3.6
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稀代のストーリーテラー石黒正数における、マイベストな作品。
1話目から中学生が本屋でエッチな本を買う方法を真面目に語りはじめたのでギャグ漫画?と思っていたら最後腰抜かしました。
SFミステリーともいえる、人型ロボットや「フェアリー」という人工生命体が存在する近未来が舞台のお話。
一見、非連続なオムニバス形式で語られているのですが、そこは石黒正数。
全ての話が伏線であり、最後の最後で一つに収束していくさまは、ある種のカタルシスを与えてくれます。
また、ギャグテイストで間口を広くしておきながら、徐々に人間のもつエゴや狂気など深いテーマへ切り込んでいくのはさすがの一言。
各話のピースが一つの解へと到達する爽快感と、物悲しいクライマックスの読後感と相まって、1巻完結ながら定期的に何度も読み返してしまう作品です。
おそらく「天国大魔境」とかから石黒正数に入った人はこの本も好きだと思います。
「それ町」から入った人はたまげますが、それでも、あの作品のちょっと不思議な世界観が好きな人はハマるかと思います。
いずれにせよ作者の魅力が詰まった1冊になっております。