ANAGUMA2021/05/24ネタバレ地方競馬の現実と夢を描くマキバオー続編『みどりのマキバオー』読み終わったので読み始めました。そもそも続編があるのも初耳だったのですが読んでみると内容も『みどり』からガラリと変わっていて驚いているところです。 というのも『みどり』の舞台は基本的に中央競馬。サラブレッド世界の巨大なピラミッドの頂点を描いていたのに対し、ヒノデマキバオーが走るのはその土台である地方競馬。それも高知競馬場という言ってしまうとかなり下の方の段に位置しています。 私自身も「ウマ娘」に触れ、週末テレビでやってる競馬番組くらいは見るようになったのですが、そこで放送されてるようなGⅠレースって本当にトップオブトップの世界であって、あれがすべてじゃないんだということなんですよね。 ミドリマキバオーたちの活躍も、さも当たり前のように描かれていましたが『たいよう』ではそうはいきません。 出走手当のためにろくなローテもなく連続出走するヒノデマキバオー、やっとの思いで地方重賞レースに入着するゴールデンバット、中央競馬に乗り込むためのトライアルに勝つことさえ大変なんだというこのもどかしさ! だからこそ熱い。 『みどり』のように決して華々しいことだけではない、泥臭くじれったい展開も続きます。だからこそヒノデマキバオーがこれから先、夢を叶えてくれたときにはどれだけの感動が待っているんだろう。その時が来るのを楽しみに読んでいきたいと思います。たいようのマキバオーつの丸2わかる
ANAGUMA2021/05/10地球に来襲する「蝶」を倒すヒューマノイドの戦い #完結応援突如飛来する異様の巨大宇宙生物、スモークを焚きながらそれに立ち向かう小さな人の影…「あれはなんだ、人か、いや鉄腕アダムだ!」という最高のビジュアルを引っさげて開幕するのがハードSF『鉄腕アダム』です。 『エヴァンゲリオン』のように来襲する「蝶」は全部で8体、地球に到達されると敗北、というタイムリミットがある戦いだというのが緊張感を煽ります。毎回敵方の蝶は進化を遂げていき、人類側は科学知識を生かした作戦で撃破していくことになるのですがこの科学のトンチの効かせ方が絶妙で「そんな戦い方が!」とワクワクしてしまいます。 蝶の襲撃の合間には人類側でもさまざまなドラマが描かれ、物語を貫く謎や設定が徐々に明らかにされていくのも読み進める強力な原動力になっています。アメリカがメインの舞台なので洋画・洋ドラっぽい雰囲気で進みながらもやることはロボアニメ!みたいなノリもツボでした。好き。 SFテイストの迫力に圧倒されがちですが、本作の核のテーマはヒューマノイドのアダムと天才科学者ジェシーの友情にあると感じました。孤独だった者同士がかけがえのない相手とともに自分のやるべきことを見つけ、定めていく物語だと思います。 全4巻ながら充実した科学用語の解説コラムも収録されており読み応えは抜群です。実際の巻数よりも遥かに充実した滞空時間というか、没入した時を過ごすことが出来たように思います。感謝。鉄腕アダム吾嬬竜孝1わかる
ANAGUMA2021/05/07ネタバレこれが令和のヤマト…!!『ヤマトNEXT』を語りたい表紙見かけてカッコいいな〜と思ってナタリーで試し読みしたらめちゃめちゃ好きでしたわ…。もっと話題になってくれないかなと思って書きます。 自分はヤマトのことを「地球がヤバイのでイスカンダルに行って何か手に入れて帰ってくる」程度の解像度でしか把握してない人間なので正直これがヤマトシリーズとしてどうなのかについてはまるでわからない(なんとなく賛否両論すごくあるんじゃなかろうかと予想している)。 実際本作の設定はトップクラスの腕前を持つゲーマーの子どもたちを集めて地球外生命体と戦う戦闘艦に乗ってもらうという「ヤマト要素、船と宇宙人だけじゃん!」と思わず言いたくなってしまうようなかなりアグレッシブなアレンジです。 