下巻まで読み終えたとき、上巻の序盤を読み直してみて、作者の母・トシ子さんがどれほど痩せたかに驚きました。 「骨折を機に徐々に細っていき、ヒゲが伸びる」という描写に、自分の祖母もそうだったな…と深く共感しました。 また読み進めるごとに、「これ以上痩せられないだろ」という想像を超えてやせ細っていくトシ子さんの姿を、可愛らしいデフォルメを残したまま各段階を描写しきったところが素晴らしいと思います。 作中で印象的だったのが、車椅子に乗った女学生の姿で若い施設のスタッフさんを探すトシ子さんと、怒りっぽくなったトシ子さんのことを「好きだ」という夫・あきおさんの言葉。 …思わず目にこみ上げてきました。 作中でも述べられていますが、母の介護だけでも大変なのに、「遠距、怒りやすく偏屈な父、ケアマネさんは新人」というのが作者の家の『介護』なのです。 マンガを通して人の家の事情を知ったことで、すこしは介護というものをより多面的に把握できるようになった気がします。 Kindle Unlimitedで上下巻読めるので是非。
大学生だった2012年頃によんでますよ、アザゼルさん。を追うためにイブニングを読んでいて出会ったのがヘルプマン!22巻に収録されている「介護企業編」でした。 主人公・飛石が介護ビジネスで一儲けしよう企む過程で誰もやっていない、利用者を喜ばすケアプランを思いつくものの、プラン内容は全て国の定める介護保険法に違反することを知る。 当時、今は亡くなった祖母が施設に入っていたこともあり、飛石と同じ目線で驚きながら介護について学ぶことができました。 次の「認知症予防編」は、元宇宙飛行士の女性が父を介護することになり、認知症の衝撃的な現実を(壁に…)目の当たりにするというエピソードもすごく好きでした。 ヘルプマン!は後半のこの2編しか読んでいないので、ずれ全部読み通したいです。
まず女の子がカワイイ。信じていい、大丈夫だこのマンガは。 むしろ「20代も後半になって美少女が喫茶店でキャッキャウフフするような作品を読もうという俺が大丈夫か?」という気持ちだったのですが、本作はその20代後半の「働く人間」にザックリと刺さります。 とはいえ序盤は入り込むまで正直時間がかかったし、兼業作家として活動する作者の念みたいなものがカワイイ女の子レイヤーを貫通して透けて見える瞬間もあります。 が、だからこそ届いてしまう。 喫茶店月の岬に集まった人たち(※みんなカワイイ)が 素直に自分の好きなものを、好きなひとたちとやっていこうとするまっすぐな気持ちが。 ただカワイイだけの作品ではない。 作者のまっすぐな思いがたっぷりと詰まった、信頼できるマンガです。
1つの作品の中に『異なるジャンルのマンガ表現』が混在していてすごい…! ネコがおもちみたいに溶けて子どもがコロコロしている絵柄は、大人っぽい**「ゆるいデフォルメ」**。町並みや道路は丁寧に描かれ味があり、まるで歴史漫画のような**「リアルな背景」**。そして日常を描いた作品でありながら、襖を開けるシーンではナメたりや卓球中は俯瞰したりと、カメラワークはまるで**「少年マンガのような迫力」**。 **そしてただ違うジャンルの技法を取り入れるだけでなく、それが見事に調和がとれていて読んでいて気持ちいい…!** そしてストーリーは、舞台背景について説明がほとんどないにも関わらず、スッと世界に入れてキャラクターを身近に感じました。 というか、登場人物たちの関係や、キューポラ堂はなんで卓球を置いているのか、八絵ちゃんは過去に何があったのかを野暮ったく語らないところが粋…! **説明しすぎず、読者自身に想像で自由に余白を埋めている状態こそが、まさにこの作品の面白さの根源**かなと思います。 読み手の数だけ「キューポラ堂とは何か・なぜ卓球があるのか」の答えらしきものが無数に存在する以上、この作品は何度読み返しても面白さが消費されない。
※ネタバレを含むクチコミです。
今や会長にまでなった島耕作。その原点となったのがこの作品。最初はオフィスラブ漫画路線だったために不用意にセックスする漫画になっている。高校の頃の同級生が「島耕作はセックスしすぎ」と部活中に発言して、先生から注意を受けたあながち間違った印象ではない。それでもそんなに島耕作からいやらしい印象を受けないのが、良くも悪くも島耕作という男が女性を自分の人生の一番大事な部分におかないし、おけない男だからだろう。顔もよくて仕事もできて女性に執着せず、運もある。そりゃ出世して当然だし、女性にももてるだろう。
読み始めてすぐに衝撃を受け、読み終えると五秒ほど深く嘆息しながら、その卓越したセンスに拍手を送るばかりでした。漫画読みでいて良かった、と心の底から思えた作品です。そして、何度か読み返す内に涙すら零れて来ました。 町田洋先生のこれまでの作品は、イメージでいえば圧倒的に「夏」。自分の中にある過去の夏の情景が想い起こされます。しかし、それは常夏の南国のような陽気な夏ではありません。どちらかと言えば、夏休みのプール教室に行ったものの知り合いが誰もおらず蝉時雨の中で歩んだ孤独な帰り道や、最後の一本の線香花火の火が消えて後片付けをしている時のような、鮮烈な季節の中にある陰。夏の終わりに存在する、独特の寂しさのようなものを感じさせます。そして、それは切なくもどこか仄かに温かです。 ■ 町田洋、その誉れ高き新鋭 町田洋先生は、そもそもが珍しい経歴の作家です。元々は自サイトで漫画を掲載していた所、電脳マヴォに掲載。そして、デビュー作となる前短篇集、『惑星9の休日』が、描き下ろし単行本として祥伝社から昨年刊行されました。今の時代、連載も無く単行本が出される、しかも新人が、というのは非常に稀なケースです。ネットの海の中で人知れず花を開いていた才能が発掘され、そうして特殊なルートでデビューを果たすことができたということは、マンガ業界における一つの希望でもあります。 