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電波オデッセイ

電波オデッセイ

傷つき、もがきながら生きる少年少女の成長を描いた感動の傑作! 壊れ、放棄された家庭の跡に、ひとり取り残された少女・原純子。引きこもり、学校からも社会からも消えかけようとしていた彼女の心に、受信された電波のように、オデッセイと名乗る者からの声が届いた。彼女は<地球へ来た旅行者>で、いつかここを去る時に<おみやげ>を持ち帰れる、だからこの世界を楽しんでステキな何かをおみやげにすればいいと。彼の言葉に支えられ、原は再び学校へ通いはじめるが、“旅行者”として何事も楽しもうとする彼女の破天荒な行動は周囲に波紋を起こす――。繊細な少年少女の心情と日々の葛藤、そしてその成長を描いた傑作の第1巻が12ページの描き下ろし漫画つきで登場。
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未来冒険チャンネル5

未来冒険チャンネル5

幻の未完作品に、描き下ろしを加えてついに復刊! 惑星間戦争の勃発から300年。環境汚染が進み、いまや人類の平均寿命は20歳という母なる惑星ブルーにおいて、ただひとり完全な健康体を持つ少年・星光。彼は、絶滅の危機に瀕する惑星ブルーを救うため、軍に伝わる「チャンネル5計画」を実行することに。しかしそれには、5つの惑星に散らばる五兄弟の人造戦士、“炎雷剛刃紅の衆”の全員が揃わなければならないという。そこでブルーの防人(まもりびと)として眠らされていた三男・紅を覚醒させ、彼に主と認められた光は、残りの戦士たちと会うべく、母星ブルーを旅立つが…。巻末には、キャラクター設定資料(炎雷剛刃紅の衆)、イラストギャラリー、描き下ろしおまけまんが(2P)も収録。
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ビリーバーズ

ビリーバーズ

山本直樹の90年代の最高傑作、復活!!孤島に、二人の男と一人の女。指示された『プログラム』を淡々と実行し続け、『安住の地』へ行ける日に思いを馳せている。ある時、ボートに乗った外部の人間たちが島を訪れるが、彼らを『不浄』であると判断した男は『処理』してしまう。その頃から、孤島で暮らす男と女の関係に変化が生じ始め、互いに秘密を作ってはいけないはずの三人の間に、愛と欲と猜疑心が交錯する……!!
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勇者カタストロフ!!

勇者カタストロフ!!

魚屋、世界を救えるか!? 暗黒の時代。地獄の大魔王の封印は解かれ、世界は恐怖と暴力の支配に陥った……。だが! そんなある日、混沌の闇の中より、新たな光を求め一人の勇者が立ち上がったのだ!! ・・・といったはた迷惑なロマンと設定を求めて、わざわざ大魔王の封印を解き、歴戦の勇者「シェカネア」を呼び寄せようと思ったとある国の王さま。だが、なんの手違いか王の呼びかけに応えて城に現れたのは、先祖代々ずーっと続いているバリバリの庶民「魚屋」さんだった!? 魚屋=さかなや→しゃかねあ→シェカネア…………。ものすごい手違いと、無責任なつじつま合わせから始まる、少年勇者(にむりやりしたてあげられた)・魚屋ズックの冒険が始まる!
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PANZER 《完全版》

PANZER 《完全版》

ミリタリーイラストの第一人者・上田信 伝説のデビュー漫画! かの小松崎茂氏の最後の弟子として、現在もミリタリーイラスト作家として著名な上田信のデビュー作でもある漫画『PANZER』。主人公はWW2のドイツ軍戦車隊指揮官のクルトマイヤー中尉。大戦後半のドイツ軍の戦いを史実に描いています。『PANZER』続編の「ベルリンの鉄獅子」も収録! 描き下ろしページあり!! ▼収録内容 PANZER(パンツァー)全17話/ベルリンの鉄獅子 (描き下ろしページあり)/著者あとがき
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OPUS 《完全版》