それでも自分は溢れ出るSFディティールとロボットアニメオマージュの強烈な熱量にあてられて吾嬬先生の前作『鉄腕アダム』も一気読みして泣いている状態です。キャラのやり取り、艦隊戦の描き方、画面の構図とかもう全部がツボに入ってしまいました。 ヤマトファンから見てどうなのかとか、感想とか考察とか色々話したいので何か書いてってください!!宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ西崎義展 吾嬬竜孝 玉盛順一朗 西崎彰司 ボイジャーホールディングス
ANAGUMA2021/05/06ネタバレ鎖から解き放たれるふたりの物語 #読切応援これめちゃめちゃよかった…。ここ最近のジャンプラ読切だとダントツで好きです。 主人公は特殊な能力を持つ奴隷の少年エリクと監督役に遣わされたアンリ中尉のふたり。 画力がすごいのでもっとバトル描写が多くなるのかなと思いきや、会話を重ねてふたりの絆が紡がれていくのが素敵…。お互い奴隷と軍人という「鎖」に縛られていることを語るのがグッときました。 死刑を自由への切符として描くオチのセンスも好きです。二人のコンビもっと見てたいな〜って思わされました。戦闘シーンもすごそうだし、軍事ものとしての世界観も広がりを感じます。 見てみたい物が沢山浮かぶ素敵な読み切りでした。連載になってくれ〜!クサリ溶五郎
ANAGUMA2021/05/04これを読んで『地獄楽』の解像度を上げよう!ジャンプ本誌に掲載された読み切り2作や一部の登場人物にフォーカスした描き下ろしの小編5篇と設定集、対談などなどという構成。単行本のオマケマンガなどでも薄々感じられてはいましたが、本編には出てこないキャラの個性やバックグラウンドなどかなり緻密に設定されていることがわかって面白いです。 最初の頃にいた死刑囚の紹介読むと「懐かし~!」って嬉しくなっちゃいますね(転び伴天連のモロマキヤ!)。 個人的に一番面白かったのは藤本タツキ先生との対談。お互いの作品の魅力に思うところや、どんなことを考えながら週刊連載を乗り越えたのかなどなど…。近しい関係だからなのか、創作に対する姿勢が鋭い着眼点で語られていて読み応えありました。 特に『地獄楽』1話のナレーション演出に対するお二人のコメント、かなり細かい演出論まで踏み込んでいて勉強になります。 本編の情報がグンと増えて解像度が上がること間違いなし。本編をもう一度読み返したくなる素敵なファンブックだと思いました!地獄楽 解体新書賀来ゆうじ
ANAGUMA2021/04/28皆川亮二初の短編集 #推しを3行で推すやはり一番やばいのは『進撃の巨人』諫山創原作の将棋マンガ『the Killing Pawn』でしょうか。諫山節と皆川演出が重なって生まれた奇跡の迫力によって最強になっている感があります(小並感)。 どの短編も皆川亮二エッセンスがギュッと詰まっているので、ファンはもちろん皆川作品が初めての方にもオススメの一冊です。転送者 皆川亮二短編集皆川亮二1わかる
ANAGUMA2021/04/21ザ・ボーイズ #推しを3行で推すドラマが大人気のポスト・スーパーヒーローコミック『ザ・ボーイズ』、この度めでたく電子書籍で最後まで邦訳が読めるようになりました! 流石のAmazonプライムでもお見せできないようなシーンも堪能できちゃうのが原作のキレているところ。 数あるアメコミの中でも特に映像化のアレンジが凝っているシリーズだと思うので、ぜひともドラマ版と比べてみてほしいです!ザ・ボーイズガース・エニス ダリック・ロバートソン 上田香子 椎名ゆかり2わかる
