ANAGUMA
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2022/10/19
物語の始まりのシーンが好き
本作、ベンチに座っていたエロイーズがふと記憶喪失になっていたことに気付くシーンから始まるのですが、その自然さがなんだか巧みで、ピンク色のカラートーンとともに強く印象に残っています。 メインとなるストーリーラインはサブタイトルにもある「本当のワタシ」探し。 少ない手がかりを元に記憶を失う前の自分がどんな人間だったのかを調べていく…と書くと壮大なミステリーやサスペンスのようでもありますが、そうそう大変なことが起こるわけでもないのが人生というものかもしれません。 どこにでも居る女性だった(と思われる)エロイーズ・パンソンの身の回りも、世の人のご多分に漏れずありふれた出来事ばかりだったようで、一生懸命過去の自分の身辺調査を行うほどに些細でちっぽけなことばかりが判明していきます。そのようすは親近感やおかしみと同時に、どこか空虚さというか、切なさも感じさせたり…。 「記憶を失う前の自分ってどんな人間だった?」というのを入り口に「そもそも根本的に自分ってどんな人間なんだろう?」という二重の意味で「本当のワタシ」を探すことになるのが妙味です。 そんな深いテーマもありつつ、バンドデシネとしてはかなり読みやすい部類に入ると思います。エロイーズのちょっとした仕草がどれもかわいかったり、普段縁遠いフランスでの「フツーの」暮らしが垣間見えるだけでも面白いので、読む機会があれば気軽に手に取ってみてほしい一作です。
ANAGUMA
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2022/04/15
ネタバレ
サマータイムレンダのスピンオフ続編!主人公は…
南雲先生ことひづるちゃんと竜之介の娘・波稲!!やったーーー!!ガールズバディだーーー!! あらすじ! 相変わらず忙しそうな南雲先生は大学に通うため上京してきた波稲のひとり暮らしの部屋を探すため、ふたりで不動産屋を訪れます。そこで見つけた訳アリ格安異常好条件の奇妙な物件に興味を惹かれたふたりは持ち前の好奇心から泊まり込みで怪奇現象を検証することに…と、原作からガラッとやることを変えてきたのがまず刺激的ですね。 原作のラストからするとこの『2026』は『サマータイムレンダ』とほぼ直接の繋がりはないと言ってもいいかもしれません。影も居ない、タイムリープもない、読者が親しんだ世界とは全く別の世界なので。 そんな攻めた設定のスピンオフ・続編にもかかわらず、ふたりのキャラクターやちょっとした所作、そして何より仮説を組み立てスリリングに謎を追い詰めていく展開に『サマータイムレンダ』のエッセンスがビシバシ感じられて本当に嬉しい気持ちになりました。『2026』も確かに『サマータイムレンダ』です! …というかぜひシリーズ化してほしい!このコンビがもっと見たいよー!
ANAGUMA
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2022/04/08
遊戯王Rと「冥府の使者ゴーズ」の思い出 #完結応援
ふと思い立って検索してあらすじを見たところ「※デジタル版には同梱カードは付属しておりません。ご了承ください。」の注意書きがまず目に入ってちょっと笑ってしまいました。そらそうだろ。 さて、原作でいうバトル・シティ編と王の記憶編のあいだの出来事を描いたこのシリーズ。正確なところは覚えてないですけど、基本的には原作に接続する本編時系列の外伝エピソードという扱いだったはず。もちろん細かい不整合はあると思いますけど遊戯王で細かいことを気にする意味があるかどうかは…ね! 個人的な見どころとしてはペガサスにフォーカスした物語だということと、それに絡めて初心者デュエリストに優しいことで有名なあのバンデッド・キースが再登場する点、そして神のカードを3枚所有した状態のパーフェクト遊戯のデュエルが見られるところ(実はかなり貴重)。 ペガサスが三幻神を恐れて作ったもののヤバすぎて封印した邪神シリーズのおかげで当然ヤバいので立ち向かうというお話です。いつも言うが作るな、そんなカードを。 そんな元気のある本編以上に世界にインパクトを与えたのが当時の遊戯王OCGの環境を一変させたモンスターカード「冥府の使者ゴーズ」。本作の3巻に特典として付属しています。 あくまでマンガのオマケのカードですが、実際はこのオマケの需要が高すぎて3巻だけがどこの本屋にも無く、入荷されれば一瞬で売り切れるというのが当時の状況でした。大体のマンガって1巻が一番売れているものだと思いますが、この遊戯王Rに関しては絶対に3巻が飛び跳ねていると断言できますね。スターチップひとつと命を賭けてもいい。 死にものぐるいでこの表紙を探したデュエルキッズの多くが今や30代に差し掛かっているだろうな…怖。 https://manba.co.jp/boards/62637/books/3 で、そのゴーズ、どうしてそんなに人気だったのか。 ざっくりまとめると「どんなデッキにも入れられる。相手ターンに手札からほぼ制限なしで召喚できる。それで相手の攻撃を止められる。しかも2体出せる」というパッと見でもいや強いだろという仕様だったため。改めて書くとわけわからん性能だな。 細かい効果とOCG環境での歴史については遊戯王Wikiを見ていただければと思いますが、ゴーズがこの世界に印刷されたことで「攻撃力の低いモンスターから順番に攻撃宣言をする」というルール外ルールみたいなのがほぼ全プレイヤーに強制させられたのが影響力のデカさを裏付けています。古参の遊戯王プレイヤーは今でもその呪いにとらわれているとか。哀れな…。 https://yugioh-wiki.net/index.php?