真の名作は色褪せず、発酵し熟成する
十数年ぶりにカイジを読んだ。当時とて当然感動したし面白かった。この間に数多くの漫画や書籍、映画やアニメに出会ってきて、精神的にも豊かになった。今読むとどうなるか? 勝負の勝ち負けも、ストーリーの結末も知っている。 だが面白い。 利根川の名言一つ一つが、熟成された旨味を伴って染み渡るのだ。カイジの小賢しさもここぞの度胸も、俯瞰して「観客」として楽しめる。 「金は命より重い」 当然ながら利根川は本心からそう思ったわけではあるまい。帝愛の企業理念やスローガンかもしれない。だが、間違いなくあの場あの空気に最もズシリと響いた言葉を選んだのだ。
ストーリーをものすごく簡単に説明すると友人の保証人になって多額の借金を背負ってしまった主人公カイジが様々なギャンブルで一発逆転をしようという話です。
ギャンブルをしていく上でカイジは、八百長を勧めてきた相手に裏切られたり、地下施設で日当350円で強制的に働かせられたり、何度も苦境に立たされます。しかし、その都度天才的な閃きでギャンブルの必勝法に気づき、打開して行きます。それまでただの自堕落な若者だったカイジがギャンブルを通して、成長していく姿は爽快感を感じます。
また、作者の福本先生が考えるオリジナルギャンブルも限定ジャンケン、鉄骨渡り、Eカード、パチンコ沼など沢山出てきますが、細部まで緻密に考え込まれており、読者を飽きさせません。
この作品は、ギャンブル漫画としてもクオリティが高く面白いのですが、主人公の成長物語としても楽しめると思います。
まぁ、最終的にギャンブルで稼いだ莫大なお金をまた持ち逃げされるというお人好しのカイジらしい間抜けなオチなんですが。