nyae
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2020/09/29
"居場所"を見つける物語 #完結応援
ここに居たい、とかここに居ても良いんだと思える場所があると、人は自分を肯定できるし、幸福を感じるんだなと思います。 親友に裏切られ、傷つき、癒やしを求めて田舎へやってきた主人公の真由美は、常に「これでよかったのか」と思い悩みながら、必死に自分が居るべき場所を探します。 「東京から来た女性と、田舎に住む女性が出逢って、恋をしました。」という単純な話ではないところが非常に面白いのです。内容からすると、3巻では足りないのでは?と思ってしまうほど複雑な人間関係が描かれているのですが、そこはしっかり3巻で美しくまとめてくださってます。 さらに主人公2人以外に、もう一組のカップルが描かれています。妾の子として親からの愛を受けられず、家の中に居場所がない少女・阿島と、その異母姉妹のさくらです。 言ってしまうと、私は阿島とさくらの関係性のほうが読んでいてドキドキしました。この2人が主人公のスピンオフ、待ってます…!笑 それぞれが、何かから逃げた自分も、何かを受け入れられない自分も、全部肯定してあげたうえで、居場所を見つけていく姿を最後まで見守るような物語です。
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2020/09/24
ネタバレ
初めて知る『養育里親』という制度
いわゆる養子縁組とは違い、あくまで将来的に実親のもとに戻ること前提で、それまで子供の養育をする『養育里親』。こういう、こうすればいいという正解がないテーマは描くの難しいと思います。ただ、世の中には自分が知らないだけで、子供を守る制度がたくさんあるんだと学びました。 正直読者としても、主人公の鈴木(男性・独身・漫画家)は里親としてかなり不安だし、毎話ヒヤヒヤしながら読んでいます。でも様々な審査を経て彼に決まったのだから、高嶺くんの生活・成長を全力で守って欲しい。鈴木の「人に頼れる」ところが里親としての長所だというのを読んで、たしかにひとりでなんとかしようとする人より、些細なことでも人に相談できる人のほうが良いし、子供もそれに倣うんじゃないかと思いました。それに、子育て=女性の役割という古臭い考えを壊すという意味でも、鈴木にはしっかり役割を果たしてもらいたい。笑 3巻以降は、本格的に里親里子生活が始まるわけですが、そしてきっと(いや、絶対)大変なことがたくさん起こると思いますが、読みながらふたりを応援してますので楽しみです。
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2020/09/17
ネタバレ
120年の時を経てやっと認知された手記のコミカライズ #1巻応援
決して難しい話ではなくて、漫画としても非常に読みやすく、人種差別を理解するのにとてもふさわしい作品です。この手記が発見された当時、奴隷が書いたにしてはあまりに知的であったためフィクションと誤認された、とあるように(翻訳の際に多少読みやすくしていたとしても)、年齢問わずわかりやすい内容になっています。学校のクラスに1冊ずつ置いても良いかもしれない。 実は「重いかな…」と思って買ってから1ヶ月以上寝かせてしまっていたんですけど、今日こそと思って読んだんです。そしたらあっという間に読み終わってしまいました。 人身売買が当然のように行われる。家族とは簡単に引き離される。人をモノのように扱う。自分の希望など何ひとつ通らない。それがここで描かれる現実です。理不尽に振りかざされる権力には、本当に絶望します。 これを読んで、なにか行動を起こす人もいれば、そうなんだ、で終わる人もいるでしょうけど、黒人差別は当時から、そして現在も無くなることのなくつながっている。それがわかるだけでもこの漫画の存在意義があるんじゃないでしょうか。 そしてこれは1巻完結ではないので、主人公リンダの戦いはまだ続いています。2巻が出た時に、いまより更に多くの人が読んでいでいて、売り切れてしまうくらいになればいいですね。
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2020/09/09
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これは多分、尊厳とかの話 #完結応援
