カムイ伝の凄さは言うまでも無いのだが、教条主義の固さの噂や悲惨な描写にハードルが高くなっている読者も居る筈。そこで全く別の角度から眺めてみる試みをいくつか。
1.剣法、忍法の漫画として
カムイ伝はまごう事なき剣豪・忍者漫画の系譜。各キャラクターは、多彩な剣技と忍術で死闘を繰り広げます。当時流行の梶原スポ根漫画にも通じる痛快さ。勿論今日のバトル漫画のルーツでもあります。特に竜之進のライバル橘一馬、玄蕃の「無人流」は最高。これを今の技術で実写化したらと思うと眠れなくなります。飯綱落としの開眼も白眉
2.恋愛物として
悲恋物の宝庫です。正助とナナ。クシロとキクもいいけど、権とアケミがおすすめ。長男と長女というだけで結ばれずアケミは婿五郎をとる。その間のアケミ、権の苦悩が読み応えたっぷり。失恋の放浪の末、孤児サチを得て得心し、五郎とも友情を築く権あっぱれ。
3.動物漫画として
シートンへの造詣の深い白土氏が時に台詞抜きで描写する動物描写はそれだけで本編と別の動物漫画としても楽しめること必至。
4.経済漫画として
歴史的な経済描写も秀逸。大名によるお断りで首をくくる商人や勿論役人と結託して不正を働くワル商人。藩札騒動など現代の仮想通貨を思わせる。
5.その他
主人公はカムイ、正助、竜之進の三人ですが、例えば橘軍大夫、横目、赤目の立場でストーリーを追うとまた新しい発見が。結果このように多面的な構造をなす膨大なストーリーであることがカムイ伝の揺るぎない魅力なのでありましょう。