OPUS 《完全版》

“幻の最終回”も含めた《完全版》! 連載漫画『Resonance』の佳境を迎えた漫画家・永井力は、悩んだ末に主人公リンの死をもって物語を締めくくることとした。だが、原稿用紙の奥から姿を現したリンにその原稿を奪われ、力自身もみずからの描いた漫画の世界へと引きずり込まれてしまう。そこで出会ったヒロイン サトコとともに、自分の考えた設定に翻弄されながらも謎の超能力者「仮面」と戦う力。作者にあらがう登場人物たち。やがて力にとっての現実世界と作中世界の境界線が崩れてゆく中で、力は「作者は作中世界の神たりうるのか」を自問するのだった---。隔週誌「コミックガイズ」で、1995~96年にかけて連載された長編漫画『OPUS』。アニメに専念するようになる直前の時期に書かれた、「漫画家としての今 敏」の集大成であり、後年の映画で追及される「現実と虚構」のテーマの出発点ともなった作品ですが、掲載誌の休刊にともない未完のまま終わりました。しかし、2010年の作者急逝の後に“幻の最終回”の原稿が発見され、徳間書店より上・下巻で単行本が刊行されました。本書は、単行本の巻末に今監督の全作品を手掛けたプロデューサー・丸山正雄氏のインタビューなど新規要素も併録し、1冊にまとめた《完全版》となります。
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新装版 ロックマンメガミックス

新装版 ロックマンメガミックス

“有賀ヒトシ”改め“ありがひとし”による、今でも根強い人気を誇る『ロックマンメガミックス』。ファンの熱い要望により、再・再・再復刻しました! 旧版をお持ちの方にも楽しんでいただきたいという著者の並々ならぬ熱意で、カバーイラストは、新装描き下ろし。巻末には「ロックマン執筆秘話2015」を新たに収録。過去作品の特典イラストも、特別収録いたします。収録漫画も、加筆修正・再編集しての復刊です。古参ファンから新たなファンまで、全ロックマンファン必携の、これが“最新版”『ロックマンメガミックス』だ! ▼収録内容 ◇ロックマン誕生 ◇R破壊指令 ◇メタルハート ◇復活の死神 ◇ロックマン誕生伝説(前編) ◇ゲストコメント(ロックマン総合プロデューサー 稲船敬二氏) ◇あとがき漫画・ロックマン執筆秘話2009 ◇描き下ろし漫画・ロックマン執筆秘話2015
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まいっちんぐマチコ先生 「お宝!」コレクション

まいっちんぐマチコ先生 「お宝!」コレクション

デビュー45周年記念。幻の写真集セレクション! 1980年代にコミック誌に連載され、その後TVアニメで大ブレイク。そして今もなお、映像・舞台化され根強い人気を誇る『まいっちんぐマチコ先生』の、カラーページ満載「お宝!」コレクション。私立あらま学園の女性教師 麻衣マチコとその生徒達が繰り広げるギャグ漫画『まいっちんぐマチコ先生』。2000年代からは同人誌が限定で発行され、ファンを狂喜させました。中でも、現在4集まで刊行されている『まいっちんぐマチコ先生ヌード写真集』は、特に稀少な逸品として、高い人気を誇っています。今回、えびはら武司先生のデビュー45周年を記念し、『まいっちんぐマチコ先生ヌード写真集』のセレクションを中心に、「4コママンガ版」や「35周年記念作品」など、今まで単行本では未収録だった作品を集めたアンソロジーを刊行! ファン必携の貴重なコレクションです。▼収録内容 ・ヌード写真集セレクション 1 ・カラーイラストコレクション 1 ・校長先生にセクシー画を!の巻 ・海で(秘)チョメチョメ大作戦の巻 ・特別に脱いじゃうの巻 ・コンテ画集セレクション1 ・4コママンガ版 まいっちんぐマチコ先生1 ・あとがき マチコ先生から一言 ・作品解説 ※紙の書籍で収録されている「まいちんぐマチコ先生 in ハレンチ学園」は電子版では未収録となります。あらかじめご了承ください。
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明智抄名作選