ANAGUMA2021/04/19月面で侍が宇宙服着て抜刀!!! #読切応援『カラーレス』のKENT先生の読み切り!! 月でヤバい生き物が暴れ探査船が取り残されてしまう事態が発生、制圧に銃器が使えないため伝説の侍・トムラにお声がかかり…というアルマゲドン的な展開。最高。一言も喋らないまま話を進めていくトムラのキャラ造形がシブいぜ…。 月面で起きている出来事や設定についても多くは語らずという感じでしたが、クールな画面づくりと剣戟の演出が一貫していて素敵でした。いいSFを読んだ…。デストロノートKENT
ANAGUMA2021/04/19お前のような総理大臣が居るか!DAIGOといえばおじいちゃんが総理大臣で有名ですね。つまりDAIGOのお姉さんである影木栄貴先生もおじいちゃんが総理大臣ということです。 そしてこの『世紀末プライムミニスター』は女子高生が弱冠25歳の総理大臣に街中で一方的に婚約者にされてしまうという漫画。この前情報だけで読みたくなってきませんか? 随所で「お前のような総理大臣が居るか!」と突っ込みたくなってしまいますが、どうも裏話としては影木先生のバックグラウンドが記事になってしまい政治ネタが書きづらくなったという向きもあるようです。そんなわけであくまでファンタジーとして読むのが正しいのでしょう。総理番の記者も官邸付きのSPも全員総理の幼なじみなところとか好きです。 一方でところどころの政治家ネタがその世界の関係者でないと出てこないようなリアリティを持っているのも面白い。イロモノだと思って読み始めたら真面目に日本の未来を憂いていたりして…という具合に終始情報量多めで圧倒されながら読んでしまいました。これが『世紀末プライムミニスター』…。世紀末プライムミニスター影木栄貴1わかる
ANAGUMA2021/04/16SNS時代のお絵描き文化の光と闇 #1巻応援爽やかな表紙と物騒なタイトルが目にとまり読みましたがこれはかなり生々しい漫画だ…。「神絵師の腕全部折っていこうぜ!!」的なネタに惹かれて気軽に手に取るとやられてしまうかも。 SNSで人気絵師になるために必要なのは「バズり」。バズるために必要なのは「フォロワー数」。フォロワー数を増やすのに必要なのは有力な「人脈」。そう、SNSの世界では良くも悪くも絵そのものよりもコミュニケーションの価値が重視される瞬間が少なからずあるのです。 みなさんもTwitterなんかで素敵なイラストを描かれる方をフォローされてることだと思います。本作を読めば絵師が人気になる仕組みのみならず、彼らが身を置いている空間の感触が高い精度で追体験できる…気がします。 創作意欲と承認欲求に人間関係が合わさることで天国にも地獄にも変わるのがSNSお絵描き世界なのだ…。 バズをキッカケに破綻したフォロワーリス丸さんとの関係、小春先輩の思惑と正体、そして佐竹くんの創作の行く末がどうなっていくのか、今からめちゃくちゃ楽しみで同じくらい怖い!!!どんな答えを出してくるんだ…。 絵描いてる人が読んだ感想がマジで知りたいですね。君の筆を折りたい河原シノ
ANAGUMA2021/04/08原稿落手のために挑めゲテモノ食い!大物作家・芹沢錬太郎に連載を確約させる条件、それは担当編集が彼の目の前でゲテモノ料理を食うこと、すなわち「ゲテ喰い」の儀に挑むことであった…。次々現れるキワモノ料理を目の前に「ぜ、絶対に嫌だー!!」と言いながら毎回「食ってみるとうめー(泣)」ってなってる新人編集・朝陽さんの姿が読者の涙を誘います。 真面目な話するとやってることがガチのハラスメントじゃん!というレベルなので人を選ぶノリではあるかも。個人的には他人に強制するくせに芹沢先生は絶対に食べないのが特に印象悪くしてる気がします。「文豪たるものゲテ喰いたれ」つーんならお前も体を張れや! とはいえ絵もきれいだし女の子キャラはかわいいしなぜだか出てくる料理は美味そうに見えてきてしまうのでキャラのノリにも出てくるメシにもついていけるかどうかは読んで判断してくれ…!という感じですが、想像も及ばないような料理が出てくるのは純粋に楽しいです。代わりに登場人物が犠牲になってますが。 あとは朝陽さんと他社の編集の足立さんがキャッキャしてるとこ(表紙の絵)が尊いのでそこですね。そこ。次巻以降は芹沢先生もゲテ喰いに巻き込んで溜飲を下げてくれねーかなぁ!書いて欲しけりゃコレを喰えジェイ・加藤1わかる
