珍しいパターン
基本的に実写化されて、原作を凌駕することなど皆無に等しいのだが、この作品は実写映画の方が、映画史に残る傑作になってしまったという珍しいパターンの作品である。実写化する際に、原作と違うことは、全く問題ではない。そもそも映画の本質は時間と運動であり、漫画の本質は線とコマ割りなのだからいくら原作をそのままやった所で、画面が止まってスライドショーになってしまう。原作の大事な要素だけ抽出することが大事なのだ。実写版の横スクロールシーンのショットは映画史に残るアクションシーンとなった。漫画に関してはミステリー展開を優先しすぎた結果、人間は普通そんな事でそこまでしねぇよ、という無理のある展開となってしまい釈然としないまま終局を迎える。線に関しては可も無く不可も無くといった所。
最初の設定がズバ抜けて面白いですよね。雑居ビルの7階と8階の間に7.5階があって、そこの監禁部屋に前触れもなく10年監禁させられ、その間は昼と夜に出前の中華を食べ続け、ある日突然釈放されたと思ったら、犯人から動機を当てるゲームに参加させられる。シンプルなのにすごく引き込まれる設定です。
あとがきを読むと先の展開を決めずに連載をしていたらしいですが、だからこそ追い込まれる人間の心理描写にリアリティがあって、犯人の動機にも納得させられました。
10年前に韓国映画版を観た時は、エリちゃんが主人公の娘だったという映画版オリジナルのオチに衝撃を受けたのですが、漫画でこのオチだと後味悪すぎるし、そういう可能性も含めて復讐は終わっていないんだと解釈しました。