あらすじ櫂が上海の物資集積所を爆撃した作戦を応用し、ドイツが周辺国を相次いで爆撃。そしてポーランドに侵攻し、第二次世界大戦の口火が切られる。海軍上層部は関係強化のため日独伊三国同盟の締結を提案するが、櫂はドイツとの接近こそが日米開戦の引き金だとし、反ヒトラーを訴える。さらに櫂は、関係が悪化する米国と和平交渉を実現すべく、ある大胆な作戦を実行する!
極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。