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ぺそ
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2020/12/25
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著者の父との思い出と別れ
他人の人生をまるごと覗き見たようで、読み終わったあとは切なく温かい気持ちになりました。 第二子として生まれた著者の松田洋子先生の数少ない父との温かい思い出の1つである海水浴のシーンから始まり、父が仕事で全てを失ってから家族がバラバラになっていく姿、そして父の最期のときが描かれます。 戦後の貧しい時代に靴すら与えられず虐待されて育った父は、自分で建てた工場を失い、子どもたちは全員家を離れていく。 多くの「なくしもの」をしてしまった父は、子どもたちが出ていってからは、家のなかでホームシックになってしまい犬を飼い始めた…というエピソードが印象的でした。 甥っ子がおじいちゃんのために絵を描いたり、「あっちですぐプレーできるように」とゴルフウェアを着せたり、昔は全く似ていなかった弟が父の遺影とそっくりになっていたり…。 葬儀の場面には家族ならではの気の置けない優しさで満ちていました。 父も家族も大変という言葉ではたりないほど苦労ばかりの人生だったけれど、最期はたくさんの家族の温かく見送られる…というのは、幸せな人生だったという1つの証なのかなと思います。
ぺそ
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2020/11/30
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1984年、女子新体操に出会った少年の物語 #完結応援
新体操と聞いた時、だいたいの人はリボンやボールを使った女子の華麗な演技思い浮かべると思いますが、静と動が美しい男子新体操の団体演技を思い浮かべる人もかなりいると思います。 しかし実は、男子新体操(団体・個人)は日本だけで発展した独自の競技であり、五輪競技となっているいわゆる新体操は女子だけのものです。 この漫画は、「新体操」が導入された1984年ロス五輪の年に、広島港町に住む少年・凜太郎が新体操に出会い魅了され、たった1人でその険しい道を歩んでいくというお話です。 https://twitter.com/hartamanga/status/1326133748790784002?s=20 優しい姉、厳しい父…母を亡くした家庭はどこかぎこちなく、そこへさらに「新体操」という誰にとっても未知のものが入り込んで、家庭内は激しく波立ちます。 しかし、男はみな父の跡を継いで漁師になるという小さな町で、内気で泣き虫小学生の凜太郎は美しく舞うリボンに魅了されたことで、厳しく当たる頑固な父と向き合う強さを手に入れ成長していく。 読んでいて予想外だったが、凜太郎が女子新体操を諦めなかったこと。 よく考えればタイトルが「夕凪に舞え、僕のリボン」なのですから、女子新体操から離れるわけがないんですけど、勝手に男子新体操に転向し、アスリートとして上を目指すのだろうと思っていました。 が、凜太郎は結局、試合に出れるわけでもない女子新体操をたった1人孤独に学び続け、最後は「新体操単独ツアー」を開催するという形で1つ大きな偉業を達成するのが、普通のスポーツものにはないエンディングで面白かったです。 凜太郎が進学のために電車で故郷を離れるシーンで、父が船から電車をじっと見つめているシーンは思わず目頭が熱くなりました。 ただこのシーンのあと、中高という重要な時期が描かれずに幕引きとなったのが残念でした。もっと読んでいたかった…。 男、女、年齢…。世の中には常識となっていて疑いもしない区分がたくさんありますが、それに問わられずたとえ前人未到でも挑戦をする凜太郎の姿に勇気が湧いてきます。 たくさんの人に届いてほしい作品です。 https://twitter.com/hartamanga/status/1329720750454935552?s=20
ぺそ
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2020/11/27
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誤植から生まれる植物の優しくて不思議なお話
ものすっごく良かった!! こういう優しくて可愛くて不思議なお話大好きです! 「誤植」が植物に見えるペディーさん。文字の砂漠でひっそり生えている「誤植」たちを寂しくないよう切り取って庭に植え替えてやります。ある日、レシピ本のなかに「にんげん1/2」という誤植を見つけそれを鉢植えに植えるとそこから青年が生まれ家事を手伝うように…! https://i.imgur.com/hXzUJhc.png 細い繊細な線で描かれる、和洋入り交じる不思議な世界が可愛い! 本から切り離され、誰にも読まれなくなったためにアイデンティティを失った誤植たちは枯れかけますが、それをペディーさんが機転で救う。 「誤植の弟」との穏やかな生活が続いていくハッピーエンドにホッと温かい気持ちになりました。 新國みなみ先生ってどこかで…と思ったら、AandDという海外グラフィックノベルっぽい天使と悪魔のお話を描いていらっしゃる方でした。世界観のオシャレな感じは共通するものがありますね。どちらも素敵です。 https://twitter.com/nikkuni373/status/1254632259371450372?s=20 38ページのお洒落で優しい「世にも奇妙な物語」という感じのお話なのでぜひたくさんの人に読んでほしいです!
