香りで深まる生活
同棲生活3年目。裕福ではないが貧乏というほどでもない。 倹約生活をそこそこ楽しんだりしながら暮らしている ごく普通のカップル。 互いに美味しいものを食べたい食べさせたいと思って やってみた燻製料理で、二人の生活に彩りと深みが 加わっていく。 二人で作って、わかることがあったり、 燻しあがるのを待ちながら話をして気がつくことがあったり、 一緒に食べて、確認しあうことがあったり。 燻製を作って味わって、味や香りや自分や相手について 初めてわかったり改めて思ったことなどが ゆっくりと二人の生活に生まれて染み込んでいく。 同棲カップルが主人公なので、当然、 二人の会話やそれぞれのモノローグのシーンが多い。 燻製料理の説明やストーリーの説明的な展開とかにも。 そのあたりの描写が凄く良い。 自然な会話で説明くさくない。 燻製が出来上がるまでの30分とか1時間とかのシーンで、 同じ様なコマを背景に二人の会話だけが進んでいく、 みたいなコマが連続したりするのだけれど、 そういうシーンが、単調で些細な変化しかないけれど、 その些細な一言一言それぞれを愛おしく感じたりする、 そんな日常生活を味あわせてくれるような気持ちになる。 派手に賑やかに豪華に料理して味わうのもいいけれど、 静かに燻製料理を作って味わうのもいいな、 それが好きな人と一緒になら尚いいな、と思わせる漫画。
一点の曇りもなく寸分も狂いもなく幸せな日常を過ごしている人達なんてきっといない。
わかっているはずなのに隣の芝生が青く見えて、自分の日常がうまく愛せなくなったり。
そういうリアルさを忘れさせてくれるひたすらほのぼのした日常漫画かと思ったら、ひたすらリアルな日常漫画だった。
同棲中のカップル・頼子と巡が休日に燻製を作って食べるお話。
相手のことがわからなくなったり、将来に不安を感じたり、他のカップルと比べてしまったり。
何も起こらないように思える毎日の中、言葉にならないモヤモヤとした感情が生まれては消えていく。
それでも、美味しいものを作って一緒に食べれば間違いなく幸せで。
痛さも甘さもほろ苦さも全て含めて愛おしい日常なんだと教えてくれる作品でした。
もちろん料理漫画としてもすごく面白い!
燻製コーヒー飲んでみたいし、たこ焼きやカレーの具材を燻製にするのも美味しそうでやってみたい。