それに続き、電脳マヴォに掲載された三作品を中心に、描き下ろしとして8ページの短編「発泡酒」を加えて書籍化されたのが、二冊目となる『夜のコンクリート』。その内の一作「夏休みの町」は、文化庁メディア芸術祭で新人賞を受賞しています。 ちなみに、『夜とコンクリート』刊行にあたって、最初は電脳マヴォに「青いサイダー」だけを残すことが町田先生に提案されたそうです。しかし、その提案とは逆に町田先生は「青いサイダー」のみを掲載作から外すことを要望したのだとか。私はそのエピソードを知って、とても納得が行きました。それは、言い換えれば他の2篇をWEBで読んで既読の状態であっても、本を買った時に「青いサイダー」さえ読んで貰えれば満足して貰えるだろうという自信の表れではないでしょうか。 ■ かつて見たこともない描線が織りなす、独特の世界 町田洋先生の描く絵は、シンプルですがそれ故にエモーショナルです。 表題作「夜とコンクリート」と「発泡酒」ではフリーハンドで、「夏休みの町」では定規を使った作画になっています。 その中で、異彩を放つのが「青いサイダー」。この作品だけは、全ての絵も書き文字も、Windowsのペイントで描いたかのように直線のみで構成されています。 数多くの漫画作品に触れて来た私ですが、かつて出逢ったことのない画面作りにまず衝撃を受けました。 『夜とコンクリート』P109 > この島はシマさんという > ステレオタイプな島だねと > 人はいうだろうけど > まぎれもなく僕の友人なのだ という、1ページ目から始まる「青いサイダー」。何を言ってるか解らないと思いますが、私も解りませんでした。しかし、このちょっと掴み辛い物語、読み進め、じっくり咀嚼するとその味わい深さに唸らされて行きます。 近年の中でも、町田洋先生は静寂を紙の上に現出させるのが一番上手い作家です。敢えて何も語らせない、キャラクターが無言でいるコマの多さ。そして、どこまでも静謐を感じさせる広漠な風景。それらは謂わばミロのヴィーナスの両腕のようなもので、無限の想いの余地が茫洋として広がり行きます。ぽっかりと開いた空間に夏の匂いと追憶を感じながら、そこに成長と共にある大人になることへの寂寥感、それとコントラストを成す大人として世界の要請に付き合ったが故に生じた後悔といった繊細な情動がもたらされ、胸を締め付けられます。 ■ 今年の夏の傍らに、町田洋を 「夜とコンクリート」「夏休みの町」「青いサイダー」「発泡酒」という四篇によって構成されるこの本は、一冊の短篇集として総体的にも完成度が高いです。「夏祭り」や「夏影 -summer lights-」を夏が来る度に聴きたい曲だとすれば、『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』は夏が来る度に読みたいマンガ。 是非、夏の夜に一人静かになれる場所で、町田洋という海に潜ってみて下さい。漫画の世界の無限性を改めて感じさせてくれる、清冽なる才気がそこに輝いています。
胸が大きい主人公の盛盛実乃梨(もりざかりみのり)が、自分の胸を意識せずに接してくれる同僚の金城玉ノ輔(きんじょうたまのすけ)に恋をして、二人であれこれするラブコメディー!このカップルは二人とも名が体を表してるんです。 主人公が健気なドジっ娘ヒロインなのがいい。胸が大き過ぎることが原因で起こる、胸元のボタンが吹っ飛ぶなどの「おっぱいの失敗=おしっぱい」シーンがたくさんある。おしっぱいっていうネーミングセンスにツボる。 作品集という扱いになってますが、ほぼこのカップルのお話です。
傑作web漫画。 10年近く前にwebで読んでいた面白いマンガが違うweb漫画発の作家の手で改めて漫画にされるということで、懐かしさ半分楽しみ半分で手に取ったけど、やっぱり結構好き。 神とも言われる存在「韋駄天」が数百年に一人の割合で世の中に誕生する。 かつて魔族との大きな争いがあった以後に誕生した「平穏世代の韋駄天達」と、新たに発生し始めた魔族の脅威の話。 「韋駄天」や「魔族」という存在に対するトライアンドエラーの末に至る考察や、その応用、バトルなどスピード感もある見どころがたっぷり。 懐かしさ補正もあるかもしれないが、面白い。 というか刷新されて読みやすくなっているのもいいが、早く更新が止まったwebの続きを読みたい。 原作はコチラ→http://amahara.bob.buttobi.net/
作画『サヌキナオヤ』 イラストレーター・漫画家・アニメーター http://sanukinaoya.com/ ストーリー『福富優樹』 京都在住の4ピース・バンド『Homecomings』のギター https://twitter.com/pizzaplanet_hom 編集『森敬太』 自主制作漫画レーベル『ジオラマブックス』主宰 https://twitter.com/dioramabooks/status/1083992081121460224 マンガっぽくないマンガだと思ったら、編集が音楽イベント開いたりしてた人で、原作者のバンドのジャケットを担当してるのが作画の人…っていう、制作陣は音楽関係者だった
何だこれは!エロい!! 食べるという行為は実はエロティックだなとは思います。国によってはご飯を食べる番組が日本は多すぎるとかそんなことをテレビで言っていたようないなかったような。 美味しそうな少年が化け物の先輩と一緒に住んでしまう、というトンデモ設定。 これは恋なのかそれとも「食欲」なのか。。。 好きだ〜と思っていたら次はガブッと行ってしまう。 「あらしのよるに」のような関係でしょうか。作者が楽しんで書いてるのがとてもいいです。ムシャムシャ。