ぺそ
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2020/11/19
もはや1人鉄腕DASH…! 1949年から始まる温泉旅館物語
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1949年の熊本県黒川温泉。温泉旅館・新明館の長男である主人公の哲也さん(19)は、暮らしを支えるため学校を辞め、家業の他に近所の農作業や土木作業をして働いている。ちなみに19歳というのは数え年なので今で言う17歳です。 道が舗装されていない、バスが通ってない、ズックが貴重だから普段はわらじ、家族10人暮らしで家にラジオがない、林間学校の生徒たちが米を持参してくる、家族で晴れ着で百貨店に出かける…というのが当時の暮らしぶり。 家でわらじを編んだり、道がまだアスファルトじゃなかったことは、父や祖父から聞いた昔の話と重なり、実感を持って読むことが出来ました。 温泉を引くための配管もまだ竹で、高熱に耐えられないので4・5カ月に一度新しいものに替えなくてはならず、山から竹を取ってきて節を抜いて設置するのも哲也さんの役目。 そのことについて「わしは長男じゃからあたりまえばい」というセリフがあり、山道を2俵(120kg)の米や石炭を「おいこ」で運ぶ姿とあいまって「リアル炭治郎だ…」と、なんだか感じ入ってしまいました。 https://togetter.com/li/1612718 常に自分たちの温泉を良くしようと考えている哲也さんは、両親に呆れられながらも、露天風呂から見える裏山の竹を切ってツヅジやサツキを植えたり、岩肌をノミで(!)彫って洞窟温泉を作ったり…。 向上心が強く勤勉な哲也さんの姿に頭が下がる思いがします。 新明館そして黒川温泉が今後どうなっていくのか続きが楽しみです。 【現在の新明館の公式サイト】 https://shinmeikan.jp/spa/
ぺそ
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2020/10/31
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タヌキに頼まれ!? 小学生の夏休み四国一周の旅!
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とにかく絵がゆるっとしてて可愛い…!のりちゃんとさんちゃんという、元気いっぱいな小学生男子2人が主人公。「さんちゃんのお母さんが元気になりますように」という願いを叶えるため、近所の神社で拾った印の付いた地図を頼りに、四国中の神社をお参りをします。 お母さんの具合がよくなくて徳島に越してきたというさんちゃんは、お母さんのことが心配で不安でいっぱい。これから赤ちゃんが生まれてお兄ちゃんになるのりちゃんは、それがなんだか面白くない。 だけど、お母さんたちに内緒で四国4県の神社をお参りしている間はそんなモヤモヤを忘れてとっても楽しそう! 道中、2人は優しい『人』だけでなく、不思議な存在にもたくさん助けてもらって、読んでいてほっとしました。 徳島・小松島市 金長神社 香川・直島町 八幡神社&草間彌生の赤カボチャ 愛媛 おばあちゃんちの近くの神社 高知・南国市 日吉神社&のいち動物公園 香川で肉うどん食べたり、おばあちゃんちで「タルト」を食べたり、ご当地グルメや観光をしっかり楽しんでいて2人ともとても旅上手!各地の背景にこっそりゆるキャラがいるのが可愛かったです。 四国の小学校の図書室にぜひ置いてほしい1冊です! とは言ったものの、電子だと途中にたくさんカラーページがあってこれが本当に素敵なので、電子おすすめです…! https://comic.pixiv.net/works/3537
ぺそ
ぺそ
2020/09/30
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デビュー作を含む川原泉の初期短編集