明智抄名作選

日常と非日常の間を描く漫画家・明智抄の傑作短編! ファンの間でも復刊が熱望され続けていた短編集を、復刊ドットコムでは<明智抄名作選>と題し、新装版・全3巻で刊行。1弾は、人気作を追加収録した、「結婚と恋愛」にまつわる短編集『毎日のセレモニー』 子育てに追われるうち、夫婦間に訪れた倦怠期。――どうしてあんなに無責任なの。子供の事は全部私まかせで。――テレビすら自由に見れない。話し相手もいない。「おまえまたチョコレート食って。体型もやってる事もブタだよ」夫の言葉に追い詰められ、過食に走ろうとした主婦の前に、ある日突然現れたのは「お節介オバサンの妖精」だった…。表題作のほか、夫にまつわる<鳩殺しの悪魔>の真相に迫るミステリー「15年目のシャルル・ボネ症候群」など7本を収録。“わかりあうこと”への絶望と希望を、軽やかなタッチで描いた傑作短編集。▼収録内容 ・15年目のシャルル.ボネ症候群 ・毎日のセレモニー ・だだ宣言 ・JRのせいね ・音痴殺人事件!? ・若人の倫理 ・僕達の祝日 ・あとがき の ようなもの
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勇者カタストロフ!!
ドラクエ4コマの雄「牧野博幸」のオリジナル作品
勇者カタストロフ!!
六文銭
六文銭
少年時代、ドラクエ4コマが好きだった私にとって、その作家さんたちがオリジナルを描いていた「ギャグ王」というマンガは宝物みたいな雑誌でした。 (残念ながら雑誌自体、短命に終わったのですが・・) ドラクエ4コマの中でも、牧野博幸という漫画家はグンを抜いて面白かったので、そのオリジナルである本作も大好きでした。 カルト的な人気で絶版されたギャグ王版の単行本が高値取引されており、そこから見事復巻されたと記憶してます。 (なぜか、仙台のブックオフで4巻4000円くらいで全巻買った思い出がある。) ギャグのセンスというか、笑いのツボが同じなのか、とにかく読んでて面白い。 会話の流れや、セリフのチョイスが的確なんだと思う。 ただ、あらためて読み返してみると、長編のストーリー向き(しかも、後半にかけてやたらとシリアスな展開になるので、そのジャンル向き)の漫画家ではないのかなと感じる部分もあります。 子どもの頃は感じなかったのですが、場当たり的な展開や後出しの設定が出てきて「?」ってなる部分が、本作には多い。 ストーリー漫画がうまい人は4コマもうまいと聞いたことがありますが、逆もまた然り、というわけではないのかな? それでも、瞬間最大風速のギャグは顕在なので牧野博幸という漫画家の価値が損なわれることはないし、むしろドラクエ4コマなどで作家のファンになった人にとってのファンアイテムとして一度読んでみてほしいと思います。
電波オデッセイ
自殺する前に読んで下さい。傷ついた魂に寄り添う『電波オデッセイ』
電波オデッセイ
兎来栄寿
兎来栄寿
死にたい人、いますか? もしいるのであれば、聞いて下さい。 今あなたがどんな状況に置かれているのか、私は知りません。 先の見えない人生に絶望しているかもしれない。 いじめを受けて苦しい思いをしているかもしれない。 あるいは、死の直前であるかもしれない。 そんな、全部の人に、私は言います。 生きて下さい。そして、『電波オデッセイ』を、読んで下さい。 そこまで深刻でなくとも、生きる苦しさに喘いでいる全ての人に、あるいはそんな人が身近にいる人に、この優しい電波が届いて欲しいと願います。真に、人間は、世界は美しいと思えるマンガです。 **若者の自殺率が高い日本** 内閣府の共生社会政策の自殺対策白書によると、日本国内では平成9年まで増加の一途を辿り、平成21年まで年間3万人を超えていた自殺者。ただ、ここ数年は3万人を割り、減少傾向にあります。それ自体は素晴らしいことです。 しかし、これを年代別に見てみると別の側面が浮き彫りになってきます。少子高齢化社会の中で減っていく若者の自殺が増えているのです。何と、20~39歳の死因第1位は自殺。先進国の15~34歳の死亡原因第1位が自殺となっているのは日本だけであり、更に全体の死亡原因における自殺が占める割合についても突出して高いという深刻なデータがあります。若者が未来に希望を持てず自ら死を選ぶ社会。これは何としても是正していかねばならない所です。 自殺に至るのにも様々な原因があるでしょう。家庭や家族の問題、いじめ、人間関係、過酷な労働環境……生きていれば、死にたくなることも沢山あります。