ストーカーを懲らしめる集団。そこまでは誰でも想像するけど一巻読み終わると「なるほど、そういうことね」と納得する。 行き過ぎたストーカーを止めるのはヒーローではない。 無償で被害者を助けるヒーロー的なものは存在しないということ。 「被害者側」も「加害者側」もこの「ストーカー浄化団」もそれぞれエゴを持ってて最終的に全て綺麗に解決する様、見てて気持ちいいです。 かっこよくも見えてくるし、恐ろしくも見えてくる。
実の兄の奥さんに恋をしてしまった女子高生のお話。 特に主人公のウタは自分の気持ち以上に、相手が女性、しかも実の兄の奥さんであることや、自分がまだ自立できていない高校生だということなど、自身と周りの状況についての理解が深くて、深すぎるからこその年齢不相応に大人びた振る舞いをしている。 百合作品だと相手が同性という理由から恋愛に対してストレートに行動できない場面も多いけど、この作品の場合はより多層的な縛りがあることによりウタの感情の揺れ動きに深みが生じる。 最新4巻は前巻最後の薫瑠のモノローグから薫瑠が意を決してウタと向き合おうとするまでの数日間。 その間にウタと薫瑠それぞれの心境に変化を与える出来事を詰め込んでくる。なぜこの世界にはこんな辛い恋をしている人間しかいないのか。 少し近い設定だけど今のところ恋愛要素を打ち出してない「兄の嫁と暮らしています。」辺りと対比させて読むと面白いかもしれない。
ドイツ系アメリカ人のアンナと日本人の早紀が同性婚をするお話。 百合マンガではないです。かといって同性であることにも執着し過ぎず、本当にタイトル通り「とある結婚」がピッタリでした。 ただアメリカでも同性愛に対する差別意識があって、早希が仕事を辞めさせられる場面はショックだった。
> 「なァんかさ思い出すンだよナ > クラス離れてから遊ばなくなった奴とか > 転校してったやつとかを > でも それでも仲良かった奴って覚えてるだろ?」 > 「――…ウン > 普段思い出すことはないけど > 忘れることもないよ > ずっと覚えてる」 ページを開くと在りし日の想いを、鮮烈に蘇らせてくれる…… 今回紹介する『いないボクは蛍町にいる』はそんな作品です。 小学生の頃、一番仲が良かった友人のことを覚えているでしょうか。 私は今も彼との想い出を昨日のことのように思い出せます。 40日以上の長い夏休み。 好きなだけ寝坊できて、でも夏休み特別アニメの時間には起きて。 普段は観られない昼ドラまで観て。 毎日のように遊んで。 プールやイベントや海や山に行って。 そして、最後の数日は溜めに溜めた宿題に追われて……。 その時、夏休みの日記に何度も書いた名前。 中学で離れ離れになった後もたまにやり取りすることはありましたが、今何をしているのかはもう判りません。ただ、元気に生きていてくれれば良いなと思います。 『いないボクは蛍町にいる』には、小学生の時分ならではの喜怒哀楽が鮮やかに描かれていて、当時の自らの記憶や感情が強く呼び起こされました。 他人から友達へと変わる最初の些細な切っ掛け。 重いランドセルを背負った登下校中の、他愛もない会話や奇行。 わずかな休み時間を目一杯校庭を駆け回って遊んだ時間の楽しさ。 些細なことで守れなかった、友達との約束。 もっと優しく接することができたはずなのに、幼さ故にそうできなかったこと。 それらに対する後悔や気不味さの苦味。 読み手によって、様々なシーンで様々な想いが引き出されることでしょう。子供という存在のリアリティを感じ取れる数々の表現からは、筆者の誠実で真摯な眼差しが感じられます。 この物語の主人公・健(たける)は、大切な友人・卓哉(たくや)を交通事故で喪くしてしまいます。 小学6年生というのは、一般的に考えられているよりもずっと大人で分別もつく歳だと個人的には思いますが、それでも大人でも辛い友人の死を受け止めるには幼すぎるのも確かでしょう。 しかし、健は卓哉が言っていた「不思議な光る物体」に導かれた先で、卓哉が生存しているもう一つの世界線のような町に行き着きます。自分の住んでいる町とほぼ同じながら、少しずつ違う所もある町。この不思議な世界を行き来しながら、切なく優しいドラマが紡がれて行きます。 本作で特に印象的だったのは、ある人物が健にこんなセリフを述べる一連のシーン。 > 「…ボクもねぇ > 不幸を嘆いたことがある > 何度も 何度もね > …だけどねそんな中でも > なにかに感謝する気持ちを持てたとき > それは立派な幸福の気づきだと思うんだ > …この歳になってようやく > そう思えた」 この言葉は、友達を喪って自暴自棄になっていた健の心にどんな響きをもたらしたでしょうか。 そして、健を通して読者の心にも慈愛をもって響いてくるセリフです。 誰かに何かを感謝することができるなら、それは幸せなこと。そんな幸せを、人は生きているだけで日々沢山もらっているはずですが、不幸に囚われるとそのことを簡単に忘れてしまう。だからこそ、辛い時ほど感謝する気持ちを大事にして生きていくべきだ、と。 最後のページの健の表情を見た時、澄み渡るような気持ちになると共に、この作品に出逢えて本当に良かったと思いました。 ひと夏の哀しい喪失と優しい奇跡を経て、少年が成長する物語。 現実と地続きの少し不思議な世界を一度は体験してみたい、と思ったことのあるあなたに強くお薦めしたい一冊です。
ロトチェンコをパロディした店舗特典のポストカードに惹かれて購入。 TVアニメ本編では語られることのなかった『プラウダ高校がいかにして黒森峰を破ったのか』を描く物語。 何故カチューシャがプラウダ高校の面々に『カチューシャ様』と呼ばれ慕われているのか。その所以が分かります。 ノンカチュ、プラウダが好きなら絶対面白い。 プラウダ高校のモデルがМГУで安直だけどスターリン建築カッコイイ。
