ときいて飛びついてしまったのですがことはそう単純ではありません。
ベストセラーを書き上げたあと、スランプに陥った主人公の小説家・ユウが出会ったのは自身のファンを名乗る不思議な女性・エル。お互いの悩みや身上を打ち明けるうちにふたりの距離はどんどん近づいていき、エルは書けなくなってしまったユウに対してゴーストライターを申し出ます。
生活と創作の両側面に入り込んでくるエルの存在。ユウは心身ともに大きく揺り動かされることに…と途中からヤバそうな空気がじわじわ漂い始めて読むのが止まらなくなりました。
ふたりが支え合っている姿に心を温められつつも、何が起こるのか常にゾクゾク…というふたつの意味で目が離せません。

ユウに度々送られてくるストーカーらしき手紙や、エルの性格の掴みどころのなさが洋画テイストといいましょうか、サスペンスの緊張感を演出していてよいです。この辺りの味わいはもしかしたら原作小説の『デルフィーヌの友情』からきているものなのかも?
とはいえあとがきにもあるように原作とは物語の進め方がかなり違っているようです。『デルフィーヌ〜』そのものがまさに作家の自伝風に書かれた小説らしく、ユウのキャラクターとも重なってくるところがあり、こちらもどんな作品なのか読んでみたくなりました。

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エロイーズ 本当のワタシを探して

物語の始まりのシーンが好き

エロイーズ 本当のワタシを探して
ANAGUMA
ANAGUMA

本作、ベンチに座っていたエロイーズがふと記憶喪失になっていたことに気付くシーンから始まるのですが、その自然さがなんだか巧みで、ピンク色のカラートーンとともに強く印象に残っています。 メインとなるストーリーラインはサブタイトルにもある「本当のワタシ」探し。 少ない手がかりを元に記憶を失う前の自分がどんな人間だったのかを調べていく…と書くと壮大なミステリーやサスペンスのようでもありますが、そうそう大変なことが起こるわけでもないのが人生というものかもしれません。 どこにでも居る女性だった(と思われる)エロイーズ・パンソンの身の回りも、世の人のご多分に漏れずありふれた出来事ばかりだったようで、一生懸命過去の自分の身辺調査を行うほどに些細でちっぽけなことばかりが判明していきます。そのようすは親近感やおかしみと同時に、どこか空虚さというか、切なさも感じさせたり…。 「記憶を失う前の自分ってどんな人間だった?」というのを入り口に「そもそも根本的に自分ってどんな人間なんだろう?」という二重の意味で「本当のワタシ」を探すことになるのが妙味です。 そんな深いテーマもありつつ、バンドデシネとしてはかなり読みやすい部類に入ると思います。エロイーズのちょっとした仕草がどれもかわいかったり、普段縁遠いフランスでの「フツーの」暮らしが垣間見えるだけでも面白いので、読む機会があれば気軽に手に取ってみてほしい一作です。

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ぼくの友だち

ぼくの友だち

■単話版『ぼくの友だち』(1)収録話:「ぼくの友だち」短編の名手・南Q太が描く、心にあかりを灯してくれる珠玉の短編。「勇気出して言ったらよかったな あの時も」お互いの制服を交換し合った同級生との25年ぶりの再会を描いた、描き下ろし32ページ。

南Q太傑作短編集 ぼくの友だち

南Q太傑作短編集 ぼくの友だち

短編の名手・南Q太が描く、心にあかりを灯してくれる珠玉の5作品。すべて単行本初収録!この世界のこの場所でいま きみがとなりにいること【収録内容】お互いの制服を交換し合った同級生との再会『ぼくの友だち』(描き下ろし32ページ)。隣に越してきた画家・カオルとの出会いで、灰色の「ぼく」の人生が色づいていく『キリフィッシュ』。妻から仕事から逃げた先の離島で過ごす優しい時間『幸福』を含む全5作に加え、軽やかな文体がオンリーワンの魅力を放つショートエッセイ「伯林滞在記」も書き下ろしで収録。【もくじ】ぼくの友だち ……003キリフィッシュ ぼくの友だち(2) ……035カルトッフェルン ぼくの友だち(3) ……075サファイア ……113幸福 ……145【担当者より一言】ないものにされかけていたその孤独を、見過ごさない。さみしさの中にも、やさしい光を感じる作品集。南Q太ワールドを存分に堪能できる、2017年~2024年に描かれた珠玉の5編。何度も読み返したくなる、宝物のような1冊になりました。南Q太ファンはもちろん、余韻が深く感じられる物語をお求めの方にも、おすすめです!

ボールアンドチェイン

ボールアンドチェイン

Web版「GINZA」の2023年漫画コンテンツ・年間PV数1位を獲得。読むと心が奮い立つ話題作!誰かに決められた〈幸せ〉は、いらない。結婚と、離婚。人生の岐路に立たされた二人を描いた南Q太最新作。【この物語は…】冷え切った夫婦関係に悩む〈あや〉。性自認に揺らぐ中、結婚を控える〈けいと〉。まったく接点のなかった二人の人生が交差するとき…「女」だとか「妻」だとか。「普通」だとか「常識」だとか。自分を縛るものと闘い続ける「私たち」の物語。行き詰まりを感じる日々。自分の本心に向き合ったとき、人生が動き出す。

ひらけ駒!

ひらけ駒!

将棋に夢中な小学4年生、菊地宝。そんな息子を見守るうちに将棋の魅力にはまっていく母。千駄ケ谷の将棋会館、子ども将棋大会、将棋スクール、町の小さな将棋道場、将棋まつり。ふたりの休日はいつだって将棋! どうしたら強くなれる? 将棋指しは変人ばかりなのか? 知れば知るほど惹きつけられる将棋の世界へようこそ! 作者42歳にしてはじめての週刊連載、緊張のなか始まった第1巻!!

トラや

トラや

どこにでもいるふつーのカップル、直子(トラ)とけんちゃんの、何にもなくても幸せな時間。約束もない、束縛もない、愛だけがある日々。ずっとこんなふうにふたり、自由でもいいんじゃない?

ひらけ駒!return

ひらけ駒!return

小学3年生の菊池宝は将棋と出会い、いつしか夢中に! はじめて足を踏み入れた町の将棋道場、子ども将棋大会、プロ棋士による指導対局、憧れの将棋会館、将棋を通じて知り合った仲間たち。将棋が好きなすべての子どもたちが歩む道のりを辿った1巻。

POP LIFE

POP LIFE

漫画家のさくらと通信制高校に通う息子のかえで、イベント会社勤務の明海と小学生のたいちとるる。ふたつの母子家庭家族が支え合い共に暮らす、穏やかで自由で優しい毎日。「更新される日常の中でささやかだけど大事なことを紡ぐ日々。いいなー、こんな家庭に育ちたかったかも。」(岡村靖幸/ミュージシャン)

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