決して難しい話ではなくて、漫画としても非常に読みやすく、人種差別を理解するのにとてもふさわしい作品です。この手記が発見された当時、奴隷が書いたにしてはあまりに知的であったためフィクションと誤認された、とあるように(翻訳の際に多少読みやすくしていたとしても)、年齢問わずわかりやすい内容になっています。学校のクラスに1冊ずつ置いても良いかもしれない。
実は「重いかな…」と思って買ってから1ヶ月以上寝かせてしまっていたんですけど、今日こそと思って読んだんです。そしたらあっという間に読み終わってしまいました。

人身売買が当然のように行われる。家族とは簡単に引き離される。人をモノのように扱う。自分の希望など何ひとつ通らない。それがここで描かれる現実です。理不尽に振りかざされる権力には、本当に絶望します。
これを読んで、なにか行動を起こす人もいれば、そうなんだ、で終わる人もいるでしょうけど、黒人差別は当時から、そして現在も無くなることのなくつながっている。それがわかるだけでもこの漫画の存在意義があるんじゃないでしょうか。
そしてこれは1巻完結ではないので、主人公リンダの戦いはまだ続いています。2巻が出た時に、いまより更に多くの人が読んでいでいて、売り切れてしまうくらいになればいいですね。

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ある奴隷少女に起こった出来事

今こそ考えたい人種差別問題

ある奴隷少女に起こった出来事 あらい・まりこ ハリエット・A・ジェイコブズ
兎来栄寿
兎来栄寿

元来、奴隷問題に関する歴史的な資料や記述は大半が奴隷を扱う側の視点に立ったものでした。そもそも奴隷はまともな教育も受けられないことが多いため当然です。そうした意味で稀有なのが、この『ある奴隷少女に起こった出来事』です。 本書は元々1861年に刊行され、当時はあくまで白人著者が書いたフィクションとして受け止められていました。しかし、1987年になって歴史学者により筆者ハリエット・アン・ジェイコブズの直筆の手紙が発見され、その文章の相似から『ある奴隷少女に起こった出来事』はフィクションではなく、実際に黒人奴隷だった筆者が書いたものであることが証明されました。 「歴史とは勝者によって作られる」といわれますが、本書は弱者の立場から書かれた極めて貴重な記録なのです。 そうして100年以上の時を経て本書はベストセラーとなり、日本では2013年にハードカバー版が、2017年に文庫版が発刊されました。そして2020年8月になって、このコミカライズ版が刊行されたのです。 本作では、フリント家の「所有物」となった筆者や同様の境遇にいる人たちが人間としての尊厳を踏みにじられ続ける様が描かれます。その過酷さは筆舌に尽くし難いものです。 現代の日本人が当たり前に享受しているものが、人類史においては極めて稀有で得難いものであるということを私たちは往々にして忘れてしまいがちです。しかし、中世などではなくほんの最近まで人類はこうしたことをしてきたということは忘れてはならないでしょう。 『ある奴隷少女に起こった出来事』は日本人に読まれ始めてからの歴史はまだ浅いですが、『アンネの日記』や『夜と霧』のように読み継がれていくであろう、いくべき名著です。コロナ禍に伴って人種差別問題が取り沙汰されることが増えた今こそ読まれるべきです。 先人の偉大な努力によって築かれたこの恵まれた環境にもっと感謝しながら日々を大事に、より良いものにするべく生きていきたいと襟を正したくなる、社会的意義が非常に大きい作品です。

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ロボ子ちゃんオーバーケア

ロボ子ちゃんオーバーケア

田辺恵美は専業主婦。家事はもちろん、義父、源三の介護もこなしている。夫の博文は仕事人間でいつも家におらず、継子の早紀は心を閉ざして不登校。そんな田辺家に、介護ロボットがやって来た。とっても働き者で、ちょっと毒舌な人型ロボット「ロボ子」が、ちぎれかけた家族の絆を振り回す!?

薄命少女

薄命少女

余命1年を宣告された1人の少女とその父の、悲しくも愉快な日々を描く、生と死と笑いの物語。少しずつ確実に死へと向かいながらも笑顔で生きようする少女の1年間。コミカルな笑いと心に突き刺さるドラマの融合した不思議な4コマ漫画です。

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