1巻序盤は「がっこうぐらし!」のようなホラー的要素が強かったけど、1巻終盤から少しずつ謎が提示され、その謎が少し解けると新たな謎が生まれ、そうこうしていく中でもループは繰り返されていく。分かりやすい"ハッピーエンド"ではなかったかもしれないけど、明確なゴールにちゃんと辿り着いた、素晴らしい結末でした。 表紙の可愛らしい絵柄からの1話のホラー展開によって、ループの設定に「1ページめくるとどんな展開になるかわからない」という疑心暗鬼の要素が加わり、最後までテンションを落とすこと無く読むことが出来ました。 ループものでいうと「ドロップフレーム」や「リピートアフターミー」、マンガ以外だと「STEINS;GATE」や「All You Need Is Kill」なども好きですが、私の中ではそれらに並ぶ名作になりました。 全5巻読了
初めて買ってもらったマンガだと思う。すごく懐かしい。 今思うと、主人公より女の子としてレベルが高い弟って斬新な設定だったな。弟には超美少女なガールフレンドもいたし。ちなみに姉弟の仲はよかったはず。 コマ割りとかトーン使いはお手本になるくらいTHE少女マンガで、お洋服が可愛くて大好きだった。 ミントな僕らも読んでたから、こういう設定好きなのかな自分。
先生がインタビューで、中学生当時みんなが「ナウシカ」で盛り上がってる中「少年ケニヤ」を観に行ったとおっしゃられていた。そのセンスが作風そのものだなぁと思った。マンガの内容は全然ジャングルとは関係なくて女子高生が恋愛に目覚める話なんだけど、恋の熱狂と野生を掛け合わせる要素の活かし方もかっこいい。
超能力者が集まる部活「のうけん」に入る為に転校してきた主人公。キャラの濃い先輩達と共に楽しい青春を送るべく奔走するコメディー。 掲載誌のIKKIが休刊になり1巻で完結(まだまだネタはたくさんあったそう…)ですが、最初から最後までハイテンションで楽しい作品になってます! やわ男とカタ子を読んでも思いますが、作者の長田亜弓さんはコンプレックスをテーマに描くのが上手い。ただツライだけで終わらせず、ユーモアと優しさをもって、自分らしさで克服することが大切だと教えてくれる。
結婚式場を舞台にした物語だけど、そこまでお仕事お仕事してるわけではなく、むしろ1巻の段階では個々のキャラの立ち方のほうが際立つ。主人公の五十嵐が働く中で壁にぶつかる展開も多いが、ストーリーとしてはコメディ寄り。それは結婚式という人生最良の日をテーマにしているというのもあるけど、りんごくらぶさんのポップで独特な絵柄がその雰囲気作りに一役買ってるように思う。 今後、この雰囲気のままで進んでもいいし、お仕事ものとしての側面をもっと出してきても面白くなりそう。 1巻まで読了
読んで思ったことは「あれ?作者女性の方なんじゃ…?」でした。 主人公は自殺を図るおっさんなのですがとても共感できる… 自分も死ぬくらいなら死ぬ前に蟹がくいてぇ!! 影がある人妻も何も身の上話をしていないのにキャラが立ってるんです。 主人公も雪女のような人妻も、実は似てる人間な気がします。 まったく違うのに似てる人間が出会ってしまった! 似ているからこそ葛藤して惹かれ合う気がします。 男は多分死ぬ危機感を感じたら性欲が勝る生き物だと思います。死ぬ前にふらっと北海道行きたいわ…っていう心情はちょっと女性的ですね。
アクションに掲載された『ワニ男爵』岡田卓也の読切。気が抜けたような顔した、まんまる子グマの話。 子グマのキャラがとてもいい。ゆるキャラみたいな惚けた可愛い顔をしているのに、怖かったり、現実逃避したい時は『リアルすぎる死んだふり』で、誤魔化そうとする。そのギャップが面白い。なによりも友達を助ける時には、勇気が出せる、優しさがいい。ゆるさと見せ場をしっかりと書き分けている、いい読切
化けカラスがバイトして京都の美味しいごはんを食べる話。 フリーハンドで描いた味のある線と、トーン使いが好き。 なので、ご飯の描写は美味しそうというより「オシャレ」という感じが、他のグルメ漫画と一線を画している。 1巻16話で20件、2巻14話で17件のお店が紹介されており、素敵なお店が次から次へと出てくる贅沢さがいい。 2巻ではカラスの過去と家族に触れられており、正直ご飯よりこっちが気になる。
ぬいぐるみ大好きな男子高校生が、ひょんなことから全裸の男(※ぬいぐるみ)と暮らすことになるイカれたストーリー(褒め言葉) なお元から部屋にいたクマのむーむーたんも、ぬいぐるみ界から来た「生きたぬいぐるみ」で、その本性は無類のギャンブル好きのおっさん。 な、何を言ってるかわからねーと思うが、読めばわかる…! 一度読めば熊之股鍵次先生の描く、かわいいクマと男の子と変態の奇妙なハーモニーが癖になること間違いなし。 (追記) 好きなエピソードは、2巻のわたる君が手芸オフ会で女装する回。 サンデー本誌で連載していたことが信じられない(歓喜)
読み始めて思ったのは、「カポエイラ」で「女の子主人公」って難易度高そう! まずカポエイラってぼんやりとしか知らないし、舞踏技ならそれを女の子がやるきっかけがなきゃいけないしなかなか読み手を引き込むまでに時間かかりそうだなと。 でも読んでて何やらよくわからないけど、ページをめくってしまうのはきっと動いててかっこよく決まってる絵が入ってるからなのでしょう! 説教される漫画より画面の中でガンガン動いてくれる漫画の方が説得力があります。 主人公の女の子が真っ先に動いて真似しようとしたりする姿がいいですね、読んでて気持ちいいです。