私自身、死にたいと思ったことは百回や二百回ではありません。人並みに複雑な環境の中で小学一年生の頃には不登校だった時期があり、小学三年生の頃には「人は何故生きているのか、生きねばならないのか」「死とは何か、絶対的な終わりは救いなのか」といったことを暗闇の中で延々と黙考し続けていました。 **とりあえず生きて下さい** 生きていると素晴らしいこともありますが、同時に絶望的な理不尽に晒されることもままあります。素晴らしいことに触れている内は世界の美しさを感じ賛美したくなりますが、この世の闇はそれをいとも容易く蝕んできます。自分を好きになることなど有り得ないないまま、存在するに足る意義を問い求め続けて薄氷を踏むように生きて来ました。 世界中の賢人たちの思惟思想に答を求め続けた私が最終的に出した結論は、エポケー(判断停止)でした。身も蓋もない言い方ですが、あらゆる意味や価値は人間が便宜的に付与しているだけで、幻想に過ぎません。それ故、生きるためにはそれを突き詰めることを止めねばならないと考え、脳天気になることにしました。思考が暗澹たる領域に踏み込みそうになったら強制的に考えるのを止めるように脳に条件反射を植え付けて、この世にある好きな物や、素敵なことを考えるようにしました。 更に、肩の力を抜いて辛い時は頑張り過ぎず、人に頼ることを自分に許しました。とりわけ日本では我慢や忍耐が美徳とされ、また自分の背負った苦労と同じ苦労を他人にも強いて、楽をすることを悪だとする風潮があります。それが自分を鍛えてくれるものならまだ良いのです。が、いたずらに疲弊し摩耗するだけのものならば話は別です。人生には「逃げちゃダメ」な時もありますが、闘っても不毛な理不尽な外圧からはむしろどんどん逃げるべきです。 「いじめられる方にも原因がある」「鬱は甘え」「どんな親でも親は親なので敬うべき」といった無思慮な言葉が、どれだけの人を苦しめて来たことか。人はそれぞれ千差万別の事情を抱えています。「俺は大丈夫だったからお前も大丈夫な筈だ」などという、たまたま運が良かった強者の論理に付き合う義理はありません。逃げても良い。少しくらい誰かに迷惑を掛けてもいい。だから、自分から命を断つという選択だけは、その選択肢ごとなくしておいて欲しいです。 そう言う私もまた、相対的に運が良かった人間だと思いますので、もう絶対に死んだ方がマシだ、という人を強く引き止める程の言葉は持ちあわせていません。それでも、人生というのは予想できないもので、今現在の自分が持っている物差しを遥かに超えたことが未来に容易く起こるものだとは伝えたいです。私は、生きていて良かったと思える瞬間を運良く幾度も持てて、今は楽しく生きています。 辛く苦しくて当然の人生。自分の幸不幸だけを天秤に載せては、死にたくなるのも当然です。なればこそ、その中で人は自分の力で誰かを笑顔にすること、楽しませること、快適に過ごせること、そういった自分でない誰かのために何かをするべきなのでしょう。それが結果的に充足感をもたらし、自分に還って来ます。それは難しいことではありません。特別な家族や友人や恋人のためでなくとも、普通に勉強をし、普通に仕事をし、普通に消費をして生きているだけでも、社会を通じて間接的に人のためになっているのです。だから、まずは生きて下さい。 こうした態度は、『電波オデッセイ』の主人公たちが至ったものと同じでした。 **世界で一番優しい電波** 元々、永野のりこ先生は破天荒な、それこそ「電波」と形容するのが相応しいギャグマンガを多くお描きになっている方です。しかし、その中にも明滅するシリアスな輝きを結晶化して、至高の純度で最高に美しく磨き上げた特異点とも呼べる作品がこの『電波オデッセイ』です。 主人公の中学二年生の女の子、原さんはネグレクトを受けており、この世での居場所を失っていました。学校にも行かず引き篭もる彼女の下に、オデッセイと名乗る男が現れます。そして、彼はこう言います。「君は地球への観光に来ている旅行者なんだよ」と。そして、「"ここ"への観光はとてもラッキーなことだから、帰る前に後悔のないよう"ここ"をよく観ておくといい」、と。更に、「地球への旅行者は物を持って帰ることはできないけれど、人の心1コ分に入るだけの"いいもの"、"素敵なもの"、つまりは楽しい思い出や幸せの記憶をおみやげとして持ち帰れるのだ」と。 そんなオデッセイの言葉によって吹っ切った原さんは、騒々しいほど元気に振る舞うようになり、学校にも"観光"として行くようになります。