最近読んだ違う漫画にもあったんですが、"出来ないこと"ではなく"出来ること"を見る、そして伸ばすという思考にならないと、はみ出す人が出てしまうということを、この漫画でも描いていると思います。要は、例えば障害者や老人は、社会に貢献出来ることが少ないから、人間としての価値が低いという考えになってしまう。そのせいで、〇〇出来る方が偉いとか、出来る人は出来ない人を叩いていいような認識になってしまう。そしてそういう社会ではどんどん生きづらい人が出てきてしまう。 本来そんなわけないし、そうであってはいけないのはわかっているけど、なんかこの社会に生きているとそういう考えがいつの間にか頭に生まれてしまう。恐ろしいことです。 社会に必要とされるとか、役に立つとかは生き甲斐にもなるし大事だけど、別にそうじゃなくても全然いいんだということが当たり前になったらいい。 この漫画を読んでいると、自分の中に受け入れられないこととか、許せないこと、もしくは差別意識のようなものが存在していることが浮き彫りになるかもしれません。そういうのに気付かせてくれる漫画はすごく好きです。 表紙だけだとほのぼのシェアハウス群像劇のように感じるかもしれませんが、けっこう深いところまでズブっと踏み込んでる漫画です。身近な人や、もしかすると自分自身が登場人物と重なったら、どんなふうに読めるのか、人によって結構違うんじゃないかと思います。
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2020/09/06
読み終わるのが寂しかった #1巻応援
海の底に静かに佇む、寡黙なタコが営むバーが舞台のお話です。 リトルマーメイドみたいなファンタジー&ロマンティックというよりは、私たちが生きる地上と変わらない日常が"底"にありました。海の中にも季節があって、会社があって、飲み会がある。面倒な同窓会、うざったいナンパ、給料日だけのちょっとした贅沢。一緒ですね。主人公も、お酒が弱くて人見知りな人魚の女の子で個人的に親近感がすごいある。そんな主人公でも通いたくなる気持ち、わかります。バーオクトパスの居心地はものすごくいい。 (というかスケラッコさんの漫画自体の"読み心地の良さ"がそのままお店の居心地の良さに変換されているんだと思う。感情が激しく揺さぶられることはないけど無感情でもなくて、限りなく良い心の状態で読める感じ。だけど途中で絶対飽きが来なくてページを捲る手は止まらない。) 基本無言だけど、口から出す墨で素敵なリアクションをとってくれる優しいマスターや、対象的におしゃべりな常連さんなど、キャラクターたちも見た目は魚類だけど年齢とか性格とか個性があるのがよくわかる。マスターが客が来なくてひとりのときのエピソードがいちばん好きだな…。 1巻完結かぁ。。読み終わるのがこんなに寂しい漫画久しぶりでした。
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2020/08/27
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ギャグじゃなかった
ガチの原始人や古代人に恋する真面目なラブストーリーだった… 表紙見ても、あらすじ読んでも「え?どういうこと??」という状態だったんですが、1巻無料だしと思って読み始めたら何だこれ面白すぎて止まらねぇ、な漫画でした。たぶん単行本出た当時はわりと話題になってた気がしますがスルーしてたんですね。読む前は絶対ギャグ漫画だろうと思っててごめんなさい(真面目にふざけているという可能性はまだある)。 現代パートに出てくる男子たちが、本来ならメインでヒロインを取り合う立ち位置のキャラなのに(オラオラ系、可愛い系、不思議系、オタク系、教師などいわゆる王道)、主人公が恋するのはタイムスリップ先で出会う原始人なので、完全に脇に追いやられている構図が素晴らしいなと思った。 そうなんですけど、その男子たちの存在が後々、とても物語に大きく関わってくるのも更に素晴らしいんです。この中に…居る、のか…!?と。 主人公もハッキリした性格で農家の娘だけあって?生命力も強くて、しかも3回目のタイムスリップではちゃんと相手と夫婦になって、そして死ぬまで…(そのあと現代に戻って17歳からやり直すのずりーと思っちゃったけど) 生まれ変わってもまた同じ相手と恋するみたいなの「ときめきトゥナイト」好きなので大好物ですけど、これはまた違う魂のめぐり逢いを見せていただきました。原始人が相手でもラブストーリーって成立するんだな…ほんとすごい漫画でした。