漫画の終え方は難しいとよく聞きます。しかしながら、ムゲニンの終盤は美しくてため息がこぼれます。物語の佳境と長期連載で培われた作画技術があわさり素晴らしい出来です。 一方で、物語の序盤は、そんなに私の好みではありませんでした。主人公が不死身の侍と聞けば、捨て身の特攻無双のチートキャラをわたしは思い浮かべるのですが、ムゲニンではそうはいかない。万次さんは不死身だけど微妙に弱い。いえ、弱いわけじゃないんだけど、自分より強い敵には普通にガチ苦戦する。きっと登場人物を強さでランキングしていったとき、上の下くらいになりそう。だから、根性と策略でなんとかやり過ごしていく。その泥臭さたるや、愛想がいいキャラではないのに応援したくなるほど。 そういうのが好きな人はきっと序盤から楽しいはず。なんやかんやで主人公が圧倒的なほうが好きだとヤキモキするかも。けど、前述の通り、最終的には圧巻のクライマックスです。読んで良かったーという感想しかありません。
あらすじはシリアス系の恋愛ものっぽく見える、でも表紙を見ると階段の踊り場で女子に歯磨きされる男子。アレ?と思いつつも1話を読むとブッ込まれるド下ワード。面食らいつつも続きを読むと中身は言うほどエロくはなく、グイグイ来る系の女子と過去に闇を抱えてて他人を避けてる系男子の素直な感じのラブコメでした、という、何重にもオブラートに包まれながらぶつかってくる作品。 表紙の歯磨きシーンを見た瞬間某作品を思い出した方もいらっしゃると思うけど、この作品はそこまで歯磨きシーンの描写自体は濃くなく、というか1話以外ではほとんどない。それなのに作品全体から溢れるフェティシズムの波動がヤバい。 1巻まで読了。
最初は作品のファンとして先生に好意を持ったところから徐々に百合の様相を呈していく様子がゆっくり丁寧に描かれている。公式の紹介文にあった"大正百合ロマンス"という言葉が本当にピッタリな作品。 1巻の最後でちょっとミステリーっぽい展開をチラ見せしてたけど、私知ってる。これ、シリアスと見せかけて結局なんでもないっていう風になるヤツだ、間違いない。 1巻まで読了
思春期に異性との距離感を図りかねていた人には刺さる作品。正直言っておかしいでしょ、みたいな展開、理論はあるがちょっと悔しいことに面白い。 要所要所嫌な思い出が蘇るシーンがないでもないけど笑
タイトルに反して至って"普通の”恋愛模様を描く作品。でもそれがこの作品の真髄だと私は感じた。結局周りにどう思われようとも、自分たち2人が納得し満足してるのであればそれだけで充分なんですよね。 ちょいちょい読んでたジェンダー的なテーマの作品に抱いてた僅かな違和感をこの作品は綺麗に払拭してくれた。"普通"とは違うことを周りにも認めてほしいなら外野へのアピールも重要だし、本人が望んで行動しているならばそれがベストだけども、自分たち、もしく近しい人たちが理解してくれてるならそれで良い、そういう考えだってアリなんじゃないかな、と思わせてくれる。 1巻まで読了
ユニコーンを使役する立場のマリアーシが純朴なのでそのまま純愛展開に進むのかと思いきや、様々な思惑が絡んでバッドエンドすら見える展開に。明るい絵柄とのギャップのある物語にとにかく目が離せない。 純粋無垢すぎるマリアーシの性格が、ラブコメ展開にもダークファンタジー展開にもいい感じに作用している。絵柄も明るいしキャラそれぞれの背景も入り組んでる割に分かりやすい。 私は表紙買いだったのですが、表紙を見て人外ものと思って避けるには勿体無い作品。 1巻まで読了
人によっては大食いシーンを不快に感じるかもしれない。が面白い。きちんと主人公サイドには大食いに関する哲学があり、敵のただたくさん食べられればいいというスタイルとは一線を画している。やっていることは大食いだが、主人公が師匠ともいうべき人物に会い、成長していく様はジャンプ漫画のようである。また、ラストバトルの展開や、海外編のライバル達など、シリアスなシーンの中に笑いがあるのもポイントが高い。
ピュアな高校生の恋愛模様を描く「純粋男女交際」とスクール日常コメディの「日々是平坦」の2本立ての構成を2巻も継続。同じ学校内の話なのにベクトルが全然違う、でも双方共に青春感が眩しすぎる作品。 表紙の雰囲気でコメディ寄りの作品なのかと油断していたら前半半分がド直球の真面目系イチャラブ作品だったので変なダメージを受ける。そして純粋な恋愛を見せつけられたあとで後半のワチャワチャ感はすごく刺さるし、前半のフリが効いてるから後半に対して「そうそう私はこちら側の人間でした」という歪んだ感情も芽生えるw 2巻まで読了
1話からワードのインパクトが強くて、性というものがテーマの物語かと思っていたけど、途中から徐々に、主要5人のキャラクターそれぞれの恋愛に対する感情(それは性愛もあれば情愛もあり、一言では言い表せないような感情もあり)をいろんな方向から描いている、そんなように感じ始めた。 そしてそこに友情関係としての情の気持ちも絡めて大きく物語が動き始めた6巻。序盤から性についての話題を振ってたのはこの展開をさせたかったからなのではと思う。はたしてこの後5人それぞれはどういう方向に結論を出すのか、すごく楽しみ。 この作品に関して、アニメの脚本をメインに活動されている岡田麿里さんが敢えてマンガという表現方法を選んだ理由はわからないけど、個人的にはアニメや実写よりもマンガのほうが適していると思っていた。マンガ読み、特にBLとかTLに手を出してる人だと、セックスだとか勃つ勃たないみたいなワードにはさほどインパクトを感じなくて、だからマンガという媒体でこそ素直にこの物語を楽しめるのではないかなと。 なのでアニメ化が決定したことは素直に嬉しいことではあるんだけど、それによって視聴者層がよりマスになり、言葉のインパクトだけが先行して変な盛り上がり方をしなければいいな、とそれだけを願っている。 6巻まで読了。
初出では露骨に性格が悪いと言うかめんどくさそうなキャラが話が進むと良い面が見られてジルベールや他の登場人物と和解する、その過程の描き方が本当に上手い。なので巻ごとに波乱はあるんだけどずっと穏やかな気持ちで読んでいられる。 そう言えば、4巻後半のマンガ家の話について、実体験が入っているのでは?的な感想を幾つか見かけたけど、個人的には深読みし過ぎではないかと思ってます。入居者に”芸術家”という条件があるのでマンガ家の登場自体は自然だし、そもそもこの作品はそういう不条理さを訴えることが主題の作品ではないと思うのです。 4巻まで読了。