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7篇からなる最初期作品短編集。表題作をは私がイメージする川原泉先生の絵だったのですが、それ以外は全然違くてびっくりしました。かなり荒削りで拙く、目の描き方や顔の比率などはかなり従来の少女漫画の影響を受けているのが印象的でした。 当時最新作のフロイト1/2から始まり、デビュー作のジュリエット白書が一番最後に収録されている構成です。Wikipedeiaに従って各短編を作品の発表順に並べ替えてみました。(文頭の番号が書籍での掲載順です) ⑦ジュリエット白書 (別冊花とゆめ 1983年冬の号) 何の前情報もなしに読んだなかで、このジュリエット白書が王道ラブコメな感じで一番面白かったです。超優秀な兄に虐げられる2人の妹たちは、いがみ合う兄同士とは対照的に大の仲良し。たまには兄貴たちに仕返ししてやろうと、自分達の素性を隠してお互いの兄とデートし合うが…!? オチがすごく良かったです。台詞回しとかモノローグによる絶妙な間のとり方とかがすでに川原泉テイスト…! これがデビュー作とは驚きです。   ⑥メロウ・イエロー・バナナムーン (別冊花とゆめ 1983年夏の号) 宇宙のとある星を舞台にした恋愛ドタバタ劇。 主人公・ミズキは新しくやってくる長官の秘書に任命されるが、その名前を聞いて逃走を図る。実はその長官はミズキの夫で、ミズキは1年前に結婚したもののわずか1時間で逃亡、以来逃げ続けているところだった。 正直このお話が一番、話の筋を理解するのにかなり手こずって読みにくかったです。   ②たじろぎの因数分解 (花とゆめ 1983年9月大増刊号) 数学が大の苦手の女子高生が、数学教師と義理の兄妹になりお弁当を作ってあげるお話。80年代っぽい小物でいっぱいで主人公の部屋がすごく可愛い…! 「ダメダメな所もあるけどキラリと光る長所もある」というのがやはり川原先生の描かれるキャラの魅力だと思います。   ③悪魔を知る者 (別冊花とゆめ 1983年秋の号) 一番絵の癖が強い!!笑 試行錯誤されていた時期だったのでしょうか。和馬様の顔がとにかく長い。 主人公の若菜は父が勤める大企業の御曹司・和馬に子供の頃から絡まれている。なぜなら和馬は外面こそ善良なお坊ちゃんだけど内面は人格破綻者の外道(若菜曰く、「和馬は発狂した宇宙人類の歪み」)で、親すらその本性に気づかず若菜だけが知っているから。 ヤバい男に平凡な女の子が目をつけられるというテーマが読み応えがあって面白かったです。   ④真実のツベルクリン反応 (花とゆめ 1983年22号) 家の隣の病院に越してきた若いお医者さんと仲良くなるお話。 お医者さんも主人公も、家にいて縁側でお茶を飲んだり盆栽の手入れをするのが好きなタイプ。私としては「インドア趣味全然ありじゃんむしろ素敵」と思ったのですが、描かれたのがバブルへ突き進む時期なだけに、2人は家族から呆れた目で見られていたのに時代を感じました。   ⑤花にうずもれて (花とゆめ 1983年11月大増刊号) 笑うと体から花が出てしまう女の子のお話。 家庭教師の先生の前で笑わないように頑張っていたのにバレてしまったうえ、昔自分のことを不気味だといじめてきた女の子に再会して…というお話。可愛らしいメルヘンな設定に反して、主人公が嫌な思いするシーンが多い。終わり方もちょっとビターで、辛いことがあったけどでも花のおかげで…という切ない余韻が印象的でした。 ①フロイト1/2(花とゆめ 1989年4、8号) ホント面白くてこれぞ川原泉という感じ。 主人公の梨生は、8歳のときに小田原城で大学生の弓彦くんと出会う。2人は「風呂糸屋」という謎の外国人がやっている提灯屋で、2個1組10円の提灯を5円ずつ出し合って購入すると、なんと2人の夢がつながってしまう。山で遭難し夢うつつの弓彦を梨生が夢で助けて以来、2人の夢は繋がらなくなってしまう。 そして10年後、短大合格が決まり暇になった梨生がバイトすることになったファミコンソフトの会社は、なんと弓彦のもので…!? 梨生の一生懸命なのんびり屋さんぶりがかわいい…! 夢の中では2人とも10年前の姿のままで和気あいあいとしており、普段キリキリしている弓彦も本来の素直さを出しているとこがキュンときた。 7篇読んでみて、アカデミックな小難しさと、主人公のお気楽さの絶妙なハーモニーがやはり川原泉先生最大の魅力だなと感じました。
ぺそ
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2020/09/28
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心優しい少年が生き抜く中華風ファンタジー!
