エビスさんとホテイさん

正反対なあの人が嫌い。でも…

エビスさんとホテイさん きづきあきら サトウナンキ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

本社から異動してきたエビスさんは「仕事ができる」女。必ず定時で帰るエビスさんが気に食わない「カワイイ」女・ホテイさんだが、彼女が定時で変える理由を知ってしまう。それ以来、心がモヤモヤして……。 ♡♡♡♡♡ ……とこう言うと、その時にホテイさんが心変わりした様に聞こえるが、実は彼女の心にあるのは、常に変わらない想いだった。 それは自分と正反対の人への嫉妬。そしてそれ以上に、憧れ。 自分に巣食う感情を捉えきれないホテイさんの、迷い、混乱。そしてホテイさんは、エビスさんの事ばかり考える様になる。エビスさんとの距離は縮まったり遠ざかったりし、その度に懊悩するホテイさんが息苦しい。 グチャグチャした想いは、エビスさんの意外な弱り顔や酔った姿を見て、一つの想いに纏まっていく。 そこでただ恋心に浸るだけでなく、「彼女の為に」何が出来るかを考え始める所が、ホテイさんの恋の強さだ。自分の意思が薄弱だったホテイさんが、エビスさんの為に行動を起こす……こんなに尊い百合成長譚があるだろうか。 ドロドロ渦巻く闇の中から、熱く真剣な百合が花咲く瞬間を見たくて、何度でも手に取りたくなる作品だ。

これってセクハラなのかしら? ~1人で悩んでいた私の話~

読んでしまったので見届けたい

これってセクハラなのかしら? ~1人で悩んでいた私の話~ ぽん子
野愛
野愛

SNSで見かける胸糞悪い話を見に行きたくなる感情ってなんなんでしょう。野次馬根性みたいなものなんだと思うんですけど、見るとしっかりショック受けちゃうんだなあ。 このお話もそういう気持ちで見始めて、結局最後まで見届けたくなってしまっている。 主人公のぽん子さんが上司や取引先からセクハラを受けでどう闘っていくかという話なのですが、今のところただただ傷つけられているターンが続いています。 加害者側は軽い気持ちでやってるんだなあと、それを見る周りの人も当人が傷ついていることにすら気づいてないんだなあと、家族や恋人が力になってあげられればいいけれどそこにたどり着くまでにもうボロボロになってしまっているんだなあと…。 辞めちゃえば?とも思うけど、なんで悪いことしてない側が辞めなきゃいけないのかなあとも思ったり。 ちゃんと言えばいいじゃんとも思うけど、言えたら苦労はしないよなあ。 とにかくこの手の漫画は読み出したら見届けるしかないのです。 同じ悩みを抱えている人たちが少しでも救われますように。そして、身近な人が悩んでいたら適切な方法で手助けをしたいと思うのでありました。

ステイション

「HOTEL」から「築地魚河岸~」への乗り継ぎ駅

ステイション はしもとみつお 大石賢一
名無し

「築地魚河岸三代目」 作・大石賢一他、画・はしもとみつお、 が好きだったので、同じ作画コンビの作品と知り読んでみた。 予想以上に築地魚河岸テイストで、 さらに、なんか石ノ森章太郎先生の「HOTEL」とも 雰囲気が似ているなと思って確認してみたら、あちらも 原作が大石賢一先生だった。 まさにHOTELと築地~の間の作品で、 この作品を習作として築地~が出来たのではないか、と思った。 大都会の巨大駅に勤務する駅員・中村は 駅を通過する様々な人々と関わり、 人を導き人に導かれ、様々なドラマを経験し成長していく。 この構図はそのまんまHOTELや築地~と同じ。 舞台がホテル・駅・魚河岸と違うだけ、という感じ。 そしていずれもがビジネスの現場を舞台にしながら ビジネスの利益や効率を重視する面から 少々、人情の側に偏っている面を感じるのも。 中村の行動は従業員マニュアルから逸脱することが多いし、 その理由が人情溢れる感覚からであることが この漫画をヒューマンドラマにしている。 しかし中村の行動には乗客に配慮しすぎな印象も受ける。 ぶっちゃけ「そんなことするより本来の仕事をしろよ」 と感じてしまうシーンも多々ある。 だからこの漫画はビジネス漫画としてはけしてリアルではない。 「こんな駅員さんがいてくれたらいいな」 と思わせるドリーミイな人情漫画だ。 それを好むかどう評価するかは読み手次第だと思うが、 この漫画を習作として、 人情に偏りすぎないというか、 丁度いいくらいに人情と仕事を結びつけたのが 「築地魚河岸三代目」なんじゃないかな、と感じた。