%A1%D4%CC%BD%C9%DC%A4%CE%BB%C8%BC%D4%A5%B4%A1%BC%A5%BA%A1%D5 もちろん自分もデュエリストとして友人にダメージを与える度にカードショップで大枚をはたいて手に入れたゴーズとカイエントークン(※手近な消しゴムの姿を取って現れることが多い)が手札(と筆箱)から飛び出してきて何リットルもの煮え湯を飲まされてきたわけですが、当時遊戯王Rは読んでいなかったのです。 そのため結局ゴーズが原作でどんな使われ方をしているのか分からないまま青春を過ごしました。あのときの私たちは「カードついてない単行本を古本で買うの癪だな…」という気持ちを抱いたまま雰囲気でゴーズを使ったり使われたりしていた。 時が経ち環境も変わり、あれだけ猛威を奮ったゴーズも段々と存在感をなくしてきた(OCG界の生存競争はどんなカードにとっても平等に過酷なため)ある時、なにかのタイミングで本作を手に取る機会がありました。 さんざ苦しめられた憎っくきゴーズ、よほど性格の悪い敵キャラが使ってくるんだろうなと予想しながら本作を読み進めていた私は思わず「えっ!?」と声を上げてしまいました。 そこには冥府の使者ゴーズとカイエンを堂々と召喚する我らが主人公、闇遊戯の姿があったのです…。 お前が…使うんかい…! 以上、ゴーズ今昔物語でした。 「森の番人グリーン・バブーン」については次の方に筆を譲ります。
ANAGUMA
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2022/03/04
FGOで学ぶ世界の食文化と歴史 #1巻応援
『衛宮さんちの今日のごはん』で料理監修をされている只野まこと先生の正体が本作の十駒マコト先生だと知ってマジでビビり散らかしました。料理もできて絵も描ける、無敵だ!!! https://manba.co.jp/boards/144665/import_links/9450 さて、『衛宮ごはん』は「ワンランク上のおうちごはん」がテーマのグルメ漫画然とした作品でしたが、本作はFateを通じて世界各地の食の文化と歴史を学べる学習まんがといった趣。 Fateシリーズのサーヴァント自体は歴史上の人物を元にしているとはいえ相当アクロバティックなアレンジが加わっているわけですが、存外こうしたテーマの入り口にはぴったりというか、元からこのマンガのために居たのか?というくらいのフィット感。 コラムや注釈も充実の情報量で、古今東西さまざまな文化圏の英霊が登場するFGOの強みをガッツリ真面目方面に生かした作品と言えます。 なかでも注目すべき話数はプロトタイプとして描かれたという「ウルク飯」かと思います。バビロニアのアニメでも食事シーンが随分話題になりましたが、生活をしっかり描いたシリーズだけあり、古代メソポタミアのメシの解像度が上がる恩恵は大きいですね。 時間も空間も大きく離れた当時の食文化が今でもこれだけ分かっていることそのものへ驚きと、食べてみたい!と思わせるほど魅力的に描かれていること、両面からすごいなと思う次第です。 『衛宮ごはん』ファンはもちろん、全くFate知らん人が本作を入り口にするのもアリなのかもと思うくらい、しっかりした作品ですよ!
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2021/11/24
読めば絶対「アイの歌声」を聴きたくなる! #1巻応援
去年劇場で予告編を見てから公開をずっと楽しみにしていたアニメーション映画のコミカライズ作品です。映画を見るまでは…とマンガ版を我慢していたのですが、先日鑑賞でき、無事にドハマリしたのでこちらも読みました。結論を先に書くとめちゃくちゃよくできておる…。 出来れば前情報無しで触れてほしいと感じる作品なので、ストーリーについてはここでは特に触れませんが、マンガ版は適度に省略をはさみつつ、主人公のサトミの心情やシオンの思考にフォーカスされるシーンが細かく追加されていて、映画を見て好きになった人こそ嬉しくなる仕上がりだと感じました。 絵も本当にスゴくて、特にミュージカルシーンはシオンの衣装や歌詞の表現などアニメではできない描き方がされているので鑑賞済みの方は「おお…!」となるのではないでしょうか(なりました)。 個人的には映画を見てからマンガ版で良さを再度噛み締める…という楽しみ方がいいのかなと思いましたが、ちらっと読むだけでも劇場でもシオンの歌声を浴びたくなってしまう、そんなパワーを持ったコミカライズだと思います。 劇場公開中のこの機会にぜひ映画・マンガ両方とも楽しんでほしいです。
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2021/10/20
読んでる時ずっと笑ってたと思う #完結応援
女の子大好きなハイジちゃんとそのハイジちゃんが大好きなさららちゃんがかわいい女の子でい〜っぱいの素敵な女子校で過ごすというとってもフワフワユリフルハッピーなマンガなんだろ〜な〜と思ったそこのあなた!それで終わらんのが『お姫様のお姫様』よ! とにかく表紙からも迸っている絵のかわいさとそれと対照的な「そのアホをやるんか!?」という軽妙なキャラ会話と展開のキレ味のギャップに一発で虜になってしまいました。 多分語弊あるんですけど全力でフザケてるときのトリガーのアニメ(※それでいてはちゃめちゃに絵がかわいい)みたいな…そもそもふたりが通ってる「超百合女学園」のネーミングとか設定とかからその片鱗を感じるんですよ。超百合女学園、何?(答え:生徒数155万8千人のうち9割がカップルになっている女子校。所在地は都内。男子が入ると死ぬ) 自分は本作のおかげでかわいい女の子がアホをやっているのにつくづく弱いということがわかりました。(『あそびあそばせ』にドハマリした時点で気づけという面もある) これ一生読んでられるなと思ってたので2巻で終わっちゃったのは本当に残念ですが…。せめてこの2巻を無限ループしようと思います。 うまく説明できてる自信がないのでとにかく1話だけでも読んで“体験”してほしい、『お姫様のお姫様』を。これはすごいやつですよ。