「アカメが斬る!」作画の田代哲也氏による完全オリジナルの新作。前作は終盤へ向かうにつれ元から高かった画力がどんどん洗練されていったのが見応えでしたが、今作では初回からバトルに美少女にと発揮されまくりです。 「アカメ」もただのバトルファンタジーじゃないユニークな作風だなという印象がありましたが、あれは実は作画担当の田代氏のセンスによるところも大きかったのではと今になって思います。 前作の二人の主人公・タクミとアカメはどちらも「ド硬派」でストーリーもストイックなダークヒーローによる懲悪モノでした。今回は打って変わって軟弱でドスケベな少年が主人公。ただし、美少女度とグロ度は増しています。
「両親を敬う」 それは基本的には理想であり、美徳です。 しかし、人間的に致命的な欠陥を持ち、それを我が子に容赦なく振り撒く親というのも確かに存在します。理不尽な暴力やネグレクトに晒され続けてなお、「それでも親は親だから」と言えるものでしょうか。憎悪と殺意以外の感情を向けられない肉親の存在は、心を病ませます。なまじ家族であるだけに、離れることも叶わない。それは呪縛です。血の繋がりを呪い、同じ血が流れ遺伝子を受け継いでいる自分すらも嫌悪の対象となります。そんな風になるくらいであれば、いっそのこと物理的に距離を取ってしまった方が余程良いです。 今回紹介する『アンの世界地図』は、そんな選択をして幸せを手に入れた女の子のお話です。そして、様々な要素が詰まり充実した物語です。 ■家出ロリータ少女、徳島で着物少女に出会う 主人公の竹宮アンは、フランス貴族に憧れる16歳の少女。父親は単身赴任中、東京のボロアパート(通称:ゴミ屋敷)にて酒乱の母親と二人暮らし。綺羅びやかなロリータ服が唯一のアイデンティティだったアンですが、ある日、母親の酒が入ったことによる蛮行で自らの宝物の洋服の数々をズタズタにされ、遂に祖母のいる徳島を目指して家を飛び出します。そして、辿り着いた徳島の地にて、美しい着物の少女アキと出会い、アンはアキの家で暮らし始めます。 ロリータ服で近所のコンビニで半額弁当を買って行き、店員には「値引きのロリータ」「ビンボー姫」などと仇名を付けられている、小さい頃から貧乏だったアン。他の家庭では注いで貰えた愛情をろくに注いで貰えなかったことは、深い傷をアンに与えていました。 > 自分のこどもに食べさせることも着せることにも > 興味のない親っているんです とアンがアキの祖父に語るシーンの言葉が重く響きます。あまつさえ、自分の本当に大切にしている物をゴミ扱いされては、我慢の限界に達するのも解ります。 徳島の神社にて、 > 毎朝しあわせな気持ちで > 起きてみたいです と祈る彼女の切実さ、いじましさに胸が搾られる想いです。 その後、彼女はお遍路さんを助けるおもてなし文化「お接待」の心を大切にしているアキを母親代わりとして、新しい暮らしの中で幸せに起きられる朝を得ます。ずっと自分のいる場所を「ここではない」と思い続けて来た少女の、その世界地図が新たに拓けていく時。出だしは少々辛いですが、その分そのカタルシスとなる部分は優しく暖かで胸に沁み入って来ます。 ■日本や徳島の豊かな文化 (画像『アンの世界地図』1巻4頁) この作品、開幕が「吾輩は猫である」ならぬ、「わたしは家である」というモノローグから始まります。そこで行われるのが「うだつが上がらない」の「うだつ」の解説。他にも、神社の参拝の仕方や、着物の着方、お箸の持ち方など、時折日本人として知っておくと良い雑学が語られ、作品に溶け込んでいます。 又、徳島の名産料理なども実に美味しそうに描かれます。青とうがらし味噌を塗って、青じそを巻いて食べるおにぎりや、みょうが・シソ・甘辛豚肉・干しエビ・半熟卵・しらがねぎ・きゅうり・かにかまという豪華な付け合せのたらいに入ったたらいうどんなど、実に食欲をそそってくれます。もう、これらを食べるために徳島に行ってみたいと思わせられる程。今、「マチ★アソビ」などで注目を集める徳島ですが、この作品にも注目し、これらを提供する場所を作るのも良い町おこしになるのではないでしょうか。 更に、ここまでに書いたことだけであればまだ通常の少女マンガの範疇なのですが、1巻後半では突如として濃厚なボードゲーム語りから麻雀が描かれます。少女マンガとしては異端ですが、そこがまた面白い所で。ゲームというのもまた一つの対人コミュニケーションの手段。家族麻雀を通して紡がれる絆や想い、そこにもまた優しさと暖かさが満ちています。不良になった息子とも、麻雀を通してなら繋がることができたという描写があるのですが、親子の間でそういった絆となる物を持っておくことは良いと思います。 一冊の中にメインストーリーの他にも多様な要素が盛り込まれており、飽きさせません。 ■十年後の小さな幸せのお供に、『アンと世界地図』を 吟鳥子先生は、「現実の十年後の小さな幸せにつながる少女漫画が好きで、そういうものを描けたらいい」と仰っていました。曰く、「20年前に読んだ、タイトルも忘れた低年齢向け少女漫画で、おばあちゃんがクラシックなイギリス風ケーキを焼いて、孫の少女が「あ、お茶はアールグレイがいいな」と言った。その台詞からアールグレイという茶葉を覚えて、今でもクラシックなケーキを食べる時はアールグレイを淹れる。そういう幸せ」と。『アンの世界地図』は間違いなくそういう幸せをくれる作品になっています。それは徳島に足を運んでたらいうどんを食べた時かもしれませんし、誰かと心を通わせる瞬間かもしれません。いずれにせよ、読んでいる瞬間、そして読み終えた後の未来において、素敵な時間を約束してくれる作品です。 今年読んだ少女マンガの中でも、屈指の作品。男性でも読み易い内容ですので、お薦めです。 吟鳥子先生の作品は、切なさと優しさに満ちています。『アンの世界地図』を気に入ったら、他の作品にも是非手を伸ばしてみると良いでしょう。
