行力を活かして次々と賞金を攻略していく。 いくら勝算があっても常にギリギリの展開となるが、最後に勝敗を分けるのは、一度きりの勝負に賭ける覚悟か。 世の中に楽々ゲットできる賞金大会などありはしないのだ、と思わせてくれる。 ヒロインのビッキーは日本語をあまり話せない外国人なのだが、不思議と作中に溶け込んでいて、主人公と拳で語り合う愛憎の念が入り混じったロマンスも見どころのひとつだ。ザ・プライザー末田雄一郎 山田芳裕
ひさぴよ2017/05/09漫画が好きなお嬢様がフリーダムに生きるお話漫画を読むのが大好きなお嬢様、梅小路さん。 趣味の漫画を通じて、自分の世界から飛び出し、少しずつ周りの人達と関わり合いながら世界が広がってゆくお話。 梅小路さんの溢れ出る漫画愛による七転八倒ぶりに、ついつい笑っちゃう。 周りの人達が、少しだけ手を差し伸べたり、やさしく見守る様子を見ていると温かい気持ちになる作品です。 愛犬ジョンや、敬愛する作家先生(なぜかインコ)など可愛らしい動物たちが登場するのも見どころ。ちいさい梅小路さん緒方波子