リーゼと原子の森

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この世界の片隅に」のヒットがまだ記憶に新しい中、核分裂を発見した物理学者リーゼ・マイトナー(1878〜1968年)の人生を描きだした意欲作。

第二次世界大戦が迫る1938年、ユダヤ人であるマイトナーが、ドイツからスウェーデンに亡命するところから物語は始まり、自然豊かな森の中で、マイトナーはいつしか核分裂の原理を発見する…。

史実ベースかと思いきや、序盤から森の中で北欧の妖精「トロル」が唐突に登場したりして、こうの先生ワールド全開です。メルヘンチックな雰囲気のおかげで、暗い時代の雰囲気がやわらぐ。

作中では、核分裂の研究について詳細に描かれており、難解な物理数式がコマの中に並ぶ。ほとんど理解できなかったものの、マイトナーさんがブルーベリーなどの木の実を原子に見立て、トロルにやさしく講義してしてくれるので、私のような門外漢な読者でも、核分裂についてなんとなくわかった(気になれた)

原爆について深く語ることはないけど、一つ一つの言葉の背後に、とてつもない重みを感じる。単なる伝記物とは一線を画した作品だと思う。

そしてトロルは、物語の最後まで「いい。」働きをしていた気がする。
トロルには「馬鹿」というイメージがある一方で、気に入った人間には富と幸運をもたらし、気に入らない相手には不運と破壊をもたらす妖精でもある。
科学と人の関係を象徴しているのかもしれないし、いろいろな解釈を加えて考えだすとまた想像が広がる。

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まず、ウランへ中性子をぶつける核分裂反応の実験結果を元にエネルギー保存則の観点で計算すると、約200MeVという大きなエネルギーが発生することがわかった。

一方で、分裂で生成された2つの原子核の質量を合計すると、元の質量より0.2くらい減っている。この質量からe=mc^2の式を用いてエネルギーを計算すると約200MeV。

つまり、ウランの核分裂反応は、既存元素+膨大なエネルギーであり、得られた物質に新元素なんて含まれていないんじゃね?ということがわかって、こいつは大発見すげーや、ってことだろう、タブン。

そしてそれを一気に放り込んだこのコマすごい。

まず、ウランへ中性子をぶつける核分裂反応の実験結果を元にエネルギー保存則の観点で計算すると、約...
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