ANAGUMA2021/04/07ネタバレ菌が暴れるSFモンスター・パニック!!!主人公の霧子は普通の女子高生…だったはずですがある日突然異常な菌に乗っ取られた家族に襲いかかられて人生が一変。彼女と交配しようとしてくれる菌に追われることになります。霧子とバディを組む倉鬼は七月作品らしく片手でデザートイーグルをぶっ放してくれるので安心ですね。 とにかく敵の菌モンスターたちがグロくて生理的な嫌悪感がすごいです。霧子とひとつになろうとするのもキモい! 追い詰められた籠城した警察署の中とかでも景気よく人間たちをガシガシ乗っ取ってきます。菌類たちに狙われる霧子がいかに生き抜くか、敵に打ち勝つかが物語の主軸になっているのもわかりやすくてノレるポイント。 3巻からはダイナミックなSF展開も入ってきて飽きさせません。菌が暴れる話からそんな展開にいけるの!?というワクワクがありました。ありがちなモンスターパニックものだと敬遠しないで読んでみて欲しいです。でもグロいの駄目な人はやめたほうがいいかも。ギジン七月鏡一 朝日曼耀8わかる
ANAGUMA2021/04/05小説家とそのファンの束縛百合…ときいて飛びついてしまったのですがことはそう単純ではありません。 ベストセラーを書き上げたあと、スランプに陥った主人公の小説家・ユウが出会ったのは自身のファンを名乗る不思議な女性・エル。お互いの悩みや身上を打ち明けるうちにふたりの距離はどんどん近づいていき、エルは書けなくなってしまったユウに対してゴーストライターを申し出ます。 生活と創作の両側面に入り込んでくるエルの存在。ユウは心身ともに大きく揺り動かされることに…と途中からヤバそうな空気がじわじわ漂い始めて読むのが止まらなくなりました。 ふたりが支え合っている姿に心を温められつつも、何が起こるのか常にゾクゾク…というふたつの意味で目が離せません。 ユウに度々送られてくるストーカーらしき手紙や、エルの性格の掴みどころのなさが洋画テイストといいましょうか、サスペンスの緊張感を演出していてよいです。この辺りの味わいはもしかしたら原作小説の『デルフィーヌの友情』からきているものなのかも? とはいえあとがきにもあるように原作とは物語の進め方がかなり違っているようです。『デルフィーヌ〜』そのものがまさに作家の自伝風に書かれた小説らしく、ユウのキャラクターとも重なってくるところがあり、こちらもどんな作品なのか読んでみたくなりました。私の彼女南Q太 デルフィーヌ・ド・ヴィガン1わかる
ANAGUMA2021/03/31人喰いの妖と少年が紡ぐ絆 #完結応援妖(あやし)の起こす問題を解決する「あやしい屋」の少年チキタ・グーグーは人喰いの妖ラー・ラム・デラルとともに暮らしています。人と相容れない存在であるはずのラーが稼業を手伝っているのは彼の目的がチキタと100年間をともに過ごし、美味しくなった彼を食べてしまうことだから。 これだけ書くと『うしおととら』みたいなコンビバトルものっぽいですが、妖と人の命のやり取りがシビアに描かれる『チキタ』の世界はかわいく見えて非常にハードでダークです。 「人喰い」が関わる残酷なシーンがあるほか、主要キャラを巡って精神的にクる展開が容赦なく続くので最初のうちはほわんとした絵柄とのギャップにやられてしまうかも…(もちろんそれも大きな魅力です!) スリリングなエピソードのなかで「100年」とラーの抱える秘密や不死の存在など、ぞわぞわするような謎も解き明かされていくのでどんどん読み進めてしまいました。 