あらすじ日米和平協議も、残すところあと1回。米側の案内でニューヨークを訪れた日本大使一行は、世界一の都市の圧倒的経済力と、ニューヨーク市民の強い反日感情を目の当たりにする。このまま交渉をまとめる「画期的アイデア」を思いつかなければ、開戦は必至。「大和」は戦争に使われてしまう。櫂は自らが生み出した矛盾に苦悩する‥‥。日本一の天才が悩みに悩んで導き出した驚愕の提案に、日米驚愕! 会議激震! の第20巻!!
極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。