連ちゃんパパ

これはもう一種のホラー漫画だ

連ちゃんパパ ありま猛
ピサ朗
ピサ朗

ギャンブルの恐怖、不快感、やるせなさ、人間の弱さ、クズさをこれでもかと描いていて、ネガティブな感情しか持てない最低の漫画なのだが、怖いほど、不快なほどむしろ優れたジャンルとなるホラー漫画と同じくギャンブル依存症の啓発漫画として見るならばこの酷さはむしろ絶賛すべき部分であろう…。 少々向こう見ずというか考えが浅いようには見えても、まともな人間だった主人公が些細な切っ掛けからパチンコに目覚め、完全な人間の屑に堕ちていく様は絶句するしかない。 恐るべきは「誰もがこう成り得る」というのを感じさせる生々しさで、登場するキャラクター全員パチンコを覚える前は、多かれ少なかれ善も悪も抱えた平凡な人間だという描かれ方なのだが、パチンコを覚えた途端善性を投げ捨て人間の悪性を恐るべき勢いで増大させていくのである。 そしてその被害にあうのは依存症者の財布だけでなく家庭そのもの、要は犠牲者は子供であるというやるせなさと生々しさが実に強烈、しかもそこまで身を崩しておきながら、ストーリー上の制裁的な部分が全く描かれず、ココもまた生々しい…。 普通の漫画なら破滅するか死の制裁か立ち直るか、そういう部分が入るがそんな救いも終わりも一切なく、最後のオチも恐怖しかないというか、もう勘弁してくれと言いたくなるその後が想像できる物で、ただただ一度ダメになった人間はダメなまま平気で生きていくという、そりゃそうだろうけど、そんな描かれ方を読まされるこっちの身にもなってくれと言いたくなる。 絵柄はファミリー4コマさながらの読みやすい物で、ストーリーも分かりやすく理解しやすいのだが、描かれている人間の醜さと屑さは理解を拒みたくなる強烈な物で、とにかく読んでいると精神を抉られる。 自分はここまでギャンブルにハマってないと思う人も多いだろうけど、些細な切っ掛けが有ればあっち側にいたというのを否定するには、でてくる人間が普通過ぎて、正直断言できないのがまた怖い。 ギャンブルの怖さを描くという点ではこれ以上ない作品で、恐怖と不快感はある種ホラー漫画やグロ漫画と同じく、マイナスだからこそ評価すべき部分でもあるが、それでも圧倒的な不快感は人に勧めるのを躊躇う物で、実際にパチンコ公営競技やガチャ、一番くじにハマってる人に見せても「自分はマシ」だと思わせかねないキャラクターの深刻な依存症っぷりはもう誰に見せるべき作品なのか分からない。 おススメはしないし、見て不快になってもしらないが、その強烈な内容と読みやすさの両立という点では、漫画としては相当に上手さを感じさせる作品ではある。

ハッピー・オブ・ジ・エンド

すべてが最高な2021BLの最高峰

ハッピー・オブ・ジ・エンド おげれつたなか
兎来栄寿
兎来栄寿

安心と信頼のおげれつたなかさん最新作。 バカエロの方の作品群も良いですけど、私はおげれつたなかさんのこの仄暗く痛みを覚える方の作風が大好きです。 まず言うまでもないことですが、美しい絵柄が最高ですね。美麗な絵でもって、主人公の千紘が惹かれる攻めのケイトのミステリアスで冷たい「顔の良さ」を無条件で承服させられます。表紙でも帯でもそうですが、瞳孔にハイライトがないケイトの暗い深淵の瞳。しかし、そこに時折光が宿るシーンが堪らない訳ですよ、ええ。 公式では「謎めいたイケ傷害男」×「人生底辺ヒモカス男」とされていますが、この主軸二人のバックボーンが非常に懇切丁寧に描かれていることで、彼らのクズな部分もアングラな部分もひっくるめて感情移入できるようになります。よく立った二人のキャラクターが織り成していく関係性の変化は極上のご馳走です。 「ゴミと動くオナホってどっちがマシなんだろうな」 という問いとそれへの回答、またep.6のラスト付近はとりわけ好きなシーンです。 彼らを取り巻くサブキャラクターも味のある人物が取り揃えられており、引きの強いストーリーを更に盛り立てていきます。 ディープな人間ドラマを読みたい方でBLへの抵抗が薄い方であれば男性にも強くお薦めしたい、今年発売のBL作品の中でも抜けている一作です。

