nyae
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2021/11/16
漫画の神様のアシスタント記!!
タイトルからするに、アシスタントたちの食事情を記したグルメ漫画っぽい内容なのかと思いきや、手塚プロダクションで働く人々を(たぶん)リアルに書き記した読み応えのあるものでした。 早番と遅番が分かれていたりと会社らしい仕組みがありながら、やはり何本も連載を抱える手塚先生ですので、昼も夜もないことはザラで、いつでも原稿待ちの担当編集者が待っている状態。みんな、つらいけど楽しい。ある意味部活動みたいな空気を感じてグッときます。そんななかでやはり誰もが楽しみにしているのが「食事」なわけです。とくに会社からお金が出る夜食など、栄養補助食品を片手に机に向かい続けるのではなく、みんなで一緒にお決まりのお店に食べに行く描写が楽しい。 なにより驚いたのが、この漫画の作者は漫画制作未経験にも関わらず手塚プロダクションに採用されています。採用基準としては「伸びしろがあること」というものがあるそうですが、そういう"未来の漫画家を育てよう"という会社の方針があるんですかね。実際に、漫画家として羽ばたいていったOBたちが手伝いに来てくれることがよくあるみたいです。 手塚先生がアニメーション制作も漫画と同時進行し始めたはなしは読めば読むほど強烈で、人間離れしてます。まさに神の所業。アシスタントたちは当時いろいろ思うところはあったと思いますが、そんな人のもとで働いていたという経験は何よりも代えがたいですよね。 これで完結してるかと思いきやまだ続きがあるそうで、はやく2巻も読みたいです(紙の単行本ではもう出ているっぽい)(余談ですけど絵柄が中川いさみっぽいですよね)。
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2021/10/13
ネタバレ
殺し屋と恋人と、その父親。厄介過ぎる三角関係の行方は #1巻応援
移民の殺し屋・ローズと、恋人の女子校生・紅華、そして紅華の父は教会の神父で、日頃からローズが告解している相手である。 それぞれがそれぞれに、自分の正体を隠したり人には言えない事情があるので、実はとんでもない三角関係(というのか?)の中に自分が置かれているというのを誰も知らないという構図。 そんななか、ローズは自由と引き換えに教会の神父を全員殺すという任務が課されます。もちろんいつも話を聞いてもらっている神父が紅華の父親だとは知らないままですが、ローズは言われたとおりに使命を果たすことができるのか。そして、紅華との関係はどうなるのか。紅華は同性の恋人が居ることを父親に話すことはできるのか。 ローズの殺しのシーンが冷静で的確で面白い。暗殺組織の検死担当者?にも完璧な仕事ぶりで「100%ちゃん」と呼ばれるほど。 シリアスなストーリーではありますが、すこしわがままな紅華にローズや父親が振り回されている様子には笑ってしまうようなコミカルさがあります。1巻の最後には「ああ、ついに…」という展開もあり、誰も不幸にならないでくれ、という気持ちで2巻を待ちたいです。
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2021/09/28
ネタバレ
これを読んでも尚、精神科で働きたいと思うか。
精神科って、身体の怪我や病気でかかる一般的な病院とは違い、特殊な部分が多くあるなとこういう漫画を読むと思う。本作を読んで、精神科で働くということに興味を持つ人はいるかも知れないけど、最後まで読んだ上でも尚、心からやりたいと思う人はどれくらい居るだろうか。これはただの想像だけど、この漫画の作者のように自分自身が患者側になりそうになった、もしくはなった人が「あの心の状態って何だったんだろう」「他の人はどうなんだろう」という興味から心の病についてもっと知りたいと思った人がなるケースがあるのではと思った。 たぶん、患者に対してこの人は病気で自分は違うとはっきり境界線を引くような人にはできない仕事なんじゃないか。かといって、患者さんに影響されて自分を保てないならそれも難しい。誰もが探り探りの毎日。何年かけて世話をしても一瞬で裏切られることもある。辛抱強さが全てと言っても良いかもしれない。この漫画の主題である"ナース"はとくに。 印象的だったのは、自傷や加害行為をする人に対してただ「それはやってはいけないからやめろ」と言うのではなく「その行為に及ぶときの気持ちに注目する」ということ。自傷行為によって怪我をしても大したことがなければ自分で手当させるだけ、大事に至れば救急車を呼ぶだけ。そして落ち着いた時にどういう気持でやったのかを問うというのを繰り返したら、自傷行為が減ったという話。 身を削るほどの丁寧なケアは必要だけど、何があっても相手は自分とおなじ人間であるという当たり前のことを忘れないことが、この仕事には必要なんだと思う。