両親の仇であるラーと暮らすチキタを筆頭に、作中では度々殺し殺され喰い喰われ…という関係のキャラクターが登場します。誰かが誰かの仇である過酷な間柄ですが、同じ時間を過ごすことで互いの想いが変わっていく過程が丁寧に描かれます。 食うものと食われるもの、許さないことと許すこと、そして生きることと死ぬこと。『チキタ』のキャラクターたちはそれぞれ凄絶な過去を持ちながら、誰かとともに日々を生きることで重厚なテーマに自分なりの答えを出そうとします。 「そうまとめるのか〜!」という最終話がとても好きでした。 チキタとラーが迎える「100年」の旅の決着、読めばきっと心に残るものになると思います。チキタ★GUGUTONO4わかる
ANAGUMA2021/03/30どうして5巻以降は単行本になってないの…!?ウマ娘追っかけ始めてこの素敵マンガにも巡り会えたのですが単行本になっているのは26話までだなんてそんな…。ウオッカとスカーレットの喧嘩の行方を見届けるには現状サイコミアプリで読むしか無いです。なぜなのか…。 作品自体は40話できちんと完結しているし、サイコミさんなんとかなりませんか…?【新装版】STARTING GATE! ―ウマ娘プリティーダービー―S.濃すぎ Cygames8わかる
ANAGUMA2021/03/22クラス30人全員百合!!!『in YURIFUL classroom』という英題のとおり30人のクラスメート全員が百合!!というパワフルな設定が魅力の本作、大盤振る舞いにもほどがある。 目まぐるしくキャラクターの視点が変わっていくプロローグに最初は面食らうかもしれませんが、本編は基本的にふたりずつオムニバスのエピソードが展開されていくので安心して身を任せてください。一通り読んでから見返すプロローグはかなり充実感があります。ほかにもキャラを知らないうちは見過ごしている各話の背景でも注視すると百合が発生してたりしてね…。 あなたのお気に入りの百合を見つけよう!!!ゆりづくしの教室でしーめ1わかる
ANAGUMA2021/03/19かつて愛した女性を追う電脳回収者の物語異常をきたした電脳を回収する「ブレイン・トラッカー」の男が主人公。サイボーグが当たり前の世界での人のあり方、倫理観を問う物語です。 『銃夢』や『攻殻機動隊』が好きな方はピンとくる設定かと思います。両作はアクションが魅力ですが、本作は電脳を介した愛のかたちに焦点があたっていて主人公・カーボンがかつて愛した女性に何が起きたのかという謎がページをめくらせる原動力になっています。 見た目にも画面いっぱいに「これよこれ!」というフェチがあふれていて、それも大きな魅力です。超ハイテク世界なのにパンチカードで情報管理してたりとか。 1巻で完結しているのでこうしたジャンルに馴染みのない方でも手に取りやすいはず。シブいSF、ミステリーが読みたいときにオススメです。ブレイン・トラッカー リピート・ユーフォリア多田乃伸明
ANAGUMA2021/03/17見た目はJK!中身はオッサン!その名は名探偵二科てすら!…という触れ込みで始めるのがぴったりかと思いきや、本作の主人公てすらはタイトルにもあるように「推理」をしません。 彼女が積み重ねるのは思考実験、机上の空論と称して仮説を組み立てることであり、興味があるのはあくまで謎そのもの。相棒のサラリーマン桃太郎がその実証実験として実際に動き仮説を確かめていく…というバディ・ストーリーです。ミステリアスな女子高生に翻弄される話が好みの方には刺さるかと。 そもそもこの二科てすらの正体ですが、中にいるのは元大学教授・二科恭哉、彼女の父親です。とある事情で入れ替わりが起きてしまい、その間「娘の人生を保全する」のが今の目的。女子高生の見た目で哀愁を漂わせたり達観したことを言うのが時折ドキッとさせてきます。 本作『推理しない』はあくまで序章ですが、オッサンJKてすらの不思議な魅力がたっぷり詰まっています。続編『二科てすらは見つからない』は二科家の家族の問題と絡め、物語が予想外の方向にドライブしていくのでこちらも読んでほしい!二科てすらは推理しないPEACH-PIT