空のキャンバス

昭和の懐かしき大味ドラマとギャグが最高 #完結応援

空のキャンバス 今泉伸二
名無し

たんこぶが積み重なったり倒れてきた電灯がキャラの形に凹むようなギャグ世界線で繰り広げられる愛と命を掛けた体操スポーツ漫画。1巻の1ページに昭和が凝縮されすぎてて好きです。 1〜3巻は昨今めっきりお目にかかれないラッキースケベのバーゲンセール。ヒロインの榛名ちゃんがタフで容赦なく太一を殴ってくれるからきっちりギャグになってて嫌な気持ちにならず読める。 とにかく女の子が可愛いくてすごい。 榛名ちゃん、沙織ちゃん、マドンナ麗華さん、エレナ、会長夫人……登場する女の子が全員タイプが違う美人で最高。 体操に詳しくないので作中の技がどれだけ古く難度の低いものになっているのか読みながら気になった。 後半ラブコメギャグ体操漫画がシリアスになってくる過程が面白い。 太一自身が生きてるのが不思議なレベルの怪我人で命を削ってまで真剣に体操に打ち込んでるのに、元はラブコメギャグ世界の住人だから榛名ちゃんに殴られてるのが草 大怪我から復帰した人間にさらに怪我をさせる(歩道橋から落下・ワイヤー衝突)。リハビリ仲間が体操の会場で死ぬ。医者は騒ぐだけでほとんど役に立たない。記憶喪失。いつの間にかフェードアウトするキャラの多さ。 五十嵐はともかく最初いたケンシロウはどこいったんだよマジ。 このライブ感という名の大味さがやはり最高です。 赤いウィンナーはいいものだ……。 太一の死を曖昧に描く最後のお陰でこの漫画は名作になったんじゃないかなと思う。

患者さまは外国人 無国籍ドクターと空飛ぶナースのドタバタ診療日誌

漫画みたいな超かっこいい国籍がないお医者さん! #完結応援

患者さまは外国人 無国籍ドクターと空飛ぶナースのドタバタ診療日誌 山本ルミ 世鳥アスカ
ぺそ
ぺそ

以前に読んだものをふと再読したくなって読んだのですが、やはりドクターが本当にかっこいい✨そして今回読んで一番驚いたのは、このドクターも病院もナースも本当に実在する方だということ。 前回読んだときは、「ナースの方のエッセイ漫画だけど、プライバシーに配慮してたぶんフィクションもふんだんに混ざってるよね…」と思いながら読んでいました。そのくらい設定がかっこいいんです! ・病院は関東大震災でも空襲でも焼けなかった洋館で文化財 ・ドクターはロシア革命から逃れてきた両親を持つ満州出身の多言語話者で「無国籍者」 ・お金がない人からは治療費をもらわない ・日米露からスパイ容疑をかけられ連行される ・診療に本名もパスポートも不要 ・日本に来たマイケル、ブラピ、マドンナなどを診察するも彼らが何者なのか全然知らない ……これでエッセイと信じられなくても当然じゃないでしょうか。 が、今回はこの作品を久々に読もうと検索した際にドクターご本人の記事を見つけてビックリ!全部本当だったとは衝撃です。 https://wedge.ismedia.jp/articles/-/1068 https://www.1101.com/yamamoto_rumi/2014-12-08.html 怪我人が海外から帰国する際に付き添う「エスコートナース」としても活躍されている方の目線で病院内の日時が描かれます。 ・全身真っ青な患者=水疱瘡のロシア人 ・待合室にモハメドさん多すぎ問題 ・検尿が通じずまさかの…… ・世界のご当地民間療法すごすぎ などなどそのドタバタぶりが本当に面白かったです! 仕事中、結果待ちの患者さんと一緒にのんびりコーヒーを飲んだり、建物が気に入ったという方に毎朝待合室に新聞を読みに来るのを許したり。 昔ながらの人情、いい意味でのゆるさ優しさが残っている本当に素敵な病院で、日本の保険は効かなくてもここでお世話になりたいなという気持ちになりました。 ネトフリでアニメ化して世界中に配信されてほしいなぁ。 エッセイ漫画好きなら絶対読んでほしい作品です♫

塔子さんはいい大人じゃいられない

素直に応援したくなる物語 #1巻応援

塔子さんはいい大人じゃいられない たかせうみ
sogor25
sogor25

デザイナーとして働いている27歳の女性・胡桃沢塔子はある日、担当していた仕事をクライアントからの要望で外されてしまいます。 職場でも能力を認められていた塔子でしたが、彼女は幼い頃から表情に乏しく「意思疎通ができていない」と思われてしまったのがその原因でした。 そこで同僚に薦められたのが「マッチングアプリ」。 相手と直接会う前のメッセージでのやり取りでワンクッションを挟んで、そこからコミュニケーションの経験値を積もうという提案でした。 早速アプリに登録してみた塔子は、マッチングした真崎蒼斗という男性と意気投合し、実際に会うことになるのですが、そこで蒼斗が実は18歳の高校生であることが判明する、という導入の作品です。 無表情なために仕事でもプライベートでも勘違いされやすかった塔子が高校生だけど人馴れしている蒼斗との交流によって少しずつコミュニケーションの経験を積んでいくという物語なのですが、 主人公の塔子は"表情"は薄いんですが"感情"はとても豊かで、蒼斗との出会いによりいろんな感情を見せてくれるので、塔子のことを素直に応援したくなる物語です。 蒼斗のことを頼りにしつつも彼が高校生であるため努めて"大人"として接しようとする塔子と、塔子にもっと頼ってほしそうにしている蒼斗、2人の関係が今後どのように変化していくのか楽しみな作品です。 1巻まで読了