あらすじ水雷艇転覆事件に端を発する海軍全艦艇の改修事業。その総指揮を執る事で海軍内での発言力を増した平山造船中将は、櫂に白紙に追い込まれた戦艦「大和」計画の復活を目論む。それを危惧した櫂直は、海軍内で蔓延る大艦巨砲主義そのものを無くすべく、高性能な新型戦闘機の開発に参画する。そして山本五十六仲介のもと、三菱の設計士・堀越二郎氏と出会うが……。
極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。