勿論完全に吹っ切れた訳ではなく、同級生には相変わらず腫れ物扱いをされますし、親がいない中で家賃も水道光熱費も払えず、毛布に包まってひもじい想いもします。うずくまり動けなくなる時とてあるのですが、それでも人前で気丈に空元気を出して生きて行くこの中学生の女の子の姿は、多くの人を大変勇気付けてくれるものです。 自己を一回彼方から俯瞰してみる、というのはとても意義深いことです。ブッダも言っているように、悩みや苦しさには外的な要因でどうしようもないものもありますが、一方で多くは自分の心の持ちよう一つで解消していけるのです。自分が宇宙からの観光者であると仮定することによって多少なりとも心が楽になるのであれば、命が救われるのであれば、それをしない手はありません。逆に、まともなコミニュケーションが到底取れない相手を「宇宙人なのだから仕方ない」と考えて諦める、というのも私が実践した思考法です。筋だけ聞くと滑稽かもしれませんが、永野先生の筆致によって宿る言葉では言い表せない機微があり、読めば沁みる内容となっています。 宇宙的な観点からみたり、長い人類史的な観点に立ったり、「爆弾が落ちてこないだけでもラッキー」と超絶なポジティブさを発揮して、必死に生きて行く原さん。なかなか完全に彼女のように立ち振る舞うのは難しいですが、きっと思う所、励まされる部分があるでしょう。 ちなみに、今作では上記のシーンのように、聖書、夜と霧、ブレードランナー、バッタと鈴虫、宮沢賢治、ディボネゴロ、コルチャックなど、古今の様々な名作や人名、名言が至る所にちりばめられています。破天荒な言動に巧妙に紛れて子供の頃に読んでも解らなかったものが、改めて読み返すとそのシーンの心情と重なって伝わって来て、更に心に沁みる……そんな再読する度に発見のある作品でもあります。そして、読む度に生きるための魂の栄養を貰えます。 **少年少女の傷と再生** 今作では、主人公以外も皆それぞれに心の傷を抱え、上手く生きることができないでいます。 体が弱く、幼い頃に死に瀕したこともある野川さんは、一年留年してしまっていることを内緒にしながら学校に通う中、ある日起きたできごとに深く傷付きます。また、友人たちや先生に心配される、その心配がまた心の負担となっていきます。 トモ子は、太っていることをからかわれ「トン子」と仇名されて拒食症になり、太っている親にも憎しみを覚え、学校に行けなくなってしまいます。すれ違った人の一言一句すらも自分を攻撃しているのではないかと過敏に反応してしまい、消えてなくなりたいと願います。 皆それぞれ持つ痛み。その痛みが、原さんを始めとする周囲の人と人との交流の中で和らぎ、癒されていく様が丁寧に丁寧に、繊細なモノローグを伴って描かれていきます。持ち前のハイテンションさも伴った中で、それらのシーンは非常に感動的に描かれ、心を強く強く打ちます。 この作品の中には幾つも名言や名シーンがあるのですが、その中から一節を引用します。 たすけは人からくるんです 人の仕打ちに打ちひしがれて うずくまる人をたすけるのもまた 人なんです 「アホか」と思っても ダメもとでも 「体育すわりでうずくまってる人」は 言ってみるといいかもしれませんね 「ボクはココにイルよ」って 人は人のためにつくられていて 人と出会うために生まれてくるんですから 誰かがあなたのために あなたに会うために生まれているんです この世界に だから 「こんな世界どーなったってシラネーわ  ってかとっととコイや黙示録  ものっそいづれーわこのクソ世界」 って思う日がたとえあっても 今がそうでも 世界にユウヨをあげてください 「出会う」その日まで 彼ら彼女らが、痛みやその根本と向き合い、決別し、前に進んでいく姿は掛け値なく美しいものです。そして、それを可能にする人と人との営みも、また素晴らしいものです。その神聖なる瞬間に立ち会った時、自然と涙すら零れます。 若山牧水が「白鳥は かなしからずや 空のあお 海のあおにも 染まずただよう」と詠ったその鳥は、その後その海の上で何を想ったのか? それについて原さんが持ち前の自由な想像力で解釈するシーン、そして激動の最終巻のラストシーンなどは、私の心の中で永遠に褪せずに刻まれ続ける名シーンです。 あなたが持っているここにいるためのチケットは、あなたが自ら手放さない限り誰にも奪われることのない。 あなたは既に一度祝福されたからこそ今ここに在る。 『電波オデッセイ』は優しく教えてくれます。 願わくば、この作品を読んだあなたがどうか良い旅(オデッセイ)を送り、何か一つでも素敵な「おみやげ」を持って行けますように。
電波オデッセイ