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たまたま見つけて綺麗な表紙に惹かれて読んでみた作品。中華風の世界観がすごく良い…!表紙の主人公・遊圭は病弱だけど賢く心優しい少年で、名家の複雑な環境に生まれるものの、西方から来た強く逞しく愛情深い薬師で療母・胡娘のお陰で健やかに育つ。 ある日親族が皇帝の妃になることが決まり、初代皇帝が定めた「皇妃に外戚なし」の掟により一族は殺されることになり、遊圭は追手から一人で生き延びることになる。 幼い少年はお団子の髪型をしてるとか、遊圭には特定の動物アレルギーがあるらしいとか、端々からさり気なく読み取れるところが凄くいい。 たどたどしくも力強い喋り方をする胡娘の言動からは、それはもう遊圭坊ちゃんを愛していることがビシビシ伝わってくる。 作る料理はものすごく美味しそうで、しかも材料を見れば滋養があるのがわかるメニューで思わずうっとりしてしまうほど。 料理・調剤・演奏の腕に優れるだけでなく武術の心得もあり、遊圭を逃すのに充分すぎるほど活躍してくれる。 遊圭に愛おしそうに『ファルザンダム』と異国の言葉で呼びかける姿が本当に印象的で、まだ読みはじめて1巻なのに、消息不明となってしまったのがすごく心配。 遊圭がまたほんとにいい子なんですよね…。 アルスラーン王子とか炭治郎とかと同じ真面目で優しくて賢いいい子で、思わず応援したくなってしまう。 追手から逃れるために女装して後宮に行くって、ホントどうなっちゃうんだろう。メチャクチャ続きが気になる…! 原作読んじゃおうかな。
ぺそ
ぺそ
2020/09/11
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可愛くて胸が締め付けられる妖怪人情物語
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このあいだ新刊ページで見つけた作品。まずタイトルで「おっ」と気になりました。「先ず隗より始めよ」って高校で習ったやつじゃんと。それから表紙をよく見たら、手前のおじさんの表情とデフォルメがなんかすごく良くて。Amazonへ行ったら1冊110円だったので取りあえず買って読んでみたら…すっごく可愛いくてちょっと切ない人情話でした。 主人公の亜紀彦は、窓口に来るクソガキにも笑顔を絶やさず横暴な上司にも怒らず、ホームに落ちた人を間一髪助けて名乗らず去るような、健気なまでに真面目な市役所職員。一方、亜紀彦が「あんちゃん」と呼ぶ兄・波留彦は、真面目な亜紀彦とは対照的に大雑把で適当で喧嘩っ早い。そんな凸凹兄弟2人の目標は「人間になる」こと。 夜の街から闇が消えた妖怪にとっては暮らしにくい現代。妖怪たちは不死の妖怪であることを辞め、人間となって死ぬことを選んだ。 2人で善行を5回連続で重ねると、晴れて人間になれるのだが、この兄弟は兄・波留彦のせいで3259回リセットされている…というところからお話は始まります。 ちなみにこの2人は午前0時から日の出までは妖怪の姿に戻ってしまうのですが、その妖怪姿がも〜〜〜すんごく可愛い…! LINEスタンプがほしい。 亜紀彦の方はTHE・カッパという見た目で、気が弱そうというか大人しそうな見た目にキュンとくる。というか人間の姿で胸ポケットからキュウリを出してポリポリするところ好き。波留彦の方は昔の特撮怪獣のソフビ人形みたいな見た目でシンプルに可愛い。 この2人がドタバタしながら色んな人に出会い善行を重ねようとする話なんだけど、2人は妖怪ゆえにかなり純粋なため、途中人間に手ひどく裏切られる話ではかなり胸に来ます。(ちなみに亜紀彦は昔も人間に裏切られたことがあり、その切ないお話は郷土の昔話にもなっている) この兄弟の過去とか、亜紀彦と姫様の生まれ変わりとの恋の話とか…もっと掘り下げて描いてほしいところがたくさんあるんだけど、残念ながら8話で完結してしまっています。 しかも最終怪はかなり悲しいお話で、最初はなんでこんな話で最後なのか納得がいかなかった。けど、この話は「人間となり死を望む妖怪」の話だから、最後に兄弟2人に人間の死を見せる必要があったのかなと今は思います。 人間よりピュアな妖怪の生き様にホッとする作品でした。