ニュースで『まんぼう』って聞くたびにこの短編集の話を思い出す。何回読んでも新鮮な面白さがあって、オチまで含めてやはり傑作だと思う。この短編集は武富健治先生の”原点”とされている初期作品を収録しており、主に思春期の中高生を描いた作品が中心となっている。表題作『掃除当番』『ポケットにナイフ』は、後の鈴木先生に繋がるお話で、切なくも崇高さを感じさせる素晴らしい短編だ。『シャイ子は本の虫』は、”本好き”だった学生に刺さる内容で、特に気に入ってる。まさに珠玉の短編集だ。

読みたい
特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」

「ヒロシマのおばちゃん」を読みたくて購入

特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」
ひさぴよ
ひさぴよ

https://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b110795.html 『漫画が語る戦争 焦土の鎮魂歌』(小学館クリエイティブ)で読んだ曽根富美子の短編「ヒロシマのおばちゃん」が衝撃的だったので、もう一度読みたいと思って電子書籍版を探してたら、この短編集に収録されていた。 「ヒロシマのおばちゃん」以外の短編は、戦争の話というよりちょっと昼ドラっぽい話が多いものの、それでも表題作を読むためだけに買っても損はないと思う。 作品の詳しい時期は分かってないのだが、状況からして1990年代頃の設定と思われる。広島での戦争体験を語り継ぐの”一人のおばちゃん”を通して、戦時中の自身の半生を振り返るところから物語は始まる。巧みな語り口と、曽根先生お得意の、不幸で陰湿な心理描写にグイグイと引き込まれてゆく。そしておばちゃんは不幸のドン底と同時に、原爆の日を迎えるのだが…。 変わり果てた広島の街を、怨念そのものとも言える鬼気迫るタッチで描き出し、一度目にしたら忘れられないような光景がこの漫画にはある。おばちゃんは最後に「あれは地獄だったよ」とだけ語る。と同時に、この出来事が教科書の中のたった数行に収まってほしくない、と願うのだった。 個人的には「はだしのゲン」と同じく、ぜひ読み継がれてほしい戦争漫画の一つだ。

そうじとうばん
掃除当番 武富健治作品集
本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
警察の正体 トンデモ捜査の実態編

警察の正体 トンデモ捜査の実態編

犯罪を取り締まり、一般市民を守るはずの「治安の番人」による狂気の所業の数々! “ゴッドハンド”と呼ばれた最凶最悪刑事の凶状人生、暴排条例が施行された本当の目的、警察組織最後のタブー“シレン”捜査員、大阪府警察「情報漏えい事件」の全真相、裏捜査“心霊捜査”の実態、北九州・小倉でっちあげ事件を追う……etc.  国家権力を隠れ蓑にやりたい放題の極悪警官たちの手口を暴露する――!!  「正義」とは一体、何なのか。これを読んでもアナタは警察を信じることができるだろうか――。

「古代戦士ハニワット」中二版

「古代戦士ハニワット」中二版

「漫画アクション」連載中の超古代伝奇ヒーロー譚『古代戦士ハニワット』。この作品は著者の武富健治が10代の頃、何作も形を変えて描いた習作漫画のバージョンアップ版。今回、1980年代前半…中学二年時に初めて描いたバージョンを限定公開!

鈴木先生

鈴木先生

鈴木先生が苦悩すればする程、我々はワクワクする(江口寿史談)。新聞・雑誌の書評でも大絶賛の本作。ささやかな問題も重大な試練も全力で挑む、まったく新しい教師像。平成18年度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品。鈴木先生の流す脂汗と身に帯びたループタイは「誠実の証」!

ルームメイト

ルームメイト

『鈴木先生』の奇才・武富健治が挑むのは、今邑彩によるベストセラーミステリー『ルームメイト』(中公文庫刊)。大学生の春海は、下宿先を探す途中で京都から来たという麗子と出会う。勢いで「ルームメイト」となることになった二人だったが、あるとき麗子が失踪。春海は「ルームメイト」の正体を探るうちに、深い闇へと迷い込んでいく――

惨殺半島赤目村

惨殺半島赤目村

第1話~第4話収録古代の伝承が残る陸の孤島「赤目村」。都会の喧騒を嫌って赴任してきた青年医師「三沢勇人」は、赴任早々村民同士の対立に巻き込まれる。そんな中起こる事故、明らかになる村に隠された「秘密」、そして三沢自身にも秘められた「秘密」が…。「鈴木先生」武富健治が放つ恐るべき伝奇ホラー・サスペンス、ここに開演…!

鈴木先生 外典

鈴木先生 外典

本編は全11巻ですでに完結しているが、「漫画アクション」誌上に4回に渡って掲載された「外典」をまとめたのが本書です。内容は、重要なエピソードを補完するものだったり、作品中で起きた事件を別の視点から描いたものだったり、ファンならば絶対に読み逃せないものばかり!これがなければ鈴木先生は本当の完結とは言えない!

武富健治実話作品集 狐筋の一族

武富健治実話作品集 狐筋の一族

もう一つの武富健治解禁!『鈴木先生』の著者が贈る異色の短編集!怪談、都市伝説、秘境……緻密な現場取材に基づく実話漫画を豪華収録。この異形世界から目を逸らすな!!■収録作品:心霊捜査は行われていた!/狐筋の一族/謎の自殺村/おっとい嫁じょ/童謡にひそむ飢餓と人肉食/レイプ村/ふさぎこんだ犬/恐るべき二つの偶然殺人/邪教集団クロの真相

試し読み
心の問題

心の問題

文芸漫画家・武富健治が贈る、最新作品集!!『鈴木先生』本編連載終了後に雑誌発表され、そのさらなる“攻め”の姿勢と完成度が大反響を読んだ最新読切群から、平山夢明・原作のウルトラコラボ作まで、ポップ&濃密な貴重短編を一挙収録。あなたの知っている武富ワールドは、まだほんの一部だった。「どれもバッドエンドではないはずです」ーー武富健治

試し読み
漫画訳 雨月物語

漫画訳 雨月物語

又吉直樹氏 大絶賛!! 「尊敬する武富先生が描く『雨月物語』。やはり最高だった。」「新作を発表するたびに、僕を熱狂させてくれる武富健治さんが、『雨月物語』をお描きになる。それだけで静かに興奮していたが、素晴らしかった。上田秋成が込めた熱を武富先生の絵によって知ることができた。それにしても、人間というものは凄まじい。「怨念」や「憐憫」や「懊悩」や「情愛」といった特別な強さを持った感情こそが、想像性の高い物語を生み出す根源であることを思い知らされた。傑作です。」上田秋成が書き上げてから推敲に8年かけた『雨月物語』を文藝漫画家・武富健治が同じく8年かけて漫画訳に挑んだ意欲作! 重厚な筆致が幻想怪奇文学の古典に新たな生命を吹き込む!

『まんぼう』って聞くとこの漫画を思い出すにコメントする