sakurakoji.sakura.ne.jp
こうの史代(1968年生)は広島県出身で広島大学理学部中退しています。高校を卒業した時に選択した進路は理系女子の道だったようです。大学中退の時期は1988年前後なのでしょう。
その後の足取りはとだ勝之,谷川史子などのアシスタントを経て1995年に「街角花だより」により漫画家デビューを果たしています。こうしてみると大学中退の理由は漫画やイラストの世界に進みたかったからと推測されます。もっとも学業にも未練はあったのか,放送大学教養学部を2001年に卒業しています。
漫画家としてのデビューが27歳頃という遅さであり,絵柄は谷川史子の影響はまったく感じさせない古くさいものです。しかし,こうの史代の紡ぎ出す物語にはそのような絵柄がぴったりしています。
初期作品の「ぴっぴら帳」や「こっこさん」のように一昔前の日本の日常生活のなにげない一コマを語るにはとてもふさわしいものです。とはいうもののこの古くさく地味な絵柄が多数の読者の支持を得られるとは思われません。
ところが2004年に広島の原爆被災者やその家族,被曝二世を題材にした「夕凪の街 桜の国」が第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞および第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞しました。私もこのニュースにより「こうの史代」の名前を知るようになり,単行本を買い集めることになりました。
「夕凪の街 桜の国」の単行本の売り上げは文庫本を合わせて40万部を超えています。ヒロシマや原爆をテーマにした作品自体が少なく,しかもそれが社会的な支持を受けたことは私にとっては一つの驚きです。