ストレスなくゆるく読めるから、そんなガッツリ読みたい気分じゃないときにちょうどいい。 「ネットスーパー」という謎スキルのおかげで異世界でも余裕で生きていけるという話。 いいなー便利だなーと思ったけど、確かに現代人には必須のサービスで普段から恩恵受けまくり。 そんな「ネットスーパー」の能力を要所要所で使いながら、基本的にはわりと自分で頑張っているから好感度が高い。 無双しすぎないのは読んでいて気持ちがいい。 味気ないご飯しかない異世界では美味すぎるご飯を作れることで超協力モンスターや神との契約もできてしまうあたりはもとろん無双しているのだけど、本人自体はいたって弱いまま。 そう考えると直接の肉体的・物理的な強さじゃなくて状況の変化にスキルを有効に使えるのが工夫の見せ所で面白い。 目を付けられないように放浪しているが、本人も修行しながらの旅だし、いまのところ基本的に一話完結だけどこれからストーリーに進展はあったりするのかなと楽しみ。 ちゃんと異世界から持ち込んだゴミをどうするのかという問題にも配慮していて、スライムに全部食べさせるという力技で、しかも食べまくるとレベルアップする。 便利~。 料理するのは楽しいけど、片付けってめんどうだったりするもんね、特に油使ったあとのフライパンとか皿とか。
君に届けで有名な椎名先生の前作。明るくて垢抜けない女の子が、影のあるチャラそうな男の子に惹かれるというテンプレみたいな展開だが、きちんと友人達のキャラが生きていて、十代特有の狭い人間家系ですべてが構築されている感じが良かった。また、主人公の相手のことはとても好きだけど、一途な自分には酔わないというスタンスに好感が持てた。わずか六巻で良くまとまった漫画だと思う。
こんなにも素晴らしい傑作が、知る人ぞ知る名作として埋れている…… 果たして、このままで良いのか? 否ッ! 断じて否ッッッ!! 一人でも多くの漫画やSFを愛する人に! そして、この残酷な世界で人生に悩む方、悲しみの淵に暮れている方に!! この至上の愛の物語はもっともっと読まれるべきなのである!!! そんな万感の願いを込め、使命感を持って、今回筆を執っています。 確かに、この『愛人』というタイトル。 ヤングアニマルという掲載誌。 そして、この表紙。 「低俗な成人向け漫画かな……?」と敬遠してしまう気持ちも、解らなくないです。 ですが、それは大いなるミスリードに掛かっているのです! 愛人と書いて「あいれん」と読むタイトル。 そこからは一見して想像できない程に、深遠で重厚なテーマや想いが詰め込まれた、未来SFとなっています。 何せこの作品、創られ方が凄いです。 1999年。 世間ではノストラダムスの大予言を中心に終末論が蔓延していた時。 そんな時代に、連載が始まりました。 時勢に沿ってか、人類が通常の生殖機能を喪い種としての終わりを迎えつつある世界を描いて行きます。 そして、一度の休載もなく2002年連載終了。 ここまでは良かったのです。 しかし、待てども待てども出されない最終巻。 何と、連載が終了してから最後の5巻が出るまでには二年以上も掛かりました。 何故か? それは田中ユタカ先生が全身全霊を賭して、改稿・加筆作業を行っていたからです。 今作のラストは、雑誌掲載版とコミックス版では大きく異なった物になっています。 コミックスで加筆修正が行われる、それ自体はよくあることですが、それに二年が費やされるというのは極めて異例です。 普通に商品として漫画を考えるならば、『愛人』は失格でしょう。 しかし、視点を変えて、一つの作品として考えた時には違って来ます。 その二年間が素晴らしい作品の輝きを、更に途轍もない領域まで磨き上げたと言っても過言ではありません。 今回、この稿を書くに当たって、改めて精読しました。 全編面白いのですが、やはり5巻の部分は格別であり、至高です。 一度築き上げた物を全て崩し、死に物狂いで改めてこの結末を持って来た田中ユタカ先生に対し、私はあらゆる賞賛を惜しみません。 熱い涙無しに読むことなんて、絶対に無理です! ところで、漫画が好きな人なら、一度位は自分で漫画を描いてみたいと思ったこともあるのではないでしょうか。 マンガソムリエである無類の漫画好きの私も、多分に漏れずそんな経験があります。 結構本気で、丸二ヶ月間あらゆる余暇を捨て去り、平均睡眠時間3時間を切る程に根を詰めて、一作を描き上げました。 その時に、自分はこの生活を一生続けるのは無理だな、と諦めてしまったのですが……。 しかし、そんな僅かな時間の中でさえも実感したことがあります。 登場人物に絶大な辛苦を強いる際には、自分でも不可解なほどに嗚咽が止まらなかったり、怒りで情緒不安定になったりするのです。 多くの作家、『ワンピース』の尾田栄一郎先生なども、キャラクターを描く時には感情移入し、同じ気持ちになりながら同じ表情で描くといいます。 それを考えると、『愛人』の壮絶なるクライマックスと格闘している時の田中ユタカ先生は如何許りだった事か…… 田中先生は、『愛人』の連載が終わった後は自分の中に漫画を描く能力が無くなってしまったといい、実際暫く何も描けなかったそうです。 これだけの作品であればそういう事も起こるだろう、と読めば自然に納得できます。 ネタバレになるので語れませんが、一線を画す愛が『愛人』では描かれています。 どこまでも残酷でありながらも、果てしなく美しい世界が、呈示されています。 常に死が共に存在する中で、尊き生への頌歌が謳われています。 こ、ここまで描いてしまうのか……と、半ば放心してしまうような凄味があるのです。 これ位途方も無い作品を描き上げられたら、私なら人生に悔いが無くなるでしょう。 ……本当はその凄さを赤裸々に語りたいんです! でも語れない…… 嗚呼、もどかしい! さあ、早く読んで、誰かこの素晴らしさを語り明かしましょう!! 恐らく生涯顔を合わせることのない、それでもこの世のどこかで一度しかない人生を懸命に生きている誰かに届けば、そんな嬉しいことはありません。 そして、田中ユタカ先生。 こんな大傑作を描いて下さってありがとうございます! 通常版と特別版がありますが、空白の二年間のメイキングを含んだ濃厚なインタビューが掲載されている上下巻の愛蔵版をお薦めします。
