ネタバレ

他人の人生をまるごと覗き見たようで、読み終わったあとは切なく温かい気持ちになりました。
第二子として生まれた著者の松田洋子先生の数少ない父との温かい思い出の1つである海水浴のシーンから始まり、父が仕事で全てを失ってから家族がバラバラになっていく姿、そして父の最期のときが描かれます。

戦後の貧しい時代に靴すら与えられず虐待されて育った父は、自分で建てた工場を失い、子どもたちは全員家を離れていく。

多くの「なくしもの」をしてしまった父は、子どもたちが出ていってからは、家のなかでホームシックになってしまい犬を飼い始めた…というエピソードが印象的でした。

甥っ子がおじいちゃんのために絵を描いたり、「あっちですぐプレーできるように」とゴルフウェアを着せたり、昔は全く似ていなかった弟が父の遺影とそっくりになっていたり…。

葬儀の場面には家族ならではの気の置けない優しさで満ちていました。
父も家族も大変という言葉ではたりないほど苦労ばかりの人生だったけれど、最期はたくさんの家族の温かく見送られる…というのは、幸せな人生だったという1つの証なのかなと思います。

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