電波オデッセイ

傷つき、もがきながら生きる少年少女の成長を描いた感動の傑作! 壊れ、放棄された家庭の跡に、ひとり取り残された少女・原純子。引きこもり、学校からも社会からも消えかけようとしていた彼女の心に、受信された電波のように、オデッセイと名乗る者からの声が届いた。彼女は<地球へ来た旅行者>で、いつかここを去る時に<おみやげ>を持ち帰れる、だからこの世界を楽しんでステキな何かをおみやげにすればいいと。彼の言葉に支えられ、原は再び学校へ通いはじめるが、“旅行者”として何事も楽しもうとする彼女の破天荒な行動は周囲に波紋を起こす――。繊細な少年少女の心情と日々の葛藤、そしてその成長を描いた傑作の第1巻が12ページの描き下ろし漫画つきで登場。
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ビリーバーズ

ビリーバーズ

山本直樹の90年代の最高傑作、復活!!孤島に、二人の男と一人の女。指示された『プログラム』を淡々と実行し続け、『安住の地』へ行ける日に思いを馳せている。ある時、ボートに乗った外部の人間たちが島を訪れるが、彼らを『不浄』であると判断した男は『処理』してしまう。その頃から、孤島で暮らす男と女の関係に変化が生じ始め、互いに秘密を作ってはいけないはずの三人の間に、愛と欲と猜疑心が交錯する……!!
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新装版 ロックマンメガミックス

新装版 ロックマンメガミックス

“有賀ヒトシ”改め“ありがひとし”による、今でも根強い人気を誇る『ロックマンメガミックス』。ファンの熱い要望により、再・再・再復刻しました! 旧版をお持ちの方にも楽しんでいただきたいという著者の並々ならぬ熱意で、カバーイラストは、新装描き下ろし。巻末には「ロックマン執筆秘話2015」を新たに収録。過去作品の特典イラストも、特別収録いたします。収録漫画も、加筆修正・再編集しての復刊です。古参ファンから新たなファンまで、全ロックマンファン必携の、これが“最新版”『ロックマンメガミックス』だ! ▼収録内容 ◇ロックマン誕生 ◇R破壊指令 ◇メタルハート ◇復活の死神 ◇ロックマン誕生伝説(前編) ◇ゲストコメント(ロックマン総合プロデューサー 稲船敬二氏) ◇あとがき漫画・ロックマン執筆秘話2009 ◇描き下ろし漫画・ロックマン執筆秘話2015
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幻の花 白山宣之傑作集