天竺熱風録

天竺を救った外交官、王玄策という男のロマン

天竺熱風録 田中芳樹 伊藤勢
ANAGUMA
ANAGUMA

中国史に詳しい方なら王玄策という人物をご存知なのでしょうか。 一行でまとめるなら彼は「出先のインドで投獄されたから脱獄して内戦に介入し、解決に導いた一介の外交官」といえます。「そんなマンガみたいなやつがマジでいたのか?」と思って読むわけですが、どうやら居たようです。完全に居た。『天竺熱風録』を読めば分かる。 より興味を持っていただくためにもう少し王玄策のことを紹介しましょう。 7世紀・唐の時代、玄奘三蔵法師とほぼ同時代の人物だといったらわかりやすいはず。王玄策も三蔵法師と同じく、天竺(インド)の地を踏んだ人物です。もっとも彼は僧侶ではなく修好使節団のリーダー、すなわち外交官でした。 本作で描かれるのは王玄策の二度目の天竺行で、これがなんとも波乱に満ちた旅となります。 やっと辿り着いたインドは交流のあったハルシャ王が死去しており、得体のしれない集団が王権を握っている状態。玄策は簒奪王アルジュナに仲間を殺されたうえ、使節団まるごと投獄されてしまいます。 極限状況で彼が導き出したプランは、 ①脱獄して隣国ネパールに向かう ②ネパール王に助力嘆願して兵力を借りる ③友軍とともに天竺の首都カナウジに舞い戻る ④アルジュナをボコる ⑤仲間を救う。HAPPY!! という大胆不敵なものでした。詳しく書くほどに「マンガか?」となるわけですがどうやら歴史上の人物らしい。 彼がどう決断し、次に何を見せてくれるのか「一体どうしてこんなことが出来ちゃったんだ?」と結果がわかっていても常にワクワクドキドキです。伊藤勢先生が「外交山師」と評するとおり、武力に頼るのは必要最小限、血を流さず知恵によって状況を打開しようとするスタンスも魅力的なんですよね。 そして賢い彼を取り巻くキャラクターも全員キレ者揃いでとにかく話が早い。頭のいいキャラクター同士が会話しているときの気持ちよさがずっと続きます。 特にネパール軍のラトナ将軍が超イカす!気がつけば彼女の麾下の兵士と声を揃えて将軍を全力で推していることでしょう。 当時の軍事状況や地政学的な知識に裏付けされた描写も圧巻で「7世紀のインドってこんな雰囲気だったんだろうな」という説得力が半端じゃありません。インドを旅したこともあるという伊藤先生のあとがきは本編を読み解くうえで最高のコラムです。 一方でマンガ的なケレン味もバッチリ備わっていて、具体的には怒りのデスロードを爆走しているかのような象戦車とかが出てきます。歴史の知識がしっかりあるから遊び心も映えるんだなぁ。 「原作を読んだときにぱっと絵が浮かんだ」と語られるラストカット、これがまた最高にシビれるのでぜひ最後まで読んでいただきたい次第…インドの風を感じながら、ロマンあふれる男の生き様をド級のエンターテインメントとともに味わえる快作です。

私の拳をうけとめて!

ライバル百合ままならぬ交際 #完結応援

私の拳をうけとめて! murata
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

元ヤンの武部がふと再会してしまった、高校時代の喧嘩相手・空森。あの時つかなかった決着つけるか!と公園で決闘。でも空森は条件を突き付ける。 「私が勝ったら、付き合って!」 ○●○●○ あっさり負けた武部は空森と、形ばかりの交際を始める。しかし付き合うって何すりゃいいんだ? 恋心が分からず、周囲の結婚ラッシュに焦る武部。それに付き合う空森も、アパレル店員だがお洒落以外はからっきし。かくして二人集まっては、とても恋人同士とは思えない、しょうもない事に興じる。いい大人の二人が戸惑う姿が常に可笑しい。 空森は武部のそばにいられれば幸せだし、それに付き合う武部も次第に空森といるのが心地良くなる。何をしてもつい白熱して、勝負になだれ込むお約束も含めて、怖い顔の武部と呆け顔の空森が軽いタッチの絵柄で割と平熱に描かれて、そこはかとなく笑えるコメディ。 それにしても互いの心が全く掴めない二人。理解り合う為にはやはり拳を……?いやいや、そこからが本番。二人の笑顔を確かめる為に……最終4巻、「4巻」まで読むべ! (すみません3巻が出た時、これで終わりなのかと一瞬思ってしまったのです……)