彼女たちの初恋は夜の海で咲くにコメントする
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吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
前編・後編を通して読み直してみると印象的なシーンがいくつもあった。 タイトルに「人魚たち」とあるように、「水」と心が密接に関係しているように描かれている。 彼女たちの近くにはいつだって水がある。 中でも象徴的に多く出てくるのは「波紋」だ。 誰とも波風立てたくないと主人公が思うが心にさざなみがたっているときに、すっと場面の背景に合わせて挿入されている。 表立って言えなかった本音を強く意識した時に出ているであろう波紋は、彼女が覚悟して動き出した後編には少ないのも納得がいく。 言いたいことが言えずに逆に人を傷つけてばかりいる、そんな自分を変えたいと願う彼女を、時を超えて本間さんが受け止める。 そこに、本間さんが巨乳である意味があるように思う。 豊満な胸は母性の象徴とされている。 本間さんには主人公を昔から受け止める準備ができていた。 そう、あのときも。 15年前と現在で、お互いに少しずつ変わってはいるが関係性は本質的には変わってないのも素敵だ。 互いに髪の長さはロング→ショート、ショート→ロングと変わり、キスを言い出す側も変わった。 出す乳房も。 しかし、常にリードしているのは本間さんという構図にグッと来る。 波風立てたくないと思っている点は細かく散りばめられていて、噂話に関してもそうだが、最初のシーンでそれとなく体温を測る描写もその1つだ。 そして、本間さんとの会話で子どもがいることを聞き(…あぁ、子供……いるんだ………)と心のなかで思っているシーン。 好きだった本間さんが家庭を持ち子供がいることにも少しショックを受けつつ、自分と照らし合わせている。 邪推かもしれないけど、体温を測っていたのも排卵日をチェックしていたのではないか。 体温計を見ていたのを隠しながら「…ね 将ちゃん、私今日さ…」と言いかけている。 本当は、夫との子供がほしいけど言い出せない。 セリフに直接的に描かず、言外で示す描写がめちゃくちゃ好きだ。 それが最後の1コマに繋がっていて感動した。 さらっと読んじゃったら気づけなかったかもしれない。 (実は一度読んだ時、その真意に気づけなかった) 本間さんと水槽がある喫茶店にいるとき、魚と同じような顔をたびたびしているのがかわいい。
前編・後編を通して読み直してみると印象的なシーンがいくつもあった。

タイトルに「人魚たち...
この世界の片隅に

漫画と映画を久しぶりに見返した!

この世界の片隅に
かしこ
かしこ

2025年のお正月にNHK広島放送で映画「この世界の片隅に」が放送されたのは、今年で原爆投下から80年が経つからだそうです。この機会に私も久しぶりに漫画と映画をどちらも見返してみました。 やはり漫画と映画の一番の違いはリンさんの描き方ですよね。漫画では夫である周作さんとリンさんの関係について触れられていますが、映画ではありません。とくに時限爆弾によって晴美さんと右手を失ったすずさんが初めて周作さんと再会した時に、漫画ではリンさんの安否を気にしますが、映画ではそれがないので、いきなり「広島に帰りたい」という言葉を言い出したような印象になっていました。映画は子供のまま縁もゆかりもない土地にお嫁に来たすずさんが大人になる話に重点を置いているような気がします。それに比べると戦時下無月経症なので子供が出来ないとはっきり描いてある漫画はもっとリアルな女性の話ですよね。だから漫画の方が幼なじみの海兵さんと2人きりにさせた周作さんに対して、あんなに腹を立てたすずさんの気持ちがすんなり理解することが出来ました。個人的には男性達に対してだけではなく、当時の価値観で大事とされていた後継ぎを残せない自分に対しての悔しさもあるのかもしれないと思いました。けれどもあえて女性のリアルな部分を描きすぎない選択をしたのは、原作である漫画を十分に理解してるからこそなのは映画を見れば明らかです。 久しぶりに漫画と映画を見返してどちらも戦争が普通の人の生活も脅かすことを伝えているのはもちろん、すべてを一瞬で無いものにしてしまう核兵器の恐ろしさは動きのある映画だから強く感じた喪失がありました。そして漫画には「間違っていたら教えて下さい 今のうちに」と巻末に記載されていることに初めて気づきました。戦争を知らない私達が80年前の出来事を想像するのは難しいですが、だからこそ「この世界の片隅に」という物語があります。どんなに素晴らしい漫画でもより多くの人に長く読み続けてもらうのは大変なので映像化ほどの後押しはないです。これからも漫画と映画どちらも折に触れて見返したいと思います。

おぼれるにんぎょたち
溺れる人魚たち
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