今でこそ、もう珍しくはないのかもしれないが、高橋留美子といえば女性の漫画家としてイチ早く少年漫画の分野を開拓したひとでしょう。そんな性別の垣根を越えて活躍した漫画家が『らんま1/2』という水と湯をかぶるだけで男性女性の垣根をいとも簡単に越えてしまうマンガを描いている事実はたいへん興味深いことだと思います。 1/2という言葉のとおり、主人公の早乙女乱馬は男性とも女性ともつかない実に中途半端な存在として私たち読者の前に姿をあらわします。そして、まさしく、この中途半端な有様こそが高橋留美子という漫画家の特異な作家性だと思うのです。 あるいは地球を侵略しにやって来たはずなのに、そのまま居着いてしまった宇宙人は中途半端な存在ではなかったか(うる星やつら)。あるいはうら若い未亡人のアパート管理人と、大学浪人から就職浪人までしてしまうアパートの住人は、どちらとも中途半端な存在ではなかったか(めぞん一刻)。あるいは妖怪と人間とのあいだに生まれた半妖の少年は中途半端な存在ではなかったか(犬夜叉)。あるいはあの世でもこの世でもない境界に連れて行かれた過去をもつ少女と、人間と死神との混血の少年はどちらとも中途半端な存在ではなかったか(境界のRINNE)。 高橋留美子のマンガには、このようにして、どちらともつかない中途半端な存在がまず必ずといっていいほど見られるのです。それはあたかも女性漫画家の身でありながら少年漫画の分野に進出した作者自身のように。そして手塚治虫の『火の鳥』のように高橋留美子のライフワークであるように思われる『人魚シリーズ』、人魚とはまさしく中途半端な存在の代表格でしょう。古来よりどちらともつかない中途半端な存在としてよく知られる人魚は、高橋留美子の特異性にもっとも相応しいアイコンだったのではないでしょうか。
就職浪人という鬱要素があるけど、そこは本質ではない。本当に鬱なのはうまそうなものを食べていても余計なことを考える主人公の感性そのものにある感じ。でもそれに共感してしまう。人生大変そうだけど、面白い考え方してんなって思ってしまうわ。
カッコ悪いイケメンはずるい!可愛いから! そしてみんな関西弁なんですが女子がぐいぐいくる…。男子の方が女子に惹かれるという構図、なかなか新しい始まり方な気がしました。ファーストキスが女子高生から先生にってなかなかですよ!
「となりのヤングジャンプ」さんありがとうございます!! 石黒テル密「スマイルドール」 エレベーターガール・立花博美は笑顔が苦手で不愛想。そんな彼女が夜一で購入したのは、”人を笑顔にする人形”で!? https://tonarinoyj.jp/episode/10834108156641744060
「B・J創作秘話」の宮崎克が描くTVアニメ創世記!! 「毎週アニメを制作する」。 不可能に挑戦した手塚治虫と無謀な若者たちの挑戦!! 【原作】宮崎克 【漫画】野上武志 【雑誌】週刊少年チャンピオン 【掲載】2019年No.8〜 (「週刊少年チャンピオン公式HP」より) https://www.akitashoten.co.jp/w-champion
深夜ラジオを聴くことが趣味で、愛想のなさゆえ仕事に就けなかった主人公は、仕方なく伝手で紹介してもらった「エレガ(エレベーターガール)」として働いている。 …というこの設定だけで、主人公の置かれた苦痛がビリビリが伝わってくるのがすごい! 生来の愛想の無さにくわえ、寝不足で勤務態度は最悪。 フロアで船を漕いだりあくびしたり、サービス業の風上にも置けない。 おそらく毎日毎日「笑顔のなさ」を同僚から客から批判され、エレガとして自分の無能さを突きつけられてるから開き直ってるんだろうな〜と察した。 なによりむごいのが、やりたくてやってる仕事じゃないし、笑顔は苦手だけど、キラキラした「エレガ」そのものには淡い憧れをいだいるところ…地獄か。 随所に散りばめられた、ハレの日に訪れる昭和の百貨店のモダンさが、暗くて不気味な話を引き立ててたと思う。 「笑顔にする人形」のオチと、主人公の気質がうまく噛み合った面白い読切でした。 これから作者に注目していきたいです!
下巻まで読み終えたとき、上巻の序盤を読み直してみて、作者の母・トシ子さんがどれほど痩せたかに驚きました。 「骨折を機に徐々に細っていき、ヒゲが伸びる」という描写に、自分の祖母もそうだったな…と深く共感しました。 また読み進めるごとに、「これ以上痩せられないだろ」という想像を超えてやせ細っていくトシ子さんの姿を、可愛らしいデフォルメを残したまま各段階を描写しきったところが素晴らしいと思います。 作中で印象的だったのが、車椅子に乗った女学生の姿で若い施設のスタッフさんを探すトシ子さんと、怒りっぽくなったトシ子さんのことを「好きだ」という夫・あきおさんの言葉。 …思わず目にこみ上げてきました。 作中でも述べられていますが、母の介護だけでも大変なのに、「遠距、怒りやすく偏屈な父、ケアマネさんは新人」というのが作者の家の『介護』なのです。 マンガを通して人の家の事情を知ったことで、すこしは介護というものをより多面的に把握できるようになった気がします。 Kindle Unlimitedで上下巻読めるので是非。