幻の花 白山宣之傑作集

カッコいいとは、こういうことさ! 白山宣之氏は、大友克洋氏らと同時代に活躍し、その後多くの漫画家にも影響を与えた個性的な作品を数多く残しています。一方では、これまでにマガジンハウスから『少年塔』『10月のプラネタリウム』(単著)が刊行されたのみ(いずれも絶版)という寡作の人でもありました。作品に対するゆるぎないこだわりと情熱は多くの漫画家たちからも支持を受け、2012年に亡くなられた際には、白山氏を偲ぶ仲間の呼びかけで遺作集『地上の記憶』(双葉社、2013年)も出版されました(「本の雑誌が選ぶ2013年度ベスト10」選出)。本作は、既刊『少年塔』ならびに『10月のプラネタリウム』からセレクトした短編作品に、復刊ドットコムリクエストでも人気の高い『あはは、まんが』(角川書店、1984年)に収録された「サザンクロスの秘宝」「燃える北極光」の2篇を加え、さらにこれまで未発表だったイラストレーションや単行本初収録となる短編3篇を含めた、豪華作品集です。日本人の心に残る在りし日の原風景、高潔且つ琴線に訴えかける独特の澄み切った世界観を、ぜひ本作で存分にご堪能ください。 主な収録内容 巻頭口絵 Amazing World of Nobuyuki Shirayama/SCHOOL DAYS/INNOCENT/エゼキエル・ナウ(単行本初収録)/Golden Slumbers/トマトの値段(単行本初収録)/サザンクロスの秘宝/燃える北極光/六分儀/リボルバー(単行本初収録)/宇宙大怪獣ギララ/Lunatic/写真/懐かしい明日、待ち遠しい昨日(高寺彰彦)
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OPUS 《完全版》

OPUS 《完全版》

“幻の最終回”も含めた《完全版》! 連載漫画『Resonance』の佳境を迎えた漫画家・永井力は、悩んだ末に主人公リンの死をもって物語を締めくくることとした。だが、原稿用紙の奥から姿を現したリンにその原稿を奪われ、力自身もみずからの描いた漫画の世界へと引きずり込まれてしまう。そこで出会ったヒロイン サトコとともに、自分の考えた設定に翻弄されながらも謎の超能力者「仮面」と戦う力。作者にあらがう登場人物たち。やがて力にとっての現実世界と作中世界の境界線が崩れてゆく中で、力は「作者は作中世界の神たりうるのか」を自問するのだった---。隔週誌「コミックガイズ」で、1995~96年にかけて連載された長編漫画『OPUS』。アニメに専念するようになる直前の時期に書かれた、「漫画家としての今 敏」の集大成であり、後年の映画で追及される「現実と虚構」のテーマの出発点ともなった作品ですが、掲載誌の休刊にともない未完のまま終わりました。しかし、2010年の作者急逝の後に“幻の最終回”の原稿が発見され、徳間書店より上・下巻で単行本が刊行されました。本書は、単行本の巻末に今監督の全作品を手掛けたプロデューサー・丸山正雄氏のインタビューなど新規要素も併録し、1冊にまとめた《完全版》となります。
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岡崎二郎SF短編集 ビフォー60

岡崎二郎SF短編集 ビフォー60

デビュー30周年! すべて単行本初収録作品13本! 『アフター0』をはじめ、SF短編漫画の名手として、幅広い読者に支持されている岡崎二郎。デビュー30周年を記念して、今まで様々な事情で単行本未収録だった短編13本を収録した短編集がついに刊行! 10数ページに及ぶ加筆修正や、前説、後説漫画、リストを含め全280ページ、圧巻のボリュームです! かわいい絵柄、いやされる情感、時に心臓を抉るような風刺…。SF短編の名手が、デビュー30周年にふさわしいこだわりを発揮した一冊、お楽しみください。 ▼内容紹介 収録作品は「アフター0 neo」2本、「NEKO2」2本、「SUNちゃん」5本、「国立博物館物語」、「時の添乗員」、ほか読切2本。作品ごとの前説、後説では、執筆当時の経緯や単行本未収録だった理由などを赤裸々に明かした、読み応えたっぷりの内容となっています。
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勇者カタストロフ!!

勇者カタストロフ!!

