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君は武道館に立てない
夢という呪い
君は武道館に立てない
六文銭
六文銭
「夢なし先生の進路指導」も、そうだったのですが、やりたいことや夢を追うこと美化しすぎる昨今に、現実を突きつける作品です。 主人公は25歳でアイドルを目指している女性。 弱冠アイドルとしての旬は過ぎている感は否めないが、それでも過去、地下アイドルだった時の高揚感が忘れられずズルズルと夢を追い続けていまに至る感じ。 そして、さるオーディションで、主人公のアイドルを諦めない姿勢 「どこまでもしがみつく根性」 の点が、プロデューサーの目にひっかかり再デビューを果たす。 が、現実はそんな甘くなく、業界人や財界人とギャラ飲みやら枕営業などを強いられるという展開。 プロデューサーが目をつけた「しがみつく根性」には「何をしてでも」という枕詞が隠されていたってオチ。 まぁ、タイトルからしてそんな予感はしてましたが、それを知った上でもなかなかエグい。 プロデューサーのセリフも、わかった上でやっているんだから鬼畜そのもの(添付参照) また主人公のバイト先に、夢を追う主人公を現実路線で冷ややかな目でみる男子大学生の対比も良い感じです。 1巻の最後がなかなかのヒキなので、続きが気になる。 そして、この枕を強要された事実を武器に文◯砲をもって裁判で闘う元アイドル的な(現代風刺的な)展開になったら、歓喜します。
青と恋のアトリビュート
苦労を抱えたふたりが手に入れる青春 #1巻応援
青と恋のアトリビュート
兎来栄寿
兎来栄寿
「こんな青春ストーリー、なんぼあっても良いですからね!」 と、心の中のミルクボーイが笑顔で拍手喝采でした。 美大を舞台にした青春群像劇ですが、創作面での葛藤などというよりは、各人物感の関係性に大きくウェイトが置かれた物語です。 中心となるのは会食恐怖症の主人公・蔵江。 そして、とある悩みを抱えるヒロイン・有地(ありぢ)さん。 蔵江は想いを寄せる有地に近付こうとしますが、その過程で有地の秘密を知ることになります。 友人はいたものの一緒に食事ができないことで困難を抱えていた蔵江と、ある事情により子供のころから人付き合いが苦手である有地さんの、違うものの似ている部分が重なり合って交わっていく構図がとても良いです。 有地さんは絵に描いたような食いしん坊キャラなのも高感度が高いです。美味しそうにたくさん食べる女子、良いですよね。蔵江が人とご飯を食べるのが苦手であることと対照的ですが、それを克服する一助となっていきそうです。 蔵江に好意を抱きアプローチする佐藤さんや、飄々とした良き友人キャラポジションの山本らサブキャラも立っており、青春を織りなす良き仲間たちとしてそれぞれを愛せます。家族以外にスマホに連絡先が入っていなかった有地さんが、少しずつ周囲の人と強く関わり合っていく姿を見ると心が和みます。 互いに心にわだかまりを抱えながらも、生まれた関係性から光の方へ寄り添い歩んでいくような青春を浴びたい方にお薦めです。
オーディンの舟葬
残忍なヴァイキングへの復讐譚 #1巻応援
オーディンの舟葬
兎来栄寿
兎来栄寿
今でこそ「北欧」というと福祉が充実している幸福度の高い国であったり、サウナであったり、ヒュッケであったり、オシャレな雑貨であったりの穏やかなイメージが強いかもしれません。しかし、かつての北欧は圧倒的な「暴」の支配する土地でした。北欧神話などにもその影響は色濃く受け継がれています。 本作は『ヴィンランドサガ』と同じ11世紀初頭を舞台に、ヴァイキングの脅威に晒される側であったイングランド王国はロンドン北の小村から物語は始まります。 「狼の子」と呼ばれる狼に育てられた少年と、心優しい神父・クロウリーの出逢い。クロウリーによってルークという人間の名前を与えられた少年は少しずつ人間としての暮らしや知恵を教えられていきます。しかし、そこでヴァイキングによる悲劇がもたらされ、ルークは「戦狼(ヒルドルヴ)オーディン」と呼ばれる復讐鬼へと変貌していきます。 ルークの仇敵である白髪のエイナルは、笑いながら人を殺し村を焼きながら生首の山の前でダンスを踊る凄惨さを見せます。現代日本とはあまりに倫理観や死生観が違いすぎる過酷な世界ですが、だからこそ見知っておく価値もあります。人類がこういった歴史を歩んできた上で、今という時代があるということを。 本作で特に面白いのは、仇敵であるエイナルというキャラクターの掘り下げです。エイナルがいかにしてそのような人物となっていったのかという部分を読むと、人類の業の深さを感じずにはいられません。 よしおかちひろさんの勢いのある画風も、そんな峻厳な時代を描くのに非常にマッチしています。筆ペン的なもので描かれた部分の線の迫力など非常に際立っています。 北欧神話ではオーディンは最後にフェンリルに喰われますが、血に塗れた神話の神の名を冠したルークは本懐を遂げることができるのか。 帯コメントが幸村誠さんから寄せられているのは圧倒的な納得感です。『ヴィンランドサガ』を好きな方、歴史マンガが好きな方は特に、そうでない方にもお薦めです。