人の世話をすることで気付くこと
母親が亡くなり介護生活から開放されるやいなや、友人から謎の生物の飼育を押し付けられる主人公。しかしその生物(後にすあまと命名)の世話を通じて、母親との関係や介護生活を振り返り様々なことを思い出したり気付いたりする、という、自分以外の誰かの世話を真剣にしたことのある人にはグッと来るストーリーでした。すあまの存在がわりとファンタジーなんだけど、あえてリアルじゃないから気軽に読めたのかなと思いました。
主人公がすあまちゃんと過ごす日々が愛おしくて、最後のページを読み終わったときにはつい涙が出てしまいました🥲
離職して6年間介護をしてひと月前に母を看取ったシゲ(40歳)は、ちょっと強引な旧友から月17万でとある検体を育てるよう依頼されます。
まるで小学校で育てるアサガオのような植物から生まれたギャブリーは、フワフワの綿毛のような状態から少しずつ大きくなり、柔らかい流動食が食べられるようになり、なんと手足が生え人間と同じ食事が摂れるように。
シゲは独身ですが、手のひらに乗るくらい小さかった存在が歩けるようになり字がかけるようになる感動や、子供を育て共に時間を過ごすことのかけがえのなさと…というものを、ギャブリーことすあまちゃんのお世話を1カ月間することで知ります。
また誰かのお世話をすることになったシゲが、辛い介護を通じて失いかけていた母と過ごした温かい日々を少しずつ思い出していく姿にジーンとしました。
老いて変わっていく家族と毎日接する辛さは、介護を経験したことのある人なら共感できると思います。
介護と子育て。
経験する人もいればしない人もいる人生の行事ですが、この2つに大人として携わることが自分自身にどんな変化をもたらすかを、すあまちゃんという可愛らしくてSFな存在を通じて読者が体験することのできる素敵な読切でした。自分だったらすあまちゃんとお別れできる気がしません😭
「手塚治虫文化賞」新生賞の俊才がYA初登場! 謎の生きもの“ギャブリー”との輝く日々をつづるホームドラマ(ヤングアニマル2023年23号)