真の名作は色褪せず、発酵し熟成する
十数年ぶりにカイジを読んだ。当時とて当然感動したし面白かった。この間に数多くの漫画や書籍、映画やアニメに出会ってきて、精神的にも豊かになった。今読むとどうなるか? 勝負の勝ち負けも、ストーリーの結末も知っている。 だが面白い。 利根川の名言一つ一つが、熟成された旨味を伴って染み渡るのだ。カイジの小賢しさもここぞの度胸も、俯瞰して「観客」として楽しめる。 「金は命より重い」 当然ながら利根川は本心からそう思ったわけではあるまい。帝愛の企業理念やスローガンかもしれない。だが、間違いなくあの場あの空気に最もズシリと響いた言葉を選んだのだ。
作中でカイジに負けた帝愛グループ幹部・利根川。会長に対して謝罪という名の罰を受けることになるのですが、その罰というのが”焼き土下座”なる制裁。なんと、熱々の鉄板の上に手と膝と額をついて10秒以上耐えるというモノでした。誰もが絶望するような状況の中、利根川は身を焼かれる壮絶な制裁を見事受けきって退場したのです。これ以降、本編で利根川が登場していませんが、むしろこの焼き土下座によって利根川ファンは増えたのではないかと思えます。それはスピンオフ作品である「中間管理録トネガワ」の人気を見れば火を見るより明らかなのです。