あらすじ櫂、逮捕!? 特高警察・藪本の暴走で、命の危機‥!! 大詰めを迎えた日米和平協議の報告会議。「大和」売却に猛反発する山本五十六に対し、櫂は売却益30億ドルを使い、インフラ整備を中心に豊かな社会の実現を目指す「日本改造計画」を披露。政治家たちの心をつかむが、それでも山本と東條英機は反発の姿勢を崩さない。すると突然、意外な男が口を開き、櫂に助け船を出した――。「アルキメデス」史上、最もハードでバイオレンスな第23巻!!
極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。