これが強い女性?
この主人公が女性として尊敬できる強い人物との評価が他のレビュー等で見られましたが、私としてはその評価に対して正気かと思うものでした。 まず、男性を基本的に見下しています。 同性から見てもあだ名や同級生の初期の扱い。明らかに事件が起こりそうなことを誘発しておいての責任転嫁。 私たちは買われた?系の心理だと思います。 世の中クソだと浸るわりには後半に判明する能力は現状打破に大きく役立つにも関わらず、なにも行動に起こしません。 他のなろう作品となにも変わりません。 物語ではありません。
実のところハルと千葉がコインの裏表になってるあたり、作者は皮肉を思いっきり込めてると思う。
例え木剣だろうが刃引きしてようが、闘技場で働くのと娼館で働く危険性は「本来」どっこいどっこいだろうし、娼婦の人気も闘技場の人気も拘ってもしょーがないものに過ぎないし、結局互いに自分の安全(と思ってること)を確保して働いてるようで遊んでるだけ(互いに相手が遊んでて自分はちゃんと働いてるって思ってそうだけど)だろうし。
この世界の人間と同じ立場、視点を持つ事は無理なのは確かなんだが、話自体は読者が女性中心という事もあるにせよ徹底してハルの視点で描かれてるから、この意地の悪さに気が付いている読者がどれだけいるか気になる。
終盤の種明かしは「チートを使っても幸せになれない千葉」と「チートを使わなかったから人を不幸にしてるハル」という構図がある。
娼館で人を癒すのも闘技場で人を熱狂させるのも大して変わらないし、兵役や魔王が存在するのに作中ではロクに描かれないのは、ハルも千葉も一切そこに目を向けていないからだし、そうして二人とも遊んでた結果救えた筈の人を殺させてしまい、その元凶が魔王や政治だとは思いもせずハルは憂さ晴らし(感情的には理解できるが、魔王の脅威を消さない限りまた起こる事でしかない)で何人も殺して、街の防衛力を削ってる。
もしも魔王が襲ってきたらハルも千葉も、身内が殺されない限り逃げるだけだろうし、ハルは元の世界に帰りたいならセックスし続け戦いに身を投じればいいのだけど、そんな「本当の」苦難の道に身を投じ目的を達成しようという意思はなく、楽な方を選んでいるという点では結局千葉もハルも同類でしかない。
最終的には、二人ともに自分が未熟な子供である事は理解し始めているが、おそらく二人とも打ち解けることは無いだろうし、視点の持ち方で明らかに印象が変わるようにしていて怖い。
ハル側にしろ千葉側にしろ、異世界側にしろ元世界側にしろ、本当の意味で相互理解はできないだろうけど、徹底してハルの視点で描かれ視点が明確な分、見えてない事、想像できることがあまりにも多く、掲載媒体的にはともかく広い層が読めば受ける印象はかなり異なると思う。
元々作者が意地の悪い作品を出してはいたのだが、このハルと千葉の生々しさと酷さは明らかにストーリーの魅力には繋がっているが、キャラの魅力に繋がってるとは言い難く、キャラに好感も嫌悪も強烈に感じてしまい、性的・残酷描写以上に人にお勧めする気は正直出てこない。
いずれにせよ作者のプロデビュー作という点では、ある意味で流石としか言いようがない。