ANAGUMA2021/03/09ゾンビを守る弁護士が目指す世界とはこの作品に出てくるゾンビが面白いのは「死んでいる」以外はほとんど人間と変わらないところ。理性もしっかりあるのでコミュニケーションを取ることだって問題なく出来るのですが、気味悪がられたり、労働力として搾取されるなど差別の対象でもあります。 そして主人公・ゴールドはトラブルに巻き込まれがちなゾンビからの相談を受け付ける弁護士という絶妙な設定です。もし「人とほぼ変わらないゾンビ」がいたらこの世界でどんな問題が起こるんだろうというのを想像させるのにピッタリの仕事ですよね。 自分にかけられた生命保険を死んでいるゾンビは受け取れるのか(!)という問題に端を発し、事態はゾンビのありようを問う裁判に発展していきます。生と死の境界、人権と差別、それらを規定する法のあり方、といったテーマを現実の社会とも比べながら読み解いていける構造になっているのが鮮やかです。 エンディングは裁判の決着を経て世界がどう変わったのかがわかるまで。ゴールドの人物像から受けた印象と同様、結末もスマートで素敵でした。 1巻で綺麗にまとまっているとは思うのですが、もう少しこの世界の物語を見ていたかったというのが本音!色んなストーリーが作れそうだなと…。そう思わせてくれる魅力的な世界と人物が描かれていた作品でした。Deadmeat Paradox 電子限定『義父の息子』収録版金田サト
ANAGUMA2021/03/02「美木さん、大好きです!」が僕も大好きです全く正反対に見える二人が互いを素直にリスペクトしているの、尊いですよね。あるときギャルの美木さんに一目惚れをした地味キャラの香坂くん、彼女に釣り合う人間になるべくガラッとイメチェンをして告白をしたところその気合を認めて美木さんも即お付き合いを了承。すべての展開が早い! 香坂くんが大人しそうに見えて相当な勇気と行動力の持ち主なのもギャップがあっていいです。付き合った翌日いきなり家に朝食を作りに来たり距離感バグってるところとめちゃくちゃピュアなところの差が激しくて愛おしい。おもしろい男……!! そんな感じで香坂くんが予想のつかない男なので美木さんも常に優位を取ってるわけじゃないのが妙味。パワーバランスが常にぐらぐらで、それが美木さんにとっても楽しいのが伝わってくるのがなんだか素敵です。ただ陰キャくんをギャル様が全肯定するという単純な構図じゃあないのです。 とにかくふたりのキャラがあればどんなシチュエーションでも最高に光り輝いたものになるので信頼して読み進めていただきたい次第です。自販機で飲み物買ってるの見るだけで悶えたの初めて!美木さん、大好きです!小畑つねちか
ANAGUMA2021/02/24モーターボールを描いた『銃夢』スピンオフ「銃夢といったらモーターボール!」というファン層が居るほど人気があるイメージのモーターボール。屈強なサイボーグたちがボールを奪い合いながらゴールを目指す殺人・暴力なんでもありの『銃夢』世界のメジャースポーツです。 本作は『銃夢』連載後に描かれたモーターボールをテーマにしたスピンオフで、ガリィら本編キャラクターは登場しません。独立した作品なので『灰者』だけでも楽しめます。 主人公スネブはモーターボールの試合で自爆を繰り返す有名選手。彼の自爆とリーグに流通しているという新薬の存在が次第に大きな事件へとつながっていくスリリングな筋書きです。 モーターボールに懸ける男たちの生きざま、サイボーグの生命倫理、そのなかで譲れないものはなんなのか…。スネブという男の人生、読み応え抜群です。『銃夢』を読んでいない方でもシリーズに通底するエッセンスを味わえますので、波長が合った方はぜひ本編も読んでみていただきたいですね。灰者木城ゆきと1わかる
