積乱雲
敗戦の色濃くなった第二次世界大戦下の日本。足の悪い知絵子は圭一郎と出会い、はじめて生きる喜びを知る。仕事と恋に追われていた笛子は、貢と出会ってやすらぎを知る。兄に守られていた美代子は、周一と出会って愛を知る。特攻隊員を命じられ、死を目前に控えた男たちの心の葛藤、そして彼らを愛した女たちの必死な青春。
しんきらり
山川ちはるは二人の娘と夫との4人暮らしの平凡な主婦。夫は家庭に興味を示さず、毎日小さな淋しさを背負う…。たまらなく淋しい時間があり、静かな喜びに浸る時間がある――。平凡な日常の中で生まれる様々な思いをやまだ紫が繊細に描いた不朽の名作。
燃えろ!一歩
海原一歩(いちふ)は将棋の天才少年。わずか9歳ながら棋界の帝王と称される最強の名人・米原餓尊を打ち破ることのみを夢みて将棋に打ち込んでいる。一歩は名人の家の離れを使って修行していたが、名人を打破するために、あえて米原の元を離れ元名人金森銀蔵に弟子入りする。
リバ茶タイム
【80年代のときめきハイスクール掌編集♪】くじ運が悪い憧子は、クラスのクロスカントリー実行係に選出されてしまう。一緒に選ばれたのは、マイペースで気楽な男子・柳原(やん原)くん。相変わらずの運の悪い日々もなぜかやん原くんと一緒だとほんわかした気分に…。表題作「リバ茶(ティー)タイム」の他、「あいつのラブピント」「シルキーな風」「ちょっとポップなトレモロ」「想いは裏がえし」全5話の読み切りストーリーを収録。
あでやかにあざみ
ちょっと気どって、つっぱって、そのくせとっても可愛くて、夜毎ディスコの女王様、そんな必殺あそび人。男なんか信じない、クールなはずのあざみが怜(れん)と出会い、不器用に女と男のドラマは動きだす――。西尚美が描く、つっぱり軟派ブルース!
したいことを百も抱えて、フランスへ行ってしまった杉生ちゃん。幼馴染の彼からは、お便りも来ない、電話も来ない。お人形作りが趣味のツグミは、遠く離れた杉生ちゃんに夢中。そんな杉生ちゃんが、ある日突然帰国してきて、ツグミの恋多き親友の夏子が、よりにもよって杉生ちゃんに惚れてしまった。ツグミはすっかり舞い上がり、夏子を応援してしまうのだけれど…?
両親を交通事故で亡くした幼いエミリアは、母親の友人である幸田俊一の元へ引き取られる事になる。幸田家の双子の兄弟に異性として愛されていることに気付いたエミリアは……。
こうのとり行進曲
関本睦月は高校2年生だがもう結婚していた。ダンナ様は町の小さな自動車工場で働いている、ヤサシイ信一朗。睦月はいま、おなかの中に赤ちゃんがいてデッカイおなかかかえて大へん。そうじ、洗たく、買い物、そして…まだ現役の学生だから、ちゃんと学校へ行くワケ。エライよっ。 【同時収録】ちょっと長すぎるマフラーのお話
猿少女
孤児院で育った少女・まゆみが養女として迎えられたのは動物学者の立派な家だった。しかし学者の真の目的は、まゆみの頭に猿の脳を移植するという禁断の動物実験を遂行する事だったのだ…!! 猿の脳を植え付けられてしまった事実を知ったまゆみは、復讐のため、そして人間の脳を求めて学者一家に襲撃を開始する!! しかもそこにまゆみの本当の母親がやって来て…!? 人間の恐怖、そして親子の悲しみが入り混じる古賀ホラーの真髄!
【弱きものの味方、スーパーニャンコが帰ってきたゾ!】愛しい美香を探しながら、とある学校にたどり着いたねこのイチクミ。村の校長先生ともラッキーな再会を果たす。ところが美香の所在は不明だといわれ…。大人気のらねこイチクミのほんわかストーリー第1巻! 【同時収録】おませなアップル/ドレミちゃん
亜美くんは中学2年生。「パパとママのけんかにはもうウンザリ。絶対家出してやるんだからっ!」そこでただ今竹内家に居候中。同家の承子さんとBFの池上君へのフクザツな恋心に揺れてます。思春期の乙女心を優しく描いた表題作他、「ひとときのセブンティーン」を収録。
3年前の眠り姫
チャーミングな、とってもカワイイ女の子。だれにでも優しくて、そして……、3年が過ぎアイツは変わった。とても素敵にオレの心の中に入ってきた!ロマンチックなラブ・ストーリー「3年前の眠り姫」と、その続編「コンフュージョン」、それに「春の夢語り」を収めました。
おおかみ書房より刊行された白取千夏雄「全身編集者」を読んで、やまだ紫作品を読み返したら更に面白かった。白取さんはガロの元編集者でやまだ紫さんの旦那さんなのですが、尊敬する作家であり最愛の人への言葉がとても真を突いていて、より深い作品の理解に繋がった気がする。 この漫画の主人公は主婦である。最小限に抑えられた線と研ぎ澄まされた言葉で彼女の心情を描いたことから、少女漫画ではなく女性漫画が誕生したと評価されたけど、決して女性しか共感できない内容ではないと思う。 夫と子供の世話に追われる日々を過ごしながら、それらの役割から解放されることが自由だというのではなく、初めから自分は自由であったことに気づく。実は幸福とは成るものではなく気づくものであり、ただそれだけのことで世界も変わるのだ。その為には彼女のように考えることをやめてはいけない。 今回読み返してやまだ紫さんの描く絵の魅力を改めて感じた。正面を向いた顔でもあえて表情を描かないことで、その余白に読み手の想像が生まれる。こうした大胆なテクニックがすごく格好いい。「全身編集者」で白取さんも語られていた、漫画ならではの省略の美とはこういうことなんだと思い知った。