魚屋、世界を救えるか!? 暗黒の時代。地獄の大魔王の封印は解かれ、世界は恐怖と暴力の支配に陥った……。だが! そんなある日、混沌の闇の中より、新たな光を求め一人の勇者が立ち上がったのだ!! ・・・といったはた迷惑なロマンと設定を求めて、わざわざ大魔王の封印を解き、歴戦の勇者「シェカネア」を呼び寄せようと思ったとある国の王さま。だが、なんの手違いか王の呼びかけに応えて城に現れたのは、先祖代々ずーっと続いているバリバリの庶民「魚屋」さんだった!? 魚屋=さかなや→しゃかねあ→シェカネア…………。ものすごい手違いと、無責任なつじつま合わせから始まる、少年勇者(にむりやりしたてあげられた)・魚屋ズックの冒険が始まる!
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千明初美作品集「ちひろのお城」

千明初美作品集「ちひろのお城」

きゅんとする少女漫画の名作を復刻! 少女たちたちの幼くも一生懸命な思い、そのいじらしさに胸がきゅんとする懐かしくも色あせない5つの物語です。昭和40年代から50年代にかけての少年少女の日常を抒情豊かに描いた少女漫画。 収録作品は、「ちひろのお城」「いちじくの恋」「涙がでちゃう」「バイエルの調べ」「お二階は診察室」。「涙がでちゃう」は単行本初収録。漫画家の高野文子さんが、ご自身が愛してやまない千明初美作品を、現在の漫画読者に読んでもらいたいと考え、企画・監修した作品集。収録する作品の選択から作品解説、カバーデザイン等を高野さんがすべて監修しています。22ページにおよぶライブラリーは、単行本に収録されない作品ひとつひとつを読み込み、吟味したコマをレイアウトして、作品世界を紹介した労作。千明初美の作品が、今の漫画読者にとっていかに必読なのか!を、高野文子が語りつくす、ちょっとユニークな作品集です。 ▼著者プロフィール 千明初美(ちぎら はつみ) 1951年生まれ。群馬県出身。高校時代からまんがを描き始め、1970年「りぼんコミック」11月大増刊での『雪の夜の物語』でまんが家デビュー。「りぼん」で活躍し、80年代中期よりフリー。高野文子(たかの ふみこ)(監修) 1957年生まれ。新潟県出身。漫画家、イラストレーター。1979年「JUNE」掲載の『絶対安全剃刀』で商業誌デビュー。寡作だが独自の作風で多くの漫画読者を魅了している。
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佐藤史生コレクション

佐藤史生コレクション

【佐藤史生コレクション1】坂田靖子氏・竹宮惠子氏推薦! あらすじ「あき家になっている祖母の家で雨宿りをしていた奇妙な青年“雨男”と出会った七生子。青年から、幼い日の七生子を知っているという思いがけない告白を受け…。」多感な少女の揺れ動く心を描き、読者の共感を得た人気連作“七生子シリーズ”のほか、代表作『ワン・ゼロ』の原型となった「夢喰い」、そして貴重な単行本初収録となる「マは魔法のマ」「一角獣にほほえみを」の2作品を収めた豪華作品集。巻末には、24年組の拠点で“女性版トキワ荘”ともいわれる「大泉サロン」の主宰者で、長年親交の深かった増山法恵氏による解説を特別収録。著者について「2010年4月に急逝した漫画家・佐藤史生。「別冊少女コミック」からデビューした後、SF、ファンタジーの要素を巧みに取り入れた作品を多数発表するも、2000年に刊行した『魔術師さがし』(小学館)以降は新作が発表されていませんでした。佐藤氏は、1970年代に現れ日本の少女漫画界をリードした少女漫画家たち、いわゆる“24年組”に対して、年齢や作風から“ポスト24年組”の一人として数えられている作家の一人ですが、少女漫画の枠に当てはまらない独自の世界を築き上げたことで、漫画ファンの記憶に長くとどまり続けています。」 収録作品:雨男/死せる王女のための孔雀舞(パヴァーヌ)/さらばマドンナの微笑/我はその名も知らざりき/夢喰い/あとがき/マは魔法のマ/一角獣にほほえみを/解説(増山法恵)
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