ANAGUMA2021/02/222010年代に蘇った『光路郎』の続編漁師町にある坂上町高校に里帰り赴任してきた光路郎・オハラの教師生活を描いた『光路郎』。本作『妹先生』は『光路郎』から時が経ち、光路郎の妹の渚が坂上町高校の教員として新たに主人公を努めます。 人間関係も学校関係者や同級生たちでほぼ完結しているという…ある種箱庭的な世界観ですが、描かれるドラマはバリエーション豊富で飽きません。前作から引き続いて登場しているキャラクターたちの現在もしっかり描かれていて「みんなちゃんと大人になっている…」という感慨がこみ上げてきます。 渚を見守るベテランの光路郎という構図も頼もしくて、世界観が完成している感がありました。ラストでアメリカと繋がっていくところも『光路郎』オマージュなのかなと思います。 ふたりの主人公が紡いできた絆が光る、美しいラストでした。妹先生 渚村枝賢一
ANAGUMA2021/02/16木蓮との因縁『烈火の炎』のキャラクターのなかでも個人的なお気に入りは木蓮です。なんと言っても執念深い。紅麗の館での初登場から裏武闘殺陣、封印の地、SODOMと何度も火影忍軍の前に立ちはだかります。そしてそのたびに敗れ去っていく。 烈火が与えた敗北を起点に彼の人生は負けを繰り返す屈辱にまみれたものになり、烈火を否定することが生きる目的になっていったように思います。私的な意見ですが紅麗が烈火の表ライバルだとしたら木蓮は裏ライバルと言っていいくらい因縁が深いんじゃないかな。 最終戦で烈火が「見下していたわけじゃない、嫌いだっただけだ」と語るのも実力自体は認めていたような気がしてグッと来るポイントです。それが木蓮自身には届いていなかったように思えるのも皮肉が効いていて好きですね。 命を抱きかかえながら挿入されるナレーションで「木火土金水のうち、木の木蓮だけは敵側だった」と最期が語られるのも印象深いです。最後の最後まで「次は勝つ」と吠え続け、決して諦めない姿は最悪の敵ながら魅力的で、存在感のあるキャラクターでした。 #マンバ読書会烈火の炎安西信行
ANAGUMA2021/02/05ネタバレいわゆるASUKA版DTBというものがあって📷それがこちらです。『黒の契約者』のアニメ放送当時、アニメとのあまりのギャップになかなか物議を醸したイメージがあるのですがそれもいい思い出ですね。一応黒さんがゲストの女キャラを籠絡する展開はアニメと同じくあります(そこ?) アニメと比べての主なツッコミポイントとしては2巻になっておもむろに仮面をつけ始める黒さん(それまで素顔で活動しまくっている)、水がないと何も出来ないのに自然降雨に賭けているノーベンバー11(エイプリルが居ない)などまぁ色々あり、正直評価が高いとは言えない本作ですがそれでもDTBファンが注目すべきポイントがあると私は思います。 それは契約能力を他者に移植する契約者が登場していること。 2期『流星の双子』は記憶操作技術(ME)を物語の核に置いていましたが、先んじてこのASUKA版がDTBにおける契約者と人格の問題を描いているのです。(というかぶっちゃけ2期のヒントにしていると監督がどこかで言ってたような) その辺りの設定が明らかになって以降の終盤、DTBぽさがグンと出てくるのでそこまで読んでからコメントしてほしいかなという気持ち。ラストのなんとも言えない決着とかかなりDTBしてると個人的には思う次第です。 最後にめちゃめちゃ黒の死神っぽい画像を貼っておきます。正直アニメではそこまで黒の死神感がない黒さんですが、こっちは完全に黒の死神だと思いました。依然新情報もないし、えいやと目を通されてみてはいかがでしょうか。3期はよ。DARKER THAN BLACK -黒の契約者-BONES 野奇夜 羽角彩夏 岡村天斎