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中学教師・山内海はある日、殺人事件のニュースを目にする。殺されたのは鈴木侑己、中学時代の同級生だった。数日後、山内の恋人で文芸書の新人編集・八木沢珠緒は、公募小説の落選作に事件と酷似した内容が描かれた作品を見つける。『ザシス』――作者名は佐伯遥人。やがて小説と同じように、旧友に同窓会の案内状が届いて…。森田まさのりが挑む初のサスペンスホラー第1巻!! ※この電子版は紙版『ザシス』1巻と同内容になります。重複購入にご注意ください。
小説ザシスについては、原稿を書いている遥人の姿が描かれており、彼が書いたものであることはほぼ確定している。また、その時に着ているものが制服のシャツのようであることや、八木沢に「鉛筆書き」「字が汚い」「あらすじを付けていない」「プロフィールもない」と応募作品として要件をろくに満たしていないことや、「文体が幼稚」「ありきたり以前に安直」など未熟さが指摘されていることから、ザシスは遥人が中学生の頃に書いたものであることはほぼ間違いがないのではないかと思う。
では、遥人がザシスを書いた動機はなんだろう。単にいつか復讐をしたいだけなのであれば、何も小説にしなくても粛々と実行していけばよいし、計画書として書くなら現在系で書けばよい。一連の事件がかつてのいじめへの仕返しであることは、小説ではなくビデオによって同級生に理解させている。さらに言えば、殺された人のうち、鈴木と川瀬は自分が「なぜ」「誰に」殺されたのかもわからずに死んでいっており、実行犯(または教唆犯)において、「これがかつてのいじめへの仕返しであることを当人にわからせること」はさして重要でないことのようにも思える。要はこの小説ザシスは「復讐相手に読ませるもの」として機能しているわけではない。小説との接点を持っている登場人物はかなり少ない。
ところで、大人になってからのコンビニでののんびりとした雰囲気からすると、大人になった遥人に復讐の計画があったようには見えない。コンビニで児玉と再会するわけだが、もし遥人が近いうちに復讐してやろうとその機会を虎視眈々と狙っていたのならば児玉の行動パターンをある程度は把握して回避できているのではないか。また、あれほどひどく児玉に殴られ続けてもいよいよ復讐を決意するかのような反骨心は感じられず、ひたすら児玉に謝るだけ。遥人はあのような苛烈な小説を書いていながら、大人になってもなお復讐を現実的な選択肢としては考えていなかったように思える。
つまり、中学生の遥人は凄まじい怒りや恨みをもって小説を書き上げはしたが、大人になるとその感情も落ち着いており、これを元に復讐を実行していく考えなどなかった。
では、純粋に単なる小説として、いずれ応募する可能性のある作品として書いたのか。もしかしたらそうかもしれないが、近々応募する予定のある作品として準備していたわけではなさそう。「文体が幼稚」「あらすじを付けていない」など、いかにも中学生のときに書いたままの状態が維持されているから。
小説は遥人が中学生の頃に書いたものであり、大人になってからも差し当たって応募の予定はなく、そのまま放置されていた。そして、大人になった遥人には復讐の強い意志もなかった。そのような中で、彼は児玉に暴行され、山内の車に轢かれて死んでしまった。
このようにしてみると、そのように遥人が死んでしまったあと、誰がなんのためにつばさ新人賞に小説ザシスを応募し、誰が復讐を開始したのか、ますますわからなくなる。
応募は少なくとも轢殺事故から数ヶ月後だろうし、復讐の着手は事故から1年以上が経過してから。
普通の路線だと、犯人が思い浮かばない。
やっぱり、ホラー路線かしら。なにせいくら復讐とはいえ、川瀬や児玉への復讐は激しすぎる。まともな人間にはとても実行できない。第一話で出てくる『ペットセメタリー』には、「蘇った死者は、生前とは違う人格になる」というところがあるようだけど、それを彷彿とさせる。